著者
佐藤 善輝 小野 映介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.270-287, 2013-05-01 (Released:2017-12-05)
参考文献数
46

鳥取平野北西部に位置する湖山池南岸の高住低地を主な対象として,完新世後期の地形環境変遷を明らかにした.高住低地ではK-Ahテフラ降灰以前に縄文海進に伴って低地の奥深くまで海域が拡大し,沿岸部に砂質干潟が形成された.また,K-Ahテフラの降灰直前には砂質干潟から淡水湿地へと堆積環境が変化した.その後,湿地堆積物や河川からの洪水堆積物などによって湿地の埋積が進行し,5,200 calBP頃までには陸域となって森林が広がった.一方,埋積の及ばなかった低地の北部では5,800 calBP頃までに内湾環境が形成された.以後,内湾は河川堆積物による埋積によって汽水湖沼へ変化し,4,600 calBP頃に淡水湖沼化した.湖山池沿岸部では縄文時代後期までに内湾から淡水湿地への環境変化が生じたことが共通して認められ,閉塞湖沼としての湖山池の原型はおよそ4,000~4,600 calBP頃までに完成したと推定される.
著者
佐藤 空
出版者
経済学史学会
雑誌
経済学史研究 (ISSN:18803164)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.49-68, 2016 (Released:2019-08-31)

Abstract: It is widely recognized that Edmund Burke, in his Reflections on the Revolution in France, claimed that the ancient constitution of England, chivalry, and the Christian religion had con-tributed much to the formation of the civilized states of Britain and Europe at large. This arti-cle shows that a distinct perspective of the history of civilization existed in the early writings of Burke, An Essay towards an Abridgment of the English History and Fragment: An Essay towards an History of the Laws of England, and also places the ideas of Burke in these works in the context of the early modern history of English historiography. The early writings of Burke clearly assert that throughout history, a civilization could be and had actually been shaped in England through numerous international exchanges between England and other countries. In doing so, his idea seems to have included a perception of empire, which was fur-ther advanced in his later political works. Burkeʼs ideas on conquest and international ex-changes are related to the views on English history developed by the seventeenth-century scholars Spelman and Brady in their works on feudal law; however, Burke was different from these scholars in considering conquest as a powerful driving force behind the formation of the English civilization. Although other historians of the early modern period had held simi-lar ideas about conquest, Burke distinguished himself from them by putting forward a gener-alized model of the civilizing process closely linked to various types of international ex-changes. JEL classification numbers: B 31, N 01.
著者
佐藤 勇二
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.1006-1008, 2014 (Released:2016-09-30)
参考文献数
10

一般名:イソソルビド薬価収載日:2005年7月8日
著者
佐藤 幸治 東原 和成
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.134, no.5, pp.248-253, 2009 (Released:2009-11-13)
参考文献数
41
被引用文献数
2 3

動物の嗅覚器には,外界の匂い物質と結合する嗅覚受容体が発現している.下等な線虫から高等哺乳動物に至るまで,嗅覚受容体は7回膜貫通Gタンパク質共役型受容体ファミリーに属する.嗅覚受容体と匂い物質が結合するとGタンパク質経路が活性化され,下流の環状ヌクレオチド作動性イオンチャネルが開口する.ゲノムプロジェクトの進行により,昆虫でも嗅覚受容体は7回膜貫通構造をもつことが明らかにされた.したがって,Gタンパク質経路を利用した情報伝達機構は全ての動物において,匂い受容における共通の分子基盤であると考えられてきた.しかしながら最近,昆虫嗅覚受容体は昆虫種間で広く保存されているOr83bファミリー受容体と複合体構造をとり,この複合体にはGタンパク質経路とは無関係に,匂いで活性化されるイオンチャネル活性が備わっていることが明らかとなった.マラリアなどの虫媒性伝染病は,汗や体臭を通して放散される匂い物質に誘引された昆虫の吸血により感染する.虫除け剤には,嗅覚受容体複合体が構成するチャネル活性を阻害する作用があることも報告された.今後,このような吸血昆虫が媒介する感染症の一次予防の観点から,嗅覚受容体複合体の活性制御機構の解明は,虫除け剤開発における最重要ターゲットになると思われる.
著者
斉藤 修平 佐藤 ひろみ 中林 みどり 岡本 紋弥
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.129-140, 2014-03-01

