著者
原田 大 中込 早苗 影山 明 加藤 潤一郎 川久保 孝
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.723-731, 2019-10-31 (Released:2019-10-31)
参考文献数
9

東日本大震災では東北地方を中心に甚大な被害をもたらした。今後,首都直下型地震においても高確率で発生すると予測されているなか,患者がどの程度常用薬を備蓄しているかに関する情報は少ない。そこで本研究では,外来患者を対象に常用薬およびお薬手帳に関するアンケート調査を行った。その結果,常用薬がある患者のうち27.4%は常用薬の名称・用法・用量のいずれか1つ以上を覚えておらず,かつ常用薬に関する情報も備蓄していなかった。また,約6割の患者は常用薬を備蓄しておらず,備蓄していても5人に2人は1週間未満しか備蓄していなかった。お薬手帳に関しては,医師または薬剤師に対し患者が提示する頻度に有意差が認められた(p<0.001)。今後,薬剤師は患者の薬識向上やお薬手帳の正しい活用法の指導を強化するとともに,常用薬の備蓄を1週間程度可能とすることは,大規模災害に対する有用な対策のひとつとなると考えられる。
著者
瀬川 昂生 有沢 富康 丹羽 康正 加藤 忠 塚本 純久 後藤 秀実 早川 哲夫 中澤 三郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.849-853, 1994

入院および外来の患者,延べ387名より胃管にて空腹時に有管法にて分画採取した基礎およびテトラガストリン刺激後のpH0.95からpH6.9までの標本,3206検体を用いて胃液のpHと滴定酸度(mEq/l)との関係について検討した.一定のpHに対応する滴定酸度は一定した値ではなく,かつその変動幅はpHが高いほど大であったが,pHが高くなるとともに酸度は全体として低下し,pH(X)と滴定酸度(Y)との関係の近似式(Y=369.19-424.09X+203.66X<SUP>2</SUP>-48.29X<SUP>3</SUP>+5.57X<SUP>4</SUP>-0.25X<SUP>5</SUP>)を求めることができた.また,これにより計算したヒト胃液のpHから酸度(mEq/l)を求める換算表を日常臨床のために呈示した.
著者
加藤 基惠
出版者
麻布大学
巻号頁・発行日
1986-06-04

