著者
古田 世子 吉田 美紀 岡本 高弘 若林 徹哉 一瀬 諭 青木 茂 河野 哲郎 宮島 利宏
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.433-441, 2007 (Released:2008-12-31)
参考文献数
27
被引用文献数
4 6

琵琶湖(北湖)の今津沖中央地点水深90 mの湖水検体から,通常Metallogeniumと呼ばれる微生物由来の特徴的な茶褐色のマンガン酸化物微粒子が2002年11月に初めて観測された。しかし,Metallogeniumの系統学的位置や生化学については未解明な部分が多く,また特に継続的な培養例についての報告はきわめて少ない。今回,Metallogeniumが発生した琵琶湖水を用いてMetallogeniumの培養を試みたところ,実験室内の条件下でMetallogenium様粒子を継続的に産生する培養系の確立に成功した。Metallogeniumを産生する培養系には,真菌が存在する場合と真菌が存在せず細菌のみの場合とがあった。実際の湖水中には真菌の現存量は非常に少ないため,細菌のみによるMetallogeniumの産生が湖水中での二価マンガンイオン(Mn2+)の酸化的沈殿に主要な役割を担っていると考えられる。真菌が存在する培養系では約2週間程度の培養によりMetallogeniumが産生された。しかし,細菌のみの培養系においては,Metallogeniumの産生に4週間から6週間を要した。本論文では特に細菌のみの培養系におけるMetallogeniumの発育過程での形態の変化を光学顕微鏡および走査電子顕微鏡を用いて継続観察した結果について報告する。
著者
吉田 敏弘 石井 英也 松村 祝男 吉田 敏弘 林 和生 小野寺 淳 小倉 眞 松村 祝男 小倉 眞 古田 悦造 林 和生 野間 晴雄 小野寺 淳 松尾 容孝 原田 洋一郎
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

文化財保護法や景観法に基づく文化的景観の保全事業実施にあたり、保全対象となる文化的景観の選定にあたっては、文化的景観のAuthenticityを学術的・客観的に評価する必要がある。本研究では、「一関本寺の農村景観」と「遊子水荷浦の段畑」を主たる事例として、景観の価値評価を試行し、次のような5つのステップから成る基礎調査が有効であると判断した。(1)明治初期地籍図などに記録された伝統的景観の特質の解明、(2)伝統的景観(地籍図)と現景観との精密な比較、(3)近代以降の景観変化の過程とメカニズムの解明(土地利用パターンや作物、地割など)、(4)伝統的な景観要素残存の背景を地域の社会・経済・文化的側面から考察、(5)現景観の活用可能性の考察と保全の方向性の提示。なお、上記の作業をヴィジュアルに活用するため、GISの導入と時系列統合マップの構築が有効であることも確認した
著者
古島 早苗 尾長谷 喜久子 恒任 章 井手 愛子 木村 由美子 賀来 敬仁 前村 浩二 江石 清行 栁原 克紀
出版者
一般社団法人 日本超音波検査学会
雑誌
超音波検査技術 (ISSN:18814506)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.274-280, 2018-06-01 (Released:2018-07-11)
参考文献数
13

