著者
倉林 敦 大島 一彦 松田 洋一 森 哲 細 将貴 佐藤 宏 長谷川 英男 太田 英利
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々は、ヘビからカエルに水平伝播した奇妙なLINE転移因子(以降TE-X)を発見した。本研究ではこの水平伝播現象について、(1)水平伝播発生地域の解明、(2)水平伝播の系統学的起源、(3)ベクター生物の特定、を目的とした。世界各地からカエル類29科161種194サンプル、ヘビ類17科125種139サンプル、寄生虫類166サンプルを収集し、各サンプルのTE-XをPCRと次世代シークエンサーを用いて解析した。その結果、TE-Xの水平伝播は、世界各地で複数回生じており、特にマダガスカルでは様々な寄生虫に仲介されて、現在進行形で脊椎動物間TE-X水平伝播が生じている可能性が高いことを明らかにした。
著者
佐藤 康邦 川本 隆史 越智 貢 大庭 健 池上 哲司 安彦 一恵 星野 勉 水谷 雅彦 中岡 成文 溝口 宏平
出版者
東洋大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本プロジェクトは、医療や環境といった各問題領域ごとバラバラの輸入・紹介から始められた「応用倫理学」を現代日本の文脈に埋め込む作業を通じて、「倫理学におけるマクロ的視点とミクロ的視点の総合」をめざそうとするものであった。初年度開始と同時に総合研究の準備態勢を整え、交付決定後の7月に全体研究打ち合せ会議を開催した。本会議では代表者によって研究目的の詳細な説明がなされた上、二つの報告と活発な意見交換がなされた。12月の全体研究打ち合せ会では、生命倫理、環境倫理、情報倫理の三分野に関する個別報告がなされ、方法論については応用倫理学を「臨床哲学」へと深化・徹底させようとする動向とシステム理論の最前線の議論が紹介された。2月の研究合宿では、生命倫理の難問に即しながら応用倫理学の学問的姿勢を吟味する報告に続いて、研究代表者および分担者が編者を務めた論文集『システムと共同性』の合評会を行なった。最終年度は3会の会議を開催し、全部で11の個別報告と総括がなされた。その大半は別途提出する研究成果報告書や公刊物に掲載されるので、要点のみ列記する。(1)C.テイラー『自我の諸源泉』の検討(星野報告)。(2)公教育における多元文化主義の論争(若松報告)。(3)生命倫理と「公共政策」との連携(平石報告)。(4)〈内在的価値〉の解明(渡辺報告)。(5)環境倫理の再構成(安彦報告)。(6)C・マ-チャント『ラディカル・エコロジー』の吟味(須藤報告)。(7)環境や自然に対する現象学的接近(溝口報告)。(8)阪神大震災後のボランティア・ネットワークの調査(水谷報告)。(9)教育という文化的再生産の機制(壽報告)。(10)討議倫理学の生命倫理への応用(霜田報告)。(11)ビジネス・エシックスのサ-ヴェイ(田中報告)。以上の経過をもって、所期の研究目標はほぼ達成されたものと自己評価を下している。
著者
佐藤 裕徳 横山 勝
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.221-229, 2005 (Released:2006-03-23)
参考文献数
75
被引用文献数
4 4

自然界で活発に増殖するRNAウイルスは,突然変異により絶え間なくゲノム情報を変化させる.ゲノム情報の変化は,しばしばウイルスの免疫感受性,薬剤感受性,細胞指向性,宿主域の変化につながり,予防治療効果の低下や新興再興感染症の原因となる.この“moving targets”に対処するには,ウイルスのゲノムと蛋白質の変化に関する情報が欠かせない.現在,自然界のウイルスゲノムの変異情報は急速に蓄積されつつある.一方,変異に伴う蛋白質の構造と機能の変化を実験的に検証するには未だに時間がかかる.本稿では,最も高速で変化する病原体の一つで,治療薬や免疫からの逃避能力に優れるヒト免疫不全ウイルス(HIV)を中心に,RNAウイルスの変異研究の成果を整理する.また,近い将来,生命現象の記述や創薬に重要な役割を果たすと期待されている計算科学的手法をとりあげ,ウイルスの変異解析と創薬の支援に適用した研究を紹介する.
著者
五十嵐 友香 佐藤 陽治
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.151, no.6, pp.254-259, 2018 (Released:2018-06-08)
参考文献数
5