生物の生活環境中には遺伝子レベルでの障害あるいは染色体異常を誘発させる化学物質が多数存在している。 それらの中,特に遺伝的障害を発現する化学変異原物質を検出するために数多くの検出系が考案されている。マウスを用いての実験においては生殖細胞の染色体異常の検出系として優性致死試験や遺伝性転座試験が多く用いられている。しかし,これらの検出系は実験の規模が大きく簡便とはいえない。一般に個体の発生は生殖細胞が合体した1細胞期胚から始まると言える。従って,両親のうちのいずれかの生殖細胞において誘発された障害,あるいはこの障害をもつものを親とする次世代における染色体レベルの遺伝的障害は,さかのぼって1細胞期胚における染色体異常の有無を検索することにより,事前に発見できる可能性があると考えられる。さいわいマウスの1細胞期胚の染色体は特異的で,精子由来と卵子由来の染色体が識別できるので雌雄いずれからの異常かが判別可能である。しかし,1細胞期胚の染色体異常に関する報告は少なくさらに1細胞期胚の染色体異常と他の遺伝的障害との関連性についても明らかにされていない。このことは1細胞期胚の染色体標本作製技術にも問題があると考えられる。 今回の研究は,まず第1にマウス1細胞期胚の染色体標本作製法の改良・開発,第2に,この改良・開発した方法を利用することによって,1細胞期胚の染色体分析結果が環境変異原により発現される優性致死作用や次世代の転座ヘテロ個体の誘発頻度を事前評価できる簡便な検出系になりうるかどうかを検討することを目的とした。そのため既知の化学変異原物質を雄マウスに投与することにより,受精前の配偶子あるいは 受精後の1細胞期胚及び障害を持つ雄による次世代のF_1個体に亘っての障害を明らかにするため種々の実験を実施した。 実験材料と方法 9週齢の雄マウス(Slc-BDF_1)を用い,体重1kgあたり,以下の各変異原物質のそれぞれの量を単独で1回,腹腔内に投与した。 Methyl methanesulfonate (MMS, 100mg) Cyclophosphamide (CPA, 240mg) Trimethylphosphate (TMP, 300mg) Nitrogen mustard-N-oxide hydrochloride (HN_2-O, 100mg) iso-propyl methanesulfonate (i-PMS, 200mg) Procarbazine hydrochroride (PC, 800mg) Mitomycin C (MC, 5mg) Fosfestrol (DSDP, 300mg) なお,X線照射(500 rad)雄マウスについても比較のための実験を行った。 これらの処置をされた雄マウスを経時的に成熟正常雌マウスと交配させ,著者の考案した一連の術式を用いて雌マウスより1細胞期胚を採取し,精子由来の染色体を検査した。 他方,交配後1細胞期胚を採取せず,妊娠を持続せしめた雌マウスについても経時的に着床や胚死の状況を追求すると共に分娩にまで至ったものについては新生仔中のF_1雄個体について遺伝的障害因子保有の有無を知るため,性成熟後に正常成熟雌マウスと交配させ,着床や胚死等の有無を含め,受胎状況を観察し,変異原物質を処置された初代雄の精子による次世代雄への遺伝的障害の有無についても追求した。 また,同様処置した雄マウスの精巣の組織学的所見および精子の形態異常についても検討した。 この他,雄生殖細胞のDNAレベルの障害とその修復機能を観察するため,アイソトープ(thymidine-methyl-^3H)を精巣に投与後,経時的に精子を回収し,オートラジオグラフを作製して不定期DNA合成の発現の有無についても適宜検査した。 また,精子による遺伝的障害以外に精液を介して薬物の雌体内への機械的な搬入による障害等も考慮し,精液中の薬物検出も一部実施した。 実験結果 本研究で改良・開発したマウス1細胞期胚の染色体標本作製法は従来の方法と異なり,標本作製が簡便で,しかも低数性の染色体の発現頻度が低く染色体分析の可能な標本作製についての成功率が高かった。この方法を用いて,精子細胞および精子をMMS,CPA,TMP,HN_2-O,i-PMSおよびX線で処置し,その精子による1細胞期胚の染色体分析を行った。その結果,精子由来の染色体において主に染色体型の異常が観察された。しかし,PCおよびMCで精子細胞および精子を処置した場合は,主に染色分体型の異常であった。一方,精原細胞および精母細胞をPC,MC,i-PMSおよびX線で処置した場合は不受精卵が高頻度に観察された。 変異原物質を雄生殖細胞に処置した場合の各雄生殖細胞に対する優性致死誘発率は,化学変異原物質の種類により異なり,精原細胞では高いが,精母細胞,精子細胞および精子の順に優性致死率が減少するタイプ(PC,MCおよびX線),精子細胞ないし精子に対しては優性致死誘発作用が高いタイプ(MMS,CPA,TMPおよびHN_2-O),全ての生殖細胞に対して優性致死誘発作用が高いタイプ(i-PMS)に分類された。また精原細胞および精母細胞の障害に起因する優性致死現象は着床前の胚の損失によるものであったが,精子細胞および精子に対する化学物質の影響による優性致死現象は主に着床前の胚の損失と着床後の胚死によるものであった。これらの実験結果はこれまでの報告とほぼ一致した。 精子細胞や精子に対してMMS, i-PMSおよびX線を処置した雄を用いて交配させ,排卵後72時間目の胚を回収して分析した結果,卵割遅延および卵割停止が観察され,それらの障害の程度は変異原物質の種類により異なった。 精子をHN_2-Oで処置した後に交配受精させ,出産させた次世代F_1雄の妊孕性試験の結果においては,着床後の胚の死亡を主に引き起こす半不妊および着床胚が全く観察されない不妊のF_1雄個体が高頻度に発現した。