症例1:40代女性,4年前に他院にて二尖弁による大動脈弁狭窄症と診断され,大動脈弁置換術(CarboMedics 21 mm)が施行された.胸部違和感を自覚したため近医受診したところ,収縮期雑音を指摘され,精査目的に当院紹介となった.心エコー図所見:大動脈弁最大通過血流速度5.0 m/s,平均圧較差(MPG)58 mmHg,有効弁口面積(EOA)0.77 cm2,有効弁口面積係数(indexed EOA)0.45 cm2/m2,Doppler velocity index (DVI) 0.28,acceleration time (AT) 130 msec,弁周囲逆流(−),経胸壁・経食道エコーともに血栓弁やパンヌスを疑うような塊状エコー等は指摘できなかった.左室壁肥厚は認めず収縮良好であった.PT-INR: 2.22.X線透視所見:両弁葉ともに開放制限は認めなかった.症例2:60代女性,11年前に大動脈弁(ATS 18 mm)および僧帽弁(ATS 27 mm)置換術が施行され,経胸壁心エコー図にて経過観察を行っていた.心エコー図所見:大動脈弁最大通過血流速度3.6 m/s,MPG 36 mmHg, EOA 0.59 cm2, indexed EOA 0.42 cm2/m2, DVI 0.21, AT 122 msec,弁周囲逆流(−),経胸壁・経食道エコーともに血栓弁やパンヌスを疑うような塊状エコー等は指摘できなかった.全周性に軽度左室壁肥厚を認め,左室収縮は良好であった.PT-INR: 2.78.X線透視所見:両弁葉ともに開放の低下を認めた.両症例ともにドプラ所見から弁機能不全と診断し弁置換術が施行された.術中所見では両症例ともに弁下に輪状のパンヌス形成が認められた.まとめ:心エコー図では血栓弁やパンヌスを疑うような塊状エコーを描出できなかったが,ドプラ所見から大動脈弁位人工弁機能不全を診断し得た2症例を経験した.最大通過血流速度や平均圧較差,またAT, DVI等も考慮し,これらの指標の急激な変化や経年的な増悪があれば,人工弁機能不全を疑うことが重要であると考えられた.
著者
古澤 拓郎 石田 貴文 塚原 高広 ピタカカ フリーダ ガブリエル スペンサー
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

海面上昇は各地で生活や生業に影響を及ぼしていた。ソロモン諸島の技術的・財政的事情により、調査期間内に移住計画が実行に移されることはなかったために、移住された後にどのような影響がでるかまでを明らかにすることはできなかった。一方、移住計画がなく、隔絶された地域で、人口過密、海面上昇、資源不足などを抱える社会ではメンタルヘルスの問題を抱えていることが明らかになった。都市部での生活習慣病リスクを抑えるととももに、このような地域でのメンタルヘルスを解消することも今後の公衆衛生上の課題である。そして海面上昇対策においては、これらの健康問題を解消する適応策が立案される必要がある。
著者
大村 智 中川 彰 山田 陽城 秦 藤樹 古崎 昭雄 渡辺 得之助
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
CHEMICAL & PHARMACEUTICAL BULLETIN (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.931-940, 1973
被引用文献数
1 118

A series of new antibiotics, Kinamycin A, B, C, and D which are mainly effective against gram-positive bacteria, were extracted with chloroform from the broth filtrate of Streptomyces murayamaensis sp. nov. HATA et OHTANI. Kinamycin C (I), C<SUB>24</SUB>H<SUB>20</SUB>O<SUB>10</SUB>N<SUB>2</SUB>, m/e 496 (M<SUP>+</SUP>), was determined to have an 8-hydroxynaphthoquinone skeleton, nitrile, acetoxyl, and tertiary methyl groups from its ultraviolet (UV), infrared (IR), and nuclear magnetic resonance (NMR) spectra, and was further found to have a unique structure of N-C-N from some chemical reactions and X-ray diffraction. Structure relationship among I and other components A, B, and D was assumed to be due to the difference in the number and position of the acetoxyl group from analyses of IR, NMR, and mass spectra of their acetylated compounds. The antimicrobial activity of the four kinamycins increases with the decreasing number of acetoxy group, in the order of kinamycin C, A, D, and B. In addition, some derivatives obtained during structural studies on I were found to have nearly equal or increased antimicrobia1 activity compared with I and kinamycin D (XI).
著者
古山 萌衣
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.15-29, 2014-12-30

