著者
加藤 英一
出版者
学校法人 北里研究所 北里大学一般教育部
雑誌
北里大学一般教育紀要 (ISSN:13450166)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.111-131, 2010-03-31 (Released:2017-09-29)

2009年、 ⌈ 臓器移植に関する法律⌋の改正案が国会において採決された。日本共産党を除いた 各政党は、改正案の特性から投票に際して党議拘束を外した。投票の結果、原案通りに改正案は 成立した。これによって日本では、法的に脳死が人の死として認められることになった。衆・参両議院での投票行動は、党議拘束を外したにも拘らず、政党による影響を否定できない結果となった。それは1997年の ⌈ 臓器の移植に関する法律⌋が可決された際と同じである。これは R.K.マートンの準拠枠組みの理論によって、ある程度は説明が可能である。しかし今回の法改正における投票行動では、それ以外の要因である、衆・参議院のねじれ状態や小泉チルドレンの影響をも考慮しなければならない。
著者
津田 優一 中濵 直之 加藤 英寿 井鷺 裕司
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.127-136, 2018 (Released:2018-07-23)
参考文献数
40

小笠原諸島の父島では現在、グリーンアノールやセイヨウミツバチをはじめとする外来種の侵入により、在来 の訪花昆虫が減少し外来の訪花昆虫が優占する、送粉系撹乱が生じている。この撹乱により父島に生育する植物の結 果率が変化していることが報告されているものの、植物の遺伝的多様性及び構造に与える影響については明らかにな っていない。本研究では、父島と送粉系撹乱のない聟島において、小笠原固有種のシマザクラを対象に、各島の訪花 昆虫相及び繁殖成功、また遺伝的多様性を解明し、それをもとに送粉系撹乱が繁殖成功及び遺伝的多様性に与える影 響について考察した。両島でシマザクラの花について2 分間隔のインターバル撮影を24 時間あるいは48 時間実施し た(合計撮影時間,聟島:216 時間,父島:120 時間)。また、聟島で23 花序、父島で25 花序の結果率の測定を行っ た。マイクロサテライトマーカー14 座を用いて聟島及び父島の成木の遺伝的多様性の算出を行うと共に、両島の成 木を用いて島間の遺伝的分化について推定した。さらに、親子解析で親を有意に同定できた種子について遺伝的多様 性の算出と種子親の自殖率の推定を行った。訪花昆虫観察の結果、撹乱が生じている父島では、聟島に比べて総訪花 頻度と在来昆虫の訪花頻度が少なく、外来種のセイヨウミツバチが総訪花の65%を占めており、結果率が有意に低 かったこと(p < 0.05)から、シマザクラの送粉系が父島で撹乱されている事が明らかになった。しかし、成木と種 子の遺伝的多様性、自殖率に島間で有意差はなく、各島内の成木には有意な距離による隔離が見られなかった。本研 究から、小笠原諸島における送粉系撹乱はシマザクラの繁殖成功に負の影響をもたらしているものの、遺伝的多様性 には影響をもたらしていないことが明らかとなった。
著者
加藤 英明 岡田 克彦 山崎 尚志
出版者
横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)
雑誌
横幹連合コンファレンス予稿集 第4回横幹連合コンファレンス
巻号頁・発行日
pp.95, 2011 (Released:2012-03-14)

日本で対象者が最も多いであろう企業に勤めるサラリーマンの昇進について、早生まれの効果の存在の有無を検証することにした。戦後、サラリーマンは急増し、過半数を超える日本人がサラリーマンである。ある人はもの作りの専門家として、またある人は作られた製品を売買する営業マンとして企業に就職し、多くの場合、同じ会社でサラリーマンとしての人生を終える。順調に昇進をして、役員、あるいは、社長になることがサラリーマン人生のゴールのひとつとしたら、そのゴールにおいて、早生まれは不利になっているだろうか。幼少年期の劣等感が悪影響を及ぼしている可能性はあるのだろうか。この点を明らかにするために日本の上場企業における役員、社長の生まれ月から検証する。
著者
川崎 達哉 加藤 英幸 笠原 哲治 田岡 淳一 梅北 英夫 桝田 喜正
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.278-284, 2020 (Released:2020-03-20)
参考文献数
18

