著者
松井 豊 菅原 明彦 石井 健介
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.252-253, 2022 (Released:2022-03-01)
参考文献数
7

2021年3月、ケトチフェンフマル酸塩を含有したソフトコンタクトレンズが世界で初めて承認された。海外におけるプラセボレンズを対照とした無作為化二重盲検試験において、対照群に対する眼そう痒感スコアの差は-1.05(p<0.001)であり、一定の有効性が認められたこと等から承認は可と判断した。本品は、医師の指示に基づき、アレルギー性結膜炎を有するソフトコンタクトレンズ装用者のみが適応対象であり、適正使用のための留意事項等がある。
著者
葭原 明弘 深井 浩一 両角 祐子 廣富 敏伸 宮崎 秀夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.822-827, 2001
参考文献数
21
被引用文献数
7

1999年の歯科疾患実態調査によると,5〜14歳で歯肉に所見のある考は47.4%に達している。歯肉炎は主に歯間乳頭部から初発することから,歯肉炎予防にはデンタルフロスの使用が重要と考えられる。本調査の目的は,デンタルフロスを用いた歯科保健指導による歯肉炎の改善と口腔保健行動の変容について評価するものである。対象者は新潟県M小学校の5年生39人(テスト群),Y小学校の5年生18人(コントロール群)であった。テスト群には給食後のブラッシングに加え,上下顎前歯部にデンタルフロスを使用するよう歯科衛生士が指導した。診査はベースライン時(2000年5月)および6ヵ月後に,同一1名の歯科医師が行い,上下顎前歯の歯間乳頭部を対象にPapilla Bleeding IndexおよびPlaque Indexの要訣を用いた。ベースラインにおける一人平均出血部位数,歯垢付首部拉数およびデンタルフロスの家庭での使用率に,2群間で有意な差は認められなかった。一人平均出血部拉数は,テスト群では4.67(SD=3.01)部位から3.03(SD=2.70)部位に減少したのに対し,コントロール群では4.59(SD=2.50)から5.41(SD=3.43)に増加した。6ヵ月間の変化量の差は統計学的に有意であった(p=0.003,Mann-Whitney U検定)。一人平均歯垢付着部位数は,テスト群では4.64(SD=3.02)部位から3.41 (SD=2.68)部位に減少したのに対し,コントロール群では,5.12(SD=2.93)から6.41(SD=2.62)に増加した。6ヵ月間の変化量は,統計学的に有意だった(p=0.008,Mann-Whitney U検定)。さらに,6ヵ月間でデンタルフロスを新たに家庭で使用するようになった者は,テスト群で51.5‰コントロール群で22.2%であった(p=0.023,χ^2検定)。今目の結果は,デンタルフロスの使用を取り入れた歯科保健指導により歯肉炎が抑制されたこと,さらに対象学童の行動変容が起きたことを示している。本プログラムは学校歯科保健活動に組み入れることが比較的容易であり,また今後広く普及が可能な方法と考える。
著者
矢ケ﨑 太洋 上原 明
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.263-276, 2019

夜は人間の開放感と恐怖の入り混じる時間帯であり,その恐怖は幽霊や妖怪を生み出し,現代でも都市伝説やオカルトという形で存続する。その一方で,これらの都市伝説やオカルトは好奇心の対象として消費されており,ゴーストツアーという形態で顕在化している。本研究は,心霊スポットおよび心霊ツアーを対象に,夜の場所に対する人間の恐怖と,その恐怖に対する好奇心を動機としたツーリズムを分析することで,人間が感じる恐怖と場所との関係性について考察した。心霊スポットは,場所の特性を反映して,恐怖の対象が異なり,その差異は怪談に現れる。日本におけるゴーストツーリズムは,実施企業にとって宣伝・広告の意味を持ち,倫理的な配慮がなされる。心霊スポットの分布と心霊ツアーのコースは一致せず,ツアーでは主に郊外の心霊スポットを消費している。
著者
梅原 明彦 沼田 宗純 目黒 公郎
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.393-396, 2014-07-01 (Released:2014-09-27)
参考文献数
4

