著者
高橋 彰子 福原 一郎 高木 伸輔 井手 麻衣子 新田 收 根津 敦夫 松田 雅弘 花井 丈夫 山田 里美 入岡 直美 杉山 亮子 長谷川 大和 新井 麻衣子 加藤 貴子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100455, 2013

【はじめに、目的】重症心身障害児者(以下;重身者)は,異常筋緊張など多様で重層した原因で症候性側弯が発症進行する.側弯の進行予防に対して理学療法が施行されるが,それ以外にも日常生活で使用する側弯装具が処方される場合も多い.今までは,ボストン型装具や硬性コルセットなどが広く使用されているが,大きく,通気性も悪く,服が着にくい,また痛みを訴えるなどのデメリットもあった.近年,3点固定を軸に側弯進行を予防し,装着感がよく,通気性なども改善された動的脊柱装具(DSB 通称プレイリーくん)が開発された.開発者の梶浦らは,多様な利点で,重身者の症候性側弯に有効であると述べている.しかし,親の子に対する装具装着の満足度や,理学療法士による効果判定などの関連性や,装具装着による変化に関しての報告は少ない.そこで,動的脊柱装具を処方された重身者の主たる介護者の親と担当理学療法士にアンケート形式で満足度と装具の効果について検討することを目的とした.【方法】対象は当院の外来患者で動的脊柱装具を作成した側弯のある児童または成人17名と,担当理学療法士6名とした.対象患者の平均年齢15.9歳(3~22歳),GMFCS平均4.7(3~5),Cobb角平均82.46(SD31.62)°の側弯を有していた.装具に対する満足度や効果の実感に関するアンケートを主たる介護者の親と担当理学療法士と分けて,アンケートを2通り作成した.親へのアンケートは,装具装着の見た目,着けやすさ,姿勢保持のしやすさ,皮膚トラブル,装着時間,総合的な満足度などの装具使用に関する項目に関して,20項目の質問を紙面上で答えさせた.理学療法士には姿勢変化,治療的効果などの評価の4項目に関して紙面上で記載させた.その他,装具装着前後でのCobb角を算出した.統計処理はSPSS ver20.0を用いて,質問紙に関しては満足度合を従属変数とし,その他の項目を独立変数として重回帰分析を実施し,関連性についてはpearsonの相関を用いた.理学療法士の効果判定に関係する因子の検討では理学療法士の評価を従属変数として,効果に対する要因,Cobb角を独立変数として多重ロジスティック解析を実施した.各質問紙項目内による検討に関してはカイ二乗検定を用いた.また,Cobb角の変化に関しては対応のあるt検定を用いた.危険率は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】全対象者と全対象者の親に対して,事前に本研究の目的と方法を説明し,研究協力の同意を得た.【結果】Cobb角は動的脊柱装具作成装着前後で有意に改善した.動的脊柱装具に関する親の満足度と関連する項目はCobb角の変化ではなく,体に装具があっていると感じている,装具の着けやすさ,装具を装着したときの見た目と関連していた.満足度と装着時間とは正の相関をしており,満足度が高い人ほど装着時間も長かった.理学療法士の評価は満足感と関連していなく,姿勢保持のしやすさ,Cobb角と関連していた.【考察】今回GMFCSレベル4~5のADLで全介助を要し,側弯の進行の危険性が高い方を対象としており,親の関心や理学療法士の治療選択も側弯予防は重要な目標の1つである.重身者の親の満足度は主に子どもの装着に関係する項目と最も関連していた.理学療法士の効果検討としてはCobb角,姿勢保持と関連していた.動的脊柱装具装着の前後で側弯に改善がみられることは,梶浦らの報告とも同様で,この体幹装具が側弯に対して長期的な効果の可能性も示唆された.その装具に関する理学療法士の効果判定はCobb角と関連が強く姿勢の変化を捉えている傾向にあった.親の満足度は最も快適に使用できる項目であり,満足しているほど装着時間が延長することが考えられる.今回のアンケートより,装具に対する親への感想を聴取することで生活状況の確認となり,満足度を高めるように作成することが可能となると示唆された.【理学療法学研究としての意義】重身者にとって側弯は内臓・呼吸器疾患と直接的に結びつきやすく側弯の進行予防は生命予後に関しても重要である.側弯進行予防の理学療法を効果的にするためにも,使いやすい側弯装具は重要な日常生活器機である.新たに開発された動的脊柱装具の満足度と効果についてアンケート調査を行った.親が実際の装具使用を肯定的に感じているほど,装着時間も長く,親の満足度に関連する因子として,装着しての見た目や,子の過ごしやすさも重要な因子であることが今回示唆された.