わが国では,ヒトiPS細胞の樹立が契機の一つとなり,再生医療や細胞治療(再生医療等)の研究と実用化の促進のため国を挙げた取り組みがなされている.特に再生医療等を支える医事・薬事の各種規制の抜本的改革が精力的に進められてきた.医事規制では,安全な再生医療等を迅速かつ円滑に患者に提供する目的で『再生医療等安全性確保法』が制定され,薬事規制では,『薬機法』において「再生医療等製品」が定義されるとともに,再生医療等製品の特性に応じた条件・期限付承認制度が導入された.しかし,実用化・産業化における開発・製造に関するコストなど解決すべき課題はまだ多い.特に米国では2016年末に21st Century Cures Actが成立し,日本の条件・期限付承認制度に類似した制度が設けられるなど,追い上げも激しくなりつつある.本稿では,大きく動きのあった再生医療等にかかる規制について国内外の動向と再生医療の現状と今後対応すべき課題について概説する.
著者
佐藤 秀孝
出版者
駒澤大学
雑誌
駒澤大學佛教學部研究紀要 (ISSN:04523628)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.93-135, 1992-03
著者
新城 拓也 森田 達也 平井 啓 宮下 光令 佐藤 一樹 恒藤 暁 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.162-170, 2010 (Released:2010-12-07)
参考文献数
17
被引用文献数
1 4

本研究は, 主治医が終末期がん患者の死亡確認を行うことや臨終に立ち会うことが, 家族のつらさと医師の対応への改善の必要性に影響するかを明らかにすることである. 2007年, 95のホスピス・緩和ケア病棟の遺族670名を対象に質問紙調査を行った. 全体の73%の遺族が回答した. どの医師が死亡確認を行うか, 医師が臨終に立ち会ったかは家族のつらさとは関連がなかった. 一方, 死亡確認と立ち会いは, 医師の対応への改善の必要性とは有意な関連があった. しかし, 医師が「臨終に立ち会ったこと」と, 「立ち会えなかったが, その日は頻繁に部屋に来ていた」ことの間には, 医師の対応への改善の必要度に有意差はなかった. したがって, 家族は主治医の死亡確認や, 臨終の立ち会いを望んでいるが, もし死亡確認や立ち会いができなかったとしても, 心理的なつらさが強まることはなく, 臨終までに頻繁に部屋に行くことで十分な対応であると考えていることが示唆された. Palliat Care Res 2010; 5(2): 162-170
著者
佐藤 初美
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.111, pp.2032, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)

1985年に運用を開始したNACSIS-CATは,共同分担目録方式によって日本の大学図書館の業務負担を軽減するとともに総合目録データベースの構築に成功し,日本国内のみならず海外の日本関連の研究者たちの研究活動に大きく貢献した。一方で学術情報流通の主流は着実に紙から電子へと移行した。将来にわたって学術研究の支援を確実に行っていくためには,NACSIS-CAT/ILLを基本とした学術情報流通の枠組みを早急に再構築していく必要がある。本稿では,新たな学術情報システムの構築を巡る検討の経緯を振り返り,2020年段階での変更点を詳述するとともに,その後の展望について述べる。
著者
菊池 良和 梅崎 俊郎 山口 優実 佐藤 伸宏 安達 一雄 清原 英之 小宗 静男
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.35-39, 2013 (Released:2013-04-03)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

成人の吃音患者に,社交不安障害(social anxiety disorder,以下SAD)が40%以上もの高い確率で合併する(Blumgartら,2010).SADにおいては,人と接する場面で強い不安を覚えるばかりでなく,社会生活上に大きな支障を及ぼす可能性があり,精神科・心療内科で薬物療法を行われることが多い.しかし,吃音にSADが合併している場合は,吃音をよく知っている言語聴覚士とも協力したほうがSADから回復し,従来の生活に戻れる可能性が高まる.症例は16歳男性,授業で本読みをすることに恐怖を感じ,不登校となった.心療内科でSADと診断され薬物療法を受けるが,本読みのある授業は欠席していた.耳鼻咽喉科に紹介され,環境調整,言語療法,認知行動療法を併用した結果,3週間後に授業を欠席せず登校可能となり,通常の高校生活に戻ることができた.吃音症にSADが合併した症例は,医師による薬物療法だけではなく,耳鼻咽喉科医・言語聴覚士の積極的介入が有用であると考えられた.
著者
野村 直人 佐藤 滋
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.387-393, 2015-10-25 (Released:2015-10-25)
参考文献数
13

