著者
小川 大輔 中嶋 信美 玉置 雅紀 青野 光子 久保 明弘 鎌田 博 佐治 光
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.41-50, 2005-03-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
47
被引用文献数
2

オゾンは光化学オキシダントの主要成分で強い酸化力を持ち, 農作物や樹木を枯らす等の被害をもたらしている。一過的に0.2ppm以上の高濃度のオゾンにさらされた植物の葉では, 可視的な障害が発生する。その可視障害は, オゾン暴露後に合成される植物ホルモン (エチレン, サリチル酸, ジャスモン酸) によって調節されていると考えられている。植物ホルモンは, 植物の成長分化, あるいはストレス応答に重要な物質で, 多岐にわたる反応を誘導する。近年, 遺伝子組換え技術によって植物の形態や生理機能を内在的に変化させた形質転換体を用いた解析や, シロイヌナズナの植物ホルモンの合成, シグナル伝達欠損変異体を用いた解析から, オゾン暴露時の植物ホルモンの役割が明らかにされはじめている。本総説では, エチレン, サリチル酸, ジャスモン酸がどのように合成され, どのような反応, シグナルを誘導するのかを紹介した。
著者
岡﨑 龍史 大津山 彰 阿部 利明 久保 達彦
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.91-105, 2012-03-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
2 7

福島第一原子力発電所(福島原発)事故後, 放射線被曝に対する意識について, 福島県内一般市民(講演時200名, 郵送1,640名), 福島県外一般市民(52名), 福島県内医師(63名), 福島県外医師(大分53名, 相模原44名, 北九州1,845名)および北九州のS医科大学医学部学生(104名)を対象にアンケート調査を行った. アンケート調査の回収率は, 福島県の一般市民は講演時86%と小児科医会を通じて郵送した50%と, 福島県外の一般市民91.3%および福島県内医師は講演時に86%回収, また福島県外の医師は, 相模原市85%および大分県は講演時に86%回収し, 北九州市はFAXにて17%回収となった. 福島原発後の放射線影響の不安度は, S医科大学医学部学生が12.2%ともっとも低く, 次に医師(福島県内30.2%, 県外26.2%)が低く, 福島県外一般市民(40.4%), 福島県内一般市民(71.6%)の順に高かった. 不安項目に関しては, S医科大学医学部学生や福島県医師は, 健康影響よりも環境汚染(食物や土壌汚染)に対し不安を持つ割合が高く, 福島県外医師や福島県内外の一般市民は健康被害および環境汚染の双方に不安を持っていた. 放射線の知識が高い人が, 現状に対する不安は少なく, 放射線知識の普及の必要性が結果として示された.
著者
木下 奈緒子 大月 友 五十嵐 友里 久保 絢子 高橋 稔 嶋田 洋徳 武藤 崇
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.65-75, 2011-05-31
被引用文献数
2

本稿の目的は、精神病理の理解や治療という観点から、人問の言語や認知に対して、今後どのような行動分析的研究が必要とされるか、その方向性を示すことであった。人間の言語や認知に対する現代の行動分析的説明は、関係フレーム理論として体系化されている。関係フレーム理論によれば、派生的刺激関係と刺激機能の変換が、人間の高次な精神活動を説明する上で中核的な現象であるとされている。刺激機能の変換に関する先行研究について概観したところ、関係フレームづけの獲得に関する研究、刺激機能の変換の成立に関する研究、刺激機能の変換に対する文脈制御に関する研究の3種類に分類可能であった。これらの分類は、関係フレーム理論における派生的刺激関係と刺激機能の変換の主要な三つの特徴と対応していた。各領域においてこれまでに実証されている知見を整理し、精神病理の理解や治療という観点から、今後の方向性と課題について考察した。
著者
垂水 浩幸 鶴身悠子 横尾 佳余 西本 昇司 松原 和也 林 勇輔 原田 泰 楠 房子 水久保 勇記 吉田 誠 金 尚泰
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 = IPSJ journal (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.110-124, 2007-01-15

市販のGPS 付携帯電話を端末とした位置依存の共有仮想空間(擬人化エージェント機能や利用者間コミュニケーション機能を含む)を応用して観光支援システムを開発し,これについて公開実験を行った.ここで公開実験とは,観光者に現地で依頼して被験者となってもらい,かつ観光者自身の所有する携帯電話を使用して,我々の提供するサービスを評価してもらう実験であり,観光の観点から客観性の高い現実的な評価を得ることが目的である.実験は香川県の代表的観光地である金刀比羅宮と栗林公園でそれぞれ1 週間ずつ実施した.その結果,年齢,性,観光地への訪問経験などにより反応が異なる場合があることが確認でき,ターゲットユーザの絞り込みが重要であることが分かった.また仮想空間で提供する情報は,ガイドブックや立て看板などの現実のメディアとの役割分担が重要であることも明確になった.またGPS の誤差については問題が残るが,位置誤差の評価と観光支援サービスの評価は独立であることも確認した.本論文ではこの公開実験の方法と結果について詳細に述べる.We have developed a sightseeing support system, using our shared virtual world service including human-like agents and inter-user communication for popular GPS-phones on the market. We have conducted open experiments for the service. By open experiments, we mean those with real tourists as subjects and letting them use their own phones. By open experiment, we have aimed to acquire realistic and objective evaluation from the viewpoint of sightseeing itself. The experiments were conducted at two major sightseeing destinations in Kagawa prefecture, each taking one week. As results, we have found that visitors responded differently by their age, gender, experiences, etc. We have also found that virtual media should give different information from real media. These findings will help the future design of such services. GPS inaccuracies were found but subjects evaluated them independently from other evaluation. In this paper, the method and results of the experiments are described.
著者
久保田 信 西原 史晃
出版者
日本生物地理学会
雑誌
日本生物地理学会会報 = Bulletin of the Biogeographical Society of Japan (ISSN:00678716)
巻号頁・発行日
vol.71, pp.199-202, 2017-01-20