元荒川とその周辺の田圃、用水などはかつて川魚資源の宝庫であった。そこから捕獲された淡水魚介類は人々の食生活を彩る食材であった。その食材は伝承された加工・調理によって食卓を賑わしてきた。同時に元荒川沿いに点在する川魚料理店には、元荒川とその周辺で取られていた淡水魚介類が持ち込まれ、おなじく活用されてきた。 本稿では、元荒川沿いでいまも川魚料理店として営業をしている小島家 (岩槻区大戸) 、鮒又 (岩槻区本町) を採訪し、献立として提供している川魚料理を調理依頼し、一品ずつの味つけなどについて伺い、 「元荒川沿いの川魚料理店の現在」 を確認し、提供された川魚料理を賞味、併せて料理人から直接の解説をいただき、それを記録した。同時に淡水魚介類を県内、都内に卸している川魚卸問屋 「鯉平」 を訪ね、現在の川魚料理店への卸状況を紹介した。 川魚料理店では地元の川から種類によっては食材を得ていた時代はかつてあったが、現在は、きわめて限定されたものになっている。鰻はもとより、鯉、なまず、すっぽん、どじょうに至るまで養殖技術が進化したこと、輸入も可能になったこと、活魚の運搬範囲の拡大とスピード化が実現してきたことにより、食材が安定供給されていることがわかった。同時に、川魚料理店は、かつてのように鯉、鮒、鯰、どじょうといった川魚料理の調理機会が激減し、〈鰻一辺倒〉 に近いような献立に変更していったことが判明した。併せて、元荒川からの淡水魚供給はきわめて限定されていることが判明した。
著者
藏田 伸雄 古田 徹也 久木田 水生 近藤 智彦 村山 達也 佐藤 岳詩 森岡 正博
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度は北海道哲学会でシンポジウム「人生の意味」(研究代表者・藏田伸雄、研究分担者・森岡正博、研究協力者・山田健二)、日本倫理学会でワークショップ「「人生の意味」の哲学的・倫理学的議論の可能性」(研究代表者及び研究分担者・村山達也、研究協力者・文武吉沢、研究協力者・長門裕介)、科学哲学会でワークショップ「分析哲学/現代形而上学で「人生の意味」や「死」について「語る」ことはできるのか」(研究代表者及び研究分担者・久木田水生、研究協力者・鈴木生郎)を実施し、本研究の研究成果の一部を公開した。また研究代表者の藏田は日本生命倫理学会で「「人生の意味」というカテゴリーを生命倫理領域で用いる場合に注意しなければならないこと」と題する発表を行い、「人生の意味」に関する議論を終末期医療に関する生命倫理問題に接続することを試みた。また研究分担者と研究協力者による研究会も開催し、研究協力者の北村直彰氏によって死の形而上学について、また杉本俊介氏によって「人生の意味」とWhy be Moral問題についての検討を行った。また本研究課題に関連する問題についていくつかの論考を発表している研究分担者の山口尚氏の一連の論文を批判的に検討することを通じて、人生の意味と「決定論」や「自然主義」との関連について明らかにすることができた。特に、今年度は青土社の雑誌『現代思想』が分析哲学に関する別冊を発行したが、その中で研究分担者の森岡、村山、研究協力者の山口がこの研究班での研究の成果や、本研究と関わる内容について論文を掲載している。また本研究班での研究内容とは異なるが、研究分担者の近藤と古田は「道徳的な運」に関する研究成果を発表している。「道徳的な運」の問題は、本研究の直接的なテーマではないが、「人生の意味」に関する問題とも深く関わる。
著者
佐藤 志彦
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.446-448, 2019 (Released:2020-04-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

福島第一原子力発電所事故では大量の放射性物質が環境中に放出したが,チェルノブイリ原発事故のような炉心が直に大気と触れるような事象は発生しなかったため,核燃料を主とした放射性粒子の放出はないものと考えられていた。しかし2013年以降,放射性セシウム(Cs)を取込んだケイ素が主成分の微粒子が報告され,Cs-bearing particle,不溶性セシウム粒子などの名称で放射性粒子の存在が認知されるようになった。この想定になかった未知の放射性粒子に対し,さまざまなバックグラウンドを持つ研究者が,日夜,発生原因の解明を試みている。本稿では不溶性セシウム粒子がなぜ不思議な存在であるか,そしてどうして福島第一原発の廃炉で重要かを紹介する。
著者
道川 誠 赤津 裕康 橋詰 良夫 佐藤 聡 両角 祐子 白野 美和 吉岡 裕雄
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

歯周病を惹起させたADモデルマウスを使った研究から、歯周病における慢性炎症が脳内に波及し、それによって脳内Aβ産生増加、サイトカインレベルの上昇を来たし、AD病態悪化と認知機能障害を誘導することを明らかにした(NPJ Aging Mech Dis, 2017)。また、認知症患者に対して歯周病治療・口腔ケアの介入によって認知症進行を抑止するかどうかを検証する臨床研究を認知症患者40名を対象に行った(文部科学省基盤研究B-当該研究)。その結果、歯周病治療・口腔ケア介入群では、認知症の進行が予防されることを示唆するデータを得た。
著者
近藤 一成 坂田 こずえ 加藤 怜子 菅野 陽平 武内 伸治 佐藤 正幸
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.144-150, 2019-10-25 (Released:2020-01-17)
参考文献数
17
被引用文献数
1 3

