著者
片山 敦 佐藤 僚介 吉川 朋子
出版者
公益財団法人 平岡環境科学研究所
雑誌
自然環境科学研究 (ISSN:09167595)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.5-12, 2017 (Released:2020-01-07)
参考文献数
34

外来のカワリヌマエビ属の河川や池での生息の報告が,近年関東でも多くされており,在来のヌカエビへの影響が懸念されている.本研究では両種の生息が確認されている鶴見川水系において,分布調査を2014 年および2016–2017 年に行った.2014 年の調査では,カワリヌマエビ属は河川のほぼ全域に出現し,2 地点のみでヌカエビが同所的に採取されたが,2016年にはカワリヌマエビ属のみで,ヌカエビは確認されなかった.池については2014 年には1 地点でカワリヌマエビ属とヌカエビが同所的に,3 地点でヌカエビのみが出現したが,2017 年には2 地点はカワリヌマエビ属のみに置き換わり,ヌカエビのみが生息しているのは2 地点だけであった.この調査でカワリヌマエビ属が侵入すると個体数がほぼ同数の状態から2–3年でカワリヌマエビ属に置き換わることが明らかになった.今後はヌカエビが生息する池への人為的な移入を防ぐために,外来カワリヌマエビ属の問題について,普及啓発を行っていくことが重要だと考えられた.
著者
來間 啓伸 佐藤 直人 中川 雄一郎 小川 秀人
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.407-416, 2020-02-15

計算機システムが実世界と密に連携して動作するためには,論理的に記述・分析できない不確実性に適合するソフトウェアが必要であり,未知の入力値に対して学習データからの推論により出力値を返す機械学習の適用が注目されている.一方,このようなソフトウェアは入力データ空間が定義できず出力値に予測不能性があるため,ソフトウェアの振舞いを確率的にしか把握できない.本稿では,機械学習適用ソフトウェアの高信頼化を目的に,段階的詳細化による演繹的な開発法と機械学習による帰納的な開発法の結合についてテスト・検証の観点から述べ,開発プロセスと制約充足性テスト方法を提案する.我々のアプローチは,演繹的モジュールと帰納的モジュールを分離し,それらをつなぐ部分仕様を設定するとともに,前者については部分仕様が満たされることを前提に論理的な検証を行う一方,後者についてはテストにより部分仕様の充足確率を評価し,論理的な検証結果に確率を付与する.これにより,帰納的に開発した機械学習適用モジュールと演繹的に開発した論理モジュールを,システムの信頼性評価のもとで整合的に結合する.形式手法Event-Bを用いたケーススタディにより,実現可能性を評価した.
著者
佐藤 英明
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.9_102-9_104, 2017-09-01 (Released:2018-01-25)
参考文献数
3
著者
蛯子 慶三 高田 久実子 伊藤 隆 木村 容子 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.402-406, 2018 (Released:2019-08-01)
参考文献数
3

当研究所では寒証に対して面状電気温熱器を用いた置鍼治療を行っている。腰背部8ヵ所に置鍼後に面状電気温熱器を被せ,6段階に温度調節できるダイアルのうち2番目に熱い5チャンネルで20分間加温する本法を,寒証の治療および検査として用いている。加温途中で熱さを不快に感じたときには,治療目的で用いた場合は温度を下げて継続,検査目的で用いた場合はその時点で終了としている。2016年3月から10月までの8ヵ月間に実施した75例(224件)を対象に有害事象を調査したところ,皮膚表面のヒリヒリ・チリチリした感じが5件(2.2%),かゆみが3件(1.3%),体調不良が1件(0.4%)みられたが,いずれも一時的なものであり,重篤な有害事象は認めなかった。結果より,本法の安全性は高いと考えられた。漢方と鍼灸の臨床研究に繋げていくことが今後の課題である。
著者
松岡 栄一 星野 勝弘 佐藤 敦彦
出版者
群馬県水産試験場
巻号頁・発行日
no.7, pp.43-45, 2001 (Released:2011-03-05)