東日本大震災では被災地域内の火葬場の処理能力を遥かに上回る死者数が発生し,広域火葬計画の策定が進んでいなかったことや地域防災計画に遺体処理に関する項目を定めていなかったことから,大量の遺体の処理に大きく手間取り,宮城県内では仮埋葬という方法が取られた自治体があったことが分かった.この震災を機に遺体処理計画を検討する自治体が増えたが,その自治体の数はまだまだ少なく,被災地でもこれから検討を始める自治体が多いのが現状である.日本での災害時において犠牲者の遺族となった方々は,平常時よりもより迅速で且つ懇切丁寧な遺体処理を求める.しかし,遺族心情に配慮した方法はまだ十分に確立されていないため,遺体処理業務は防災計画において早急に改善を図らなければならない.
著者
桑原 明大 松葉 成生 井上 幹生 畑 啓生
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.91-103, 2017 (Released:2018-04-01)
参考文献数
49

愛媛県松山平野には、イシガイ、マツカサガイ、ヌマガイ及びタガイの4種のイシガイ科貝類が生息しており、愛媛県のレッドリストでイシガイとマツカサガイはそれぞれ絶滅危惧I類とII類に、ヌマガイとタガイは準絶滅危惧に指定され、減少が危惧されている。これらの二枚貝は絶滅危惧IA類であるヤリタナゴの産卵床でもあり、その保全が重要である。本研究では、松山平野の小河川と湧水池において、イシガイ類の分布と生息環境の調査を行い、過去の分布との比較を行った。また、マツカサガイの殻長のサイズ分布、雌成貝によるグロキディウム幼生の保育、幼生の宿主魚への寄生の有無を調べた。マツカサガイは小河川の流程およそ3.3 km内の15地点で確認され、その生息密度は最大で2.7個体/m2であった。イシガイは小河川の2地点のみで、最大生息密度0.05個体/m2でみられ、ヌマガイとタガイを合わせたドブガイ類も1地点のみ、生息密度0.02個体/m2で確認された。いずれのイシガイ類も、1988-1991年の調査時には国近川水系に広く分布し、最大生息密度は、マツカサガイで58個体/m2、イシガイで92個体/m2、ドブガイ類で5個体/m2であり、この25年間に生息域と個体群サイズを縮小させていた。また、マツカサガイの在不在に関与する要因を予測した分類木分析の結果、マツカサガイの分布は河口に最も近い堰堤の下流側に制限され、砂泥に占める砂割合が38.8%より大きい場所で多く見られるという結果が得られた。このことから、堰堤が宿主魚の遡上を制限することによりマツカサガイの上流への分散が阻害されていること、マツカサガイは砂を多く含む砂泥を選好していることが示唆された。また、殻長51.5 mm未満の若齢個体にあたるマツカサガイは全く見つからなかった。一方、雌成貝は4-8月にかけ最大87.5%の個体が幼生保育しており、5-9月にかけ、グロキディウム幼生が主にシマヨシノボリに多く寄生していることが確認された。したがって、このマツカサガイ個体群では再生産がおよそ10年間にわたって阻害されており、その阻害要因は稚貝の定着、または生存にあることが示唆された。以上のことから、松山平野では、イシガイ個体群は絶滅寸前であり、マツカサガイ個体群もこのまま新規加入が生じなければ急速に絶滅に向かう恐れがあることがわかり、これらの保全が急務であることが示された。
著者
小松原 明哲
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.194-200, 2008-08-15 (Released:2016-10-31)
参考文献数
27
被引用文献数
1

規則違反(violation)を,個人が故意に起こした規則に反する行為と捉え,その生起メカニズムを検討 した.代表的な規則違反の形態を整理し,それらを考察すると,その根底には,利益,コントロール,バリアの三つの感情が共通しており,規則違反を抑止するためには,前二者の感情を減少させ,後者の感情を増強させることが重要であることを指摘した.さらに規則違反の基本モデルを提案した.そのモデルをもとに,規則違反の抑止においては態度変容が必要であることを指摘し,社会心理学においての態度変容モデルをもとに,その方策について考察した.さらに,規則違反と企業風土,安全文化の関係,規則改定の仕組み,規則改定の仕組みの監査の重要性について指摘した.
著者
平川 善之 原 道也 藤原 明 花田 弘文 森岡 周
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.23-32, 2013-03-10 (Released:2013-04-04)
参考文献数
29
被引用文献数
2

