著者
保坂 幸毅 松橋 絵里 伊藤 清香 久米 愛 金城 正治
出版者
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻
雑誌
秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻紀要 (ISSN:18840167)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.110-119, 2010

脳卒中片麻痺患者の片手片足での車いす駆動は、体幹前傾での駆動が望ましいとされている。しかし、体幹の傾きが片足駆動における駆動特性にどのような影響を与えるかは明らかにされていない。そこで、体幹の傾きを変化させた時の片足駆動を運動学的・運動力学的に解析し、駆動特性を明らかにするために、体幹の傾きを前傾位・中間位・後傾位に設定し、車いすの片足駆動を行った。その時の初回駆動のビデオ撮影、下肢・体幹の表面筋電図と足圧の計測と10mの直進・スラロームの駆動時間の測定、駆動後のVisual Analog Scale(以下、VAS)に主観的評価も加え、体幹の傾きによる片足駆動の違いを比較検討した。 対象者は、高次脳機能障害や認知症が動作遂行能力を妨げておらず、FIMの歩行・車いすの項目で自立となっている脳卒中片麻痺者8名とした。 初回駆動時間は中間位に比べ、前傾位で有意に短かった。%EMGでは腹直筋は前傾位、脊柱起立筋は後傾位で有意に大きかった。また、下肢の筋は後傾位で大きい傾向にあった。単位時間・体重あたりの足圧は後傾位で有意に値が小さかった。10mの直進駆動では後傾位に比較し、中間位で有意に速かった。スラローム駆動では後傾位に比較し、前傾位・中間位で有意に速かった。VASでは後傾位で駆動しにくい傾向にあり、前傾位では怖さを感じていた。 この結果から前傾位・中間位で効率がよく、対象者の心理面を考慮すると中間位での駆動が最も安定することが示唆された。This study kinematically and kinetically analyzed propulsion with one foot while changing the inclination of the trunk. The study had subjects propel a wheelchair with one foot while adopting either a forward-leaning posture, an upright posture, or a backward- leaning posture in order to reveal propulsion characteristics. During this activity, initial propulsion was captured on video, surface electromyography of the leg and trunk was performed, foot pressure was measured, propulsion time on a 10-m long straight course and slalom was measured, and propulsion was subjectively assessed afterwards using the Visual Analogue Scale(VAS). These indices were used to compare and study differences as a result of trunk inclination. The subjects were eight individuals with hemiplegia due to stroke.Initial propulsion took significantly less time with a forward-leaning posture than with an upright posture. The %EMG activity of the rectus abdominis was significantly greater with a forward-leaning posture while that of the erector spinae muscles was significantly greater with a backward-leaning posture. In addition, the %EMG activity of the leg muscles tended to be greater with a backward-leaning posture. Foot pressure per unit time and body weight was significantly lower a backward-leaning posture. Propulsion on the straight course was significantly faster with an upright posture than with a backward-leaning posture. Propulsion on the slalom course was significantly faster with a forward-leaning posture or an upright posture than with a backward-leaning posture. VAS scores indicated that propulsion was more difficult with a backward-leaning posture, and subjects mentioned fear of falling when in a forward-leaning posture.The current results suggest that propulsion is more efficient in a forward-leaning posture or an upright posture and that propulsion is most consistent when the subject is in an upright posture given the subject's mental state.
著者
有本 梓 伊藤 絵梨子 白谷 佳恵 田髙 悦子
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.21-32, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
43

