著者
古沢 浩 伊藤 耕三
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.3, no.11, pp.583-589,581, 2003

脂質ナノチューブは, カーボンナノチューブと違って, 外孔・内孔ともに親水性である。そのため, いくつかの潜在性をもっている。一つは, 生体系・微小管の代替品としての可能性である。そしてもう一つは, 内孔という一次元ナノ空間を, 化学反応や生体分子輸送の場として使用できるかもしれないという将来性である。本稿では, この脂質ナノチューブをマニピュレーションする方法を, 2つ紹介する。一つは, 顕微授精などで用いられる微小注射針を利用する方法である。この方法を用いると, ガラス基板上に, 単離したナノチューブを自由自在に任意の方向へ配列固定することが出来る。この我々の発見したマニピュレーション法は, 応用上有望であると思われる。例えば, 半分ほどチューブを注射針から出した状態で固定できれば, ナノピペットが作れるかもしれない。一方, もう一つのマニピュレーション法は, レーザピンセットを用いた方法である。これにより, 例えば, 一本のナノチューブを弓状に曲げることが出来る。そこで, この曲げた状態でレーザスイッチを切ったときの, 元の直線形態へと緩和する所要時間から, チューブの剛性 (ヤング率) を求めた。その結果, 微小管とほぼ同程度のヤング率をもつことがわかった。このことからも, 脂質ナノチューブは, 微小管・代替品としての可能性を持っていることが示唆される。さらに, ヤング率の温度依存性も調べた。この結果から, ベシクルへの形状転移温度よりも手前で, チューブが柔軟化する (すなわち, 壁面脂質の面内秩序が緩む) ことが明らかとなった。
著者
鈴木 周朔 渡邉 二祐子 眞野 容子 古谷 信彦
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.158-163, 2018-03-25 (Released:2018-03-27)
参考文献数
25

緑膿菌は,びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis; DPB)等の慢性気道感染症を増悪する主な原因菌である。マクロライド系薬の少量長期低療法によるDPB患者の生存率は,既存の治療法に比べ著しく上昇した。しかしマクロライド系薬は緑膿菌に対して抗菌活性を持たない。マクロライド系薬の作用解明のために様々な検討が行われた結果,緑膿菌の病原因子を抑制することが報告された。しかし,これらの研究は短期間マクロライド系薬を緑膿菌に曝露し評価している。本研究では,マクロライド系薬(エリスロマイシン,クラリスロマイシン)を2年間緑膿菌に継続曝露することによりマクロライド系薬少量長期療法をin vitroで再現し,緑膿菌の外毒素(トータルプロテアーゼ活性,エラスターゼ活性,ピオシアニン産生量),及びマクロライド系薬曝露後の緑膿菌上清の添加がA549細胞へ与える影響について検討を行った。緑膿菌の外毒素産生性,及びA549細胞に対する障害性は,マクロライド系薬の曝露期間延長に伴い抑制が確認された。マクロライド系薬少量長期療法は,経時的に外毒素の産生を抑制することで緑膿菌の病原性を低下させ,DPB等の臨床経過を変化させるのかもしれない。
著者
青木 勝詔 鈴木 恵友 高梨 久美子 石井 一久 SATYANARAYANA B. S. 尾浦 憲治郎 古田 寛 古田 守 平尾 孝
出版者
一般社団法人 日本真空学会
雑誌
真空 = JOURNAL OF THE VACUUM SOCIETY OF JAPAN (ISSN:05598516)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.430-432, 2006-07-20
参考文献数
8

&nbsp;&nbsp;A novel method to make the sharp emitter tips having low threshold voltage of field emission was achieved using nanodiamond particles on conductive amorphous carbon films. A conductive tetrahedral amorphous (ta) carbon film and nano-sized diamond particles with the size of 50 to 200 nm were sequentially deposited by cathordic arc method using a glass substrate at room temperature. Tip structure with the height of 10 to 40 nm was formed by H<sub>2</sub> plasma etching of the diamond particles/ta-C double layer film. The threshold voltage of the field emission from the tip structures formed by the H<sub>2</sub> plasma etching was 3 V/&mu;m that was significantly lower than 10.4 V/&mu;m for the as-deposited diamond particles/ta-C double layer carbon film. This selective dry etching method using the nano-diamond particles could fabricate sharp and high density nano-sized diamond emitters on conductive ta-C films without any photo-masks of lithography processes.<br>
著者
小川 基彦 萩原 敏且 岸本 寿男 志賀 定祠 吉田 芳哉 古屋 由美子 海保 郁夫 伊藤 忠彦 根本 治育 山本 徳栄 益川 邦彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.359-364, 2001-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
16
被引用文献数
5 7

