著者
長谷川 眞紀 大友 守 水城 まさみ 秋山 一男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.112-118, 2009
参考文献数
10
被引用文献数
2

【背景・目的】化学物質過敏症は診断の決め手となるような客観的な検査所見が無く,病歴,QEESI点数,臨床検査(他疾患の除外)等から総合判断として診断している.診断のゴールド・スタンダードは負荷試験であるが,これも自覚症状の変化を判定の目安として使わざるを得ない.そういう制約はあるが,我々の施設ではこれまで化学物質負荷試験を,確定診断の目的で施行してきた.【方法】当院内の負荷ブースを用い,ホルムアルデヒド,あるいはトルエンを負荷した.負荷濃度は最高でも居住環境指針値とした.また負荷方法は従前はオープン試験によったが,最近はシングル・ブラインド試験を施行している.【結果】これまで51名の患者に延べ59回の負荷試験を行った.オープン試験を行った40名のうち,陽性例は18名,陰性例は22名であった.陰性判定理由は症状が誘発されなかった例が11名,実際の負荷が始まる前に(モニター上負荷物質濃度上昇が検出される前に)症状が出た例が11名であった.ブラインド試験は11名に施行し,陽性が4名,陰性が7名であった.【結語】化学物質負荷試験は現時点でもっとも有力な化学物質過敏症の診断法であり,共通のプロトコールを作成し行われるべきである.
著者
冨岡 佳奈絵 大友 佳織 阿部 真弓 鈴木 惇
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.143, 2012 (Released:2012-09-24)

サツマイモは、加熱処理中にデンプンの糖化が進み、加熱方法の違いが味覚に影響を強く与える。サツマイモの糊化デンプンの性状が甘味と関連するかをみるために、異なる加熱方法で調理したサツマイモを組織化学的方法により調べた。 サツマイモを茹で、蒸し、オーブン(140℃と200℃)および電子レンジで加熱した。加熱した試料を急速に凍結して、コールドミクロトームで薄切した。切片を過ヨウ素酸・シッフ液およびヨウ素液で染めた。標本を常光と偏光装置により観察した。 加熱により膨潤した糊化デンプンは、デンプン貯蔵細胞全体を満たした。茹で、蒸しおよびオーブンにおける貯蔵細胞内の糊化デンプンは、ヨウ素染色により黒褐色から赤色に染まり、電子レンジでは、糊化デンプンは青く染まった。赤色に染まった糊化デンプンに青く染まったデンプンが顆粒状に点在していた。青く染まったデンプンが貯蔵細胞間の一部に存在した。赤色に染まったデンプン貯蔵細胞は、200℃のオーブンで多く、140℃のオーブン、茹での順に少なく、蒸しでは茹でと同程度であった。糖度と甘味の程度は、200℃のオーブンで強く、140℃のオーブン、茹での順に弱く、蒸しでは茹でと同程度であった。電子レンジでは甘さがなかった。糖度と甘味の程度は、赤色に染まったデンプン貯蔵細胞と貯蔵細胞間の青く染まったデンプンの多寡と関連した。複屈折性を示す結晶が点在したが、結晶の多さと甘味の程度には関連性はなかった。加熱処理の違いによるサツマイモの甘さの程度は、糊化したデンプンのヨウ素染色における染色性の違いと関連した。
著者
大友 広幸 坂本 亮
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:21888841)
巻号頁・発行日
vol.2022-HPC-187, no.14, pp.1-7, 2022-11-24

古典計算機で解くことが難しい問題であっても,一部の問題は量子計算機を用いることで効率的に解くことが可能である.量子計算機の実機は現在開発が進められている一方,操作中に外的要因によるエラーが発生し,実用に耐えうるものではない.そこで量子計算機の計算精度評価や量子アルゴリズム開発の支援,量子超越性評価のために古典計算機上での量子計算機シミュレーションの研究が行われている.本研究では PEZY-SC3s プロセッサ用に既存の量子回路シミュレータを移植し,その計算精度・計算速度・消費電力の GPU との比較を行った.
著者
黒野 伸子 大友 達也 岡崎女子短期大学 安田女子大学
雑誌
岡崎女子大学・岡崎女子短期大学 研究紀要 (ISSN:21882770)
巻号頁・発行日
no.52, pp.57-66, 2019-03-15

筆者らは、これまでに王朝文学に現れる「病」の扱いについて、「他者からの要求を回避する口実、自己の希望を叶えるための理由づけ、体験の特殊さを強調する効果など、対象者の願いをかなえる便利ツール」のような扱いがなされていることを明らかにした。しかし、筆者らは古代の人々が持つ疾病観、医療観を論じるには、多方面からのアプローチも重要だと感じていた。そこで本稿では、古代医療史に関する先行研究レビューを基礎として、山上憶良と大伴家持の作品にみる表現とメトニミー両面からのアプローチを試みた。その結果、少なくとも、奈良時代の知識人が持つ疾病観、医療観には重層性があることが示唆された。
著者
雨宮史織 高橋浩一 美馬達夫 吉岡直紀 大友邦
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
第42回日本磁気共鳴医学会大会
巻号頁・発行日
2014-09-11