目的:地区組織基盤の世代間交流プログラムを開発し,1年後の高齢者の健康ならびにソーシャルキャピタル(SC)への評価を行い,今後の地域づくりにおける示唆を得る.方法:2015年2月~2018年3月にA市2地区で高齢者ボランティア(参加群)を対象に,園芸活動を中心とする世代間交流プログラムを実施した.世代間交流の不足,フレイルの地域の問題解決のために,住民・地区組織・自治体・大学などがアクションリサーチを展開した.定量的評価として,基本属性,健康指標(握力等),SC(地域コミットメント等)についてベースラインと1年後に測定し,地域在住高齢者(非参加群)と比較した.定性的評価として,フォーカスグループディスカッション(FGD)を実施し質的に分析した.結果:参加群(n=36)は72.6±5.6歳,非参加群(n=36)は74.7±4.6歳,両群ともに男性23人(63.9%)であった.参加群は非参加群に比べ,握力の改善傾向がみられた.非参加群では地域コミットメントが有意に低下したのに対し,参加群では維持されていた(p<0.05).FGDでは,【子どもたちと関わり合える喜び】【経験の伝承による子どもの育成】【内省による人生の価値づけ】【地域の人とのつながりの拡大】等が抽出された.考察:地区組織基盤の世代間交流プログラムにより,高齢者の健康およびSCに効果がもたらされる可能性が示唆された.
著者
大橋 広好 根本 智行 伊藤 隆之
出版者
ツムラ
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.50-54, 2003-02
被引用文献数
1
著者
伊藤 一幸
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, 2002-09-30
著者
赤丸 祐介 弓場 健義 山崎 芳郎 籾山 卓哉 伊藤 章 春日井 務 吉田 康之
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.221-226, 2007 (Released:2011-06-08)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

症例は62歳の男性で, 1970年(27歳時), 粘血便で発症し, 全大腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断された. 再燃緩解型でサラゾピリン, プレドニン内服などの加療を受けていたが, 1998年以降は無治療であった. 2004年11月, 貧血の精査目的で当院を受診, 大腸内視鏡検査にて, 緩解期の潰瘍性大腸炎に合併した盲腸癌の診断を得た. 2005年2月, 結腸右半切除, D3郭清術を施行した. 摘出標本では盲腸腫瘍に加えて, 虫垂にも粘液産生を伴う腫瘍性病変を認めた. 両者はそれぞれ独立して腫瘍を形成し, 正常粘膜を介さず隣接して存在した. 病理組織学的検索では盲腸高分化腺癌と虫垂粘液嚢胞腺癌との異なる組織型の癌が, 混ざり合うことなく, 明瞭な境界を伴い相接しており衝突癌と診断した. 大腸における衝突腫瘍の報告は少なく, また自験例のような盲腸と虫垂から発生した悪性腫瘍同士の衝突の報告例はなく, 極めてまれな症例と考えられ, 若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
〓 志宏 伊藤 崇博 大野 勝久
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.220-227, 2002-08-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
18

3次元箱詰め問題(three-dimensional container packing problem)は, 様々なサイズの荷物をコンテナ(トラック)に詰め込み, コンテナ(トラック)の空間利用率を最大化する組合せ最適化問題である.現実問題においては, 空間利用率以外に積み荷安定性とX-Y軸の回転も考慮しなければならない.本論文では, この現実問題を対象に, 独自の手法に基づいたメタヒューリスティックスを提案する.数値実験により, 本解法をベンチマーク問題に適用し, 公表されている最良解との比較により提案手法の有効性を示している.
著者
三島 剛 萩原 愛子 伊藤 均 小森 智康 堀川 大輔 川瀬 直也 佐藤 庄衛
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.729-735, 2020 (Released:2020-06-26)
参考文献数
11

放送局では番組制作に必要な構成資料や放送原稿などを作成するため,取材した映像素材の発話を文字に変換する書き起こしを活用している.しかし書き起こしを制作する作業は多くの労力を要し,迅速な番組制作の妨げになっている.そのためわれわれは音声認識技術を用いた書き起こし支援技術の研究を進めている.この中では書き起こしの作業時間短縮に加え,記者会見などのライブ素材の書き起こしや複数人での協調作業など,番組制作のワークフローを考慮することで迅速に番組を制作して視聴者に情報を届けることを目指している.本システムの有効性を検証するため放送現場に試行用のシステムを導入し,改善項目の収集や利用状況の調査を継続して実施した.この試行運用を契機に書き起こしシステムの有用性が放送現場に認められ,現在はNHKの全放送局で本システムが活用されている.
著者
白土 宏之 伊藤 景子 今須 宏美 大平 陽一 川名 義明
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.185-194, 2020

