著者
吉村 健司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100096, 2017 (Released:2017-10-26)

周囲を海に囲まれた日本では、海洋生物を食糧資源に限らない多様な利用がなされ、また、それらを弔ってきた。 海洋生物に関する供養碑に関する研究はウミガメやクジラに関する多くの研究がある。また、ウミガメやクジラも網羅した水生生物全般に関しては田口ら(2011)の研究がある。田口らの研究では、全国の漁業協同組合などへのアンケートや文献資料などを利用しながら、計1,141基におよぶ供養碑が確認されている。そのなかで岩手県における供養碑は33基が確認された。 こうした供養碑は、多くは沿岸地域に建立されるケースが多い。岩手県沿岸地域は、2011年3月11日の東日本大震災の津波の影響を受けた地域である。よって、供養碑も大きな影響を受けた。 報告者は2017年4月より岩手県に拠点を移し、三陸におけるサケのプロジェクトに従事している。その過程で、地域と生き物の関係を見るひとつの指標として動物供養碑に着目している。田口らの研究をもとに、現地に足を運ぶなかで、新たな供養碑の存在が判明したり、津波の被害を受けた供養碑を再建されたり(されなかったり)、さらには、その供養碑の存在そのものが地域の中でほとんど認識されていないものも少なくない。このように、震災を契機に供養塔への眼差しが変化した事例も見られ、こうした信仰に対しても震災は影響を与えている。 岩手県内で確認できた供養碑の対象および数は、サケ(12基)、魚類(11基)、ウミガメ(7基)、クジラ(3基)、アワビ(1基)、イルカ(1基)、ウナギ(1基)、オットセイ(1基)、トド(1基)、ノリ(1基)、コイ(1基)、合計で11種、40基となっている。岩手県において最も多いのはサケの供養塔である。岩手県は北海道につぐサケの生産量を誇る、岩手県を代表する魚種である。また、サケの供養塔は建立されている場所に「孵化場」があるというのも他の供養塔とは異なる特徴的な点といえる。 供養塔は時代とともにその位置づけが変化している事例も見られる。例えば、重茂漁協内に建立されている魚霊塔は、魚霊塔建立当時はブリの供養塔であったが、その後、サケへと供養対象が変化している事例も見られ、地域におけるサケの位置づけが窺える。 東日本大震災による津波によって、沿岸部の供養塔が被害を受けたケースも見られる。茂師漁港に建立されていたサケの供養塔は津波によって流失した。また、地域内4カ所に分散して建立されていた神碑もあり、それも流失した。しかし、漁港内に供養塔と神碑を集中させ、慰霊祭を行うようになった。重茂漁協管内にはアワビの供養塔が存在しているが、津波によって流失した。しかし、流失した直後に供養塔が発見され、再建に向けて動いている。種市南漁協の有家川孵化場に建立されていたサケ供養塔も津波によって流失したが、孵化場の再建が済んだばかりで、供養塔の再建は行われていない。また、それに向けた動きも出ていないのが現状である。 震災後、沿岸部の供養塔は流失するケースが見られたが、すべてが再建されているわけではない。幸いにも供養塔が発見されたケースもあれば、そうでないケースもある。また、震災の復興の進捗状況や地域的な問題も影響している。本報告では、岩手県内の震災を経験した供養碑の現状について報告を行う。 【参考文献】 田口理恵、関いずみ、加藤登(2011)「魚類への供養に関する研究」、『東海大学海洋研究所研究報告』(32):pp.53-97
著者
田中 司朗 大庭 幸治 吉村 健一 手良向 聡
出版者
日本計量生物学会
雑誌
計量生物学 (ISSN:09184430)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.23-48, 2010-07-31 (Released:2010-12-14)
参考文献数
71
被引用文献数
1 1

Surrogate endpoints, which represent a compromise in the conflict between measurability and clinical relevance of endpoints, have considerable advantage in rapid drug approvals compared to true endpoints in confirmatory clinical trials dealing with life-threatening diseases, such as cancer or AIDS. However, past experiences have shown the risk of relying too heavily on surrogate endpoints. In this paper, we review statistical criteria for evaluating surrogate endpoints and the past examples properly evaluated the surrogacy, taking into consideration relevant clinical and statistical issues.
著者
岸 知二 石田 裕三 坂田 祐司 中西 恒夫 野田 夏子 野中 誠 林 好一 久住 憲嗣 山内 和幸 吉村 健太郎 鷲崎 弘宜
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.32, pp.1-3, 2013-10-17