1998年にツツガムシ病と診断された患者416人の臨床所見について解析を行った. 主要3徴候である刺し口, 発熱, 発疹は, それぞれ86.5%, 97.7%, 92.3%の患者に, またCRP, GOT, GPT, LDH上昇が, それぞれ957%, 84.8%, 777%, 90.7%に認められた. これらの所見はほとんどの患者に認められ, 診断に有用であることが示された. また汎血管内凝固症候群が21人に認められ, 命を脅かす疾病であることがうかがわれた. リンパ節腫脹は49.7%の患者に認められ, そのうち74.6%は局所にのみ腫脹が認められた.さらに, 腫脹した部位が刺し口の近傍に認められる傾向があった. また, 大部分の刺し口は痂皮状で, 腹部や下半身 (特に下肢) などに認められた. 一方, 刺し口, 発疹が, それぞれ13.5%, 77%の患者には認められず, 風邪などと誤診されやすいことも示唆された. また, 血清診断で陰性であった患者においては, 主要3徴候は約半数に, 刺し口は約70%の患者に認められた.したがって, 現在の血清診断法では診断できないツツガムシ病が存在する可能性が推察された.今回の解析によって全国レベルでの臨床医学的側面があきらかとなり, 今後の診断および治療に役立つものと考えられる. 一方で, 臨床所見だけからは診断が難しいケースが明らかとなり, 血清診断法の改良の必要性も示唆された.
著者
佐古井 智紀 細谷 聡 藏澄 美仁 田北 浩之 戸上 健
出版者
人間-生活環境系シンポジウム実行委員会
雑誌
人間-生活環境系シンポジウム報告集 = Proceedings of Symposium on Human-Environment System
巻号頁・発行日
vol.39, pp.187-190, 2015-11-20

衣服による面積増加を考慮して皮膚と着衣間の多重放射を考慮した伝熱モデル式を提案した.このモデル式から,着衣が吸収する日射より生地を透過後に皮膚が吸収する日射の方が,日射吸収量が同一ならば人体の熱収支に大きく影響を及ぼすことを確認した.一重の衣服が部分的に身体を覆う場合に限るが,熱収支に基づき全身の着衣の日射吸収率,皮膚の日射吸収率を得る部位の重み係数を導いた.提案した解析モデルに基づき,色のみの異なる同一の生地で縫製された夏季の体操服を着用した場合の日射の影響を含む作用温度を計算した.淡色の体操服着用時には濃色の体操服着用時と比べて反射日射が大きくなるものの皮膚で吸収する日射も大きい.結果として,夏季の体操服の生地の色は作用温度にほとんど影響しないことが確認された.
著者
三觜 康弘 古川 修
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.45-50, 2012

日本国内において,二輪車は嗜好性の強い乗り物という位置付けである.しかし二輪車はエネルギ利用効率が比較的高く,コンパクトであるため,移動手段として魅力的である.二輪車を誰にとっても安全で便利な乗り物とするよう,二輪車用姿勢制御装置を考案し調査を行った.本報では装置の概説と得られる効果の予測を示す.
著者
古川 厳水 長坂 丈巨 吉川 勝秀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
建設マネジメント研究論文集
巻号頁・発行日
no.15, pp.41-50, 2008

千葉県の北西部に位置する印旛沼は, 利根川の洪水を"外水 (そとみず)"と恐れ, "内水 (うちみず)"印旛沼流域の洪水に長い間悩まされていた. 印旛沼周辺の水害は, 印旛沼の堤防と排水機場によって軽減されたが, 未だその治水安全度は低い. この流域は, 既成市街地の拡大や千葉ニュータウンの開発が進み, 更には成田空港と連絡する北千葉道路の建設が予定されるなど, 都市化の波が押し寄せている. 本研究は, 今までの総合治水に加え, 印旛沼を含む都市化流域の治水対策について検討を実施し, 治水施設の機能向上と流域対策について定量的な評価を行い, 印旛沼の持つ潜在的な遊水機能を生かした治水の方策を考察した. 具体的には,(1) 印旛沼が有する湛水容量に着目したシミュレーションモデルによる現況の評価,(2) 治水の基本的な対応策,(2) 印旛沼流域での実証的検討から沼を含めた総合的かつ経済的な治水対策の提案を行った.
著者
古川 安
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究. 第II期 (ISSN:00227692)
巻号頁・発行日
vol.49, no.253, pp.11-21, 2010-03-25
参考文献数
108

Umeko Tsuda (1864-1929), a pioneering educator for Japanese women and the founder of Tsuda College, was a scientist. As an English teacher at the Peeresses School in Tokyo, the young Tsuda was granted a leave of absence by the government to study "teaching method" at Bryn Mawr College, a women's college near Philadelphia. During her stay in Bryn Mawr (1889-1892), however, she majored not in pedagogy but in biology, despite the fact that the Peeresses School officially banned science education for noble women. Following the vision of the feminist Dean Carrey Thomas, Bryn Mawr College offered full-fledged professional education in science comparable to that of Johns Hopkins University. Bryn Mawr's Biology Department was growing; there, Tsuda took courses from such notable biologists as Edmund B. Wilson, Jacques Loeb, and the future Nobel Laureate Thomas H. Morgan. In her third year, under Morgan, she carried out experimental research on the development of the frog's egg, which was published in a British scientific journal as their joint paper two years later. Tsuda was considered one of the best students in the department, and Bryn Mawr offered her opportunities for further study. However, after much consideration, she chose to return to Japan. Although Tsuda gave up a possibly great career as a biologist in American academe, she knew that it was almost impossible for a woman to pursue a scientific career in Meiji Japan and wanted to develop her dream of establishing an English school for women. Her experience of "forbidden" scientific study at Bryn Mawr seems to have given her great confidence in realizing her feminist ideal of enlightening Japanese women at the women's school she founded in 1900, the forerunner of Tsuda College.
著者
高橋 雅雄 蛯名 純一 宮 彰男 磯貝 和秀 古山 隆 高田 哲良 堀越 雅晴 大江 千尋 叶内 拓哉
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.109-116, 2018 (Released:2018-05-11)
参考文献数
29
被引用文献数
1