これらのF_1雄の半不妊および不妊個体の精巣組織学的検索では,不妊個体において精母細胞での精子形成阻害が観察され,一方,半不妊個体では正常な精子形成が認められた。また,これらの半不妊個体の精母細胞の染色体分析では,非相同染色体間の相互転座を示す鎖状および環状の4価染色体が観察され,相互転座ヘテロ個体であることが確認された。 他方,MMS,MCおよびi-PMSを投与された処置当代における雄について精巣の精子形成および精子の形態に対する影響について組織学的に検索した結果,精母細胞,精子細胞および精子の顕著な細胞死および精子形成阻害は観察されなかった。しかし,MCおよびi-PMSを投与した場合は,精原細胞のDNA合成阻害による一時的あるいは永久的な分裂阻害が観察され,これらの精巣は萎縮が観察された。MCを投与した場合の精子の形態異常は主に精母細胞および精原細胞処置のものに観察された。一方,精子変態を過ぎた段階での精子をMC,MMS,i-PMSおよびX線で処置した場合,精子の形態異常は観察されなかった。 生殖細胞のDNA傷害の修復を示唆する不定期DNA合成はMMS,TMPおよびPCを精母細胞および精子細胞に対して処置した場合誘発されたが,MC処置の場合は誘発されなかった。一方,精子に対してMMSおよびMCを処置した場合は誘発されなかった。 考察 以上の実験結果から,精原細胞および精母細胞処置による優性致死試験で観察された着床前の卵の損失は精原細胞の分裂阻害あるいは障害をうけた大部分の精母細胞が発生して精子変態過程において精子形態異常を引き起こし,受精能に支障を生じ,その結果,不受精卵が生じたものと推察された。一方,精子細胞や精子処置により観察された着床前後の胚の損失は,1細胞期胚の精子由来の染色体異常に起因し,染色体異常を有した1細胞期胚が発生し卵割遅延あるいは卵割停止を生じた結果胚死亡を引き起こしたものと推察された。 不定期DNA合成がDNA障害の結果発現したDNAの修復現象と仮に考えると,精子では不定期DNA合成が発現されず,修復能が欠損しているものと推察された。また,精子形成過程に対する優性致死の発現時期と不定期DNA合成の発現時期との相関性が認められないことより,この2つの現象は発現機構を異にするものと思考された。 化学変異原物質を精子細胞および精子に処置し,それを用いて受精した1細胞期胚の染色体分析で主に染色体型の異常を誘発する化学変異原物質は次代のF_1雄に高頻度に半不妊および不任を示す転座ヘテロ個体を誘発し,一方,染色分体型の異常を発現する化学変異原物質の処置では転座ヘテロ個体の誘発頻度が低い。このように,1細胞期胚で観察された染色体異常の種類および発現頻度とF_1を対象とした場合の転座ヘテロ個体の発現頻度とは相関関係が認められた。 体細胞の染色体に対する放射線と化学物質の作用の違いは,放射線は細胞周期と無関係に染色体異常を発現するものに対し,化学変異原物質はどの細胞周期に処置しても染色体異常を発現するには処置した細胞がDNA合成期を経過する必要があり,そこに発現される染色体異常は主に染色分体型であると言われてきた。しかし,本研究においては化学変異原物質を細胞周期のG_1期にあたる精子細胞および精子に処置し,受精後1回目のDNA合成期を経過した1細胞期胚の染色体分析を行った結果,体細胞の場合とはかなり異なり,主に染色体型の異常が発現された。従って,変異原物質による次世代への遺伝的障害の事前評価には生殖細胞を用いた検出系の必要性を指摘したい。 なお,化学物質を雄個体に処置した場合,その化学物質が射出精液を介して雌個体に持ち込まれ,母体に作用し,二次的に卵の発生あるいは着床に影響を及ぼす場合がありうる結果がえられた。そのため化学物質による優性致死試験の結果の評価においては,遺伝的影響以外に化学物質の射出精液を介した雌マウスへの持ち込みによる影響をも併せて考慮する必要性が指摘される。 以上の実験結果より以下の結論が得られた。 1) 本研究において改良・開発されたマウス1細胞期胚の染色体標本作製法は,簡便であるとともに,信頼度の高い方法である。 2) 1細一期胚の染色体分析は,化学物質に暴露された配偶子の受精能に対する影響も判定できる。 3) 優性致死試験で胎仔の認められない場合の原因について,これが不受精によるのか,染色体異常によるのかの判定には,1細胞期胚の染色体の分析が有効である。 4) 顕著なDNA障害を有した精子でも受精は可能であり,この場合,1細胞期胚において染色体異常が観察される。 5) 体細胞の場合と異なり,雄生殖細胞を化学物質で処置した場合は,1細胞期胚の染色体分析で,おもに染色体型の異常が発現され異常の発見が容易である。 6) 染色体異常を有した大部分の1細胞期胚は,初期胚および胎仔において発生遅延や発生停止を引き起こし,致死経過をとる。 7) 化学変異原物質で雄生殖細胞を処置した後,1細胞期胚の染色体分析で主に染色体型の異常を発現させる化学変異原物質は,次世代のF_1において転座ヘテロ個体を高頻度に誘発する。 従って1細胞期胚の染色体分析は優性致死および次世代の転座ヘテロ個体の発現頻度を事前評価でき,環境変異原物質を対象とした簡便な遺伝毒性の検出系として充分利用できるものと考えられる。
著者
赤石 敏 小圷 知明 黒澤 伸 佐藤 大三 加藤 正人
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1008-1019, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
19
被引用文献数
1

