著者
伊藤 彰彦 川上 泰一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.529-536, 1978-10-01 (Released:2016-03-16)

Louis Brailleが発明した6点点字が1854年に公認され,1890年にわが国でもこれが採用され,盲人の読書が一応可能となったが,漢字の点字化が考案されなかったため,文章による情報伝達という面で盲人以外の人との間に大きな差があった。大阪府立盲学校は,(株)大阪計算センターと共同で,8点式漢点字システムを開発し,点字による漢和辞典を作成した。原稿を大計コードで入力し,これを漢点字テーブルに基づいて8点式の漢点字コードとして編集し,点字が出力できるように改造された漢字プリンタで出力する。漢点字の組み立て方,点字合成原理,システムフローを示した。
著者
伊藤 重彦 大江 宣春 草場 恵子 金子 裕子 藤武 隆文
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.285-288, 2002-08-28 (Released:2010-07-21)
参考文献数
13

病院職員の鼻腔内MRSA保菌率の推移とムピロシンによる除菌効果を検討した.隔年3回の保菌調査の参加者はそれぞれ407名 (1997), 54.名 (1999), 547名 (2001) である.職種別保菌率の推移では医師9.6%, 9.0%, 6.2%, 看護師6.9%, 3.2%, 3.6%で, 医師, 看護師以外の職員保菌率は3.98 (1999), 0.8% (2001) であった, 看護師の保菌率は初回調査後に手洗いの励行および感染対策マニュアルの遵守, 徹底を図ることで有意に低下した.保菌者に対するムピロシン軟膏による除菌率は3回の調査全体で94.4% (68/71) であった.除菌効果の持続時間を検討するため, 医師保菌者7名に対して完全除菌後3ヵ月後に再調査を行ったところ再保菌者は1名 (再保菌率14.2%) であった.保菌率調査は職員の感染予防への意識を高める良い機会であるが, それを契機に感染対策マニュアルの遵守を継続的に行うことがより重要である.
著者
伊藤 幹二
出版者
特定非営利活動法人 緑地雑草科学研究所
雑誌
草と緑 (ISSN:21858977)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.9-20, 2011

今日,日本人の多くは,二酸化炭素濃度の上昇や温暖化が地球環境に影響することを知っていても,身の回りに生育する雑草がこの環境変化にどのように反応し,私たちの生活にどのような影響を与えているか気づくことはない.雑草は,人々が環境を変えることによって始めて生まれる生物である.そして,雑草は,'ふえる''ひろがる''変化することを特徴とし,これを食草とする昆虫・鳥類・哺乳類も同時に増える・広がる・変化する.今日,都市の二酸化炭素濃度の上昇と温暖化は,雑草のバイオマス量を劇的に増大させ,その直接的・間接的環境および経済的被害を拡大させている.この数10年間気づかないうちに,雑草は生活圏の活動の場を征服しかねない脅威的な生き物に変貌しているのである.それにも関わらず,雑草の繁茂やその被害に対する研究機関,国や地方自治体,そして企業などの無関心や無神経さはいったい何に原因しているのか.雑草の変化に原因する経済的,社会的,環境的被害リスクについて考える.
著者
伊藤 孝
出版者
経営史学会
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.33-67, 1989-07-30 (Released:2009-11-06)

The purpose of this paper is to clarify the characteristics of business activities of Standard Oil Co. (New Jersey) -the present name is Exxon Corp.-in the United Kingdom from right after World War II through the late 1950's.The main characteristics were as follows : (1) The Company was able to make most products with its new refinery in the U.K.. At the first the Company hesitated to build and operate the refinery because of some problems, especially uncertainty as to use of fereign exchange for remitting profits to the U.S.A. and other payments. But it had no choice but to do that in order to keep its position in the British market.(2) The Company strenghened control over the retail market of gasoline, a main item among petroleum products, chiefly by extending network of exclusive outlets. But the primary motive to bring the network into its marketing channel did not directly come from marketing itself, but from refining. The Company needed enough and reliable outlets which helped to make operation of the refinery high level.(3) The Company's local rifining depended on its operations (producing and purchasing crude petroleum) in the Middle East. But on the other hand the operation in the U.K. influenced them in the Middle East. Under the dollar shortage in the U.K., the Company could hardly use crude petroleum produced by Aramco for the refining because of its so-called dollar oil. The Aramco crude development program had already been reduced in the late 1940's.
著者
伊藤 孝
出版者
経営史学会
雑誌
経営史学 (ISSN:03869113)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.32-60, 1986-07-30 (Released:2009-11-06)

