著者
井上 史雄 半沢 康
出版者
日本言語学会
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.162, pp.63-89, 2022 (Released:2022-10-25)
参考文献数
62

本稿では山形県庄内地方で行われた方言調査データに多重対応分析を適用した結果を報告する。江戸時代の方言集『浜荻』掲載406語の残存率について1950年に3世代,2018年に4世代の調査が行われ,長期の言語変化が分かった。「年齢柱方言地図」と「単純化グロットグラム」を作図して考察した。140年にわたる世代差を踏まえ,20世紀の地域差の大きい時期から,21世紀の世代差の大きい時期に移行したことを論じる。多重対応分析によって方言の分布と変化の複雑なパターンを要約し,全体傾向を把握できた。第1軸には140年という長さの年齢差が表れ,第2軸以下には庄内方言南北80 kmの地域差が示された。南北差が大きいので,鶴岡からの徒歩距離を計測して「単純化グロットグラム」を作成し,代表的な8語のうち3語を例示した。地方的周圏分布が見られるとともに,現在の若い世代の急速な方言衰退が見られ,他方中学生による方言使用も観察された。
著者
井上 史子 林 徳治
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.3-14, 2004-03-20 (Released:2017-05-24)
参考文献数
19
被引用文献数
1

先行研究より,これからの子どもたちには情報を批判的に読み解き活用する力が必要であり,その力を育成することにより,主体的に学ぶ態度の変容も期待できると考えた.本論文では,小学校におけるメディアリテラシーを育成する授業での児童の主体的学習態度に着目し,児童による自己評価と教師による観察を基に,学習者の主体的学習態度の変容をめざした授業のあり方について,量的,質的な分析を行った.その結果,主体性は関係的であり,学習内容や使用する教材,学習者の心身の状態や学習環境に影響されやすいものであること,主体性を発揮するには自己表現力の向上が欠かせないこと,主体性を生かす授業形態として個別学習が有効であることなどが示唆された.
著者
井上 史郎
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンピュ-タ (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.506, pp.76-78, 2000-10-09

ファミリーマートが伊藤忠商事など6社と共同で設立した電子商取引(EC)事業運営会社「ファミマ・ドット・コム」(東京都豊島区)が,いよいよ10月30日にサービスを開始する。井上史郎社長は,「各店舗がそれぞれの個性を生かしたECサイトを立ち上げ,地域密着型のビジネスを展開する。この戦略で,ライバルのコンビニに対抗する」と宣言。
著者
井上 史雄 半沢 康
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.144-156, 2021-09-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
40

本稿では山形県庄内地方の方言調査データを分析し,地域差の大きい時期から世代差の大きい時期に移行したことを元に交通の役割の変化を論じる.出発点は,明和4(1767)年に編集された鶴岡の方言集『浜荻』である.1950年の第1次調査,2018年の第2次調査により140年にわたる語彙残存率の世代差が分かった.データは,406項目×27地点の約370人からなる.周圏分布による地域差を,中心都市からの徒歩距離によって1次元で表現した.全員の語形データに適用したあと,7世代を3グループに分けて適用した.その結果第1グループの第1次調査では地域差が大きく表れ,徒歩距離が作用したと認められた.第2グループの第2次調査老壮の世代では年齢差が大きく表れ,鉄道開通による駅所在地点の急速な方言衰退が見られた.第3グループの第2次調査若少の世代では地域差が薄れたが,中心都市との距離は関連を示す.自動車交通によって,鉄道開通以前の徒歩距離が再び影響するようになったと考えられる.さらに406語を活力により4病状に分けて,同様の分析を施した.危篤,重病,不安定,安定の順が過去の方言衰退過程を反映・再現すると考えられ,徒歩距離と鉄道駅開設が共通語化に影響する過程が読み取れた.『浜荻』成立以来250年経ち,戦後の急速な共通語化・方言の衰退を経て,方言を囲む状況に変化が見られた.その際鉄道による交通環境の変化が影響した.
著者
佐藤 裕司 加藤 茂弘 井上 史章 兵頭 政幸
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.401-410, 1999-10-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
34
被引用文献数
4 5

