著者
桑原 明栄子 牧野 光則
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.108-119, 2005 (Released:2008-07-30)
参考文献数
8

年々増加するディジタルデータの理解と把握を深める手段として,コンピュータグラフィックスによる情報可視化技術は重要性を増している.著者らは階層構造データを対象として,各要素がもつ属性により表示形態や配置順序を決定する3次元一括可視化手法・システムを研究している.これまでに情報をアイコンで表し,入れ子形式で,円領域内に配置する手法「円形都市」を提案している.この手法は,属性の表現,ならびに,属性を利用した順序の入れ替えに対し,ユーザの理解を妨げずに表現できる.また,データの構造だけでなく,同時に表現可能な属性量が多い.一方で,平面上に全データを一面展開するため,提示情報の視認性が一部十分ではなく改善の必要がある.本稿では,これを拡張し,情報を螺旋状に配置し,枠で表現していた同一グループを台座で表し,アイコンサイズの高さを統一することで,各アイコン,台座の遮蔽を軽減する.そのことにより,仮想3次元空間のより有効な利用とユーザのより容易な理解をはかる.さらに,階層構造に限らず,属性情報を持つ要素で構成されているデータにも適用し,システムの汎用性を向上する.
著者
桑原 明栄 牧野 光則
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.21-30, 2003 (Released:2008-07-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1

コンピュータグラフィックス(CG) 技術の近年の発展により,3 次元(3D)CG アニメーションの需要と供給は共に伸びている.その一方でアニメーション制作のコスト低減という課題は完全には解決されていない.この解決にはユーザの熟練度によらない自動化・汎用化が必要である.ユーザの熟練度に強く依存しているアニメーション特有の表現技法として,オーバーアクションなどによる誇張表現がある.誇張表現は現実世界では存在しないが,視聴者の理解を促進する有効な手段として知られており,これまでに様々な手法が提案されている. 本論文では誇張表現を付加した3D CGアニメーション制作をより容易にするユーザ支援システムを提案する.提案システムでは, 物理法則に基づく動作とこれを誇張する動作の結合を「基本動作」と定義し,結合の程度をユーザが指定することでさまざまな誇張表現を実現する.提案システムは誇張表現のパターン化と細部調整を兼ね備える.ユーザの熟練度にかかわらず容易に誇張表現を含む3D CG アニメーションを作成できる.
著者
小松原 明哲
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.230-237, 2017-08-15 (Released:2017-08-15)
参考文献数
15

Safety-Ⅱと,その方法論であるレジリエンス・エンジニアリングは,ヒューマンファクターズの国際的権威であるErik Hollnagel 博士らが提案してきたものである.細部については議論が続いているが,ごく簡潔にいえば,状況に応じた柔軟な対応による安全確保と向上といえ,いわば現場力を指すものである.Safety-Ⅱと対をなすものが,Hollnagel がSafety-Ⅰと位置付けるヒューマンエラー防止である.Safety-Ⅰ,Safety-Ⅱの議論では,そのテクニックにいきなり走るのは危険であり,背景に存在するヒューマンファクターズの理論構造を正しく理解することが強く求められる.本稿では,それらSafety-Ⅰ,Safety-Ⅱの概念,またそれに対応する方法論としてのヒューマンエラーの防止,レジリエンス・エンジニアリングについて,概要を述べる.
著者
小松原 明哲 松岡 政治 西田 和子 大成 直子
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.347-354, 1999-10-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
5
被引用文献数
3

リモコンなどボタン操作機器の“手順的使いやすさ”を設計段階で評価するための実務手法の開発を目的に, あるタスクを遂行する際のボタン操作順を予想させる“操作手順アンケート”, 及び各ボタンの機能を予想させる“ボタンイメージアンケート”を提案した. さらに, それらの有効性を, エアコン実機によるアンケート評価, 及びユーザテストを通じて検討した. 操作手順評価については, アンケートによる予想操作順, 及びユーザテストでの操作結果を遷移図に表現し比較した. ボタンイメージアンケートについては, 正答率を求めた. その結果, 機能予想の正答率の低いボタンでは, 操作手順アンケート及びユーザテスト双方の遷移図で, 操作のばらつきが観察されるなど, 手順評価法としてのアンケートの有効性が観察された. しかし, ユーザテストで見られた同一ボタンの繰り返し操作は, 操作手順アンケートでは検出できないなど, 手順評価法としての限界も観察された.
著者
秋山 理加 濱嵜 朋子 酒井 理恵 岩﨑 正則 角田 聡子 邵 仁浩 葭原 明弘 宮﨑 秀夫 安細 敏弘
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.76-84, 2018 (Released:2018-05-18)
参考文献数
47
被引用文献数
1

