著者
西村 勝治 佐藤 恵里
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.42-51, 2011-01-15 (Released:2014-10-11)
参考文献数
64

全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)による神経精神病変(neuropsychiatric SLE:NPSLE)はSLE患者の約半数に出現し,予後不良,他の臓器病変合併の増加,QOLの低下と関連している。NPSLEの発症には微細な血管障害(vasculopathy),神経細胞に対する自己抗体の産生,髄腔内のサイトカインの産生など,多因子的なメカニズムが想定されている。NPSLEは疾患特異的な指標に乏しく,診断のためのゴールドスタンダードは存在しないため,NPSLE以外の要因をきちんと除外し,臨床症状,血液および髄液検査所見,脳波,脳イメージング,免疫学的マーカーなどに基づいて総合的に診断する。本稿では,NPSLEのコンサルテーションにおいて精神科医に求められる診断とマネージメントに焦点を当て,最近の知見を中心に概説した。
著者
佐藤 智文 平野 智紀 山本 良太 石橋 純一郎 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S46094, (Released:2022-09-27)
参考文献数
7

本研究の目的は,GIGA スクール構想による1人1台端末整備直後におけるICT 活用の促進要因を明らかにすることである.川崎市内の小学校教員(N=997)を対象として,教員の年代,GIGAスクール構想推進講師(GSL)担当,ICT 活用歴,GIGA 以前からICT を活用していたこと,ICT活用に対する自信,がGIGA 後のICT 活用に対する認識に及ぼす影響を検討した.分析の結果から,GIGA 後のICT 活用には,「年次の若さ」「GIGA 以前のICT 活用」「自信」が有効であること,ICT 活用歴の長さだけではGIGA 後のICT 活用には寄与しないこと,年代の高い教員においてICT活用への自信を持つことの効果が高いこと,が示唆された.
著者
佐藤 研
出版者
日本マス・コミュニケーション学会
雑誌
マス・コミュニケーション研究 (ISSN:13411306)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.107-124, 2019-07-31 (Released:2019-10-25)
参考文献数
15

The Japan Commercial Broadcasters Association (JBA) BroadcastingStandards were established at the same time as the first commercial radiostarted in Japan in 1951. It was not legal at first, but independently establishedby commercial broadcasters in Japan born in the post-World War II democraticmovements. Thereafter, the revised Broadcast Law requires that broadcasters establishprogram standards and Japanese commercial broadcasters apply JBA BroadcastStandards to their program standards and revise them repeatedly in accordancewith changes in society and the media environment. This article explores the history and background of JBA Broadcast Standards,and the autonomous and independent attitude of commercial broadcastersin Japan that has always been criticized by both the politically powerful andthe general public based on various publications of JBA
著者
佐藤 雄基
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.129, no.10, pp.4-34, 2020 (Released:2021-12-01)

治承・寿永の内乱の偶然の産物として、前例のない武家政権が関東に成立した鎌倉時代において、天皇と武家の関係をどのように考えるのかは中世国家論の焦点であったが、鎌倉時代人の《現代史》認識においても難問であったため、鎌倉時代には様々な天皇像・歴史叙述が生み出されていた。本稿では、そうした天皇像の語りが、政治状況と交錯しながら、どのように変化してきたのかを論じた。現実に機能した天皇像・歴史像のもとでどのように「史料」が生成し、それらを後世の歴史家がどのように読みといたのか、複層的に議論を進める。 鎌倉時代は三度の皇統断絶を経て、天皇像の危機的な状況が生まれる一方で、新たに登場した武家政権の位置づけをめぐって武家像(将軍像)を含みこんだかたちで、天皇像が新たに語られ、また、人びとも天皇像について自らと関連づけて語り始めていた。武家を組み込んだ天皇・藤原氏の像を歴史叙述として体系化したのは『愚管抄』の著者慈円であった。第一章では、慈円の言説が黒田俊雄の提唱した権門体制論と親和的な像であること、また、源頼朝が自らを諸国守護の権門として位置づけようとした構想とも無関係ではなかった。但し、慈円の国制像は必ずしも同時代的に共有されていた訳ではない。後鳥羽院は武芸をはじめとする諸芸能を好み、文武を包摂した君主像を追求していたし、幕府の側でも源実朝が後鳥羽院を模倣して「文」に基づく統治者意識を高めていた。前例のない「武」の権力をどのように位置づけるのか、様々な模索のもとで幕府像も揺れ動いた。 こうした慈円の構想が現実味をもつのは、承久の乱後の摂家将軍・九条道家の時代であった。第二章では、「文武兼行」の摂家将軍の国制構想が、京・鎌倉に及ぼした影響を検討した。必ずしも九条家に対抗する国制像をもっていなかった鎌倉北条氏は、寛元・宝治・建長という十三世紀半ばの政変を経て、九条家を排除して、後嵯峨院政を支持し、親王将軍を擁立する。京都・公家とは異なる関東・武家が明確に成立し、公武関係が整序された。 得宗(北条氏の家督)は天皇・公家を包摂する国制像をもたなかった。鎌倉後期の治天は幕府への依存を深めながら、武家を包摂する国制像をもたず、得宗(北条氏)が天皇・親王将軍をそれぞれ支えるという国制となった。北条氏は公家政権の徳治主義を模倣し、独自に「文」を担うとともに、裁判を担うことを自己の任務としたが、天皇・公家と《距離を置く》ことを志向した。そうした北条氏の姿勢ゆえにかえって、幕府の圧倒的な実力を背景にして、人びとの間で得宗をめぐって天皇像とも関連づけて様々な噂が語られるようになった。武家独自の政道観・式目観や得宗・天皇の観念融合の結果、武家が公家・天皇と併存するかたちで中世社会のなかに定着した。
著者
渡邉 英一 古田 均 佐藤 郁
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木情報利用技術論文集 (ISSN:13491040)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.53-64, 2003-10-28 (Released:2011-12-20)
参考文献数
20

