著者
木村 容子 杵渕 彰 稲木 一元 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.391-395, 2009 (Released:2009-08-12)
参考文献数
15

気管支喘息に対する漢方治療では,咳や痰の性状や呼吸困難の程度などを指標として,通常,臓腑の立場からは「肺」へのアプローチをを選択することが多いと思われる。さらに,気管支喘息の増悪因子がある場合は,その要因を排除することも大切である。今回,便通異常を伴って気管支喘息の症状が悪化した患者において,便通の改善を図ったところ,患者の咳嗽や呼吸困難などの症状が軽快した3症例を経験したので報告した。漢方では「肺」と「大腸」は表裏関係をなすとされるが,どのような気管支喘息患者の場合に,便通調整を考慮するのが有効であるかを検討した報告は少ない。今回の3症例から,便通が安定している軽症の気管支喘息患者が,突然,気管支喘息症状の悪化とともに便通異常を認めた場合に,「肺」に直接作用する処方だけではなく,その表裏関係にある「大腸」の作用を整える治療をすることが有効であるのではないかと推測された。
著者
佐藤 信 大場 俊輝 高橋 康次郎 国分 伸二 小林 幹男 小林 宏治
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.801-805, 1977
被引用文献数
6 16

国税局鑑定官室, 県工業試験所などの調査書・報告・成績書から得た昭和50年の市販清酒の一般分析値を解析して, 生産地による清酒の差別化の現状を考察した。<BR>また, ワイン, ポートワイン, シェリー, ベルモット, リキュール, 甘酒, ジュースなど多数の飲料の酸度・アミノ酸度・糖量を分析するとともに, 酸度と糖量を広い範囲にわたって変化させた清酒をつくり, 清酒の味として認められるか, あるいはワイン, リキュー・ルの味と考えられるかを判断して, 一般分析値による清酒の範囲ならびに味覚による清酒の範囲を検討し, 次の結果を得た。<BR>1) 生産地による清酒の差別化については, 同一国税局内においても県ごとに差があり, 地域差は少なくとも県単位で比較すべきである。<BR>2) 味覚による清酒の範囲は, 現在の市販清酒よりもはるかに広く, 清酒の多様化の可能性を示唆した。<BR>3) 清酒以外の飲料の酸度・糖量は, 糖量・酸度を直交軸とする平面にプロットすると, 味覚による清酒の範囲に外側にあり, 清酒と他の酒類の差別が可能である。さらに, 弁別閾による酒質の細分化, 熟度による差別化, 酸組成による差別化について考察した。
著者
佐藤 侑 郭 士傑 稲田 誠生 向井 利春
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.78, no.789, pp.1899-1912, 2012 (Released:2012-05-25)
参考文献数
21
被引用文献数
3 9

With a record-low birthrate and a rapidly-growing elderly population, Japan faces a severe demographic challenge, compounded by a chronic lack of nursing care staff. Among nursing care tasks, patient transfer is one of the most physically strenuous tasks. To free caregivers from such heavy physical work and to compensate for the lack of nursing care staff, we have developed two prototype robots, RIBA and RIBA-II, which were designed to come in direct contact with patients and conduct transfer tasks such as lifting and moving a patient from a bed or the floor to a wheelchair and back. This paper, focusing on RIBA-II, describes the motion design, handling method, safety measures, as well as the verification experiment conducted on healthy subjects. RIBA-II, who's whole body including the joints is covered with soft materials to realize a safe and easy contact with humans, has the ability to lift up a human up to 80kg with a certain safety factor from the floor and transfer him/her to a normal wheelchair with armrests. The robot is not an autonomous one but a robot operated by a caregiver to ensure safety. When conducting a transfer task, the caregiver handles the robot by stroking the rubber tactile sensors installed on the robot arms and, at the same time, confirms safety. The purpose of the robot is not only relieving caregivers from heavy physical works but also to replace the transfer task conducted by two caregivers by one robot and one caregiver. The feasibility has been demonstrated by the verification experiment as described in this paper.
著者
野田 真一 伴 好弘 佐藤 宏介 千原 國宏
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.665-670, 1999-12-31 (Released:2017-02-01)
参考文献数
13
被引用文献数
3