巨大災害が引き起こす長期避難生活において、適切な住環境、生活環境の構築は、本格的な復興へと円滑に移行していく上で重要な課題である。2009年に中部イタリアで起きたラクイラ地震においては、復興に膨大な時間がかかることが予想されたことから、「応急建設」という法的枠組みのもと、長期避難生活に耐えうる質の高い住環境を短期間で供給することに成功している。本研究では、第1に適切な緊急時対応及び応急建設を実現させた組織体制を明らかにすること、第2に長期復興プロセスに対する応急建設の有効性を明らかにすることで、災害の規模や被災地の特性に応じた住宅供給のあり方として日本への示唆を得ることを目的とする。本研究により具体的に以下の2点が明らかになった。 1.応急建設物の迅速な建設プロセスや住宅としての質の高さにおいて長期的な復興プロセスに対する有効性が見られた。 2.全国災害防護庁は技術的な蓄積をもとに、被災の規模や被災地の特性に応じて緊急時における住宅供給の戦略を決定し、多様な規制緩和や行政手続きの免除等によって迅速な事業の実施を可能としている。
著者
佐藤 一男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.354-357, 2011

本稿は,日立市において小学生と中学生の理数学力向上のために企業OBたちが展開しているボランティア活動の報告である。NPO法人日立理科クラブが誕生するまでには多くの困難があったが,産官学が一体になってこれを進めてきた。日立市および教育委員会の真剣な対応と学校現場の理解,そして日立製作所の強い支援と在住する企業OBたちの豊富な人材があってこの計画が順調に立ち上がりつつあり,「モノづくりと実験」を基本とするこの教育支援は効果をあげつつある。科学創造立国・日本を堅持するためにも,知識と経験のある企業OBのさらなる活躍に期待したい。
著者
朱 祐珍 渥美 生弘 瀬尾 龍太郎 林 卓郎 水 大介 有吉 孝一 佐藤 愼一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.304-308, 2012-07-15 (Released:2012-09-17)
参考文献数
8
被引用文献数
1

アクリルアミドは様々な用途で使用されるが,長期の曝露によって末梢神経障害を主症状とする慢性中毒を起こすことが知られている。今回我々は,アクリルアミドによる急性中毒を来した症例を経験したので報告する。症例は23歳の男性。自室にて自殺目的にアクリルアミドを水に溶かした溶液を内服し,嘔吐を認めたため救急外来を受診した。来院時意識清明,血圧117/53mmHg,脈拍数101/分,SpO2 99%(室内空気下),呼吸数24/分,体温36.7℃であった。身体所見や血液検査では異常を認めず,輸液にて経過観察をしていたところ,内服8時間後より徐々に不穏状態となった。その後も幻視や幻聴などの中枢神経症状が持続するため緊急入院となった。内服9時間後より全身の硬直,著明な発汗が出現し,内服11時間後より乳酸値の上昇,血圧低下を認めた。輸液負荷を行ったが反応せず,カテコラミンを投与し気管挿管を行った。その後も循環動態は安定せず,肝機能障害,腎機能障害が出現し,血液透析を施行したが,血圧が保てず約1時間で中止した。乳酸値の上昇から腸管虚血を疑い造影CTを施行したところ,著明な腸管壁の浮腫と少量の腹水を認めた。腸管壊死の可能性はあるが,全身状態から外科的処置は困難と判断した。その後も乳酸値の上昇,血圧低下,全身痙攣が続き,アクリルアミド内服40時間後に永眠された。アクリルアミドによる慢性中毒や亜急性中毒の報告はあるが,今回の症例のように急性中毒による劇的な経過で死に至った例は少ない。内服後数時間は症状が出現せず重症化を予測しにくいが,その後劇的な経過で死に至る場合があるため,慎重な経過観察が必要と考えられた。