著者
杉山 尚子 鷲見 潤子 佐藤 方哉
出版者
山脇学園短期大学
雑誌
山脇学園短期大学紀要 (ISSN:03898814)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-10, 2002

Twelve male and twelve female students who rarely bake cakes were given instructions on how to beat eggs. The students were divided into three groups according to the type of instructions: verbal instructions only (VI group), verbal instructions plus a videotape of the process (beating eggs) (VI+PC group), and verbal instructions plus a videotape of the product (the beaten eggs) (VI+PD group). The VI+PC group saw a videotape of an expert beating eggs. The VI + PD group saw a videotape of the eggs when they were finished by the same expert. The duration of beating eggs was shortest for the VI+PC group, while the quality of the resulting sponge cake was the best for the VI+PD group. Although videotape is often presented as a convenient modeling tool, behavior analysts need to determine what aspects of the videotaped model are effective in training new behavior.
著者
佐藤 毅彦 前田 健悟 今井 一雅 戎崎 俊一 川井 和彦 坪田 幸政
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

平成17年度に引き続き、星座カメラi-CANを米国ニューメキシコ州(アパッチポイント天文台)、スペイン・カナリー諸島(ブラッドフォード望遠鏡施設)、米国ハワイ州(国立天文台すばる望遠鏡)に設置した。これにより、海外6サイト、国内1サイトのネットワークが完成した。特にスペイン・サイトの設置は、日本の早朝に夜空の観察を可能とし、学校の授業での利用に対する制限を大幅に緩和した。また、ハワイ・サイトは、子どもたちが帰宅した後、自宅から星空を見るのに便利である。授業後の感想に大変多い「家へ帰ったら、早速見てみたい」という希望を叶えるものとなった。授業実践も、熊本市立龍田小学校、同清水小学校、同松尾西小学校、天草市立本町小学校、北海道教育大学附属小・中学校、石狩市立石狩小学校などにおいて、多数行った。また、科学技術館におけるサイエンス・ライブショー「ユニバース」での定期的な活用、熊本市博物館における特別講演会「ワンダー・プラネタリウム:南天の星空を見上げて」など、社会教育への展開も精力的に行った。これらを通じて、子どもたちの反応をアンケートにもとづき評価し、「興味・関心・意欲」といった情意面、「知識・理解」といった認知面の両方において有効な天体学習ツールに成長し得たことを確認できた。今後は授業での活用を継続するとともに、科学館・博物館における有効利用、さらに宇宙航空研究開発機構などで推進されている宇宙開発の啓蒙の一端を担うツールとしての発展が期待される。
著者
佐藤 洋子 良村 貞子 森下 節子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.小児入院施設の安全対策:(承諾が得られた小児入院3施設安全管理マニュアル、施設設備の検討)1)事故発生状況:調査前年度の病院別事故発生状況は、転落事故が23件、転倒事故3件であったが、その他の事故はなかった。2)3病院いずれも事故防止のための入院時資料を作成していたが、保護者を対象とするものが多く、小児を対象とする資料は、ビデオ・写真など、視覚的理解を促すものであった。3)3病院いずれも事故防止目的で環境整備(点滴、ベッド柵に関する安全使用表示。点滴スタンド脚の5脚化等、用具の工夫。クッションフロア・プレイルーム等環境の工夫)を実施していた。4)事故防止のために、B病院は7歳以上の患者を対象とする転倒・転落予測ツールを使用していた。2.入院患児の保護者の意識(質問紙回収率88.3%):1)保護者が入院中起こりやすいと考えている事故は、1位転落、2位転倒、3位打撲・外傷であった。2)事故防止実施上の責任を保護者と回答した者は、91.5%であった。保護者が看護師に期待する事故防止策は「環境整備を徹底してほしい」60.4%、「子供の行動を注意して観察してほしい」10.4%であった。以上のように、小児入院環境下では事故(転倒・転落、誤飲や窒息・打撲や外傷・火傷等)防止をするためのさまざま対策がとられていた。しかし、小児入院施設としての統一的な安全基準はなく、施設の工夫に任されていることが明らかになった。また、保護者は事故防止の責任を保護者にあると認識していた。保護者が、看護師に求める事故防止対策は、入院環境の整備が多いことが示された。このようなところから、看護師は、小児の病状を観察し、安全な環境を整備することが必要であり、安全基準の策定、保護者ならびに小児に対する教育等、具体的な事故防止の支援を進めることが今後の課題と考える。
著者
佐藤 健太 金岡 直樹 津田 展宏 奥山 淳
出版者
一般社団法人 日本時計学会
雑誌
マイクロメカトロニクス (ISSN:13438565)
巻号頁・発行日
vol.52, no.199, pp.6-16, 2008
参考文献数
4