兵庫県,播磨平野東部の加古川市都台において,海成粘土を挾む段丘堆積層を新たに見いだし,層相からI~IVの4つの堆積ユニットに区分した.珪藻分析の結果からみた堆積環境は,ユニットIが淡水成,ユニットII・IIIが海成または汽水成,ユニットIVが陸成で,段丘堆積層は海進・海退の1サイクルを示す.ユニットIII中に挾在する加古川火山灰は,岩石記載的特徴の一致から,大阪平野地下のMall(2)層中の甲子園浜I火山灰や,215kaに降下したと推定される琵琶湖高島沖ボーリングコア中のBT51火山灰に対比された.したがって,段丘堆積層のユニットII・IIIはMall(2)層に対比でき,酸素同位体ステージ7.3における相対的高海面期に堆積した可能性が高い.また,層相と珪藻遺骸群集の種組成に基づいて,火山灰層準が旧汀線と認定され,当時の汀線高度が現在の海抜約44mにあることがわかった.この旧汀線高度と加古川火山灰の推定降下年代から,当地点における215ka以降の平均隆起速度は0.2~0.3mm/年と推定される.
著者
井上 史子 沖 裕貴 林 徳治
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.13-20, 2006-02-28 (Released:2017-05-19)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本研究は,自主性をはじめとする教師の主観に頼りがちな情意的教育目標の達成度を客観的に測定することにより,それらを育成するための有効な方法論を確立することをめざした実証研究の第一弾である.中学校教育現場においては,教育目標としてしばしば主体性や自主性という言葉が用いられる.主体性とは,学校教育の中で,子どもたちが何ものにもとらわれずに自らの言動の主体として自己決定する態度や,自ら課題を選択・判断する力を意味する.しかし,これまでの先行研究[1]において,これらの力を学校教育の中で育成することは極めて困難であることが明らかにされてきた(井上・林,2003).学校社会で子どもたちに求められるのは,教師があらかじめ設定した課題や役割に対して積極的に取り組む姿勢や態度である.それはむしろ主体性と言うより,自主性と呼ぶ方が適切であると考えられる.本論文では,中学校において,生徒の自主性を測定するため,20の質問項目からなる100点満点の尺度を構成した手続きと,今後の研究の方向性について述べた.
著者
真田 信治 二階堂 整 岸江 信介 陣内 正敬 吉岡 泰夫 井上 史雄 高橋 顕志 下野 雅昭
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

日本の地域言語における現今の最大のテーマは、方言と標準語の接触、干渉にかかわる問題である。標準語の干渉のプロセスで、従来の伝統的方言(純粋方言)にはなかった新しいスピーチスタイル(ネオ方言)が各地で生まれ、そして青年層に定着しつつある。このプロジェクトでは、このネオ方言をめぐって、各地の研究者が集い、新しい観点から、西日本の主要な地点におけるその実態と動向とを詳細に調査し、データを社会言語学的な視角から総合的に分析した。1996年度には、報告書『西日本におけるネオ方言の実態に関する調査研究』を公刊し、各地の状況をそれぞれに分析、地域言語の将来を予測した。また、1996年度には、重点地点での、これまでの調査の結果をまとめた『五箇山・白川郷の言語調査報告』(真田信治編)、および『長野県木曽福島町・開田村言語調査報告 資料篇』(井上文子編)を成果報告書として公刊した。なお、この研究の一環として、九州各地域の中核都市において活発に展開している言語変化の動態を明らかにすることを目的としたパーセントグロットグラム調査の結果を、データ集の形で示し、それぞれのトピックを解説、分析した報告書『九州におけるネオ方言の実態』を1997年度に公刊した。
著者
沖 裕貴 宮浦 崇 井上 史子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.17-30, 2011-02-15 (Released:2017-03-30)
参考文献数
14

国立大学法人を中心に中期目標・中期計画の第二ラウンドが始まり,多くの大学で学士課程教育の一貫性構築のための3つのポリシー(DP:Diploma Policy,CP:Curriculum Policy,AP:Admission Policy)の明確化が最初に取り組むべき課題として浮上してきた.「カリキュラム・マップ」,「カリキュラム・ツリー」というチェック表をどのように作り,どのように使うのか.また何に役立ち,どのような課題があるのか等,これまでの先進大学での事例に基づいてその具体策を考察する.
著者
井上 史雄
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.128-146, 2015-09-30 (Released:2017-05-03)