著者
加藤 清 藤繩 昭 篠原 大典
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.167-178, 1959-03-15

〔Ⅰ〕 実験精神病研究の歴史をみるに,古くはKraepelinがアルコール,モルヒネ,トリオナール,ブローム化合物などを用いて実験的に精神病を惹起せしめ,とくに内因性精神病の病因論の研究に役立てようとし,またその弟子等もコカイン,ハッシュシュあるいはメスカリン酩酊などの精神病理学的研究を行つているのであつて,この種の研究は,すでに19世紀末より,今日まで続いてきたといえる。ただ今日では,メスカリンよりアドレノクロームに至る,種々の幻覚誘発物質の生化学的研究が進み,とくにその分子構造内にインドール核をもつHalluzinogen(D-リゼルグ酸ジェチルアミドすなわちLSD-25,ハルミンあるいはブフォテニンなど)が注目され,実験精神病研究に拍車をかけた。なかでも部分合成された麦角製剤であるLSD-25は,極めて微量(体重1kgにつぎ0.5〜1γ,すなわちメスカリンの約1/1000)で精神障害を惹起しtrace substanceとしてmodel psychosisの生化学的解明,また精神病理学的分析,および治療的応用などに,多大の便宜を与えている。 LSD-25は1943年BaselのHoffmannが麦角アルカロイド研究中,眩暈を伴う不穏感と共に,活発な幻想のある酩酊状態に襲われたことから,偶然発見された。その後1947年Stollがその精神症状を始めて系統的に記載した。すなわち知覚の障害,思考過程の障害,気分の変動を伴う意識変容(乃至夢幻)状態などが,現象学的に記載され,さらに種々なる植物神経症状をも伴うことが認められ,LSD酩酊現象は,非特異的な急性外因反応型に属するものと考えられた。Condrau(1949)は精神病者におけるLSD酩酊現象を観察し,Stollの知見を補い,続いてBeckerは感情-衝動領域および志向領域の障害をLSD精神障害の基本的なものとして,その症状を躁-多動的および抑制-離人症的の二型に分けた。われわれも50例(対照例15例,神経症24例,分裂症11例)における70回の実験精神障害(LSD投与量50〜175γ)において,以上の諸家とほぼ同様な現象を精神病理学的に考察した。ただその状態像は,われわれが先に内因性の間脳症に観察しえた症状と類似する点が多い。すなわちその成立要因としては,やや図式的にいうと,心的エネルギーの動揺,気分状態に規定された意識変容の様態等の要因に加えて,とくにこの心理的エネルギーの動揺が,「心的緊張力」の低下となつて現われ,その結果,時には,自我障害を中心とした,豊富な精神症状を出現せしめることもあり,LSD酩酊現象も,急性間脳症と類似の現象様態を呈すると考えられた。事実,LSD酩酊状態では,幻覚症,躁的あるいは抑うつ的気分状態,二重見当識を伴つた人格意識の障害,その他種々なる間脳-脳下垂体症状を中心とする植物神経症状の合併などがある。これらの諸事実よりわれわれと同じくStaehelinも急性間脳症と考えたが,Condrauもまたアテトーゼ様運動の出た例を観察して,LSD酩酊には間脳が関与していると指摘した。次に,LSD症状が典型的且つ強烈に現われた対照例A. S(男子28才)のLSD酩酊の状態を記載してみよう(LSD服用量75γ)。
著者
齊藤(北岡) 千佳 山本 純平 井部 奈生子 良永(加藤) 裕子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】麹菌<i>Aspergillus oryzae</i>はその酵素によって食品に独特の味や風味を付与することが知られている。本研究では、塩こうじを非加熱ろ過した調味液である「液体塩こうじ」が食肉の呈味およびテクスチャに及ぼす影響を調べ、おいしさ向上への寄与を科学的に検証することを目的とした。<br>【方法】試料には牛モモ肉および豚ロース肉を使用し、各試験に適した前処理を行った。味およびテクスチャはプロテアーゼ活性試験、HPLCによる遊離アミノ酸分析、レオメータによる破断強度測定、官能評価および味認識装置による味分析により評価した。統計解析には、<i>t</i> 検定または一元配置分散分析後、Tukeyの多重比較検定を用いた。<br>【結果】プロテアーゼ活性試験では、35℃処理のカゼインタンパク質量が他温度群に比べ有意に減少した。遊離アミノ酸分析では、牛および豚ミンチ肉において、液体塩こうじ処理群のうま味・甘味を示す成分が有意に増加した。破断強度は、液体塩こうじ処理群で有意に低値を示した。官能評価では有意差はなかったものの、理化学分析と矛盾しない傾向がみられた。味認識装置による分析では、液体塩こうじを添加した豚ミンチ肉で酵素活性の有無に関わらず「うま味後味」が無添加群より高かった。また液体塩こうじ添加群では、酵素を失活させるために高温処理した群よりも「苦味先味」が有意に低値を示した。以上の結果より、液体塩こうじは麹菌の酵素により食肉の呈味成分を増すとともに肉質を柔らかくすることから、味の向上への寄与が検証された。さらに、プロテアーゼの至適温度が35℃付近と判明したことから、加熱調理の直前に15分程度ぬるま湯に浸漬するとおいしさが増すことが示された。