【目的】自発的神経活動および認知機能異常とこれの治療による変化を低髄液圧症候群/脳脊髄液減少症患者において縦断的に評価する事。【方法】低髄液圧/脳脊髄液減少症患者の硬膜外ブラッドパッチ術施行直前及び手術一ヶ月後に安静時fMRIおよびworking memory課題を用いた認知機能評価を施行した。安静時fMRIは撮像タイミング補正、体動補正、空間的標準化、平滑化による標準的前処理の後に線形トレンド除去、低周波成分抽出(0.01-0.1 Hz)を行い同帯域での振幅の積分値を各全脳平均値で除して標準化し、自発的神経活動の指標とした(amplitude of low-frequency fluctuations, ALFF)。認知機能指標は2-back課題の正答率とした。これを回帰変数としてALFFの全脳線形回帰分析を行い両者に有意な相関のある領域を同定した。また交互作用検定により両者の相関に有意な縦断的変化があるか評価した。【結果】2-back課題の正答率は術後有意に改善した(p < 0.05)。全脳解析では認知機能指標と楔前部のALFFに正の相関、右内側前頭前皮質/前部帯状回、両側眼窩前頭皮質のALFFに負の相関が見られた(多重比較補正後p < 0.05)。右内側前頭前皮質/前部帯状回、両側眼窩前頭皮質におけるALFFと認知機能指標の負の相関は術後有意に低下した(p < 0.05)。【結論】task-positive networkにおけるALFFと認知機能指標には健常者にて正の相関がある事が知られるが、本術前患者では両者の関係は反転しており、認知機能障害の強い患者でtask-positive networkであるfrontoparietal control systemにおける異常な自発的神経活動の上昇およびdefault mode networkでの神経活動低下が示唆された。認知機能障害とtask-positive networkでの相関は術後の認知機能の回復にともなって減弱ないし反転しており、正常化が示唆された。これらは脳脊髄液減少下における機械的圧排/浮力低下に伴う前頭葉底部での異常神経放電が、可逆性認知機能障害の原因となるという仮説を支持するものである。
著者
野波 寬 田代 豊 坂本 剛 大友 章司
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.23-32, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

原発・廃棄物処分場・軍事基地などの迷惑施設をめぐっては,立地地域少数者と域外多数者との間で利害の不均衡が発生する。この不均衡に関心を示さない域外多数者に対しては,不均衡を知った上で非意図的に迷惑施設を受容する域外多数者に対してよりも,立地地域少数者の怒りや不満といったネガティヴな情動が喚起されるだろう。シナリオを用いた実験の結果,この予測は支持された。また立地地域少数者の情動反応には,利害の不公平に対する評価のほか,域外多数者への共感も,大きな影響を及ぼすことが示された。集団価値モデルにもとづき,立地地域少数者の立場に対する域外多数者からの関心の呈示は,前者が後者からの敬意を推測する手がかりになると考察した。以上の結果より,迷惑施設をめぐる公的決定の過程で,立地地域少数者と域外多数者との相互作用を検討する重要性について論じた。
著者
新谷 理恵子 佐藤 三穂 大友 里奈 佐藤 靖 佐藤 隆太 中山 瑛里 大萱生 一馬 奥村 美灯 逸見 奈緒 矢野 理香 髙橋 久美子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
pp.20210816139, (Released:2022-01-24)
参考文献数
18

目的:北海道の高度急性期医療を担う病棟看護師がCOVID-19患者の受け入れを開始してからどのような体験をして,どのような心理状況にあったかを明らかにする。方法:病棟看護師13名を対象にフォーカス・グループインタビューを行い質的に分析した。結果:【患者の受け入れ決定に対する葛藤】,【未知で新規の感染症であることに由来するつらさ】,【自分や家族の感染に対する不安】などを経験し,【看護を続ける中で生じるジレンマ】,【患者の看取りに関わる中での複雑な思い】を持っていた。一方で【病院が体制を整えようとしてくれていることへの安心感】,【協働しながら実践できているという思い】,【看護への責任と成長】を感じていた。結論:病棟看護師はつらさや葛藤といった心理状況があった一方で,看護を継続できている思いも持っていた。これらの経験の理解がより良い看護に向けた看護管理体制の整備に重要である。
著者
大友 章司 広瀬 幸雄
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.557-565, 2014-02-25 (Released:2014-04-15)
参考文献数
28
被引用文献数
4 4

This study examined psychological processes of consumers that had determined hoarding and avoidant purchasing behaviors after the Tohoku earthquake within a dual-process model. The model hypothesized that both intentional motivation based on reflective decision and reactive motivation based on non-reflective decision predicted the behaviors. This study assumed that attitude, subjective norm and descriptive norm in relation to hoarding and avoidant purchasing were determinants of motivations. Residents in the Tokyo metropolitan area (n=667) completed internet longitudinal surveys at three times (April, June, and November, 2011). The results indicated that intentional and reactive motivation determined avoidant purchasing behaviors in June; only intentional motivation determined the behaviors in November. Attitude was a main determinant of the motivations each time. Moreover, previous behaviors predicted future behaviors. In conclusion, purchasing behaviors were intentional rather than reactive behaviors. Furthermore, attitude and previous behaviors were important determinants in the dual-process model. Attitude and behaviors formed in April continued to strengthen the subsequent decisions of purchasing behavior.
著者
大友 章司 広瀬 幸雄
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.140-151, 2007
被引用文献数
2 2

We examined the inconsistency between risk-aversive attitude and behavior, which may be generated by a temporal trap. We hypothesized the two processes involved in risk-related behavior in a natural disaster : a situation-oriented process, which may result in risk behavior, and a goal-oriented process, which is more likely to elicit risk-averse behavior. Based on survey data from 239 undergraduate students, our results confirm that the images associated with risk behavior and the descriptive norm were determinants of the situation-oriented process. On the other hand, risk perception, a risk-aversive attitude, and injunctive norm were determinants of the goal-oriented process. Our model suggests that risk-averse behavior may be inhibited or promoted depending upon which influence is the more salient, the situation-oriented process or the goal-oriented process. Implications for dual processes on risk-related behavior in a natural disaster are also discussed.