モツゴ(Pseudorasbora parua)は長くだらだらと石などに卵を生みつける産卵様式であることから、一度に大量の卵を得ることが難しく、採卵から一貫した養殖生産を行うことは困難とされてきた。コイ養殖の代替魚種として、種苗の安定生産が可能なホンモロコの導入を図ってきたが、群馬県の在来種でないホンモロコの河川等へ逸散など環境上の問題点も懸念されている。在来種であるモツゴの養殖技術を確立できれば、養殖魚種選択の幅が広がる。前年度は、モツゴ養殖について検討を行うため、集中採卵試験と屋外池にて一貫した養殖生産試験を試みた。今年度は、親魚を生産池に直接放養して自然産卵させる粗放的養殖方法による試験と雌雄による成長差や構成比について検討を行ったので報告したい。
著者
太田 恵大 佐藤 寛之
出版者
進化計算学会
雑誌
進化計算学会論文誌 (ISSN:21857385)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.22-32, 2019 (Released:2020-02-13)
参考文献数
28

For air-conditioning systems in office buildings, it is crucial to reduce power consumption while maintaining office workers' thermal comfort. This paper proposes a simulation-based evolutionary multi-objective air-conditioning schedule optimization system for office buildings. In the proposed system, a target office building is modeled and simulated by EnergyPlus building simulator which is one of the practical simulators widely used in the building construction field. To obtain the temperature schedules which dynamically change the temperature setting over time, we use an improved multi-objective particle swarm optimization algorithm, OMOPSO, to simultaneously optimize the thermal comfort of office workers in the building and the power consumption of the air-conditioning system. Experimental results show that the proposed system can obtain temperature schedules better than the conventional schedule with constant temperature settings from viewpoints of both the thermal comfort and the power consumption. Also, we show experimental results that the multi-objective search in the proposed system acquires better temperature schedules than single objective particle swarm optimization and differential evolution algorithms using ε-constraint method as one option of single objective optimization approaches. Furthermore, we show that OMOPSO obtains temperature schedules widely approximating the optimal tradeoff between the thermal comfort and the power consumption compared with other evolutionary multi-objective optimizers, NSGA-II, NSGA-III, MOEA/D-DE.
著者
古株 靖久 加藤 伸彦 佐藤 文彦
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.443, 2006 (Released:2006-12-27)

オウレン(Coptis japonica)が生合成するベルベリンは抗菌活性等をもつ有用イソキノリンアルカロイドである。当研究室で確立されたオウレン培養細胞はベルベリン生合成活性が高く、かつその生合成酵素遺伝子のほとんどが単離されていることからアルカロイド生合成系のよい研究モデルである。本研究では同細胞を用いてベルベリン生合成系の転写制御因子の単離と機能解析を試みたので報告する。まず同生合成系に関与する転写因子の単離を目的に高生産選抜株のEST約5000クローンを配列決定し、これらの配列からBLASTx検索により約50の転写因子相同配列を見出した。相同性等をもとに27クローンを選抜し、その転写調節活性を一過的RNAi法(BBB 69:63,2005)により解析した。候補遺伝子配列特異的に作製した二本鎖RNAをオウレンプロトプラストへ導入し、3日間培養後に生合成酵素6OMTの転写産物量を定量することにより解析した。その結果、clone#48の発現抑制に伴って6OMTのmRNAが劇的に低下するという結果を得た。他の生合成遺伝子の発現量を測定した結果、測定した8の遺伝子全てで低下を認めた。一方actinや一次代謝系GAPDH、Chorismate mutaseへの影響は認められなかった。clone#48にはbHLHの保存配列が存在し、CjbHLH1と名付けた。CjbHLH1によりベルベリン生合成系が特異的かつ包括的に制御されていることが示唆されたことより、現在、安定形質転換体を作成し、その機能の解析を進めている。
著者
佐藤 甚次郎
出版者
日本地理教育学会
雑誌
新地理 (ISSN:05598362)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.25-38, 1963-06-25 (Released:2010-02-26)
被引用文献数
1
著者
松岡 森 佐藤 慶彦 本田 憲胤
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.488-492, 2015-12-31 (Released:2016-01-26)
参考文献数
13