シマクイナCoturnicops exquisitusの越冬生態を明らかにするため,2014-2015年・2015-2016年・2016-2017年の3冬季に,関東地方の65か所の湿性草原で,夏季の音声を用いて生息確認を実施した.その結果,18か所で延べ98個体のシマクイナを確認した.生息確認地は7地域に大別され,耕作放棄地と河川敷が特に利用されていた.また,耕作放棄地で確認個体数が多い傾向があった.さらに,シマクイナは中層ヨシ環境で主に確認され,この植生環境が本種の生息に重要であることが示唆された.
著者
古味 一洋 荒川 良 天野 洋
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 = Journal of the Acarological Society of Japan (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.29-35, 2008-05-25
参考文献数
17
被引用文献数
1 10

高知県の果菜類栽培施設で発生する土着カブリダニ6種(ヘヤカブリダニ,コウズケカブリダニ,ミチノクカブリダニ,サイタマカブリダニ,キイカブリダニ,ニセラーゴカブリダニ)および生物農薬資材として販売されているククメリスカブリダニの,ミナミキイロアザミウマ1齢幼虫に対する捕食能力を評価した.供試した土着カブリダニ6種のなかで,キイカブリダニの日当たり捕食量と産卵数が最も多く,3日間平均で,12.2頭,6.5卵であり,この値はククメリスカブリダニの3倍程度の高いものであった.また,ニセラーゴカブリダニの捕食量も5.8頭とククメリスカブリダニより多かった.以上の結果より,キイカブリダニとニセラーゴカブリダニはアザミウマ類の天敵として有望な種と考えられた.ヘヤカブリダニ,コウズケカブリダニ,ミチノクカブリダニ,サイタマカブリダニもミナミキイロアザミウマ1齢幼虫に対する捕食性が認められた.

1 0 0 0 黄害の実態

著者
古川 元
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.383-388, 1969-07-15

黄色い霧の降る国土 公害は社会的議題として私たちの日常生活の中の根深くはいり込んできました.高度経済成長のあおりを受けて(?)社会機構の変革は生活構造や消費構造に大きな変化をもたらし,農業の近代化は化学肥料を使用することになりました.そして一般の公衆衛生知識は急速に高まってきたのですが,国鉄列車の糞尿タレ流しは100年間もそのままです. "汽笛一声新橋を早や我が汽車は離れたり"という鉄道唱歌が流行した明治初年当時といささかも変わっていないというから驚いたものです.その野蛮で不潔きわまる汚物放出は東京大阪間500kmの新幹線を除いた全長2万4000kmの国鉄沿線の上に毎日昼夜兼行でぶち撤かれているわけです.
著者
廣瀬 直也 細川 晃 上田 隆司 古本 達明 小谷野 智広
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2014年度精密工学会秋季大会
巻号頁・発行日
pp.205-206, 2014-09-01 (Released:2015-03-01)

CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)はその高強度さ故に工具摩耗が著しく,現在は主としてダイヤモンドコーティング工具が用いられている.本研究では,ダイヤモンドに比べて安価なDLC(Diamond Like Carbon)コーティングエンドミルを用い,切れ刃への負荷が小さい強ねじれエンドミルによる傾斜切削の有効性を検討している.実験はDLC膜厚が仕上げ面性状に及ぼす影響をダイヤモンドコーティングエンドミルと比較しながら検討している.

1 0 0 0 女の肖像

著者
古屋登代子 著
出版者
三友社
巻号頁・発行日
1940
著者
鈴木 智博 坂 直樹 小林 篤史 古市 昌一
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.387-388, 2016-03-10

近年,小笠原諸島周辺海域にてサンゴが密漁されるというなどの海上警備問題が注目を集めている. 水産庁の調査によると,平成25年における全国の海上保安部,警察署及び都道府県における漁業関係法令違反の検挙件数は1,713件となっている.これらの事実は公式にあるものの機会がなければ閲覧することはない.また,テレビや新聞でも報道されているが,実際の現場ではなにが起こっているのかよく分からない.そこで,本研究では海上警備問題に対してのシミュレーションによる効果的検討環境の構築と一般市民による問題理解を目的とした操作・可視化法の実現を提案する.