ソフトウェアプロダクトライン国際会議(SPLC2013)が東京で開催されたので,会議の状況について報告する.We report on the 17th Software Product Line Conference was held in Tokyo, Japan.
著者
吉村 健志 宝珍 輝尚 野宮 浩揮
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2016論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.73-80, 2016-10-28

近年,将棋やオセロといった2人零和確定完全情報ゲームにおいて,トップ層の人間と同等の実力を持つプレイヤが実現されている.しかし,ポーカーや麻雀といった不確定不完全情報ゲームでは,そのようなプレイヤを実現することは難しい.本論文は4人零和不確定不完全情報ゲームである麻雀を取り上げる.そこで,本論文では,トップ層の人間に勝る麻雀プレイヤを実現するために,多人数不完全情報ゲームにおける最適行動の探索を検討する.ここでは,トップ層の人間の牌譜の知識を用いず,シミュレーションによって最適解の探索を行うタブーサーチを用いる手法を提案する.タブーサーチを適用するのは,打牌選択の局面と鳴きの局面である.提案手法を実現し,一致率実験とベンチマークプレイヤとの対局実験を行った.一致率実験によって,序盤の局面に対して,有効な和了形を最大$85\%$で見つけることができ,さらに,対局実験によって,提案手法がベンチマークプレイヤよりも優れているという結果が得られた.これらの結果から,タブーサーチによる最適解の探索が有効である可能性を示した.
著者
吉村 健清 溝上 哲也 徳井 教孝 渡邉 英伸 MARIO Miranda Gutierrez MIGUEL A. Garces
出版者
産業医科大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.目的:胃がんの疫学像は、Diffuse Type(DT)とIntestinal Type(IT)で異なっているため、胃がんのリスクファクターが組織型別に異なっているか否かを症例対照研究によって明らかにする。2.方法:組織学的に胃がんと確認された症例を症例群、症例と性、年令、病院をマッチしたがん以外の患者を対照群とした。生活習慣、食生活の情報は、質問表を用いて直接面接法によって得た。採決血清は、日本でH.PyloriとPrpsinogenについて測定した。解析はCoxの比例ハザードモデルを用いて、オッズ比(OR)を算出した。3.結果:《グアテマラ》1999年末までに胃がん例200例、対照例245例について面接調査が実施された。同年7月までのDT79組、IT107組、計186組について解析した。《コスタリカ》1999年末までに胃がん症例250例、対照症例259例について調査が実施された。そのうち同年7月までのDT74組、IT110組の計184組について検討した。主な結果は(1)冷蔵庫使用はDT、IT胃がんともにリスクを低める(グアテマラ)。しかし、コスタリカではリスクの上昇がみられた。(2)IT胃がんがDT胃がんより食品に関連が強い傾向が見られる。(3)DT、IT胃がんともH.Pylori感染がリスクを上げている結果は得られなかった。(4)Pepsinogen PGI/II比による萎縮性胃炎陽性者はDT、IT胃がんともにリスクを上げているが、コスタリカがより顕著である。今後、最終の症例収集を待って、最終解析を実施し、各分担分野に応じて、発表論文を作成する。
著者
西阪 眞一 宇戸口 和子 溝上 哲也 徳井 教孝 荻本 逸郎 池田 正人 吉村 健清
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.119-131, 1996-06-01
被引用文献数
3