肺癌に対する異なる術式(胸腔鏡下手術と開胸手術)におけるインセンティブスパイロメトリーを含む呼吸リハビリテーションの効果を,術後呼吸機能回復率を指標に検討した.入院診療録より患者背景・手術記録を調査し,呼吸機能評価として1秒量・肺活量を測定した.胸腔鏡下手術11名,開胸手術13名の患者を対象とした.平均年齢は胸腔鏡下手術群70.6歳,開胸手術群64.4歳と差があり,呼吸機能・手術関係要因などにも差を認めたことから,両群の単純比較はできなかった.術前呼吸機能実測値から切除部位損失率を引いたものを予測値(100%)とし,実測値/予測値を術後呼吸機能回復率とした.回復率は,両群ともに術後予測呼吸機能回復率の80%前後であり,先行研究と比較して,インセンティブスパイロメトリーを含む周術期理学療法が呼吸機能の回復を早めた可能性が考えられた.
著者
藤間 功司 佐藤 紘志 鴫原 良典 竹内 幹雄 千葉 智晴 飯田 勉 砂坂 善雄 高梨 和光
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.881-889, 2007 (Released:2010-11-22)
参考文献数
7
被引用文献数
1

我が国の沿岸には多くの下水浄化センターが存在する. これらは一般には高潮水位などを考慮して建設されているが, 地震・津波による二重被害を想定して建設されている訳ではない. 我々は既に中越地震などでパイプラインの損傷, 浄化センターの一時機能停止などにより, 生活用水が使用できなくなりトイレなどの使用自粛により, エコノミークラス症候群による犠牲者の発生と言う悲しい事実も経験している. 本文では, 東海地震・津波の来襲が予想される静岡市中島浄化センターをモデルに現在得られている予測当該地点地震波の内, 最強と考えられる地震波を用いて構造物の地震被害の予測を行うと共に, 津波の初期予想水位をパラメーターとして被害の予測と復旧日数の算定を試みた.
著者
石川 耕平 佐藤 憲市 伊東 民雄 尾崎 義丸 浅野目 卓 山口 陽平 石田 裕樹 石塚 智明 岡村 尚泰 渕崎 智紀 谷川 聖 田中 伸哉 中村 博彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.688-693, 2017 (Released:2017-09-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

Tumefactive multiple sclerosis (MS) は広範な浮腫や巨大な病変を形成することから, 脳腫瘍と鑑別が困難な例が多い. 本症例は66歳男性で右上下肢の単純部分痙攣発作で発症した. 左前頭葉の病変は画像上悪性グリオーマが疑われ摘出術が行われたが, 病理検査で脱髄性の所見や広範な出血および壊死像, Creutzfeldt cellを認めたことからtumefactive MSの診断に至った. 診断には病理検査が決定的となるが, 画像上病変部の血流上昇を認めないことが悪性グリオーマとの鑑別点と考えられた.
著者
佐藤 彰彦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第41回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.MS3-2, 2014 (Released:2014-08-26)

1988年に塩野義製薬 医科学研究所が発足し,抗ウイルス薬研究を開始した.抗HIV薬研究の中で,我々が見出し,臨床試験入りした化合物として,NNRTI(非核酸系逆転写酵素阻害剤)のS-1153(Capravirine)をはじめとして,多くのINI(インテグレース阻害剤)を見出した. 抗HIV薬では,薬剤を長期に投与することから,薬剤耐性ウイルスの出現を克服することが最重要課題であり,耐性の出現メカニズムを詳細に研究し,その基礎研究を基にした創薬をすることが必要である.S-1153(Capravirine)の研究・開発時から,既存の抗HIV薬の耐性プロファイリングから,耐性ウイルスの克服を目標にした研究を続けてきた.我々は,安定して耐性ウイルスを分離する方法を見出し,このin vitroでの培養手法を用いることで,臨床試験と同じ耐性ウイルスが分離できることがわかった. この手法を用いて,薬剤耐性ウイルスの出現機構を考察したところ,耐性ウイルスの出現時期,頻度,変異部位は,ウイルスの変異率,変異ウイルスの増殖性,薬剤の抗ウイルス効果(選択性)に依存しており,薬剤濃度を高く維持できれば,耐性ウイルスの出現を抑えることができることを理論的に証明し,ウイルスの耐性出現をコントロールできるノウハウを習得した.この理論から,既存の耐性変異に対して活性が低下しない化合物を目標にして,多数の骨格をデザインし,長期培養しても高度耐性ウイルスが分離できない優れた特徴を持つ化合物群を見出した. 我々は,抗インフルエンザウイルス薬の研究も進めてきており,インフルエンザウイルスのin vitro試験での耐性ウイルス出現過程は,HIVと同じ傾向であるが,急性感染症であるインフルエンザ感染の場合は,耐性ウイルスに対するin vitroとin vivo効果は,HIVとは異なり,必ずしも一致しないことがわかってきている.各ウイルスの耐性出現理論について紹介したい.