Standard Oil Company (New Jersey) -the present name is Exxon Corporation-has been the biggest company in the world petroleum industry since the late 19th century. The purpose of this paper is to clarify the characteristics of business activities of the Company during World War II.The main characteristics were as follows : (1) The Company maintained and shored up the fundamental structure of operations which had been established during the 1920s and 1930s : the crude oil production department played a most important part in dominating other companies; the cartel continued to be effective in crude oil production, especially in the U.S.A.; the range of operations was worldwide in wartime as well as before the war.(2) The Company manufactured strategic munitions, that is, aviation gasoline (100-octane), butadiene and synthetic toluene. I think this was an important beginning for petroleum chemical operations by the Company. But it was small in scale in contrast to other operations. I estimate that it didn't provide profits of any importance.(3) The Company made use of government finances, which were essential. But it used them chiefly for operations which had little validity in peacetime. The main operations, for instance, crude oil production, were carried out using the company's own capital.
著者
安部 正真 橘 省吾 小林 桂 伊藤 元雄 渡邊 誠一郎
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会誌遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.28-37, 2020-03-25 (Released:2020-05-22)

探査機「はやぶさ2」は小惑星リュウグウ表面での試料採取のための二回の着陸運用を成功させ,現在,地球帰還に向けて,飛行中である.2020年末に地球に届けられるリュウグウ試料は,地球帰還から6ヶ月の期間,JAXAキュレーション施設内に設置された専用のクリーンチャンバーの中で,地球大気にさらされず,窒素ガス中で初期記載される.その後,一部試料に対し,外部機関でのJAXA主導の高次キュレーションならびに「はやぶさ2」科学チームによる初期分析がおこなわれる.地球帰還から18ヶ月後には,それらの分析結果はカタログ化され,国際公募による分析に試料が配布される.本稿では,初期記載,高次キュレーション,初期分析に関し,それぞれの目的や実施内容,計画について示し,国際公募開始以前にJAXAならびに「はやぶさ2」プロジェクトが主導しておこなうリュウグウ試料分析の全体像を紹介する.
著者
伊藤 智里 高橋 敏之
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.41-53, 2011-03-20 (Released:2017-06-12)

本研究は,対象児・A児の1歳6か月から2歳までの積み木遊びを,自然観察法によって調査し,立体造形に繋がる多様な発達的特徴について分析・考察する。A児は,積み木を使用して遊ぶための基本動作である「積む」「崩す」「打ち鳴らす」「並べる」等の行為を経験した。積む行為を獲得した後,挑戦的な遊びと確認的な遊びを重ね,「間隔」「幅・奥行き・高さ」「重心」「バランス」などを体感した。A児は,積み木遊びを通して,「平面」「立体」の概念を獲得しつつあると指摘できる。
著者
伊藤 龍星
出版者
大分県農林水産研究指導センター水産研究部
巻号頁・発行日
no.1, pp.7-10, 2011 (Released:2012-12-06)

2009年3月下旬に大分県杵築市で採集され、素干し乾燥されたワカメの表面に、白い斑点を多数生じたものがあったので、原因について調査した。1 乾燥ワカメを海水に戻して顕微鏡観察したところ、藻体表面にある毛巣から伸長している毛に、大量のリクモフォラ属珪藻が付着していることが判明した。2 この珪藻が乾燥により白く変色し、斑点として見えたものと判断された。
著者
辻 澄子 柴田 正 江崎 真澄 伊藤 勝彦 佐瀬 勝利 伊藤 誉志男
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.161-167_1, 1993
被引用文献数
4