【目的】在宅高齢者を対象として簡易嚥下状態評価票(EAT-10)を用いて,嚥下状態と栄養状態の関連について明らかにすることを目的とした.【対象および方法】新潟市の85歳在宅高齢者129名を対象とした.口腔と全身の健康状態に関するアンケートを郵送し自記式にて調査を行った.調査内容は,EAT-10,現在歯数,簡易栄養状態評価(MNA-SF),主観的健康観,老研式活動能力指標,Oral Health Impact Profile-49(OHIP),嚙める食品数である.これらの因子について,EAT-10の合計点数が3点以上を嚥下機能低下のリスク有り群とし,3点未満の群との比較検討を行った.【結果】EAT-10によって,嚥下機能低下が疑われたものは52.7% であった.嚥下機能低下のリスク有り群ではOHIP 高値(p<0.001),嚙める食品数低値(p<0.001)と有意な関連がみられ,主観的健康観で“あまり健康ではない”者の割合が有意に高く(p<0.001),MNA-SFで“低栄養”の割合が有意に高かった(p=0.007).さらに,MNA-SF を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,栄養状態と嚥下機能には有意な関連がみられ,EAT-10の点数が高くなるほどMNA-SF で“低栄養のリスク有りまたは低栄養”となるオッズ比が有意に高かった (p=0.043).【結論】在宅高齢者の嚥下機能低下と低栄養状態との関連性が示唆された.
著者
秋山 理加 濱嵜 朋子 岩﨑 正則 角田 聡子 片岡 正太 茂山 博代 濃野 要 葭原 明弘 小川 祐司 安細 敏弘 宮﨑 秀夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.136-146, 2021 (Released:2021-08-15)
参考文献数
37

わが国では,年々超高齢者数が増加している.健康度の高い在宅超高齢者の食生活の実態を把握することは健康寿命延伸の有益な知見になると考えられる.そのため著者らは,在宅超高齢者を対象として,食事パターンを同定し,栄養素摂取量,栄養状態および嚥下状態との関連について明らかにすることを目的として本研究を行った. 新潟市の91歳在宅高齢者86名を対象として,簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ),簡易栄養状態評価(MNA-SF),簡易嚥下状態評価票(EAT-10)による調査を行った.食品群別摂取量から主成分分析を行い,食事パターンを同定し,それらと栄養素摂取量の関連を検討した.さらに,各食事パターンと食に関連する因子,MNA-SFおよびEAT-10との関連を比較検討した. 主成分分析の結果,4つの食事パターンが同定された.それぞれの主成分得点三分位によって栄養素摂取量を比較したところ,肉,魚,野菜類の摂取量が多く,ご飯,パンが少ない「副菜型」では,高得点群ほどたんぱく質やビタミンDなどの栄養素摂取量が多く,栄養状態も良好な者が多かった.また,MNA-SFで低栄養と判定された群では対照群と比べて嚥下機能低下のリスクのある者の割合が有意に高かった. さらに,「副菜型」の食事パターンでは居住形態や共に食事をする人の有無との関連も示唆された.

1 0 0 0 OA 粘液水腫

著者
石原 明夫
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.32-35, 1970-04-10 (Released:2014-11-22)
参考文献数
5
著者
太田 慧 杉本 興運 上原 明 池田 真利子 飯塚 遼 磯野 巧 小池 拓矢
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.165-179, 2018