脊髄くも膜下麻酔後に高位胸髄レベルの対麻痺が発生する医療事故が1960年代以降,日本でも少なくとも数十例発生している.一般的にTh9~10に入ることが多いAdamkiewicz動脈(大根動脈;arteria radicularis magna)は日本人の約0.5%の頻度で脊髄くも膜下麻酔が施行されるL3~5から脊髄に入ってくる.くも膜下腔に穿刺針を深く刺し過ぎると,馬尾神経損傷以外に,この動脈を損傷して不可逆的な高位対麻痺が発生する危険性がある.これを回避する最も重要なポイントは,必要以上に深く穿刺針をくも膜下腔に挿入しないことであると思われる.脊髄くも膜下麻酔を施行するすべての医師はこのことを常に念頭に置いておく必要がある.
著者
加藤 讓
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2052-2057, 1994-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4

視床下部は内分泌,自律神経機能を調節する中枢であり,視床下部障害によって多彩な症状が認められる.下垂体機能低下症においては視床下部障害と下垂体障害の鑑別が重要であり,内分泌負荷試験が有用である. LHRHの間欠的投与による視床下部性性腺機能低下症の治療は神経内分泌学の研究の成果の一つである.体重,体温,電解質異常に対しても視床下部病変の関与を常に考慮することが大切である.
著者
加藤 鉄之助
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.21, no.253, pp.417-421, 1914-10-20
被引用文献数
2 1
著者
早川 亮太 小林 直樹 加藤 登 工藤 由起子 荒木 惠美子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.402-409, 2013-12-25 (Released:2013-12-28)
参考文献数
20
被引用文献数
2

日本で流通する日本産海産魚におけるヒスタミン生成を明らかにするために,市販の73魚種について筋肉および腸管を混合したヒスタミン生成モデル試料を作製した.25℃で12時間保存した結果,35魚種において50 mg/kg以上のヒスタミン生成が認められ,これらの魚種がヒスタミン食中毒の原因となる可能性が示唆された.また,1か月の-45℃凍結によるヒスタミン生成の低減の検討では,一部魚種についてヒスタミンが生成され,ヒスタミン生成菌としてPhotobacterium damselaeおよびPhotobacterium iliopiscariumが分離されたが,全魚種について,ヒスタミン生成が低減したことから,この方法が有効なヒスタミン生成の制御方法であることが明らかになった.
著者
伊左治 俊策 吉永 直子 寺石 政義 小川 大輔 加藤 悦子 奥本 裕 土生 芳樹 森 直樹
出版者
Pesticide Science Society of Japan
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
pp.D18-036, (Released:2018-08-03)
参考文献数
29
被引用文献数
1 10