We develop a small NC milling machine based on the concept of a micro factory. We try to manufacture this machine for using even in the laboratory where there are lot of amateur machine operators for getting trial machine parts. The small NC milling machine size is about 150mm×100mm×270mm. It is about 1/10 of the general milling machines. To evaluate this machine's performances we first make square parts:5mm×5mm×2mm and we make sure that this square parts accuracy is kept within 0. 01mm. We also make one of typical machine parts : a gear, and a circular pyramidal shape which is called a 2. 5 dimensional sample.
著者
佐藤 峰南 尾上 哲治
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.10, pp.575-578, 2010 (Released:2011-02-01)
参考文献数
17
被引用文献数
5 10

The magnetic fraction of a lower Norian claystone layer (ca. 5 cm thick) in a radiolarian chert succession within the Mino Terrane, Inuyama area, Central Japan, contains a large number of small euhedral to subhedral crystals of oxidized Ni-rich spinels. The stratigraphic position of this concentration of Ni-rich spinels is clearly indicated by a sharp increase in magnetic susceptibility at the claystone layer. These spinels are distinguished from typical igneous spinels by their high Ni and Fe3+ contents, and show large variations in composition. The textures and chemical compositions of the spinel crystals are similar to those of Ni-rich spinels at the Cretaceous-Paleogene boundary. The discovery of Ni-rich spinels in a lower Norian claystone suggests an important sedimentary record of an extraterrestrial impact in the Late Triassic.
著者
佐藤 正憲
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.74-82, 1966-02-01
被引用文献数
2

今後先天異常が増加するかどうかを知り, 先天異常発生要因と考えられる要因より妊婦をまもり, 先天奇形を予防し, 新生児死因として先天奇形のしめる位置を低下させるために, 先ず我が国における従来の先天異常の実態を知つておかねばならない. この目的で昭和32年より36年に至る5年間の出産時を対象として全国病産院に依頼し調査を行い280828例の出産数に対し1817例の先天奇形の報告を受け, その頻度, 種類について観察し, 又無脳症, 脊椎破裂, 鎖肛, 多指症, 口唇口蓋裂, 小眼球及び無眼球症について, 頻度, 母体年令, 経産初産の別, 児の性別, 在胎週数, 生下時体重について観察した. すなわち, 出産数に対する奇形の頻度は0.65%であり, 奇形の種類では, 筋骨格系が最も多く, 消化器系, 脳神経系の順で, これら3系統の奇形が全奇形の72.3%をしめている. 又各々の系統ではそれぞれ, 多指症, 口唇口蓋裂, 無脳症が最も多い. 口唇口蓋裂は608回, 多指症は1324回, 無脳症は1411回, 鎖肛は4842回, 脊椎破裂は5506回, 小眼球及び無眼球症は16520回の出産にそれぞれ1回の割合で発生する. 鎖肛, 口唇口蓋裂, 多指症は勇性に多く, 脊椎破裂は女性に多く発生する. 母体年令による奇形発生頻度の差は認められない. 主要奇形は第1児に多い事等の結果を得た.
著者
佐藤 朝美
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.33-42, 2008
参考文献数
20
被引用文献数
5