本論は日本が援助国として深く関わるカンボジアについて、そこでの障害者問題に注目したものである。既存の統計データをもとにカンボジアにおける障害者の現状を分析し、今後の障害者福祉・教育施策の課題について検討を行った。まず、内戦終結からの復興および開発途上にあるカンボジアにおける障害者の実態として、中高年層の男性障害者を中心に、現在も戦争被害による影響が色濃く残っている。一方で、若年層の障害者においては、農村部では医療体制の未整備、都市部では交通事故の増加等を背景とする障害比率が高くなっている。このような現状について、戦争・紛争時代の戦後処理の一環として、地雷・不発弾被害者を含む戦争被害者を中心とした障害者支援施策を図るというこれまでの取り組みから、今後は戦争被害者に対象を限定しない幅広い障害者問題への対応および支援施策の展開とともに、国民生活に関わる社会政策の推進が広く求められるということを主張した。また、カンボジアにおけるインクルーシブ教育の推進について、障害者教育は「Education for All」のコンテキストのなかで議論されるべき課題であることを指摘した。カンボジアにおける国民全体の識字率および就学率は向上する傾向にある一方で、障害者についてはその教育レベルは低調な状況にある。基礎教育の完全普及において、依然として貧困やジェンダー、都市部と農村部の地域差は、教育機会を制限する要因となっている。「Education for All」をめざす教育開発のなかでその課題解決・対応と同様に、「障害」による特別な教育的ニーズについての対応が求められるということを主張した。
著者
稲田 文夫 米田 公俊 森田 良 藤原 和俊 古谷 正裕
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.218-223, 2008 (Released:2008-11-08)
参考文献数
12
被引用文献数
2 6

配管減肉に対する流体現象の寄与について説明した.流れ加速型腐食(FAC)とエロージョンでは,壁面への流体作用力が全く異なることを示した.FACの主要因子である乱流物質移動は熱伝達とアナロジがあり,壁面近傍の粘性底層内の分子輸送が支配的とするモデルが実用的である.さらに物質移動は数値流体解析コードで求められる.最後にこれらの手法によりオリフィス,エルボにおける物質移動現象を予測した結果を説明した.
著者
森田 祐介 古屋 友和 田村 総 平尾 章成
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.944-949, 2020 (Released:2020-09-30)
参考文献数
8

人の認知に関わる複数のリソース(視角/聴覚/言語/空間、等)を分散させることで負荷を低減させるHMIの実現を目指す。本研究では想定タスクについて従来の手動操作及び音声操作と、視線・音声を用いたマルチモーダル操作のワークロード評価を比較し、負荷低減への効果を明らかにする。
著者
石﨑 直人 鎌田 洋一 古畑 勝則 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.132-137, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
34

ブドウ球菌食中毒(SFP)は黄色ブドウ球菌(SA)が産生する嘔吐毒であるブドウ球菌エンテロトキシン(SEs)により引き起こされる.SEsには古典型と新型が存在するが,近年食品から両方の型を有するSAが多く検出されている.なかでもブドウ球菌エンテロトキシンQ (SEQ)はSFPにつながる潜在的なリスクが高いと考えられている新型SEsである.そこで,食品中におけるSAの菌数と古典型SEAおよびSEQの産生量との相関性を,スクランブルエッグをモデルとして条件をpH 6.0,7.0および8.0,塩分濃度0.5および1.0%,静置温度25℃に設定し検討した.SAの菌数はすべての条件で24時間後では107/10 g以上,48時間後では109/10 gとなった.SEAの産生はすべての条件で24時間後に確認された.SEQは,NaCl 1.0%加スクランブルエッグではいずれのpHにおいても24時間後に検出されたが,NaCl 0.5%下でのpH7.0と8.0では24時間では検出されなかった.SEQの産生量はSEA量より少なかったが,SEQは比較的低いpHおよび水分活性のスクランブルエッグにおいては産生されやすく,SFPの発症に関与する可能性があることが示唆された.
著者
古原 忠
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
まてりあ (ISSN:13402625)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.103-107, 2004-02-20 (Released:2011-08-11)
参考文献数
50
被引用文献数
2 3
著者
古原 忠 牧 正志
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
まてりあ (ISSN:13402625)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.483-490, 1997-05-20 (Released:2011-08-11)
参考文献数
30
被引用文献数
5 6
著者
羽賀 里御 浦辺 俊一郎 深澤 桃子 加藤 亜輝良 松沢 翔平 加藤 基子 檜山 英己 栗井 阿佐美 南雲 三重子 尾崎 美津子 古森 くみ子 清水 美智江 水品 伊津美 山本 茉梨恵 白鳥 恵 巽 亮子 倉田 康久 兵藤 透
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.465-470, 2020 (Released:2020-09-28)
参考文献数
13