イネ(Oryza sativa)は干ばつで枯死するとその後に給水しても復活することはないが,酢酸水溶液を与えたイネは,乾燥ストレスで一度地上部が枯れながらも,再給水すると新たに地上部を伸長させる特異な乾燥耐性を獲得する.処理中の酢酸代謝を解明するために,13Cで標識した酢酸をイネに処理し,LC-MS及び13C-NMRで13C標識された酢酸代謝物を追跡した.根抽出物のLC-MS及び13C-NMRの分析結果から,処理された酢酸はイネ体内に取り込まれ,グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)によってγ-アミノ酪酸(GABA)に代謝されると示唆された.酢酸処理したイネのGABA蓄積量を調べると,根に続いて地上部でGABAが蓄積され,また地上部のGABA蓄積量に比例して乾燥ストレスに対する生存率が増加した.以上から,地上部のGABA蓄積が酢酸によるイネの乾燥耐性に寄与する可能性がある.
著者
常深 祐一郎 加藤 豊章 森村 壮志
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

表皮で産生されたケモカインCCL17が皮膚での免疫・炎症・再生に及ぼす影響を検討した。創傷治癒においてはCCL17は線維芽細胞の遊走を促進し、CCR4を発現したNGF産生リンパ球や肥満細胞を集めることにより創傷治癒を促進していることが示唆された。腫瘍免疫においてはCCL17が皮膚での腫瘍免疫を抑制している可能性が見いだされた。また抗アレルギー薬は表皮細胞ならびに真皮線維芽細胞からのCCL17産生を抑制した。CCL17は創傷の治療薬の候補となること、抗アレルギー薬を含めCCL17やその受容体であるCCR4の阻害薬は皮膚のリモデリングや皮膚腫瘍の治療薬となりうることが示唆される。
著者
竹内 孝治 加藤 伸一 芝田 信人 高田 寛治 田中 晶子 吉川 由佳子
出版者
京都薬科大学
雑誌
地域連携推進研究費
巻号頁・発行日
1999

ポリフェノールの一つとして、ウイスキー中に多量に含有されているエラグ酸(EA)が前年度までの検討により胃粘膜保護作用および抗酸化作用を有することが示してきたが、さらに今年度は、新たに開発された大腸デリバリー化のための圧感応性カプセルに封入したEAを用い、デキストラン硫酸(DSS)によって誘発される潰瘍性大腸炎の発症に対するEAの効果を検討した。1.圧感応性大腸デリバリーカプセルPressure-controlled colon delivery capsule(PCDC)の使用により、投与されたEAは盲腸部に到達した後に徐々にカプセルから遊離溶出することが判明した。2.ラットにDSSを7日間連続投与することにより、体重減少、大腸の短縮化ならびに下血および下痢を伴う重篤な大腸炎が発生した。DSSによる大腸炎の発生は、PCDCに封入したEA(mcEA : 1-10mg/kg)を1日2回、7日間連続経口投与することによって、用量依存的かつ有意に(>3mg/kg)抑制された。また、mcEAの投与はDSS処置下に認められる大腸の短縮化、脂質過酸化を正常レベルにまで低下させると共に、好中球の浸潤に対しても抑制傾向を示した。なお、DSS誘起大腸炎に対するmcEA(3mg/kg)の保護作用はスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD : 30000units/kg×2)の直腸内投与で得られた効果と同程度であり、また同用量のEA原末と比べて有意に強いものであった。3.これらの結果は、EAがポリフェノールとして抗酸化作用により、臨床における潰瘍性大腸炎の治療に有効性を発揮する可能性が示唆された。
著者
福田 宏 姉川 雄大 河合 信晴 菅原 祥 門間 卓也 加藤 久子
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、社会主義期の旧東欧諸国を事例として権威主義体制の強靱性を明らかにしようとするものである。従来の政治学の議論では、全ての国や地域は民主化されるべきであり、実際においても、その方向に向かっているという暗黙の了解が存在した。ところが、2010年代半ば頃より、民主主義の「後退」や権威主義体制の「しぶとさ」が盛んに議論されるようになってきている(例えば、モンク『民主主義を救え!』2019)。その点において、東欧の権威主義体制は今こそ参照すべき歴史的経験と言える。本研究では、史資料の公開やオーラルヒストリーによって急速に進みつつある歴史学上の成果を活かしつつ、当時における体制の内実に迫りたい。
著者
加藤 素明
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.12-22, 1995