Mixed Reality (MR) conjuncts the real world with a virtual world created by a computer. Optical superimposing has been a promising MR displaying technology so that it does not degrade the quality of the user's view. Unfortunately, optical see-through displays can not represent correct occlusion phenomenon; a CG object can not occlude a real object, but overlaps on the real one translucently. In this paper an architecture of an optical see-through MR display, which solves the above problem, is proposed. It can represent correct occlusion phenomenon among the real and virtual objects. Two types of new prerequisite elements, a realtime range finder and an active pattern light source with a video projector, are involved into the display. The dynamic active pattern light projection illuminates only not occluded portions of the real object in darkroom, according to the interference among 3D models of the virtual object and real one which is acquired by the range finder. Therefore, the occluded portions of the real object is not visible due to no illumination; the CG object occludes the real object approximately. A prototype display based on the architecture shows us interesting interactions between the virtual world and the real world including user's hand operations.
著者
佐藤 博志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.331-339, 2007 (Released:2007-08-18)
参考文献数
6
被引用文献数
1

神経学的障害を持つ患者が機能的活動を再獲得するための過程において,患者が持つ潜在能力を適正に捉え,その顕在化を阻害している因子を改善することは,その評価と治療的アプローチにおける課題である。これらの患者の多くは姿勢制御不全を来たし,機能的活動の阻害因子となっている。随意運動としての行動の発現には姿勢制御が先行すること,姿勢制御のためには異なる種類の多くの感覚入力が必要である事などを考慮すると,姿勢制御を獲得する過程が適応行動の神経基盤として重要であると考える。本稿では臨床的な視点での姿勢制御の構成要素に注目し,神経学的障害を持つ患者の評価と治療的アプローチについて述べる。
著者
奈須 恵子 佐藤 雄基 神野 潔 小澤 実
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、教育史及び歴史学(史学史)の専門家の共同研究のもと、日本の戦前に設立された官公私立大学がほぼ揃うに至る1920年代~30年代の時期を中心にして、大学における史学科及び史学関係講座に注目して研究を行う。具体的には、史学関係の教員・カリキュラムがどのような制度的枠組みのもとに置かれていったのか、それが諸学問における歴史研究・教育の位置づけとどのような関連性をもつのかを検討する。最終的には、教育・研究組織と学術・教育行政という制度的アプローチを通じて、日本の近代学問・大学における歴史研究の位置づけについて解明することを目的としている。
著者
三井 一希 佐藤 和紀 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.44, no.Suppl., pp.9-12, 2021-02-20 (Released:2021-03-08)
参考文献数
4

本研究は,教職員用情報共有システムを導入した学校の1年間の書き込みの実態を把握し,今後導入を予定している学校の参考となる知見を提供することを目指している.ある学校で活用されている教職員用情報共有システムへの1年間の書き込み内容について調査したところ,1回の書き込みの平均文字数は200字程度であること,学校行事やイベントが多い月は情報量が多くなること,校内で指導的な立場にある者は投稿数が多くなること,「予定の確認・変更」,「施設・設備・備品」等が書き込みの内容として多いことなどが明らかとなった.
著者
佐藤 俊樹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.151-170, 1988

理解社会学という方法は,社会学の最も古典的な方法の一つで,かつ,現在でも多くの社会学者が意識的または無意識的に用いている方法である。にもかかわらず,この方法はこれまで,理解をめぐる哲学的議論や学説史的な視点からのみ問題にされ,具体的な社会記述の方法として反省的に定式化され理論的に検討されることは,ほとんどなかった。本論考ではまず,理解社会学の方法を,Weber固有のジャーゴンを離れ,行為論の一般的な術語を用いて,公理系として捉える。そして,この公理系の検討を通して,通常全く自然な作業と思われている「理解社会学的に理解している」ということが実際にはどういうことなのか,その射程と限界について明らかにする。
著者
時岡 良太 佐藤 映 児玉 夏枝 田附 紘平 竹中 悠香 松波 美里 岩井 有香 木村 大樹 鈴木 優佳 橋本 真友里 岩城 晶子 神代 末人 桑原 知子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.76-88, 2017-07-01 (Released:2017-04-15)
参考文献数
27
被引用文献数
1 3

LINEとは,友人とのコミュニケーションを主眼としたアプリケーションのひとつである。近年,LINEは特に若者にとって欠かせないものとなってきている。本研究の目的は,高校生のLINEでのやりとりに対する認知のあり方について探索的に把握することと,その認知に対して現代青年に特有の友人関係のあり方が及ぼす影響について明らかにすることであった。高校生423名を対象に,本研究において作成したLINE尺度と友人関係尺度への回答を求めるオンライン調査を行った。LINE尺度の因子分析により「既読無視への不安」「気軽さ」「やりとりの齟齬の感覚」「攻撃性の増加」「即時的返信へのとらわれ」「つながり感」の6つの因子が抽出された。次に,友人関係による影響について多母集団同時分析を用いて検討した。その結果,友人から傷つけられることへのおそれが,LINEでのやりとりへのアンビバレントな気持ちを生む一因であることが示唆された。
著者
堀 桂子 佐藤 由利子
出版者
日本観光研究学会
雑誌
観光研究 (ISSN:13420208)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.39-51, 2019 (Released:2019-09-01)
参考文献数
32

