著者
杉 正人 川村 隆一 佐藤 信夫
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.717-736, 1997-06-25
参考文献数
51
被引用文献数
15

気象庁全球モデルを用いて、アンサンブル気候実験を行い、海面水温 (SST) 変動に強制されて起きる大気の長期変動と、季節平均場の予測可能性について調べた。モデルの34年時間積分を3回実行した。3つの時間積分はいずれも1955-1988年の実測のSSTを境界条件としているが、大気の初期状態が異なっている。季節平均場の全変動のうち、SSTの変動で強制されて起きている変動の割合 (分散比) を計算した。この分散比は、SSTが完全に予測された場合の最大予測可能性 (ポテンシャル予測可能性) を示すものと考えられる。気圧場の分散比は一般に熱帯では高い (50-90%) が、中高緯度では低い (30%以下)。このことは、季節平均気圧場の (ポテンシャル) 予測可能性は、熱帯では高いが、中高緯度では低いことを示唆している。一方、季節平均降水量の分散比は、ブラジルの北東部の74%、インドモンスーンの31%というように、熱帯の中でも地域によって大きく異っている。全球平均の陸上の地表気温の分散比は高い (66%) が、ほとんどの陸上の地点での局地的な地表気温の分散比は低く (30%)、海面水温予測にもとづく局地的な陸上の気温の予測可能性が小さいことを示唆している。
著者
奥本 秀一 露木 尚光 佐藤 信幸 比嘉 照夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.68, no.570, pp.37-44, 2003

Formaldehyde (HCHO) included in construction adhesives is one of the principal causes materials of sick house and sick building syndrome. However, not much has been done to suppress or eliminate HCHO. In the experiment, it was found that addition of several types of row and burned clay minerals to adhesive suppressed emissions of HCHO. The bentonite was most effective among all materials used in the experiment. A coating gypsum plaster with bentonite and effective microorganisms reduced the amount of HCHO emission synergistically. Also, changes pH level caused by addition of Ca(OH)_2 contributed in suppression of HCHO.
著者
今枝 奈保美 徳留 裕子 藤原 奈佳子 永谷 照男 構 実千代 恒川 鈴恵 佐藤 信子 時実 正美 小出 弥生 宮井 好美 牧 信三 徳留 信寛
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.67-76, 2000-04-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
26
被引用文献数
2 11

本報では, 107人の栄養士を対象に, 四季, 各季連続7日間の秤量法食事調査において, 記録原票の内容確認面接, 入力過誤修正の方法, 食品成分表の取り扱い, 食品のコーディング, 重量換算, 主要料理の標準レシピなどを検討したので報告した。延べ2,925日の食事記録は, 149,187行の食品コード・重量データとしてコーディングされ, 総出現食品数は1,160食品であった。成分表未収載食品や調理済み食品などのコード化が困難な事例は414食品あり, 今後の食事調査で参照するために分類整理して処理した。入力過誤の修正は, 目視により原票を照合した後, 各食品コードごとに生じやすい過誤の例を,“入力過誤検索用食品一覧データベース”にして, 食品コード・重量データを検索し修正した。その結果, 春期・夏期のデータでは, 73,266行中1,112行の過誤データが見つかり, 特に食品コードの修正に効果があった。大量の入力データの過誤修正にはコンピュータ検索が不可欠であった。食品コーディングや重量換算の精度を保つためには, 記録を確認する面接や詳細なマニュアルが必要であった。フォローアップ成分表未収載食品の取り扱い方法によって, 脂肪酸, 食物繊維摂取量を過小評価, あるいは過大評価する可能性があった。秤量法食事記録調査における入力過誤の修正と調査方法の標準化が必要であることが示唆された。
著者
佐藤 信
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.760-765, 1970-09-15 (Released:2011-11-04)

マーケティング・リサーチの実際は読者諸氏が自己製品の開発のため市場調査 (狭域の場合が多い) を行なうに当っての手びきとなる貴重な解説であった。標本のえらび方のところなどではかなりの頻度で数学的表現が出てきたが, これらのことは解らなくとも差しつかえはないとはいえ, 基礎的な智識があるにこしたことはなく, それがあれば理解も-段と高まってくるわけで, ここに母集団, 標本, 誤差についての簡明な解説をお願いした。
著者
札 周平 佐藤 信輔 林 可奈子 小河原 孝司
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.85-91, 2022-12-01 (Released:2023-06-19)
参考文献数
11