In Plato's Hippias Major 292e6-7, we can find a self-predication sentence ; "The fine is always fine." (We have similar expressions in Protagoras 330c4-6, 330d8-e1, Lysis 220b6-7.) How should we interpret this sentence? We cannot give it any metaphysical meaning drawn from Plato's own theory of Form, which is explicit in his middle dialogues. "The fine" here should be the logical cause, not the one of the metaphysical essentials (cf. Paul Woodruff's Plato Hippias Major, p.150). So taking a sentence like "parthenos kale kalon" (287e4), we can safely paraphrase it in Woodruff's manner : "a fine girl is a fine thing." This can avoid reading the metaphysical meaning into the text. And I would like to make a new proposal for reading of 292e6-7 : "the fine thing is what is to be called fine." This is to emphasize the unique character of the self-predication sentences in the early dialogues. In the Socratic way of discourse, Socrates and his partner get involved into "trial and error" during their pursuit of the knowledge. What they can do then is to give their opinions which seem to them true (so-called "alethes doxa", cf. Meno 85c), and to get close examinations of them. And in this way they are getting closer to the knowledge. My interpretation well describes these activities.
著者
長谷川 伸 岡田 純一 加藤 清忠
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.131-140, 2008-02-01 (Released:2008-08-06)
参考文献数
23
被引用文献数
1

The purpose of this study was to investigate sex differences in the muscle volume (MV) of the iliopsoas, psoas major, and iliacus muscles, normalized by fat free mass (FFM), in the elderly. The subjects were 15 males and 15 females 65 years of age or over. Serial transverse 1.5T magnetic images (10 mm slice) of each subject were taken between the 12th thoracic vertebrae and the lesser trochanter. FFM was measured with a bioelectrical impedance analyzer. The mean MV of each muscle on the right and left sides were calculated and used for regression analysis of the relationship between MV and FFM.A significant correlation was observed between MV and FFM of the iliacus in both sexes (p<0.01), but not between the MV and FFM of the psoas major. MV normalized by FFM and cross-sectional area (CSA) normalized by FFM2/3 showed significantly greater values for the psoas major in the males than in the females (p<0.001), but there was no sex difference in the MV or CSA normalized by FFM of the iliacus.These results suggest that elderly males tend to have a greater muscle volume and cross-sectional area of the iliopsoas than elderly females, and that these sex differences are attributable to differences in the psoas major.
著者
植松 敬三 澤田 和彦 加藤 善二 内田 希 斉藤 勝一
出版者
The Ceramic Society of Japan
雑誌
Journal of the Ceramic Society of Japan (日本セラミックス協会学術論文誌) (ISSN:09145400)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1111, pp.299-304, 1988-03-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
16

Densification of high-purity zinc sulfide was studied by the normal sintering at 800°-1200°C for 2h and hot-pressing at 700°-1100°C under the pressure of 10-40 MPa for 1 to 4h. Zinc sulfide densified slightly in normal sintering and marked grain growth accompanied by a slight increase in density was found above 1000°C. High density was achieved by the hot-pressing between 800° and 1000°C and under the pressure of 40MPa. The grain size was approximately 1μm, and no significant grain growth was observed below 900°C. Above 1000°C, the grain growth became increasingly significant with increasing temperature. At 1100°C, high density was not attained; phase transformation and abnormal grain growth were responsible.
著者
平田 雅之 佐藤 雅昭 依藤 史郎 加藤 天美 神谷 之康
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