本研究では,幼児期の5歳半頃から活発にみられるようになる物語行為を支援するソフトウェアを開発する.本ソフトウェアにより幼児の物語行為を活性化し,発話の種類を増加させ,前後文の統合を支援することを目的とする.支援形態は,幼児の物語産出の発達過程の先行研究や物語支援システムの先行研究の知見から検討し,機能を実装した.本ソフトウェアの効果の検討を行う為,5歳児を対象に紙を使った作話との比較実験を行った.その結果,ソフトウェアの機能を使用しながら作話することにより,発話が活性化され,発話の種類も増えることがわかった.特に,登場人物の表情を付加する機能から心情に触れる発話が増加した.また,話の前後文が統合され,聞き手に理解しやすい内容になるという結果が得られた.
著者
盛岡 頼子 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.371-378, 2009 (Released:2009-08-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

成人の虚弱者の症状について,問診表より調査を行なった。対象は筆者の外来を受診した患者のうち,「虚弱」と判断した39人(男性3人,女性36人,24歳から67歳)である。疲労感を伴う疾患を除外し,疲れやすく,通常の人では影響を受けないような外界の変化やストレスによって体調を崩しやすい人を「虚弱」とした。虚弱者の症状で,疲れやすいこと以外に最も多かったのは冷えに関する症状で6割以上に見られた。その他,肩こり,首のこり,腰痛など筋肉のこりや痛みを有するもの,食べ過ぎると調子を崩すもの,良好な睡眠が取れていないもの,頭痛,目の疲れ,めまいなど頭頸部の症状を持つものが多かった。問診表により虚弱者が多く有する症状の傾向については把握できたが,一方,主訴に関しては非常に多彩であることがわかった。これらの結果を虚弱者の診断,治療に役立てたい。
著者
長谷川 修 佐藤 ひでこ
出版者
一般社団法人 日本病院総合診療医学会
雑誌
日本病院総合診療医学会雑誌 (ISSN:21858136)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.62-67, 2023-01-31 (Released:2023-05-31)

音楽演奏家ジストニアでは,高度な演奏を行うときのみに,目的外の筋に力が入り,巧緻な 演奏動作を阻害する。不適切な筋の使い方を繰り返すと,その感覚記憶が脳に刻み込まれ,ジストニアが悪化する。原点に戻って再学習することが,改善への早道と考える。この考え方を,ジストニアで苦しむ8名のピアノ演奏家に伝え,少なくとも5名はリサイタルを開くまでに 回復した。改善した演奏家の経験を詳しく記した。上述の考え方を行動に移すとともに,脳に 違和感が走った瞬間にピアノを弾く意思を中止して脱力することを繰り返した。さらに,指伸 筋を単独で使用する鍵盤リハビリを研究して実践した。ジストニア治療には誤作動している脳 を自分自身で修正することが必須である。脳機能の特徴を理解した上で,必要に応じて他の治療法も用いながら,焦らずに正しい分離運動を積み重ねることが改善への近道と考える。
著者
佐藤 郁哉
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.456-475, 2008-03-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
17

1990年代いらいの急激な量的拡大にともなって,日本における大学院教育は,大幅な質的変容を余儀なくされてきた.「戦略なき大衆化」とも形容できるその動向にともなって頻繁に取り上げられてきたのは,米国における大学院教育のプログラムとカリキュラムであった.しかしながら,その「アメリカン・モデル」の導入は,多くの場合きわめて不正確な情報と安易な発想にもとづいており,それがひいては,現在日本の高等教育システム全般を空中分解の危機にさらしているとさえ言える.本稿では,最初に大学院教育の量的拡大の実態とそれをめぐる比較的よく知られた事実と問題点について改めて確認する.ついで,著者がかつて共同研究者とともにおこなった社会学の分野における大学院教育に関する日米比較研究から得られた知見にもとづいて,大学院における教育プログラムとカリキュラムを改革していく際にアメリカン・モデルを安直に適用することによってもたらされるさまざまな問題について検討していく.
著者
佐々木 亮 木村 昭夫 萩原 章嘉 小林 憲太郎 佐藤 琢紀 伊中 愛貴 阪本 太吾
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.314-319, 2012-07-20 (Released:2020-08-19)
参考文献数
20