この論文では二つの新しい見方を導入する.一つは言語変化の調査理論に関わるもので,従来の「実時間」「見かけの時間」に加えて「記憶時間」「空間時間」という概念を導入する.二つ目は記憶時間に基づく調査結果の表示技術で,複数の広域グロットグラムを整合的に見渡すための技法を紹介する.その結果「オトーサン」の呼称について,現在の言い方と「記憶時間」による子どものころの言い方がかなり違うことが示された.このデータを元に理論的な考察も行う.
著者
井上史雄
出版者
明海大学
雑誌
明海日本語
巻号頁・発行日
no.16, 2011-02-26
著者
野本 義弘 大崎 博之 井上 史斗 今瀬 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.458, pp.357-362, 2009-02-24

本報告は,広域・広帯域のIPネットワークの下で,遠隔ストレージとのデータバックアップ用途に適用するiSCSIプロトコルのTCPコネクション数制御機構iSCSI-APT(iSCSI with Automatic Parallelism Tuning)に関する.現在,国立情報学研究所(NII)の学術情報ネットワークSINET3では利用中に無瞬断で物理帯域を変更可能な帯域予約型サービス(通称,L1オンデマンド)をモニター公開中である.筆者らは,利用帯域の特性に応じてTCPコネクション数を自動調節可能なiSCSI-APT技術をL1オンデマンドに適用し,その効果について実測評価を行っている.現在のiSCSI-APT実装は帯域予約完了後の制御を中心に進めている.本報告では,今後,iSCSI-APTに追加予定の回線使用中の動的な帯域追従機能について,実装に先行したシミュレーションによる解析を行い,TCPコネクション数の調整を行わない方式との違いを明らかにする.その結果,TCPコネクション数を固定で利用する方式と比較してデータ転送効率が向上することを示す.
著者
井上 史
出版者
同志社大学
雑誌
キリスト教社会問題研究 (ISSN:04503139)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.53-84, 2004-12

本文の副タイトル末尾「の一私見」の記述なし
著者
井上 史雄 宇佐美 まゆみ 武田 拓 半沢 康 日高 水穂 加藤 和夫 今村 かほる
出版者
明海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、日本海側に分布する諸方言の地理的年齢的動態に着目して、総合的な実態調査を行った。線状の地域で年齢別にことばを調べて図化する「グロットグラム」(地理×年齢図)の手法は、日本方言学が独自に開発した、世界に誇るべき新技法である。本研究では、共同の現地調査により、日本海側のことばの動きを明らかにし得た。第1年度は、異なった機関に属していた研究者が、多様な研究手法を統一する手法について打合せを行った。また、各自がこれまで実施してきた調査との連続性を図るために、各地で継続調査を行なった。また全体調査の項目選定のための準備調査を行った。各分担者の調査地域を調整し、調査時期・調査技法の統合も行った。第2年度には、日本海ぞいの多数地点でグロットグラム(地理×年齢図)のための実地調査を行った。調査員としては、分担者および方言研究の経験のある協力者(小中高の教師)や大学院生・ゼミ生が参加した。データは調査終了後すぐにコード化した。各分担者のデータを統合し、配布した。第3年度には、グロットグラムのための実地調査を継続し、計画地点のデータを得た。分担を決めて、グロットグラムの図を作成した。集計に各分担者のもとのパーソナルコンピュータを利用することにより、グロットグラムも迅速に作製できた。日本海側各県で新方言・気づかない方言の使用状況に顕著な地域差がみられた。以前の調査の結果と対比することにより、太平洋側との様相の違い、東京からの影響の違いなどを確認できた。関連テーマの資料を合わせて年末に報告書を作成し、国内の方言研究者、言語変化の研究者に配布した。これにより、今後の関連調査の解説に役立つことと期待される。また成果の一部は夏の方言学国際会議(カナダ)で発表した。