根深ネギのネギハモグリバエ B 系統を対象に茨城県の主要産地で普及しているチアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤について,現地秋冬どりネギ栽培圃場で慣行防除に加え,梅雨入り時,または梅雨明け後にそれぞれ株元散布を行った。粒剤処理後の捕殺数および被害度により,防除効果を評価した結果,8 月中旬の第 1 発生ピーク時には両処理時期ともに無処理区よりも捕獲数,被害度が少なく推移したが,収穫直前の 9 月下旬の第 2 発生ピーク時では,すべての試験区で第 1 発生ピークを上回る捕殺数,被害度が確認された。また,供試したチアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤について,ネギハモグリバエの防除により寄与している成分を明らかにするため,茨城県農業総合センター園芸研究所内圃場でチアメトキサム粒剤,シアントラニリプロール粒剤と比較したところ,チアメトキサム粒剤はチアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤と同等の効果があることが認められた。さらに,チアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤よりも安価で,同等以上の効果が期待できる粒剤を検討するために,ネギのネギハモグリバエまたはハモグリバエ類に登録のある各種粒剤(クロチアニジン粒剤,ニテンピラム粒剤,ジノテフラン粒剤,シアントラニリプロール粒剤,チアメトキサム・シアントラニリプロール粒剤)について比較試験を行った。その結果,ジノテフラン粒剤で最も高い効果が確認され,低コストかつ使用成分回数の削減につながると考えられた。
著者
豊田 隆謙 佐藤 信一郎 工藤 幹彦 後藤 由夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.133-138, 1974-03-31 (Released:2011-08-10)
参考文献数
11

アルギニンによるインスリン分泌にはグルコースの存在が必要である. しかしアルギニンによるグルカゴン分泌にたいしてグルコースがどのように作用しているかは明らかではない. ラット膵灌流実験を行ない, グルコース, 0, 50,150,300mg/dlの存在下でアルギニン作用を検討した.アルギニン注入後2分のグルカゴン値はそれぞれ745±46, 2062±106, 3433±127,510±21pg/nlと増加し, その分泌パターンはグルコース濃度0, 50mg/dlでは1相性であり, 150,300mg/dlの条件下では2相性を示した. アルギニン注入によるインスリン分泌はそれぞれ10.7±1.6, 32.4±3.2, 39.0±3.3, 43.2±3.5ng/dlと増加し, 分泌パターンはグルコース濃度0, 50mg/dlでは1相性, 150,300mg/dlでは2相性を示した. この成績はアルギニンによるグルカゴン分泌にはインスリン分泌にたいするのと同様にグルコースの存在が必要であることを示唆している. 特に興味ある事実はグルコース濃度300mg/dlによってグルカゴン分泌が完全に抑制されるようにみえるが, この条件下でもアルギニンがグルカゴンを分泌させることである. このことから次の三つの可能性が考えられる. (1) グルコースはグルカゴン分泌を抑制するがグルカゴン合成にグルコースは必要ではないか,(2) グルコースによって分泌されるインスリンがα 細胞に影響していないだろうか,(3) アルギニンの膜透過にグルコースが必要なのではないかと云うことである.
著者
佐藤 信
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.276-281, 1979-05-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
7

人間の頭脳では, せいぜい三次元の世界しか直感的に理解できない。ところが, 世の中に起る様々の現象は複雑怪奇で, 発生の事象を数字の羅列でながめていても決して正確な情報を得ることはできない。その点, 多変量解析法によれば, それらの数字の中から最少の情報ロスで, 有効な情報を浮上させることが可能である。そこで, まず今回は, 酒類の官能試験法に統計的手法導入の先鞭をつけられた著者に多変量解析法について平易に解説していただいた。総論以降は各分野での応用例をそれぞれのエキスパートに解説していただく予定である。
著者
佐藤 信
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.377-385, 1979-06-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
5
著者
金澤 慧 野里 洵子 佐藤 信吾 髙橋 萌々子 入山 哲次 三宅 智
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.119-122, 2022-06-25 (Released:2022-06-25)
参考文献数
13

II型呼吸不全を合併した下咽頭がんの患者に,ヒドロモルフォンを投与したところ重大な呼吸抑制を認めた症例を経験したため報告する.症例は,下咽頭がんによる左頚部リンパ節転移,左肩甲骨転移,肺転移,肝転移を認める77歳男性.痛みと呼吸困難の症状緩和目的で緩和ケア病棟へ入棟した.ヒドロモルフォン経口徐放性製剤4 mg/日導入後,重大な呼吸抑制が生じた.ナロキソン投与にて呼吸状態は改善し,以降オピオイドの使用を控えることで呼吸抑制は認めなかった.呼吸不全や肝腎機能等の臓器障害の合併症のある終末期の患者では,全身状態をより慎重に評価し,薬物代謝能力の低下による生体内利用率の増加等を考慮して,投与量や投与方法を注意深く検討する必要があると考える.
著者
御厨 貴 牧原 出 手塚 洋輔 佐藤 信 飯尾 潤
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