本邦では救急外来における破傷風に対する予防は個人・施設によって異なる. 本研究では, 1.破傷風免疫抗体迅速検査キットTetanus Quick Stick (以下TQS) ®の検査精度を調査すること, 2.破傷風予防アルゴリズムの作成における因子の抽出を目的とした. 2009年10月~2010年3月の間, 当施設に搬送された外傷症例182例を対象にTQSの判定及び, Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay法 (ELISA) による破傷風抗体価を測定し, 年齢・予防接種歴・創傷の程度を記録した. 破傷風に対する十分な防御レベルである破傷風抗体価0.1 IU/mL以上の人は, 182例中114例 (62.6%) 存在していた. TQSの検査精度は感度66.7%, 特異度97.1%, 陽性的中率97.4%であった. 破傷風トキソイドが定期予防接種となった1968年を境に分けて破傷風抗体価0.1 IU/mL以上の割合を比較すると, 1967年以前の生まれはわずか35.0%に対して, 1968年以降の生まれは90%以上も存在していた. TQSや年齢別抗体保有率の相違などは破傷風予防アルゴリズムを作成するうえでの重要な因子となると思われた.
著者
佐藤 滋
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.226-247, 2007 (Released:2022-07-15)
参考文献数
46

1976年に起きたIMF危機は,イギリスの経済史・政治史に決定的な痕跡を残したできごととして注目されてきた。それは,この時期に大幅な財政支出削減や通貨目標値の導入が決定されたことで,このできごとが戦後イギリスにおける財政金融政策上の一大転換点とみなされてきたからである。それゆえ,IMF危機につづく時期を「ケインズ主義」の失敗が決定づけられ,「マネタリズム」の論理が浸透ないし全面化し始めた時期であると捉える先行研究が散見される。しかし,IMF危機が何らかの転機であったと認めたとしても,それはマネタリズムに基づくものであったとはいえない。本稿では,この時期に形成された政策体系の実態とはいったいいかなるものであったのかを原史料の考証から明らかにし,IMF危機の歴史的意義を明らかにしたい。
著者
和佐野 喜久生 湯 陵崋 劉 軍 王 象坤 陳 文華 何 介均 蘇 哲 厳 文明 寺沢 薫 菅谷 文則 高倉 洋彰 白木原 和美 樋口 隆康 藤原 宏志 佐藤 洋一郎 森島 啓子 楊 陸建 湯 聖祥 湯 陵華 おろ 江石 中村 郁朗
出版者
佐賀大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