日本国内で食中毒事例が多いクサウラベニタケと考えられてきたきのこは,3種類の近縁種から構成される.これら近縁種を特異的に感度よく検出できるリアルタイムPCR法を開発した.有毒と考えられるクサウラベニタケ近縁3種および食用のウラベニホテイシメジに特異的なプライマーおよびプローブ(FAM,VIC,Texas Red,Cy5標識)を用いて検討した.クサウラベニタケ近縁3種とウラベニホテイシメジITS全領域を有する標準プラスミドを用いた検討から,いずれの検出系も12.5コピーまで検出可能あり,目的以外の標的には反応しなかった.本法を用いて中毒事例から回収した検体を分析したところ,PCR-RFLP法では十分解析できない検体でも確実に種の同定検出が可能であることが分かった.食中毒の防止および中毒発生時の原因種特定に役立つと考えられる.また,北海道内におけるクサウラベニタケ近縁種は,本州のものとは異なりEntoloma eminensまたはEntoloma sp.であることを同時に明らかにした.
著者
吉本 好延 野村 卓生 明崎 禎輝 佐藤 厚
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.287-294, 2009-08-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
20
被引用文献数
4

【目的】本研究の目的は,運動療法が精神疾患患者の身体機能および能力に与える効果を検討することであった。また,我々は,行動科学的アプローチが運動療法の教室への参加に与える影響についても検討した。【方法】対象は,精神科病院入院患者21名(閉鎖病棟群9名,開放病棟群12名)であった。精神疾患患者には,12週間(週3回)の介入期間にわたって,運動療法(体幹と下肢のストレッチ,筋力増強運動,バランス運動,歩行運動)と行動科学的アプローチ(運動療法の教室参加後の賞賛,運動療法後の食品の提供,参加状況チェックポスターの掲示)を提供した。【結果】開放病棟群の患者は,下肢前方リーチと最大一歩幅が,介入前から12週間の介入後に有意に向上した。閉鎖病棟群の患者は,運動療法の教室への参加率が,作業療法より高い傾向にあった。運動療法の教室参加後の賞賛は,運動療法の教室への参加に効果的なアプローチとして精神疾患患者から高い評価を得た。【結論】精神疾患患者の運動療法の教室への参加を促進するためには,行動科学的アプローチの強化刺激などを工夫すべきである。
著者
木幡 大河 佐藤 真里 菅原 布美 佐々木 聡也 八木 一正 菊池 新司
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.61-62, 2010 (Released:2018-04-07)
参考文献数
1
被引用文献数
1

本研究では、独自の粉塵爆発装置を作成して、生徒が視覚的に捉えやすい「粉塵爆発」の教室規模での教材化を試みる。粉塵爆発が起こりやすい条件を研究するとともに日常で爆発が起こり得る可能性も示し、生徒の防災の意識を高めることも目指したい。
著者
佐藤 翔 石橋 柚香 南谷 涼香 奥田 麻友 保志 育世 吉田 光男
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.268-283, 2019

<p> 本研究では非専門家にとっての論文タイトルの「面白さ」を得点化し,Twitterからの言及数が多い論文と言及されたことのない論文でこの得点に差があるかを検証した.Twitterからの言及数データはCeek.jp Altmetricsから収集し,2008年に出版された論文の中でTwitterからの言及回数が特に多い論文103本と,言及回数が0の論文の中からランダムに選択した100本を分析対象とした.4名の非専門家が各論文タイトルの「面白さ」を7段階で評価し,その点数の合計を「面白さ」得点と定義した.分析の結果,Twitterからの言及数が多い論文グループと,言及数が0の論文グループで「面白さ」得点には有意な差が存在し,Twitterからの言及数が多い論文の方がタイトルが「面白い」傾向が確認された.さらに,この差は分野別に分析しても確認された.</p>
著者
大谷 卓史 芳賀 高洋 池畑 陽介 佐藤 匡 高木 秀明 山根 信二
雑誌
情報教育シンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.2, pp.179-184, 2014-08-17

一般的に,児童・生徒のインターネットや情報機器の利用を制限・監視することで,児童・生徒のインターネット利用リスクを低くできると信じられている.しかしながら,情報社会におけるコミュニケーションや社会参加がインターネットや情報機器によって媒介されるとすれば,ただ禁止・監視するだけでは児童・生徒の情報社会における自律的判断の成長を妨げ,情報社会への適応を阻害する可能性が高い.むしろ保護者・教師と児童・生徒がインターネットや情報機器の利用について日常的に話し合うことで,児童・生徒のインターネット利用リスクを低くするとともに,児童・生徒の道徳的自律を支援できるとの情報倫理学者 Mathiesen(2013)の知見がある.また,そもそも大人がインターネット利用によってトラブルを引き起こす例も多い.本稿著者は,平成 26 年度において,地域社会の保護者・社会人に対してスマホや SNS の情報リテラシーおよび情報倫理の地域社会教育を実施するモデルとなる教材・講習会の設計と試行的実施をめざし,実行可能性調査を含め,研究を進めている.本稿はその研究の目的・背景と計画を説明するものである.