Total knee arthroplasty (TKA) is a surgical treatment for conditions such as knee osteoarthritis; the treatment aims to relieve knee pain and improve quality of life. Treatment outcomes are stable; however, it has been reported that postoperative pain becomes chronic in 15 - 20% of cases. The aim of this study was to examine the factors involved in the chronicity of postoperative pain by investigating the effects of cognitive and psychological factors on postoperative pain at 3 weeks, 5 weeks, and 4 months post-operation. Subjects were 50 patients who underwent TKA (8 men and 42 women, mean age: 74.8 ± 6.5 years). Cognitive factors in this study comprised an assessment of neglect-like symptoms; such symptoms included decreased “cognitive function regarding the existence of one's own limbs" or “cognitive function regarding the motion perception of one's own limbs." The severity of these symptoms was assessed using the method described by Galar et al. Psychological factors comprised assessments of anxiety and catastrophic thinking about pain. Anxiety was assessed using the state-trait anxiety inventory, while catastrophic thinking about pain was assessed using the pain catastrophizing scale (comprises categories of helplessness, magnification, and rumination). Postoperative pain was assessed using a visual analog scale (VAS). Multiple regression analysis by using VAS as the dependent variable and all other factors as independent variables showed the following factors to be significantly correlated with VAS: neglect-like symptoms at 3 weeks, 5 weeks, and 4 months post-operation and rumination at 3 weeks and 4 months post-operation. Sensory integration becomes difficult because of decreased sensory function in neglect-like symptoms; this is thought to be caused by body image becoming inaccurate. On the basis of these findings, it is considered necessary to approach for the improvement of sensory function in postoperative rehabilitation. In addition, rumination is persistent in pain, which is believed to result in a prognosis of a psychological state of severe anxiety. Therefore, methods for dealing with postoperative pain and giving patients a prognosis that is as precise as possible are thought to be necessary. These measures are thought to be factors in relieving postoperative pain and preventing it from becoming chronic.
著者
中岡 寛 須田 和裕 西原 明法
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
ジョイント・シンポジウム講演論文集 : スポーツ工学シンポジウム : シンポジウム:ヒューマン・ダイナミックス : symposium on sports engineering : symposium on human dynamics
巻号頁・発行日
vol.2000, pp.204-208, 2000-11-08
被引用文献数
2

For rising competition abilities, it is important to do feedback of player's characteristics in or after the game. In this study, We abstracted and resolved characteristic of movement excursion from beginners and experts. Because of feedback of movement excursion will be able to contribute to cradling of players. In the present analysis method, player's information on the position was gotten by estimation with eyes and using recorded videotape. But, these methods are not objective judge and take enormous time as it is unable to do feedback subjective information right after the game. Therefore, We carried out REAL-TIME DIFFERNCE IMAGE PROCESSING SYSTEM developed by Nishihara et al. With this trace analysis system, We estimated the position information of the actual coat of badminton players on the screen in real time. Game was arranged by separately the beginner and expert group of university students, and organized with 11 points match game. From these games, the data including time of rest period as interval of rally, work period as rally, distance of mobility and velocity of mobility were collected. In view of the analytical results in the games, it was clarified that, comparing the expert group with the beginner group, there was no difference in velocity of left-right mobility direction, but the former moved more rapidly in before-behind mobility direction than the latter. As a result of comparing between beginners' and experts' staying time at the court divided into 6×6 segments, the former stayed much longer at the left side in front of the court and the latter stayed longer at the both side in back of the court in significant. Beginners took rest period significantly longer than experts, however there was not difference during work period. Also, movement of excursion, when got and lost points, made players' weak-points obvious easily. Our study shows that this system is effective for improving competition abilities as players can get momently their characteristics of excursion after the game immediately.
著者
宮崎 彰吾 萩原 明人
出版者
The Japan Society of Acupuncture and Moxibustion
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.226-234, 2012
被引用文献数
1