当院はCOVID-19感染者の多い神奈川県にある無床外来維持血液透析クリニックである. 透析患者は学会指針のマスク着用, 手洗い等の標準予防策を遵守し通院している. 今回, 血液透析患者1例がCOVID-19に罹患していることが判明した. この普段からの標準予防策に加えて, 発生から2週間, 感染者が出た透析時間帯の患者は時間帯を固定, 同一メンバーとし, 不要不急の検査, 受診, 手術は延期し, 感染防御対策を行うこと (集団的隔離透析) を補完的に加えることで, 二次感染が防止できたと考えられる事例を経験した. 特にマスク, 手洗い等の普段からの学会指針の基本を遵守することが二次感染防止に非常に有効と考えられた.
著者
坪井 聡 山縣 然太朗 大橋 靖雄 片野田 耕太 中村 好一 祖父江 友孝 上原 里程 小熊 妙子 古城 隆雄 ENKH-OYUN Tsogzolbaatar 小谷 和彦 青山 泰子 岡山 明 橋本 修二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.613-624, 2014

<b>目的</b> 糖尿病患者の病院への満足度に関する対策を政策的に推し進める科学的根拠を得るためには,一般化可能な知見が必要である。本研究の目的は,既存の公的統計を二次利用することで外来に通う糖尿病患者の病院への満足度の分布を示し,関連を持つ要因を詳細に検討することである。<br/><b>方法</b> 患者調査,医療施設調査および受療行動調査(いずれも平成20年)を連結させたデータセットを作成した。患者調査と医療施設調査の連結には,医療施設調査整理番号を,加えて,受療行動調査との連結には,性と生年月日の情報を用いた。外来に通う糖尿病患者の病院への満足度の分布を検討し,また,様々な要因との関連の有無を検討した。関連の検討に用いた項目は,受診状況(初診か再来か),診察までの待ち時間,医師による診察時間,受療状況(他の医療機関の利用の有無等),糖尿病性の合併症,その他の合併症,生活保護法による支払い,禁煙外来,糖尿病内科(代謝内科)の標ぼう,診療時間(土曜日,日曜日,祝日の診療),生活習慣病に関連する健診の実施である。<br/><b>結果</b> 糖尿病患者の62.3%は,病院への満足度において,やや満足,非常に満足と回答し,やや不満,非常に不満と回答した者は5.6%であった。受診状況,診察までの待ち時間,診察時間,受療状況,土曜日の診療の有無は,病院への満足度と統計学的に有意な関連を示した。一方,その他の項目は病院への満足度との間に明らかな関連を示さなかった。統計学的に有意な関連を示した要因を用いた多変量解析では,再診,短い待ち時間,他の医療機関にかかっていないこと,長い診察時間と高い満足度との間に統計学的に有意な関連が観察された。<br/><b>結論</b> 複数の公的統計を連結させることによって,外来に通う糖尿病患者の病院への満足度の分布を示し,関連を持つ要因を明らかにすることができた。糖尿病患者の病院への満足度を高めるために,待ち時間の短縮と診察時間の確保が重要である。今後,多くの公衆衛生施策の検討に際して,公的統計の更なる活用が望まれる。
著者
豊田 彩 古田 幸一
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.140, 2008 (Released:2008-12-01)