ADSLに代表される高速で安価なインターネット接続が急速に普及しているが, 建設現場の現場事務所 (作業所) と本支店等とのネットワーク接続はISDNが主流であり高速化が図れていない. まず, 作業所のネットワーク接続の特性を分析し, 一般消費者向けインターネット利用に必要とされる要件をまとめた. 次に, セキュリティーや安定性が不足しているため企業には不向きとされていたIntemet VPNをセキュリティーと安定性を確保した方策について説明する. 約200拠点の接続を実施した結果, 通信速度を従来のISDNの5倍以上に, コストを従来の28%に削減することを可能とした.
著者
内田 佳途 三井 一希 浅井 公太 棚橋 俊介 佐藤 和紀
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45063, (Released:2021-08-25)
参考文献数
10

小学校での1人1台端末を活用する場面において必要になる学習規律を分類・分析するため,小学校教師2名を対象に導入後2か月間で指導した学習規律に関する調査を実施した.結果,11項目の学習規律が指導され,学習規律を一覧表にまとめた書籍を参考に分類したところ,指導場面が一致する「学習上のルール」,一致しない「端末を扱う上でのルール」の2つに大別された.「学習上のルール」は1週間で定着が図られたことから,これまでの学習規律と同様の指導により定着が図られることが考えられるのに対して,「端末を扱う上でのルール」は定着に2週間以上時間を要すること,ICT スキルを伴う指導が必要となることから,これまでの学習規律と指導方法が大きく異なることが示唆された.
著者
松原 耕平 新屋 桃子 佐藤 寛 高橋 高人 佐藤 正二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.39-50, 2019-01-31 (Released:2019-06-08)
参考文献数
39

本研究の目的は、幼児期の社会的スキルと問題行動が児童期の社会的スキルと抑うつ症状に与える影響を検討することであった。調査開始時点で年長児(5~6歳)であった100名を対象として、幼児期に社会的スキルと問題行動を測定し、小学校5年生時(10~11歳)と6年生時(11歳~12歳)にそれぞれ社会的スキルと抑うつ症状を測定した。その結果、幼児期の協調スキルと主張スキルは児童期の社会的スキルを媒介して、抑うつ症状の低減に寄与することが明らかとなった。幼児期の問題行動は児童期の社会的スキルと抑うつ症状のどちらにも影響はみられなかった。これらの結果から、児童期の抑うつ予防のために幼児期の社会的スキルに焦点を当てることの意義について議論された。
著者
阿波 圭介 佐藤 宏樹 堀 里子 澤田 康文
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.132, no.1, pp.135-144, 2012-01-01 (Released:2012-01-01)
参考文献数
39
被引用文献数
1