<p>水稲の無コーティング種子代かき同時浅層土中播種栽培に適した播種後水管理を明らかにするために,耐倒伏性の強い水稲品種「萌えみのり」を用いて,播種後水管理が苗立ちや収量等に与える影響を検討した.秋田県にある東北農業研究センター大仙研究拠点圃場において,2013〜2017年に水管理処理として,湛水区,湛水後落水区 (7日湛水後5〜7日落水),短期落水区 (播種後7〜8日落水),長期落水区 (播種後12〜13日落水) の4水準を設け,苗立ちや収量等を調べた.苗立率は長期落水区が湛水区と湛水後落水区より多い傾向が見られた.生育や収量,品質は処理間で大きな違いはなかったが,倒伏程度は湛水区が短期落水区より大きかった.2014〜2016年に秋田県内の現地圃場2箇所で,水管理処理として,湛水後落水区 (8日湛水後3〜12日落水) と落水区 (8〜15日落水) の2水準と,対照として鉄コーティング直播区を設け (2014年を除く),苗立ちや収量等を調べた.同じ白化茎長で比較すると,所内試験と同様に落水区が湛水後落水区より苗立率が高い傾向が見られ,生育,倒伏程度,収量,品質は落水区と湛水後落水区に大きな違いは見られなかった.本栽培法は鉄コーティング直播より初期の葉齢が大きく,苗立率や収量等は同程度であった.以上より,本栽培法では播種後12日間程度落水するのがよいと考えられた.また本栽培法は鉄コーティング直播と同程度の実用性が認められた.</p>
著者
伊藤 晶子 畔柳 加奈子 櫛 勝彦
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.3_11-3_20, 2020-01-31 (Released:2020-02-25)
参考文献数
10

クレジットカードや電子マネー、デビットカード、QR コード、スマートフォン・アプリ(以下アプリ)を介しての送金など、現金以外のさまざまな支払い手段が利用され始めているが、日本においては、未だ現金での支払いが優勢である。その理由としてさまざまな社会的な要因が指摘されているが、生活者自身がどのような理由で支払い方法を選択しているか、という生活者の心理については明らかになっていない。そこで、本研究では10 名の生活者へインタビューを行い、グラウンデッドセオリーアプローチを援用し分析した。その結果、生活者が支払い方法を決定するためには共通のプロセスが存在していること、さらに、支払い行動については4パターンの行動原理があることを明らかにした。最後に、キャッシュレス社会に進展していくためのサービスデザインの要件提案を行なった。
著者
岡田 基 松井 明男 米沢 千佳子 伊藤 雅文 柴田 偉雄
出版者
公益社団法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.479-484, 1994 (Released:2011-11-08)
参考文献数
12

婦人科標本中に認められたいわゆるヘマトイジン結晶様物質 (以下ヘマトイジン様結晶と略す) について, 4年6ヵ月の問に当院を受診した41,274人, 標本件数116,360件を対象に検討した.35人 (45件) にヘマトイジン様結晶を認めた.35例の年齢分布は24歳から52歳 (平均38.7歳) であった.疾患内訳は, 腟部ビラン17名, 妊娠7名, 切迫流産4名, 異形成2名, 上皮内癌1名であった.ヘマトイジン様結晶の出現頻度は, 子宮腟部擦過で0.05%, 子宮頸管擦過で0.04%であった.結晶の出現様相は, パパニコロー染色で黄金色ないし黄褐色調に染色され, ロゼット状配列, 樹枝状配列を呈する集塊が主体で, 一部は散在性に楕円形結晶として出現した.大きさは1~341.5μ であった.大多数の結晶は, 組織球や好中球からなる炎症細胞集塊中に認められた.特殊染色ではPAS染色が陽性を呈したが, ほかの粘液染色, 鉄染色, ビリルビン染色は陰性であり, 免疫染色ではフェリチン, S-100蛋白, EMA陰性であった.以上の所見から婦人科標本中に認められたヘマトイジン様結晶は, ヘマトイジンとは異なる物質で, ヘモグロビン系の色素ではないと考えられた.
著者
伊藤 信一 鈴木 智和 小南 陽亮
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.123-131, 2011-07-30 (Released:2017-04-21)
参考文献数
9
被引用文献数
1