著者
片山 晴善 酒井 理人 加藤 恵理 中島 康裕 木村 俊義 中右 浩二
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 39.5 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.19-26, 2015-01-26 (Released:2017-09-22)

我々は、非冷却赤外検出器を応用した宇宙用赤外イメージャーの実証センサとして地球観測用小型赤外カメラ(Compact Infrared Camera: CIRC)を開発してきた。CIRCの主要目的は,東南アジア諸国やシベリアなどで頻発する森林火災の検知、火山観測、都市部のヒートアイランド現象の把握である。本稿では平成26年5月24日に打ち上げられた「だいち2号」に搭載のCIRCについてその概要と地上試験、および軌道上の性能評価結果等を紹介する。
著者
小野沢 浩 加藤 仁志 鳥海 亮
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.302, 2011 (Released:2011-08-03)

【はじめに】 一般的に変形性膝関節症に対する杖処方は、膝関節面の保護や疼痛緩和を目的に行われる。今回、当施設に通所する両側変形性膝関節症(内側型)を呈した症例に対して、歩行時の痛みの評価からT字杖の免荷効果に着目した理学療法を展開した。その結果、動作指導後、T字杖歩行にて痛みの軽減を図ることができた症例であった。 【症例】 88歳女性。診断名は両側変形性膝関節症。介護区分は要支援1。通所回数は週1回。主訴は歩行時両膝が痛い、自信をもって歩きたい。膝痛は数十年前から出現、ここ数年間で痛みが増悪。杖歩行の経験はなく、屋内・屋外はつたい歩き、又は休憩を取りながら歩行していた。なお、発表にあたり口頭にて同意を得た。 【評価】 日常会話から、認知機能問題なし。リハ意欲強く、学習機能良好。歩行時荷重時痛あり(右>左)。痛みは、踵接地直後から立脚中期に両膝関節裂隙部に出現し、刺すような、重いような痛みであった。FTA右195°左190°、FBS 50点。握力右11kg左10kg。上肢・体幹・下肢MMT4~5。ROMは両股関節伸展-5°、両膝関節屈曲110°/伸展-5°。立位姿勢は骨盤軽度前傾、股関節軽度屈曲、膝関節軽度屈曲、大腿骨に対して頸骨が軽度内旋位。立位にて両大腿四頭筋・大腿筋膜張筋の筋緊張高い。痛みにより連続歩行時間5分程度。 【経過】 免荷効果による両膝関節の荷重時痛緩和を目的にT字杖歩行練習開始。どちらの手で杖を把持した方が良いかわからず、杖先接地面が定まらない歩行。FTAの結果から左把持と杖の長さを調節。杖先が吸盤型のT字杖では杖先接地良好。痛みの評価から、痛みの発生時期と正常歩行の鉛直床反力の変化に着目し、右踵接地に合わせた杖接地のタイミングを口頭と模範的に指導。2ヶ月後には連続歩行時間10分以上可能(施設内)。本症例より、「安心して歩けるような気がする。」という発言を頻回に聴取。 【考察】 T字杖の免荷作用に着目すると、19%の免荷効果が可能であると報告されている。しかし、この効果を発揮する場合、利用者がT杖歩行動作を十分に習得することが条件であり、杖処方時に十分な動作指導が必要であると考える。本症例の場合、歩行時の垂直分力が最も大きくなる踵接地時に免荷効果を発揮するため、右踵接地と同時に杖を接地するよう徹底して指導を行った。その結果、1歩あたりの荷重時間が延長できるようになり、T字杖の免荷効果によって、膝関節内側面にかかる踵接地時の垂直方向の分力が減少し、歩行時の荷重時痛が軽減されたと考えられた。また、そのことにより歩行距離が延長したと考えられた。
著者
藤原 康宏 大西 仁 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.125-134, 2007-10-20 (Released:2016-08-04)
参考文献数
18
被引用文献数
7