政治主導が高まる中で,多様な政策分野で活用されつつある有識者会議に注目し,その現代的変容を解析した。その成果として,(1)災害復興や皇室政策といった個別領域における有識者会議の作動について研究した。(2)聞き取りの方法論に関しても,近年の動向を踏まえて,整理と提起を行った。(3)現代的な変容の一つとして,同種のテーマで繰り返し有識者会議が設置され,しかも同一の委員が長期にわたって参画するという新しい傾向を指摘できる。
著者
坂本 光 今泉 芳孝 新野 大介 竹内 真衣 松井 昂介 蓬莱 真喜子 佐藤 信也 赤澤 祐子 安東 恒史 澤山 靖 波多 智子 大島 孝一 宮﨑 泰司
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.305-311, 2020 (Released:2020-05-01)
参考文献数
15

Human T-cell leukemia virus type I(HTLV-1)キャリアや成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は免疫不全を来すことが知られているが,Epstein-Barrウイルス陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫発症(EBV陽性DLBCL)との合併の報告は少ない。今回,サイトメガロウイルス網膜炎を発症したHTLV-1キャリアに,網膜炎の治療中に肝臓腫瘍が出現し,生検の結果,ATLとEBV陽性DLBCLのcomposite lymphomaと診断した症例を経験した。化学療法開始前には肺クリプトコッカス症,侵襲性肺アスペルギルス症の合併を認めた。化学療法を行ったが,CMV抗原血症や敗血症の合併を繰り返し,最終的に敗血症で死亡した。日和見感染症を合併したHTLV-1キャリアでは,ATLのみならずEBV陽性DLBCLの発症および感染症の管理にも注意が必要である。
著者
長野 章 佐藤 信一 川瀬 将
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.265-270, 1991 (Released:2010-03-17)
参考文献数
2

The objective of this study is lay the island type offshore fishing ports plan. This developmentplans of fishing ports (Kutuo fishing port and Mitikawa fishing port) which is adaptableto drift sand, is able to accommodate fishing boats safety, and causes least effectsagainst topographic change.
著者
佐藤 信博 川島 康男 出構 のり子 小出 康弘 深津 徹 中村 博司 高橋 裕見子
出版者
West-Japanese Society of Orthopedics & Traumatology
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.846-848, 1991-11-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
12

We sent questionnaires to 1, 416 registered hospitals of The Japanese Orthopaedic Association and made inquiries about the use of bupivacaine for spinal anesthesia. We received answers from 870 hospitals (reply rate of 61.4%). In 85.7% of these hospitals, orthopaedic surgeons anesthetize their patients, performing surgical operations of their hips or lower extremities. In 41.4% of these hospitals, they use Marcain® for spinal anesthesia. During the 6 month period between January through June of 1998, 39, 690 patients were anesthetized by orthopaedic surgeons in those 870 hospitals. 27, 287 cases were for spinal anesthesia and Marcain spinal were used in 7, 321 cases. The most common side-effects were hypotension, but its degree was mild and controllable. No neurologic side-effects were reported. 90.5% of the surgeons who had experienced the Marcain spinal anesthesia reply that they need preservative-free bupivacaine for spinal anesthesia strongly.
著者
佐藤 信吾
出版者
日本メディア学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.181-199, 2022-01-31 (Released:2022-03-29)
参考文献数
38

This paper clarifies the interaction between journalism and social authorities through commemoration to construct the war memory, focusing on the “memorial visit” conducted by Heisei Tennō and the social remembrance of the Battle of Manila. Heisei Tennō visited the Philippines in January 2016 as a final overseas destination in his lifelong journey to console the spirits of war victims.In conventional journalism theory, social authorities are perceived as powers enforcing the dominant memory frameworks through commemoration, while “forgotten” memories are invisible. Journalism stands on the same side as social authority and either reinforces these frameworks or opposes the authority’s stance and criticizes them. During the “memorial visit,” however, Heisei Tennō attempted to unearth the “forgotten” memory (the Battle of Manila), and his trip triggered a debate about Asian-Pacific war memory in Japanese society. Journalists also noticed the importance of this memory and reported it on a much larger extent than before. This situation shows that social authorities and journalism can interact with each other, and these interactions can excavate “forgotten” memories. In this paper, I analyze articles from the Asahi Shimbun, Yomiuri Shimbun, Nikkei Shimbun, and Manila Shimbun (local newspaper in Manila), and clarify the structure in which Japanese journalism became aware of the memory of the Battle of Manila through reports on the “memorial visit.” It becomes clear that the three Japanese newspapers had hardly reported on the Battle of Manila before the “memorial visit.” Moreover, the number of reports increased dramatically during the journey. In addition, I discuss the difficulty of the continuous recall of memories led by a one-time event (“memorial visit”) from the viewpoint of journalism routine theory (news value theory and August journalism in Japan).