本学術調査は農学及び考古学の異なる専門分野から、東アジアの栽培稲の起源に関する遺伝・育種学的研究および中国の古代稲作農耕文化の発祥・変遷・伝播についての中国での現地調査、考古遺物・文献・資料の収集とその研究解析、現地専門家との討論を行うことであった。これまでの3回の海外調査によって、多くの研究成果を得ることができた。研究代表者の和佐野がこれまでに行った古代稲に関する調査は、中国の長江のほぼ全流域、黄河の中下流域、山東半島、遼東半島および海南島の中国全土にわたるものとなった。また、調査・測定した古代稲の実時代は、新石器時代の紀元前5,000年から前漢時代までの約5,000年の長期間に及び、その遺跡数も18カ所になった。稲粒の粒大測定は、大量にあるものからは約100粒を任意抽出し、それ以下のものは全粒を接写写真撮影によって行った。また、中国古代稲の特性を比較・検討するために、韓国の2カ所および日本の14カ所の古代遺跡の炭化米の調査も並行して行った。以上の調査結果に基づいて、次のような結論を得ることができた。(1)紀元前5,000年ころの気温は現在より2度は高かったこと、および北緯30度周辺に位置する城背渓および彭頭山遺跡文化(紀元前6,000-7,000年)の陶器片および焼土中に多くの籾・籾殻・稲わらの混入が発見されたことから、紀元前6,000-7,000年頃には北緯30度付近に稲(野生か栽培されたものかは分からない)が多く生育していたと考えられる。彭頭山遺跡の籾粒は6ミリ前後のやや短粒であった。(2)古代稲粒の大きさ・形の変異の状況および稲作遺跡の時代的新旧の分布状態から、東アジアの稲作は、長江の下流域・杭州湾に面した河姆渡および羅家角両遺跡を中心とした江南地方に、紀元前5,000年以上溯る新石器時代に始まったと考えられる。(3)長江の中流域には、紀元前6,000-7,000年の城背渓および彭頭山遺跡から稲粒が発見されているが、稲作農耕の存在を証拠づけるものがまだ発見されていないこと、河姆渡および羅家角両遺跡と同時代の紀元前5,000年頃の稲作遺跡が存在しないこと、中流域に分布する多くの遺跡が紀元前3,000-4,000年のものであること、などから、稲作は下流域から伝播したものと考えられる。(4)長江の最上流域の雲南省の稲作遺跡は紀元前1,000-2,000年の新しいものであり、稲粒も粒が揃った極端な短円粒であること、さらには、雲南省の最古の稲作遺跡である白羊村遺跡の紀元前2,000年頃には、黄河流域からの民族移動の歴史があること、などから、稲作のアッサム・雲南起源説は考えられない。アッサム・雲南地域は、周辺地域から民族移動に伴って生じた稲品種の吹きだまり(遺伝変異の集積地)の可能性が強いことを提唱した。(5)黄河の中下流域の前漢時代の古代稲は、長大粒で日本の現在の栽培稲とは明らかに異なるものであったが、淮河流域の西周時代の焦荘遺跡の炭化米は、九州の弥生中期の筑後川流域のものによく類似した。(6)山東半島の楊家圏遺跡(紀元前2,300年)の焼土中の籾粒は日本の在来の稲品種によく類似したが、遼東半島の大嘴子遺跡の炭化米は短狭粒で、韓国の松菊里遺跡(紀元前500年)、あるいは日本の北部九州の古代稲粒のいずれとも異なるものであった。このことから、稲作が朝鮮半島の北から内陸を南下したとは考えられない。(7)山東半島の楊家圏遺跡、松菊里遺跡(紀元前500年)、および日本の北部九州最古の稲作遺跡・菜畑遺跡のやや小粒の古代稲粒は、浙江省呉興県の銭山漾遺跡の炭化米粒の中に類似するものがかなり見られた。このことは、日本への最初の稲作渡来が江南地方から中国大陸の黄海沿岸に沿って北上し、山東半島から韓国の西海岸を南下しながら北部九州に上陸した可能性を示すものである。森島、湯および王は、雲南省と海南島の野生稲の現地調査を行い、中国の野生稲の実態を明らかにした。佐藤は河姆渡遺跡の古代稲の電子顕微鏡写真撮影によって、同遺跡の稲が野生稲の特徴である芒の突起を有すること、さらに小穂の小枝梗の離層が発達していることを確認した。藤原と湯は、江蘇省青浦県の草鞋山遺跡(紀元前3,400年)周辺を発掘し、当時の水田遺構の確認および稲のプラントオパール分析を行い、当時の稲作の実態を明らかにした。樋口、白木原、高倉、菅谷および寺沢は、それぞれの専門から研究を行い、現在報告書の成作を完了した。厳、蘇、陳、何および劉は、新石器時代の稲作文化および古代民族移動に関する報告書を作成した。