(1)MEG、皮質脳波(ECoG)を用いた脳律動計測ECoGとMEGとで同一課題施行し、解析ソフトBESAを用いて時間周波数解析、coherence解析を行った。詳細な脳内処理過程が明らかになるとともに、言語領野に共通の律動帯域と特有の律動帯域があることが明らかなり、現在論文投稿準備中である。(2)脳磁図(MEG)での言語優位半球の評価、言語機能局在の評価単語黙読課題を用いた場合、アミタールテストとの比較で85%一致、電気刺激によるマッピング法との位置の差は6.3±7.1mmであり、非侵襲的検査法として優れた方法であると証明された。アミタールテスト、脳表電気刺激の結果と比較し、成果を論文に投稿した。(3)脳信号解読まず、言語機能解読の基礎となる運動機能についてもsupport vector machineを用いて運動内容解読を試みた。運動内容推定については3種の運動内容弁別が80-90%の正答率でリアルタイムに弁別できることが明らかとなり、英文誌Neuroimageに発表した。言語に関しても時の皮質脳波を計測し、support vector machineを用いた脳信号複号化により発語内容推定を行った。カテゴリー別語想起課題にたいするカテゴリー識別は有意差のある結果が得られなかった。ピ、ポ、ギ、ゴなど単純な発語課題の識別率は運動内容解読には及ばないものの、本方法で言語内容解読がリアルタイムに可能なことが明らかになった。今後さらに性能向上のために計測・解析方法に工夫が必要であると考えられた。
著者
竹内 孝治 加藤 伸一 香川 茂
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.21-28, 2002 (Released:2003-01-28)
参考文献数
40

胃粘膜に軽微な傷害が発生した場合,酸分泌は著しく減少し,胃内アルカリ化が生じる.このような酸分泌変化は非ステロイド系抗炎症薬ばかりでなく,一酸化窒素(NO)合成酵素阻害薬の前処置によっても抑制される.特にNO合成酵素阻害薬の存在下に胃粘膜傷害を発生させた場合,胃酸分泌は“減少反応”から“促進反応”に転じ,この変化はヒスタミンH2拮抗薬,肥満細胞安定化薬,および知覚神経麻痺によって抑制される.すなわち傷害胃粘膜では,プロスタグランジン(PG)およびNOを介する酸分泌の抑制系に加えて,粘膜肥満細胞,ヒスタミンおよび知覚神経を介する酸分泌の促進系も活性化されており,両者のバランスによって傷害胃での酸分泌反応が決定されている.通常は抑制系が促進系を凌駕しているために“酸分泌減少”として出現するが,NO合成阻害薬では抑制系が抑制される結果,促進系が顕在化し,“酸分泌促進”を呈する.傷害発生に伴い管腔内に遊離されてくるCa2+はNO合成酵素の活性化において必要であり,管腔内Ca2+の除去も胃内アルカリ化を抑制する.興味あることに,PGは傷害胃の酸分泌変化において両面作用を有しており,“抑制系”の仲介役に加えて,“促進系”の促通因子としての作用も推察されている.また,傷害胃で認められる酸分泌変化に関与するPGやNOはそれぞれCOX-1およびcNOS由来のものであり,傷害後に認められる胃内アルカリ化は選択的COX-2阻害薬やiNOS阻害薬によっては影響されない.このように,傷害胃粘膜の酸分泌反応は正常胃粘膜とは明らかに異なり,内因性PGに加えて,NO,ヒスタミン,知覚神経を含めた複雑かつ巧妙な調節系の存在が推察される.このような酸分泌変化は障害発生に対する適応性反応の一つであり,傷害部への酸の攻撃を和らげることにより,傷害の進展を防ぎ,損傷部の速やかな修復を促す上で極めて重要である.