旅行形態の多様化に伴い、観光まちづくりにおける関連組織間の連携が重要になっている。本研究では、熱海市を事例として、連携促進策による観光まちづくり組織の連携状況の変化、連携による効果や課題を分析した。分析の結果、連携は、市の主催する観光戦略会議や地域資源の掘り起こし活動を通じて開始され、ニューツーリズムを担う団体への活動支援や観光プロモーション事業を通じて広がり、観光客誘致に効果を上げていること、既存組織の保守的態度や、観光とまちづくりのバランスをとる難しさが、連携推進上の課題であることが判明した。
著者
佐藤 智敬
出版者
成城大学
雑誌
常民文化 (ISSN:03888908)
巻号頁・発行日
no.25, pp.122-98, 2002-03
著者
吉岡 直範 佐藤 宏
出版者
The Society of Polymer Science, Japan
雑誌
高分子化學 (ISSN:00232556)
巻号頁・発行日
vol.26, no.293, pp.644-650, 1969
被引用文献数
2

等温結晶化したポリエチレンテレフタレートの球晶構造を小角光散乱, 光学顕微鏡および密度測定により検討した。試料には結晶化温度および時間を変えたものを用いた。結晶化温度110℃から140℃までの領域では通常の光散乱理論により説明される散乱像を得たが, 140℃以上の領域では四つ葉のクローバー像で代表される典型的な球晶による散乱の他に散漫な散乱や, あるいは新しい散乱像も見られた。結晶化条件, 配向度あるいは分子量およびジエチレングリコール含有率といったポリマー特性によっても散乱像は影響を受けるがポリエチレンテレフタレート球晶の構造は, その散乱像から理解できる。
著者
佐藤 美奈子 松永 達雄 神崎 仁 小川 郁 井上 泰宏 保谷 則之
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.192-197, 2001-03-20
被引用文献数
8 8

突発性難聴の重症度分類は, 初診時の5周波数平均聴力レベルを4段階に分類し (Grade 1: 40dB未満, Grade 2: 40dB以上60dB未満, Grade 3: 60dB以上90dB未満, Grade 4: 90dB以上), めまいのあるものをa, ないものをbとして, 初診時に突発性難聴のグレーディングを行う方法である. しかし臨床データによる研究は少なく, その有用性・問題点については未知の部分が多い.<BR>本研究では, 発症後1週間以内に治療を開始した初診時聴力レベル40dB以上の突発性難聴263例を, 前述の重症度分類に基づき6群に分類, 聴力回復との関係を検討した. 固定時聴力の比較では, 予後良好な順にGrade 2b>2a>3b>3a>4b>4aであった. 初診時聴力レベルに影響を受けない予後の定量的評価の方法として, 聴力改善率と各群の治癒症例の割合を用いて検討すると, 予後は良好な順に, Grade 2b, 3b>2a>3a>4b>4aの5段階に位置づけられ, Grade 4aの予後が顕著に不良であった. Grade 2, 3では, 初診時聴力レベルよりめまいの有無の方が予後に対する影響が大きいと考えられた. Grade 4を聴力レベル100dBで分けた場合の聴力予後は, 4aでは100dBを境に大きな差が見られ, 100dB未満の4aは3aと同程度であった. しかし4bでは, 100dB以上の予後がやや悪いものの, その差は小さかった. 今回の検討により, 発症後1週間以内に治療を開始した突発性難聴では, 初診時聴力にかかわらず, ほぼ同程度の聴力改善が望めるレベルが存在し, このレベルはめまいのない場合40-89dB, めまいのある場合60-99dBであると考えられた. 各々の予後は, めまいのない場合, 治癒する可能性約60%, 聴力改善率平均80%以上, めまいのある場合, 治癒する可能性約40%, 聴力改善率平均60%程度と推察された. また, 初診時Gradeと重症度分類に準じた固定時Gradeを比較すると, 初診時Grade 2, 3では, 固定時Grade 1, Grade 4では, 固定時Grade 3の症例が多かった.