【はじめに】 歩行時の立脚中期(Mid Stance以下MSt)は支持側前足部への身体移動、脚と体幹の安定性を確保する相である。前相の荷重応答期(Loading Response以下LR)にて床反力が影響し始め、前方への動きが保持されMStへと伝達される。この際の股関節制御は体幹の安定性、床反力位置を決める重要な因子となる。今回、股関節疾患後のMSt獲得に着目し理学療法を展開した。【症例紹介】74歳女性 身長140cm体重38kg BMI20 H8.4左大腿骨頚部骨折後人工骨頭置換術施行 H19.12転倒し左大腿骨骨幹部骨折後ケーブル3本で締結固定【理学療法評価】ROM:股関節伸展10°MMT:腸腰筋2、縫工筋4、大殿筋3、中殿筋4 疼痛:MSt時右肩関節前面VAS5/10 静止立位:上部胸椎左回旋、左肩甲骨下方回旋、左下角が右に対し1横指下方。下部胸椎・腰椎右回旋、骨盤帯右回旋、右寛骨下制、左股関節外旋、重心右偏位。歩行:左MSt時股関節伸展が乏しく、左上部体幹が下方に引き下がる。【理学療法アプローチ】1.単関節筋トレーニング2.課題変化によるMSt訓練3.上部体幹機能改善訓練【経過と考察】 歩行周期中MStは重心の位置が最も高く前相のLRは最も低くなり、通常この移行期にロッカー機能と大殿筋の求心性収縮で体幹直立位を保っている。症例は、大殿筋の求心性収縮遅延が生じ、ロッカー機能を優位に働かせ、カウンターウエイトにて左単脚支持を担っていた。静止立位では慢性的に重心は右偏位し、左側股関節の固有感覚受容も低下した状態であった。これらの事からMSt時、上半身重心は右に残ったまま左外側の筋・筋膜での股関節制御を高め、床反力ベクトルは股関節後方から対側肩関節へと通過し、左股関節屈曲モーメントと右肩関節伸展モーメントは増加した状態であった。更に、股関節外側制御により体幹を斜走する筋膜であるSpiral lineを伝わり右肩関節への張力を発生させていた。MSt獲得不全が二次的に肩関節に疼痛を及ぼしていた。アプローチとして、大殿筋、腸腰筋の単関節筋トレーニングを非荷重下にて行い股関節単体での筋機能を向上させた。次に運動課題の変化によるMSt訓練として、擬似的にMSt初期を側臥位(左足底を壁面に接地し両下肢の同時収縮運動)にて行い、反力ベクトルを上方へと促し、運動課題が複雑な荷重下でのステップ訓練、歩行へと展開した。更に、左胸郭の動きを促し、上部体幹の動的な安定性獲得を図った。結果、MStでの股関節機能は改善、左上部体幹の動揺は減少し、右肩関節の疼痛は消失した。【まとめ】 歩行時のMSt獲得のためには股関節機能は重要であり、上部体幹や他の下肢関節への連鎖も考える必要がある。今後臨床にて他の歩行周期にも目を向け更なる検討を行なっていきたい。
著者
坂本 伸一郎 斉藤 久樹 古島 真理子
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.75-79, 1974 (Released:2010-04-30)
参考文献数
8

The fixed-frequency threshold tracings at 1, 000 Hz and 4, 000 Hz for periodically interrupted and continuous tones were obtained on 452 cases with various types of auditory disorders.Eleven cases among them showed type V audiogram in that the threshold for periodically interrupted tone is tracked at lower levels than thethreshold for continuous tone on one or more frequency tracings.One case was suspected of non-organic hearing loss, and another case was diagnosed of reflex epilepsy with normal threshold.Other 9 cases was diagnsoed of sensori-neural hearing loss and they showed type V at only one frequency threshold tracing.Authors considered that type V obtained at only one frequency threshold tracing did not indicate nonorganic hearing loss.
著者
古田 厚子
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.252-261, 2014-07-25 (Released:2018-02-13)
参考文献数
33
被引用文献数
1 2

嗅覚の異常を自覚した患者の多くが耳鼻咽喉科を受診する.耳鼻咽喉科における嗅覚障害の診察の手順として,問診,視診,画像診断,嗅覚検査が挙げられる.嗅覚障害を的確に診断し,適切な治療を行うためには,これらの結果を総合的に判断して,嗅覚障害の原因の特定と障害部位の同定を行い,嗅覚障害の程度を評価する必要がある.本稿では基準嗅力検査および静脈性嗅覚検査など嗅覚検査を中心に嗅覚障害の診断に必要な検査について解説する.
著者
古賀 菱子 高山 みづえ
出版者
中村学園大学
雑誌
中村学園研究紀要 (ISSN:02887312)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.231-235, 1985-03-31