健康度自己評価が,死亡に関わる様々な要因の影響を除いてもなお,独自に将来の死亡に関係するか否かを明らかにするために本研究を行った。対象は福岡県Y市の30-79歳の地域住民4,046名である。調査開始時に健康度自己評価と生活習慣に関する健康調査を行い,7年間の追跡調査を実施した。全解析集団を用い,性,年齢,喫煙,治療状況,肥満度,日常生活動作能力を調整して,自己評価が「健康でない」集団の,「健康である」集団に対する死因別の相対危険度を比例ハザードモデルを用いて算出すると,全死因,がん,循環系疾患,他死因の相対危険度はそれぞれ2.95 (95%CI; 1.93-4.50),2.96 (1.53-5.73),2.32 (0.86-6.26), 4.09 (2.12-7.89)であった。集団選択による偏りを除くために,追跡開始時に疾患をもっている者また追跡開始後最初の3年間の死亡者を除いて解析しても,前述の相対危険度のほとんどが若干低くなるが,実質的に大きな差はみられなかった。さらに前述の有病者,早期死亡者を同時に除いた解析でも,全死因の相対危険度は1.89 (0.91-3.94)と,自己評価による健康度と死亡リスクの関連がうかがえた。このことから健康度自己評価それ自体が死亡リスクに独自に影響する健康指標となり得ることが示唆された。
著者
赤井 龍男 上田 晋之助 真鍋 逸平 古野 東洲 吉村 健次郎
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

本研究は種々の公益的機能の発揮に有効な林型であるとされる複層林を、耐陰性と生長速度の異なる樹種の段階混交した林分として造成し、しかも山村労務の減少、林業経営の不振に対応するため、一般の単純林施業のような集約技術ではなく、低コストの育林技術体系として確立させようとするものである。しかし現在日本には明確な技術によって育成された混交型複層林はないので、手入れ不足等の比較的粗放な方法で成林した各種の針広混交林の実態を調査し、解析する研究を主体とした。本年度にえられた主な研究成果は次のようである。昨年度は多雪地帯における不成績造林地について調査、解析したので、今年度は少雪地帯における事例として、和歌山県新宮営林署管内大又国有林の56年生スギ、ヒノキおよび大越国有林の33年生スギ不成績造林地の構造と成長経過を調査、解析した。その結果大又国有林の不成績林分には高木性の常緑、落葉広葉樹が多く混交し、スギ、ヒノキの樹高10m以上の優勢木は集中的に、広葉樹はランダムに分布し、全立木材積は約350m^3/haであるのに反し、大越国有林の場合には高木性の広葉樹は落葉樹のみで、しかもスギ造林木の本数が多く、両樹種ともランダムに分布し、その材積は約230m^3/haで少なく、両林分の現在の構造にはそれぞれ特徴があることがわかった。しかし樹高分布からみて両林分とも造林木は10mの高さで分離し、また直径成長から判断すると、劣勢木は下刈り終了後間もなく成長を減退させているほか、両林分の土壌は深く、物理性は良好であるなど類似点もあることから、両林分の不成績の原因は手入れ不足にあると結論された。また両林分はこのまま推移させても、前者は造林木を約40%、後者は約70%混交した複層林に育つ可能性が高い。それ故多雪地帯と同様、自生種の再生力の旺盛な地域では、むしろ粗放的に混交複層林に仕立てる方が有利と考えられた。
著者
吉村 健清 早川 式彦 溝上 哲也 徳井 教孝 八谷 寛 星山 佳治 豊嶋 英明
出版者
産業医科大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

地域住民を対象とした大規模コホート調査(JACC Study)の調査票情報および保存血清および1997年末までの予後追跡調査データを用いて、胃がんのリスク要因を解析した。死亡を結果指標としたコホート解析では、胃がんリスクを高める要因として、短い教育歴、胃がん家族歴あり(男:RR,1.6;女:RR,2.5)、男の喫煙(RR,1.3;喫煙開始10-19歳:RR,1.9)、女性では生殖歴・出産歴がないこと、胃がん検診未受診(男:RR,2.0)があげられた。家族歴では、特に女で母親が胃がんの塙合に高いリスクを示した。また胃がんには家族集積性があることも示唆された。一方で、これまで胃がん関連要因として報告されてきた緑黄色野菜・高塩分含有食品・緑茶の摂取との関連は明らかでなかった。追跡期間別に分けた分析方法を用いると、干物類は、胃がんがあると摂取が減少する可能性が示唆された。また、コホート内症例対照研究の手法により、調査開始時に採取された血清を用いて、IGF、SOD、sFAS、TGF-b1の4項目を測定、胃がん罹患および死亡との関連を検討した。TGF-b1は、女性において、4分位で最も低い群にくらべ、値が高い群ほど胃がん罹患・死亡のリスクが上昇する量-反応関係を認めた。その他の3項目は、罹患と死亡で一致した傾向は認めなかった。同様の手法により、胃がんとの関連が強いとされる血清項目を測定した結果、Helicobactor pylori陽性のオッズ比は1.2、pepsinogen低値(胃粘膜萎縮あり)のオッズ比は1.9であった。H. pyloriのリスクが比較的低かったことの理由として、本解析集団が高齢であることが考えられる。現在、H. pyloriのCag-A抗体について測定を進めている。
著者
児玉 泰 吉村 健清
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.469-480, 1983-12-01