近年,日本におけるクルーズ需要は高まっており,都市におけるナイトクルーズも都市観光におけるナイトライフの充実を図るうえで重要な観光アトラクションとなっている。本研究は,東京におけるナイトクルーズの一つとして東京湾納涼船をとりあげ,東京湾納涼船の歴史と運航システムを整理し,東京湾納涼船の集客戦略と若者の利用特性を明らかにした。1990年代以降の東京湾納涼船の乗船客数の減少に対して,2000年以降に若者をターゲットとした集客戦略の転換が図られ,ゆかたを着た乗船客への割引や若者向けの船内コンテンツが導入された。その結果,2014年以降の年間乗船客数は14万人を超えるまでに増加した。乗船客へのアンケート調査の結果,東京湾納涼船は大学生を中心とした若者にとって金銭的にも心理的にも乗船する際の障壁が低いことが明らかになった。つまり,安価で手軽に利用できる東京湾納涼船は学生を含む若者にナイトクルーズ利用の機会を増やしている。
著者
澤田 英夫 浜武 通子 原 明 中山 俊裕 出屋敷 喜宏 サワダ ヒデオ ハマタケ ミチコ ハラ アキラ ナカヤマ トシヒロ デヤシキ ヨシヒロ HIDEO SAWADA MICHIKO HAMATAKE AKIRA HARA TOSHIHIRO NAKAYAMA YOSHIHIRO DEYASHIKI
雑誌
岐阜藥科大學紀要 = The annual proceedings of Gifu College of Pharmacy
巻号頁・発行日
no.41, pp.30-36, 1992-06-30

ヒト胎盤およびブタ水晶体と筋肉から精製したアルドース還元酵素に及ぼす加水分解型および縮合型タンニンの阻害を比較した。ガロタンニンは他のタンニンより強くこれらの酵素を阻害し, このうち1,2,3,4,6-penta-O-galloyl-β-D-glucose(PGG)が最も低いIC_<50>値(60-70nM)を示した。PGGはアルコール脱水素酵素, アルデヒド還元酵素, カルボニル還元酵素に対して低度の阻害しか示さなかった。PGGによるアルドース還元酵素の阻害様式はカルボニル基質に対して混合型であったが, 活性化剤である硫酸イオン存在下では不拮抗型となった。
著者
小野塚 大介 萩原 明人
出版者
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、日本全国47都道府県のインフルエンザ患者1,851万人、感染性胃腸炎患者1,598万人、救急搬送患者3,552万人、病院外心肺停止患者約118万人を対象とし、気候変動による脆弱性が、地域や個人の効果修飾因子によってどのように異なるかについて、環境疫学的手法と社会疫学的手法を融合して解明することを目的とする。本研究により、効果修飾因子による気候変動への脆弱性の違いを全国規模で定量的に推定することが可能となり、地域や個人の特性に応じた気候変動-疾患発症予測モデルの構築、早期警報システムへの応用、疾病予防管理プログラムの改善、医療機関における医療従事者の確保や設備整備等、日本における気候変動適応策を進める上で重要な意義があると考えられる。研究2年目である令和元年度については、(1)文献レビューによる先行知見の整理、(2)データの取得、データクリーニング、データセットの突合、データベースの構築、(3)統計解析及び論文化、を行った。文献レビューによる先行知見の整理については、気候変動による健康影響(感染症、救急搬送、病院外心肺停止)について、国際誌を中心とした文献レビューを行い、先行知見について整理した。また、気候変動の指標として、地域の気象変化(気温、相対湿度、降水量等)のデータを、アウトカムの指標として、感染症発生動向調査に基づく患者情報、全国救急業務実施状況調査に基づく救急搬送データ、ウツタイン調査に基づく病院外心肺停止データをそれぞれ入手し、データベースを構築した。さらに、文献レビューの結果をもとに、研究デザイン、研究対象、データ収集、解析方法について検討し、統計解析及び論文化を進めているところである。
著者
石原 明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1, 1966-03-01

慶応4年(1868)春,政権を天皇に返した徳川将軍の処置に,不平をとなえる旧幕府の人たちは反乱の気配をみせた。そこで官軍がさしむけられ,有栖川宮(ありすがわのみや)を総督とする征討軍は江戸に向い,横浜を基地とするため神奈川奉行の意向をただした。奉行は世界大勢に通じていたので,幕府役人ではあるが無条件で協力することを約した。その結果,病院を設置するため洲千弁天(しゆうかんべんてん)境内の語学所と,野毛山の寺小屋修文館の建物を提供した。4月17日に開設した横浜軍陣病院は英国軍医のウイルスが主任となり,女の看護人を雇い入れて傷病兵を看護した。日本最初の職業看護婦である。病院のあとは国電桜木町駅前と,野毛山動物園入口の老松中学校にあたる。老松中学の地は明治5年に官民合同の近代的病院となり関東大震災まで存続した。今の横浜市大医学部病院の前身である。