近年の教育評価の研究では,学習の場面と独立した評価ではなく,学習の場面に埋め込まれた評価が試みられている.その方法の1つとして,学習者同士が評価を行うことが有用であることが知られている.相互に学習コミュニティメンバー全員の評価をすることは,メンバーの人数が多くなるにつれて困難になるため,評価すべき相手を選択する必要が生じる.その選択方法を考えるために,評価する学習者が,評価対象となっている学習者からも評価されるか否かにより評価が変化するかについて実験を行った.その結果,お互いに評価しあう方が甘い評価を行う傾向があり(「お互い様効果」),お互いに評価しあわない方が教員の行った評価に近いことが分かった.そこで「お互い様効果」を除去し合理的に評価すべき相手を選択し,相互評価を容易に実施できるツールを開発し,その評価を行った.学生と教員による評価の結果,相互評価をさせる場合に有効であることがわかった.
著者
夏原 隆之 加藤 貴昭 中山 雅雄 浅井 武
出版者
The Japan Journal of Coaching Studies
雑誌
コーチング学研究 (ISSN:21851646)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-10, 2017-10-01 (Released:2019-03-01)
参考文献数
78
被引用文献数
1

Accurately judging a situation during soccer is one of the important factors for executing superior performance. In order to acquire decision making ability, in practice and instruction sessions, it is considered desirable to adapt scientific knowledge to coaches' rules of thumb and experiences. However, it has been pointed out that practice and instructions based on scientific evidence are hardly executed. Therefore, in this review, we aimed to examine the relationship between the perceptual-cognitive skills and coaching science related to decision making for the perceptual-cognitive skill research in soccer through an overview of the research results that have been clarified so far about each factor of pattern recognition, visual search behaviors, and anticipation that constitute perceptual-cognitive skills, and the knowledge that supports them. In addition, one of the important tasks in perceptual-cognitive skill research is acquiring perceptual-cognitive skills and developing effective coaching and training methods. Therefore, from the standpoint of motor learning research, we discuss future works on perceptual-cognitive skills of soccer, while exploring the relationship between acquisition of perceptual-cognitive skills and coaching science. It is suggested that the theoretical background clarified through this review would be useful for obtaining scientific knowledge about decision making in an environment with severe temporal and spatial constraints.