我が国においては, 産業医学卒後教育に関する系統的なシステムは今日まで何等確立されていない. しかし, 産業医科大学設立の時点で, 特色ある産業医学の教育・研究は卒後教育において充実させるよう示されており, したがって本学卒業生や産業医に対して産業医学教育を行うことは本学の重要な使命の1つであると言える. 昭和59年春第1回の卒業生を世に送り出すに当り, 本学の産業医学卒後教育基本講座のカリキュラムや生涯教育を含めた我が国の産業医学教育のあり方を, 日本の現状を踏まえて考えることが必要であろう. その参考資料として, 産業医学に関する歴史的背景と経験を有する英米両国の現状を紹介する.(1983年8月15日 受付)
著者
伊藤 宣則 清水 弘之 吉村 健清 橋本 勉 早川 武彦 篠原 力雄 高塚 直能 徳井 教孝 笠松 隆洋 鈴木 康司
出版者
日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.427-434, 1997-09-25
被引用文献数
5

Relationship between serum levels of lipid peroxides and carotenoids among the subjects randomly selected from the residents living in T-city, Gifu (GT), T-town, Wakayama (TW), H-city Hiroshima (HH), S-town, Fukuoka (SF), and Y-town, Hokkaido (HY) was investigated cross-sectionally. It was demonstrated that serum levels of β-carotene or cryptoxanthin were higher for GT and HY residents or for WT residents, while serum levels of lipid peroxides estimated by the thiobarbituric acid-reactive substances (TBARS) were lower for GT and HY residents, respectively. Moreover, there were some regional differences that serum levels of carotenoids such as β-carotene were inversely associated with serum TBARS levels for the residents, but not for HH residents with encumbrances of Japanese Americans. Serum TBARS levels were positively and significantly related with serum levels of n-3 unsaturated fatty acids such as icosapentaenoic acid and docosahexaenoic acid, which were high intake in Japanese, but not significantly with serum levels of n-6 unsaturated fatty acids such as arachidonic acid.
著者
吉村 健 大矢 智之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.122, pp.17-20, 2003-06-13

本稿では,コンテンツ配信ネットワーク(CDN)から配信されるコンテンツを受信し,無線リンクにおいて同報配信する放送型メディア配信ゲートウェイを提案する.本ゲートウェイは,3GPP準拠のストリーミング配信プロトコル規格から移動通信向け放送用配信プロトコルに変換する機能を有し,バックボーンネットワーク上のCDNと,無線リンク上の同報配信によって大規模かつ効率的なメディア配信が実現できるとともに,特定の地域に限定したスポット的な放送型メディア配信も可能となる.また本ゲートウェイの実装についても報告する.
著者
吉村 健太郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.171-176, 2007-02-15
被引用文献数
5

携帯電話,デジタルカメラ,自動車等,我々の身近な電子製品において,組込みソフトウェアは製品の競争力を左右する重要な要素である.ところが,製品機能の増加に伴ってソフトウェアは大規模・複雑化しているにもかかわらず,一機種あたりの開発期間は大幅な短期化が求められている.この問題を解決するためには,組込みソフトウェアを機種間で共通化・再利用化することで,機種あたりの開発コストを低減することがきわめて重要である.本稿では,類似製品間でのソフトウェア共通化技術として産業界からも注目されているソフトウェア・プロダクトライン工学(SPLE:Software Product Line Engineering)の概要,最新の適用事例および研究トピックについて述べる.