Topical dermatological formulations of non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) are reported to show their pharmacological effect partially through the systemic circulation, and to induce systemic side effects. However, pharmaceutical equivalence and pharmacokinetic bioequivalence between brand-name and generic products are not required. Therefore, we aimed to predict systemic drug exposure from brand-name and nine generic ketoprofen tapes. In vitro release profiles were examined using the paddle-over-disk method, then analyzed by the W. I. Higuchi equation incorporating an initial burst effect. Pharmacokinetic parameters were estimated from observed release profiles and the reported time-plasma concentration profile of the brand-name product. Plasma concentration profiles of generic products were predicted from the observed release profiles and the pharmacokinetic parameters of the brand-name product. In vitro release profiles differed markedly, and estimated release rates for initial burst effect and at 24 hours ranged from 4.20 to 88.75% and from 45.27 to 95.83%, respectively. The predicted plasma concentration profile of each product reflected its release profile, and estimated Cmax ranged from 61.70 to 290.30 ng/mL (0.46- to 2.15-fold vs. brand-name product). Generic products were classified into three types, i.e., systemic exposure comparable with, higher than and lower than that of brand-name product. Cmax was predicted to increase with enhanced skin permeability for all products, but the increase rates differed among products. These results suggest that safety and efficacy differ between brand-name and generic ketoprofen tapes. Healthcare professionals should carefully monitor systemic side effects, especially when switching from brand-name to generic products for which higher systemic exposure is predicted.
著者
佐藤 正志
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 = Journal of Business Administration and Information (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.15-34, 2014-02

革新官僚としての岸信介は、その卓抜した思考能力から戦間期における資本主義の歴史的変化をいち早く認識し、国家の産業政策としては、学生時代に影響を受けた「国家社会主義」思考と親和性の高いドイツの産業合理化運動さらにナチス統制経済に連なる「ファシズム型」資本主義を選択し、その遂行者となった。彼が商工省で策定した「自動車製造事業法」はその国産化政策を推進する法律であり、ドイツの産業合理化における国家統制のあり方に学び、軍部の意向をも反映したものであった。しかし一方で、岸が経営実務能力を高く評価した鮎川義介の「外資・技術力」導入という「国際協調」的な主張にも賛意を示すなど、経済(経営)合理的思想をも持っていた。しかしながら、岸が鮎川を助けて有効な政策手段を講じたり、行動したわけではなかった。岸は、多層的で柔軟な合理的思考をも有し、官僚としての政策立案能力は卓越していたが、現実には国際関係の悪化や軍部の外資排除の意向を前にして、主体的で責任を有した行動を行ったとは言い難いのである。
著者
佐藤 香緒里 吉尾 雅春 宮本 重範 乗安 整而
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.323-328, 2008 (Released:2008-06-11)
参考文献数
15
被引用文献数
5 1

本研究では,股関節外旋筋群が股関節屈曲に及ぼす影響を検討することを目的とし2つの実験を行った。若年健常男女60名を対象とした股関節回旋角度の違いによる股関節屈曲角度の計測では,股関節内旋角度の増加に伴い股関節屈曲角度は有意に減少し(p<0.001),股関節外旋筋群の伸張が股関節屈曲を制限する因子として考えられた。新鮮遺体1体の両股関節後面各筋を切離するごとに股関節屈曲角度の計測と観察を行った結果,梨状筋と内閉鎖筋に著明な伸張が見られ,これらの切離後に股関節屈曲角度は顕著に増加した。梨状筋と内閉鎖筋は股関節外旋筋であることから,これらが股関節屈曲を制限している可能性があると考えられた。理学療法プログラムとして股関節屈曲可動域を拡大するときには,屈曲角度のみに注目せずに内旋角度にも注意を払う必要があると示唆された。
著者
吉村 元輝 濱本 愛 阪口 杏香 安藤 詳子 佐藤 一樹
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.7-15, 2022 (Released:2022-01-26)
参考文献数
24
被引用文献数
1

【目的】一般市民の終末期の意思決定の希望とその関連要因を明らかにする.【方法】日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団が行った「ホスピス・緩和ケアに関する意識調査2018年」の調査データを二次利用して分析した.成人1,000名対象のインターネット調査で,終末期の意思決定の希望を尋ねた.【結果】予後説明の希望は,54%が余命まで知りたいと回答した.余命告知希望に,若年,がん告知希望,医療者の信頼を重視,死んだら消えてなくなる死生観が独立して関連した.終末期医療の希望は,11%が積極治療,58%が緩和ケアを希望した.緩和ケア希望に,高齢,女性,苦痛がないことや気兼ねしない環境を重視などが独立して関連した.意思決定の主体者の希望は,77%が自分で,11%が家族に決めてほしいと回答した.自分以外主体の希望に,若年,がん告知を希望しない,死を考えない死生観が独立して関連した.【考察】一般市民の終末期の意思決定の希望とその要因が明らかになった.