【目的】人々の健康増進に用いられている鍼灸療法の費用をカバーする助成金額と健康指標との関連について検討するため、 国民健康保険の保険者である各自治体が独自に設定している鍼灸療法の公的な助成金額と集団の健康状態の指標とされる平均寿命および疾病分類別の医療費との関連について検討した。 <BR>【方法】福岡県内の85市町村を対象に、 国民健康保険の保険者である各市町村が独自にその範囲を設定している助成制度から 「鍼灸療法に対する1年間当りの助成金額の上限値」 を算出し、 「健康指標 (平均寿命、 標準化死亡比)」 及び 「医療費 (疾病分類別における入院及び入院外の1人当り実績医療費)」 との関連を検討した。 <BR>【結果】鍼灸療法の公的な助成金額と平均寿命との間には有意かつ正の相関 (男性:r=0.53, P<0.001、 女性:r=0.44, P<0.001) が見られ、 標準化死亡比との間には有意かつ負の相関 (男性:r=-0.48, P<0.001、 女性:r=-0.34, P<0.005) が見られた。 更に、 鍼灸療法の公的な助成金額と医療費との間には有意かつ負の相関 (入院:r=-0.26, P<0.05、 入院外:r=-0.30, P<0.05) が見られた。 <BR>【考察及び結論】鍼灸療法を利用する多くの患者は、 主に筋骨格系の症状に対する治療目的で受診している。 助成金額が高い場合ほど平均寿命が延伸するのは、 鍼灸療法によって筋骨格系疾患が改善することにより、 日常生活動作 (ADL) や身体活動量の向上につながり、 致命的な疾患 (例えば癌、 虚血性心疾患と脳血管障害) のリスクを減少したためであると考えられる。 また、 鍼灸療法が致命的な疾患あるいはその原因となる状態に直接影響している可能性も示唆された。
著者
成 元哲 牛島 佳代 松谷 満 阪口 祐介 西崎 伸子 永幡 幸司 三上 直之 守山 正樹 荒川 雅志 石原 明子
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

未曾有の原発災害における人間経験を生活変化と健康影響に焦点を当て長期的に追跡し、実態解明を行うとともに、社会的亀裂を修復するために次の二つの取り組みを行った。第1に、福島県中通り9市町村の2008年度出生児とその母親を対象に、原発事故が与える影響を生活と健康に焦点を当て継続的に記録するための大規模の調査票調査を行った。第2に、上記の福島県内の調査対象者への半構造化面接を行った。これは、当事者の語り部活動を行うための準備作業である。放射能の健康影響についての不安の度合いやリスク対処行動において温度差がある母親が、原発事故後の経験を広く社会と共有できることを目指している。
著者
葭原 明弘 安藤 雄一 池田 恵 小林 清吾 小黒 章 石上 和男 永瀬 吉彦 澤村 恵美子 瀧口 徹
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.339-345, 1996-07-30
被引用文献数
24

1984年より行政事業として成人歯科健診事業を実施してきた地区において,成人歯科健診事業の受診経験が喪失歯数およびう蝕処置状況に及ぼす影響について調査した。調査対象者数は,1994年の歯科健診事業受診者1,311人である。1993年以前に実施された歯科健診事業を1回でも受診したことのある者を「過去受診群」(309人),1994年の歯科健診初診者を「過去未受診群」(1,002人)とした。1994年における「過去受診群」と「過去未受診群」との横断分析のみならず「過去受診群」におけるベースラインデータと1994年との縦断分析も加えて評価を行った。その結果,一人平均喪失歯数については歯科健診事業の受診経験による改善傾向は認められなかった。う蝕処置完了者率については,歯科健診事業受診経験者に経年的な向上を認めた。しかし,これは歯科健診事業の受診によることよりも日常的に歯科医院を受診し易くなったという社会的要因に負うものが大きいと推察された。したがって,成人歯科保健事業については,今後歯科保健教育および適切な事後の予防管理を主体とする方向に可能性を見いだすべきであると考えた。