This study was designed to clarify the relation between the pressure resistance of an angiographical tube and the amount of contrast medium injected under a connected microcatheter used for interventional radiology (IVR). We investigated the injection pressure and the expansion rate at the center of the tube during contrast enhancement by setting the power injector to 1200 PSI pressure, with 2.0 ml/s injection speed, 10 ml injection volume, 5.0 s injection time, and 0 s rise time for tubes with different pressure resistance performance (low or high). Then we examined the amount of contrast medium material discharged from the microcatheter. The low-pressure resistant tube (less than 140 PSI) injection pressure exceeded the pressure performance. The expansion rate increased to 49%, presenting a risk of rupture. The injection pressure of the high-pressure resistant tube (less than 1200 PSI) was within the pressure-resistance performance. The expansion rate increased to 38%. However, when the contrast medium discharge amount contributing to the image was measured within the injection time under the condition of 10 ml injection for 5.0 s, the former was 2.3 ml and the latter was 4.2 ml. The entire amount was not discharged during the injection period. It became apparent that it is discharged in drips after some time. Results show that the tube expansion caused retention of the contrast medium inside, which decreases the actual amount of the injected contrast medium. From the results, we infer the possibility of preventing reduction of the injected contrast medium amount attributable to expansion.
著者
藤田 卓 高山 浩司 朱宮 丈晴 加藤 英寿
出版者
首都大学東京
雑誌
小笠原研究 (ISSN:03868176)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.49-62, 2008-03
被引用文献数
1

2007年6月の南硫黄島調査において採集された約700点の維管束植物標本を固定した結果、現時点までに96種(未同定種も含む)が確認された。南硫黄島において初めて確認された植物は、ミズスギ、オオハナワラビ属の1種、コケシノブ科の1種、ホングウシダ、ナチシケシダ、シンクリノイガ、イネ科の1種、テンツキ属の1種、コクランの9種であった。過去に発表された植物リスト(大場、1983)と、今回の調査によって確認された種を合わせると、本島には、シダ植物44種、双子葉植物59種、単子葉植物26種、合計129種が記録された。これらの中には18種の絶滅危惧種(準絶滅危惧も含む)とともに数種の外来植物も含まれ、特に25年前には全く確認されなかったシンクリノイガが島内に広く生育していることが確認された。これらの外来植物は鳥や風・海流などを介して運ばれた可能性が高いことから、今後も周辺の島から新たな植物が侵入することが懸念される。
著者
濡木 理 伊藤 耕一 MATURANA ANDRES 加藤 英明 石谷 隆一郎
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2016-04-26

光感受性チャネル:光駆動性カチオンチャネルであるチャネルロドプシンは励起光(480nm青色光)の照射によってイオンを流入させることができるため、「光遺伝学」と呼ばれる手法のツールとして神経生物学の分野で広く用いられている。平成28年度にはこのチャネルロドプシンのイオン流入の分子機構を明らかにするため、SACLA自由電子レーザーを用いた時分割構造解析を行い、励起光照射した後1, 50, 250, 1000, 4000マイクロ秒後における構造変化を明らかにした。その結果、発色団レチナールにおけるall-trans型から13-cis型への異性化に伴ってチャネルロドプシン内部に構造変化が生じ、イオン透過経路におけるinner gateと呼ばれる狭窄部位が広げられるように変化することがわかった。音感膜タンパク質:Transmembrane channel-like protein1/2 (TMC1/2) は,聴覚や平衡感覚の受容に関わる機械刺激受容チャネルの有力候補である.鳥類や爬虫類に由来するTMCホモログの発現・精製に成功し,熱安定性が向上して均一性高く発現するコンストラクトの同定に成功した.現在ネガティブ染色による電子顕微鏡観察を試みている.ニワトリ由来Prestinに関しては,さらにコンストラクトの改変および発現・精製系の検討を行った結果,細胞質ドメイン欠損変異体について大量かつ均一に精製することに成功した.これと並行して,ヒト由来Prestinのクローニングも新たに行い,さまざまな細胞を用いての発現条件の検討を行った結果、HEK293S細胞にて良好な発現が確認された.この発現系を用いて界面活性剤や緩衝液などの可溶化条件の検討および120種以上のコンストラクトの比較検討を行った結果,熱安定性が向上して均一性高く発現するコンストラクトの同定に成功した.
著者
加藤 英明 岡田 克彦 山崎 尚志
出版者
横断型基幹科学技術研究団体連合(横幹連合)
雑誌
横幹連合コンファレンス予稿集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.95, 2011