Many (25 individuals) immature medusae of a large form of Turritopsis medusae were collected from Enoshima, Kanagawa Prefecture in April, 2016, and cultured in the laboratory for about two months until their death (rejuvenated from a medusa to stolon, but no formation of zooids). They grew well-grown (maximally 8 mm in umbrella height) medusae with scarlet-coloured manubrium and c 80-100 tentacles. The present occurrence of a large form, though not an adult, is the second southernmost distributional record of this species after one century. However, the number of tentacles of the present medusae showed the minimum number, in contrast to having much more tentacles in wild medusae collected from various places in Japan (from Kanagawa Prefecture to Hokkaido).
著者
大久保 立樹 室町 泰徳
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.507-512, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
20

本研究では,まず,撮影された写真画像の位置情報と写真画像に対するコメントに加え,方位と仰角を取得することができるシステムを開発した.また,18名の留学生を被験者とし,被験者を各観光地まで案内して,そこから各自自由に観光しながら撮影をしてもらう実験を行った.さらに,写真画像ごとのコメントを記述してもらい,言語と写真画像の両方のデータを取得することで,観光客の関心対象をより詳細に把握することを試みた.結果として,仰角データの活用により,観光客の撮影する関心対象を絞り込むことが可能となることが示された.仰角の高い関心対象は高層の建物が多く,写真画像の撮影位置とは離れた対象である場合があることが明らかとなった.また,仰角の低い関心対象には買い物や食べ物に関わることが多いことも示された.さらに,言語データと写真画像の位置・方位・仰角データを組み合わせることで,言語データのみからでは生じてしまう関心対象の地理的不一致を修正することが可能となり,観光客の関心対象をより詳細に把握できることを示した.
著者
内垣戸 貴之 中橋 雄 浅井 和行 久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.587-596, 2006
参考文献数
23
被引用文献数
1

日本教育工学会において,研究方法論に関する議論が活発に行われている.その中でも特に,教室内でのコミュニケーションなど,研究対象に対する深い理解が必要な場合において,質的研究法の価値が認められつつある.本論文では,教育工学における質的研究の重要性について確認しながら,質的研究を論文としてまとめる上で重要な研究の妥当性と一般化の適用範囲の示し方について,いくつかの観点を提案する.そして,具体的にそれらが日本教育工学会論文誌の研究論文において,どのような形で示されているか分析し,質的研究論文のまとめ方について考察する.
著者
近藤 金助 久保 正徳 板東 和夫
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.12, no.11, pp.1077-1087, 1936