陸生のカニ(陸ガニ)が生息地の植物に対して果実採食と種子散布という作用を及ぼすことは熱帯・亜熱帯において数例知られているが、日本のような温帯では報告例が見当たらない。そこで、本研究では、陸ガニによる果実の選好性と採食・運搬行動を明らかにし、その結果から陸ガニが温帯海岸林において種子散布者や種子食者として作用するかを検討した。調査は浜松市にある海岸林とその周辺の竹林で行い、日本に広く分布するアカテガニ、ベンケイガニ、クロベンケイガニを対象に、果実の選好性、種子の取り扱い、果実の採食場所を比較した。飼育下でも野外の生息地においても、3種の陸ガニは多様な果実を好む傾向がみられた。アカテガニでは採食時に種子を破損する頻度が他の2種よりも低く、海岸林の多様な植生で活動し、採食した果実の種子を巣穴から離れた場所にも落としていた。一方で、クロベンケイガニでは、種子を破損する割合が高く、生育可能な植物が限られる湿った環境で主に活動しており、巣穴近くに果実を運んで採食する傾向が強かった。ベンケイガニでも種子を破損する頻度が高かったが、活動する植生は多様であった。これらの結果から、種子散布者となる可能性はアカテガニ、ベンケイガニ、クロベンケイガニの順に高く、種子食者となる可能性はその逆であると考えられた。すなわち、温帯の海岸林においても陸ガニは種子散布者または種子食者となっている可能性が高く、陸ガニの種によってその作用は異なることが示唆された。
著者
元文 芳和 伊藤 博元
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学医学会雑誌 (ISSN:13498975)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.42-46, 2006 (Released:2006-03-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

Many patients require a medical check-up as an outpatient with the chief complaint of low back pain, because the morbidity of low back pain is high. Many cases of acute lumbago resolve spontaneously, but some cases shift to chronic lumbago. Low back pain is classified as somatic pain and radicular pain resulting from the lumbar area, and other pain originating in the abdomen and pelvic viscera. We describe it mainly as low back pain and inter vertebral disc herniation. At the time of diagnosing inter vertebral disc herniation, the straight leg raising test is a very useful physical examination and MRI is the best examination for imaging studies. The therapeutic principle is conservative treatment, because symptoms of inter vertebral disc herniation may improve naturally. Surgical treatment is chosen when severe nerve damage, such as bladder problems or dropfoot, is present and patients are in significant pain.
著者
南部 松夫 伊藤 建三
出版者
東北大學選鉱製錬研究所
雑誌
東北大學選鑛製錬研究所彙報 = Bulletin of the Research Institute of Mineral Dressing and Metallurgy, Tohoku University (ISSN:0040876X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-8, 1960-08-25

The crystallization process of poorly crystallized ferric oxide formed by the dehydration of three α-type limonites obtained from different localities was studied by means of X-ray powder method. The results are as follows : 1) α-type limonite changes into a mixture of poorly crystallized hematite and amorphous ferric oxide by its thermal decomposition in the temperature range 390-405℃. These two heated products arise from crystalline goethite and amorphous ferric oxide hydrate contained respectively in original limonite. 2) Variations in the degree of crystallization of hematite changed from limonite by heating depend on the difference in the crystallinity of original goethite. 3) At low temperature from 350 to 550℃, the transformation of amorphous ferric oxide into hematite crystallite is predominent, compared with the growth of hematite crystallite. 4) The hematite crystallite formed at low temperature has a tendency of the two dimensional lattice up to about 750℃, and then grows gradually with rising temperature. 5) The crystallization process of poorly crystallized hematite and amorphous ferric oxide formed by thermal dehydration of α-type limonite may be shown as follows : [numerical formula]