日本で対象者が最も多いであろう企業に勤めるサラリーマンの昇進について、早生まれの効果の存在の有無を検証することにした。戦後、サラリーマンは急増し、過半数を超える日本人がサラリーマンである。ある人はもの作りの専門家として、またある人は作られた製品を売買する営業マンとして企業に就職し、多くの場合、同じ会社でサラリーマンとしての人生を終える。順調に昇進をして、役員、あるいは、社長になることがサラリーマン人生のゴールのひとつとしたら、そのゴールにおいて、早生まれは不利になっているだろうか。幼少年期の劣等感が悪影響を及ぼしている可能性はあるのだろうか。この点を明らかにするために日本の上場企業における役員、社長の生まれ月から検証する。
著者
中村 晃士 鈴木 優一 山尾 あゆみ 加藤 英里 瀬戸 光 沖野 慎治 小野 和哉 中山 和彦
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.121-125, 2012-07-15 (Released:2017-01-26)

われわれは,家族内葛藤から生じたと思われる心因性難聴と診断された女児Aを経験した.16歳の女児Aの幼いころの家庭では,父親がアルコールによる病的酩酊があり,父親から母親に対する暴力が日常的にあった.患者自身は被害に遭うことはなかったが,母親が父親に暴力を振るわれる姿をいつも見ており,緊張した毎日を送っていたと思われる.こうした中,患者は小学校低学年から耳が聞こえにくいという症状を呈していたが,耳鼻科を受診するも耳鼻科の診断がなされるが精神科治療に結びつくことはなかった.患者が小学5年生のときに両親は離婚しているが,父親の仕事をAが手伝うといった形をとっていたため,家庭,そして両親のバランスをAがとるという調整役を担わされていた.その結果として,難聴は次第に悪化し,16歳まで遷延化したため,精神科治療に導入された.診察の結果,Aの難聴は心因性であるとされ治療が開始された.面接の中で,Aにとって難聴は,意思を表明しないための道具であり,防衛として理解された.すなわち,Aは両親の狭間で意見を求められたり,ときにはどちらにつくのかといった態度の表明を迫られたりし,それを出来ないAにとっての防衛策が難聴だったのである.Aは家庭内で調整役を担わされているために葛藤状況が生じていると考えられ,Aの思いを言語化するよう治療では促された.もちろん,防衛としての難聴をAが手放すには時間がかかるが,Aが家庭内での調整役を担わなくても家族が崩壊しないことを現実生活の中で体験していけば,少しずつ難聴を手放せていけると思われた.また現代社会の中で,家庭環境はより複雑化していく一方であり,このような患者が増えていくことが予想される.治療者は,家族内の病理が女性や子どもといった弱い立場の人の身体症状という形で表面化しやすいということを念頭に治療に当たらなければいけない.
著者
加藤 英寿 堀越 和夫 朱宮 丈晴 天野 和明 宗像 充 加藤 朗子 苅部 治紀 中野 秀人 可知 直毅
出版者
首都大学東京
雑誌
小笠原研究 (ISSN:03868176)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.1-29, 2008-03
被引用文献数
1

2007年6月、東京都環境局と首都大学東京は南硫黄島自然環境調査を実施した。南硫黄島で山頂部を含む上陸調査が行われたのは1982年以来25年ぶり、史上3回目である。その厳しく危険な自然環境故に、調査時の安全確保が最大の課題となったが、現地情報がほとんど無い中での計画立案はほとんど手探りの状態で、準備も困難を極めた。また貴重な手つかずの自然を守るため、調査隊が南硫黄島に外来生物を持ち込まない、そして南硫黄島の生物を持ち出して父島などに放さないための対策にも細心の注意を払った。幸いにして今回の調査では事故もなく、数多くの学術成果を得て帰ってくることができたが、調査隊が経験した困難・危険は、通常の調査では考えられないことばかりであった。よって今後の調査の参考となるように、今回の調査を改めて振り返り、準備段階から調査実施までの過程について、反省点も含めてできる限り詳細に記録した。