(1) 我が國の河海湖沼に饒産するイセエビ,クルマエビ,ホツカイエビ,及びマエビについて一般を知り,前二者に併せてシラサエビの生鮮なるものについて雌雄別に,又季節別に定量分析を行つた.又ホツカイエビに就ては市販の罐詰肉について定量した.其の結果を要記すれば次の通りである.<br> (a) 三種の蝦に於て可食肉量の最も多いのはクルマエビの55%,次はシラサエビの50%にして最も少なきはイセエビの40%であつた.蓋し後者の甲殻肢節が特に大であるからである.<br> (b) 可食肉量の割合は同一種の蝦にありては雌雄別,又は大小別による相違はなかつた.<br> (c) イセエビにありては初夏のものは雌雄共に水分84%に達し,蛋白量は14%にすぎずして新鮮肉100gの保有する利用性熱量は僅かに60Calsであつた 然るに秋季のものは水分減少して78%となり,蛋白は20%に増加し更に脂肪,及びグリコーゲンも亦増加した結果,新鮮肉100gが保有する利用性熱量も亦増加して83~84Cals.となつた.<br> (d) クルマエビにありては初夏のものも亦秋季のものも水分78~79%,蛋白20%であつて,薪鮮肉100gが保有する利用性熱量は82~83Cals.であつた.<br> (e) シラサエビにありては水分82%,蛋白量16%であつて,新鮮肉100gが保有する利用性熱量は約70Cals.にすぎなかつた.<br> (f) ホツカイエビ罐詰にありては一罐内の可食肉量は約110~120gであつて,蛋白が31~32g利用性熱量が約135Cals.保有されて居つた.<br> (2) 蟹及び蝦肉は共に全固形成分の85~92%が蛋白であつて,脂肪,グリコーゲン及び灰分は微量にすぎない.然しながら此の少量成分たる脂肪並びにグリコーゲンは季節によつて稍々規則正しく増減して居るが故に,其の消長は食昧に對して相當なる影響を與へるものと考へられる.<br> (3) 蝦肉蛋白の窒素の形態を定量し其の結果から新鮮肉中に存在するアルギーニン,ヒスチヂン,リジン,及びシスチンの量を算出表示した.<br> (4) 蝦肉蛋白の窒素の形態を定量した結果から知り得た事項を要記すれば次の通りである.<br> (a) 鹽基態のアミノ酸は夏季のものよりも秋季のものに於て多い.<br> (b) 就中アルギーニン,リジン,及びシスチンの含量に於て然りである.<br> (c) ヒユーミン態窒素は秋季のものに於て増加して居る.<br> (d) 夏秋を通じて雌肉蛋白は雄肉蛋白に比して,アルギーニンとリジンの含量は少ないがヒスチヂンの含量は多い.<br> (5) 蝦肉蛋白の窒素の形態が雌雄により,又季節によつて變動するのは生體蛋白の彷徨變異性の自然的表現であることを論證し,蝦肉及び蟹肉が種類別に産地別に又季節別に差別的特味を有する反面に於て又共通的食味を有することを指摘し,其の原因のうち肉蛋白が關與する限り後者の原因に關しては蛋白基成分が共通して居るが爲めであることを論述し,併せて差別的特味の原因を肉蛋白の組成のうちに見出し得ることを暗示した.<br> 本報告のうちシラサエビ,クルマエビ,及びイセエビに關する實驗の全部は久保が行ひ,ホツカイエビに關する實驗の大部は板東が行つたのである.
著者
久保田 和男
出版者
長野工業高等専門学校
雑誌
長野工業高等専門学校紀要 = Memoirs of Nagano National College of Technology (ISSN:18829155)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1-7, 2016-06-30

This paper described the history of Kaifengfu and Jew people. North Sung(北宋) age,Jews arrived at China from the west and lived at Kaifengfu(開封府). Up to now for about about 1000 years, they keep living in eastern area of this city. They were the city people who made the commerce a bread-and-butter job. In Ming era(明代), Kaifengfu prospered as a local city in particular. A Jewish community also prospered during the time. In 1644, a deluge of the Yellow River has destroyed their synagogue.it was possible to make it revive by the power of the community. Economy of Kaifengfu was depression in the modern times(afrer 1842). Jewish community also declined at the same time, and religious consciousness was being also lost.
著者
久保田 義弘
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学経済論集 (ISSN:18848974)
巻号頁・発行日
no.6, pp.1-24, 2013-10

本稿は,ローマ帝国がブリティン島から撤退した5世紀はじめから8世紀末のヴァイキングの襲来までのスコットランドにおいて,ピクト人の活動,ピクト人によって形成されたアルバ王国,ならびに,中世中期の中央集権的なアサル王朝の成立の一翼を担ったキリスト教についての一考察である。第1節では,6世紀から8世紀前半のピクト王国を,ブリィディ1世から7世紀初めのネフタン2世,次に,タロルガン1世とブリィディ3世によるノーザンブリア王国との連携から対立,そしてピクト王国の独立をブリィディ4世とネフタン4世兄弟の治世によって概観する。第2節では,オエンガス1世とコンスタンティン王,およびオエンガス2世の治世からピクト王国を概観する。論文Article
著者
岩月 奈都 久保田 勝俊 山本 喜之 中根 久美子 粕谷 法仁 植田 祐介 鈴木 和人 花之内 基夫
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.41-44, 2015 (Released:2015-07-10)
参考文献数
3

近年, HBs抗原陰性, HBs抗体もしくはHBc抗体陽性者のB型肝炎ウイルスが, 再活性化されることにより引き起こされるdenovoB型肝炎の重症化の報告がなされている。免疫抑制・化学療法患者が発症するdenovoB型肝炎は, 医療訴訟にまで発展することもあり, その対策として, 2009年1月に厚生労働省より『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン』が公表され, 2013年には日本肝臓病学会より『免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン (改定版)』(以下ガイドライン) が公表され, 各施設での対応が急務とされている。当院でも, 化学療法委員会で協議され, 医療の安心・安全及び迅速化を提供するためHBc抗体の院内測定を実施することとなった。 調査期間中, HBc抗体が測定された理由は, 化学療法対象患者並びに免疫抑制剤使用患者, 輸血前感染症検査, ウイルス性肝炎検査であった。当院においても, ガイドラインに適応する症例は218例中15例あり, 通常の感染症スクリーニングでは見つけることの出来ないHBs抗原陰性かつHBc抗体陽性の患者は決して少なくない結果となった。 今後も免疫抑制・化学療法の対象患者は増加することが予想されるなか, 安心・安全な医療の提供の為にもガイドライン遵守の必要性が示唆された。