野菜, 牛肉及びそれらの加工食品中の硝酸根 (NO<sub>3</sub><sup>-</sup>) 及び亜硝酸根 (NO<sub>2</sub><sup>-</sup>) を紫外部吸収検出器付きサップレッサー型イオンクロマトグラフィー (IC) 並びにジアゾ化反応に基づく比色法により定量するための試料溶液の同時調製法を検討した. NO<sub>3</sub><sup>-</sup>及びNO<sub>2</sub><sup>-</sup>は80°のホウ酸ナトリウム溶液で同時抽出し, 冷却した後, モルカットIIで限外ろ過した. NO<sub>3</sub><sup>-</sup>はIC, NO<sub>2</sub><sup>-</sup>は比色法により測定した. 3%以上の塩化ナトリウムを含む食品中のNO<sub>3</sub><sup>-</sup>はオンガードAgカートリッジにて処理した. 種々の食品にNO<sub>3</sub><sup>-</sup>を5~1,000μg/g及びNO<sub>2</sub><sup>-</sup>を5~50μg/g添加したときの回収率は84.2%~102.0%であった.
著者
島田 裕之 牧迫 飛雄馬 土井 剛彦 吉田 大輔 堤本 広大 阿南 祐也 上村 一貴 伊藤 忠 朴 眩泰 李 相侖 鈴木 隆雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101181, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor: BDNF)は、標的細胞表面上にある特異的受容体TrkBに結合し、神経細胞の発生、成長、修復に作用し、学習や記憶において重要な働きをする神経系の液性蛋白質である。BDNFの発現量はうつ病やアルツハイマー病患者において減少し、運動により増加することが明らかとなっている。血清BDNFは主に脳におけるBDNF発現を反映していると考えられているが、その役割や意義は明らかとされていない。この役割を明らかにすることで、理学療法における運動療法が脳機能を向上させる機序をBDNFから説明することが可能となる。本研究では、高齢者を対象に血清BDNFを測定し、その加齢変化や認知機能との関連を検討し、血清BDNFが果たす役割を検討した。【方法】分析に用いたデータは、国立長寿医療研究センターが2011 年8 月〜2012 年2 月に実施した高齢者健康増進のための大府研究(OSHPE)によるものである。全対象者は5,104 名であり、BDNFの測定が可能であった対象者は5,021 名であった。アルツハイマー病、うつ病、パーキンソン病、脳卒中の既往歴を有する者、要介護認定を受けていた者、基本的日常生活動作が自立していない者を除外した65 歳以上の地域在住高齢者4,539 名(平均年齢71.9 ± 5.4 歳、女性2,313 名、男性2,226名)を分析対象とした。血清BDNFは−80 度にて冷凍保存後ELISA法により2 回測定し、平均値を代表値とした。認知機能検査はNCGG-FATを用いて実施した。記憶検査として単語の遅延再生と物語の遅延再認、遂行機能として改訂版trail making test B(TMT)とsymbol digit substitution task(SDST)を測定した。分析は、5 歳階級毎に対象者を分割し年代間のBDNFの差を一元配置分散分析および多重比較検定にて比較した。BDNFと認知機能検査の関連を検討するため、認知機能低下の有無で対象者を分類し、t検定にてBDNFを比較した。認知機能の低下は、年代別平均値から1.5 標準偏差を除した値をカットポイントとした。また、認知機能に影響する年齢、性別、教育年数を含んだ多重ロジスティック回帰分析を実施した。従属変数は認知機能低下の有無とし、独立変数は年齢、性別、教育年数、BDNFとした。BDNFはピコ単位での微量測定値であったため4 分位でカテゴリ化して分析を実施した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認を得た上で、ヘルシンキ宣言を遵守して実施した。対象者には本研究の主旨・目的を説明し、書面にて同意を得た。【結果】年齢階級別のBDNF(平均 ± 標準誤差)は、65 〜69 歳が21.8 ± 0.1 ng / ml、70 〜74 歳が20.9 ± 0.1 ng / ml、75 〜79 歳が20.5 ± 0.2 ng / ml、80 歳以上が19.6 ± 0.3 ng / mlとなり、加齢とともに有意な低下を認めた(F = 24.8, p < 0.01)。多重比較検定の結果、70 〜74 歳と75 〜79 歳間以外の比較では、すべて有意差を認めた。認知機能低下の有無によるBDNFの比較では、単語再生、TMT、SDST(すべてp < 0.01)において有意に認知機能低下者のBDNFが低値を示した。多重ロジスティック回帰分析では、BDNFはSDSTと有意なトレンドを認め(p < 0.01)、Q(4 24,400 pg / ml)に対してQ(1 17,400 pg / ml)のSDST低下に対するオッズ比は1.6(95%信頼区間: 1.2-2.2, p < 0.01)であった。その他の項目に有意差は認められなかった。【考察】PhillipsらはBDNFmRNAがアルツハイマー病患者の海馬において減少していることを明らかとし、BDNFの減少が病態成立に対して何らかの役割を持つと報告した。運動の実施は海馬におけるBDNFやTrkB受容体の発現量を上昇させることが明らかにされている。また、Eriksonらは1 年間の有酸素運動が海馬の容量を増加させ、その変化量と血中BDNFは正の相関をすることを明らかにした。しかし、血中BDNFの研究は少なく、加齢変化や認知機能との関連性は十分明らかとされていなかった。本研究の結果から、血清BDNFは加齢とともに低下を示し、各種認知機能低下との関連を認めた。とくにSDSTとは、年齢、性別、教育年数と独立して関連を認めたため、記憶以外の機能に関してBDNFが何らかの役割を持つのかもしれない。今後は介入前後のBDNFの変化と各種認知機能の変化との関連を検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】今後の日本の後期高齢者数の増大は、認知症者の増大を引き起こし、その根治的治療法がない現時点において、運動による予防対策は重要である。理学療法士は、その対策の中核的存在になるべきであり、運動と脳機能改善に関連する知見を集積することは理学療法にとって重要な役割を持つといえる。