- 著者
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伊藤 みちる
- 出版者
- Institute of Human Culture Studies, Otsuma Women's University
- 雑誌
- 人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
- 巻号頁・発行日
- vol.2016, no.26, pp.613-645, 2016 (Released:2017-03-04)
- 参考文献数
- 124
- 被引用文献数
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本稿は,植民地時代より圧倒的な経済的且つ文化的な影響力を持ちながらも,長らく研究の対象とされてこなかったトリニダードのフレンチ・クレオールと呼ばれる人々の白人性について探求した.白人性は非普遍的で時と場所により異なる概念を持つが,植民地時代から現代のトリニダード社会において,貴族性や徹底的な白人純血性を誇るフレンチ・クレオールが,非白人に対する根拠のない差異と優越性を信仰し社会経済的特権を享受する「白人性」をどのように構築,継続,再構築してきたのかを探った.トリニダードにおいて,フレンチ・クレオールの白人性構築過程に関連する一次資料の収集を行った.雪達磨式標本抽出法により集めた24名のフレンチ・クレオールに対し,オーラル・ヒストリー法を用い対面聞き取り調査を行い,談話分析を通して体験談の分析を行った.調査結果によると,トリニダードのフレンチ・クレオールは,世代に関わらず,強い白人優越性を持つことが明らかになった.一方で,植民地時代を経験した世代とは異なり,若年層はマイノリティとして,アフリカ系・インド系がマジョリティのトリニダード社会への同化を試みるため,フレンチ・クレオールとしてのアイデンティティを軽視すると発言する.しかしフレンチ・クレオールとしての主観的,また総人口の8割を占めるアフリカ系・インド系などの他社会構成員による客観的な白人性が原因となり,フレンチ・クレオールは現代トリニダード社会へ完全には同化していない.