メーカーの異なる粒状大豆たん白質A, BおよびCに関し, ×500および×20000の走査型電子顕微鏡像において, A区にはトンネル状がみられ, そのユニットの表層面は緻密で粘性を有するのに対して, B区およびC区はひだ状で, それらのユニットはホールを有し, 粗であり, C区はB区の集合体であると観察された。これらの点からA区は押し出し法, B区およびC区は紡糸法で異なる組織化であったとみられた。また.15%の粒状大豆たん白質を混合したハンバーグステニキにおけるテクスチャーの計測に関し, 官能テスト上, 最も好まれたSWH-Aのテクスチュログラムは大豆たん白質無添加のハンバーグステーキHに類似で, それは貫入および剪断によるかたさについて, SWH-BおよびSWH-Cに対し有意に高く, 組織化の相違によるテクスチャーに及ぼす影響が伺われた。
著者
竹内 義真 紙本 篤 古地 美佳 関 啓介 髙見澤 俊 宮崎 真至
出版者
日本歯科医学教育学会
雑誌
日本歯科医学教育学会雑誌 (ISSN:09145133)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.42-49, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
7

抄録 日本大学歯学部付属歯科病院 (以下, 当院) は, 島しょ地区の各診療所 (以下, 離島歯科研修施設とする) を研修協力施設に設定し, 離島歯科研修を地域歯科医療分野の歯科医師臨床研修プログラムに導入している. 各離島歯科研修施設では, 当院の指導歯科医および研修歯科医が2人1組を編成して, 島民のニーズに応じた地域歯科保健や歯科医療を目的に1週間の研修を実施している. 研修歯科医の研修では, 離島歯科研修終了後にポートフォリオ作成の一環として研修体験シート, 総括的自己評価シート, 研修歯科医診療・介補記録, 離島歯科診療における自己評価チェックリストを作成する. また, 指導歯科医も研修歯科医に対する評価チェックシートを作成する. 離島歯科研修が歯科医師臨床研修に有益であることは, 2007年に日本歯科医学教育学会雑誌で報告している. 今回は, 2009年から2018年の研修歯科医138名の既存データをもとに, 離島歯科診療における診療内容, 研修歯科医の自己評価と指導歯科医の評価の比較および研修体験シートと総括的自己評価シートの自由記載を, テキストマイニングツールにてテキストマイニングを行い分析した. その結果, 離島歯科研修は研修歯科医が地域社会における歯科の役割を理解し, 医療人としての人格を育てる機会となり, 生涯研修の第一歩となることが示唆された.
著者
池田 裕美 山口 剛史 小平 桃子 Bahry M. A. Chowdhury V. S. 安尾 しのぶ 古瀬 充宏
出版者
Japanese Society of Pet Animal Nutrition
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.47-58, 2017-04-10 (Released:2017-05-02)
参考文献数
35

ジャンガリアンハムスター(以下、ジャンガリアン)とロボロフスキーハムスター(以下、ロボロフスキー)はともにドワーフハムスターと呼ばれ同属でありながら、ロボロフスキーはヒトに慣れにくく多動性を示す。これまでの研究により、ジャンガリアンに比してロボロフスキーでストレス感受性が高いのではないかと仮説を立て、多動性とストレス感受性との関連性を解明することを目的とした。野生のドワーフハムスターは群れで生活するために単離ストレスがかかりやすいのではないかと考え、単離飼育を用いた。ジャンガリアンとロボロフスキーの3週齢雄を群飼で馴化した後、群飼と単飼の2つのグループに分けた。3種類の行動試験を実施し、行動量、不安様行動および社会的行動を測定した。その後得られた海馬および小脳のサンプルを用いて、L型ならびにD型アミノ酸およびモノアミンの分析を行い、さらに、血漿中コルチゾール含量の測定も行った。その結果、単飼開始初期の行動試験においては、ロボロフスキーの多動性が不安様行動を反映している可能性が得られたものの、その後の行動試験ではストレスによる影響はみられなかった。このことから、ハムスターに対し単離は弱いストレスであり、両者の行動量ならびに脳内アミノ酸およびモノアミン代謝にはほとんど影響を及ぼさないことが示唆された。