著者
小林 文明 藤田 博之 野村 卓史 田村 幸雄 松井 正宏 山田 正 土屋 修一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.53-64, 2007-01-31
参考文献数
27
被引用文献数
4

2002年10月6日から7日にかけて発達した低気圧の北東進に伴い,各地で突風災害が相次いだ.横須賀市内では10月7日04時頃突風災害が発生した.現地調査の結果,被害は100か所を越える住家で確認され,被害域はほぼ直線的で長さ2.5km,最大幅は約150m(平均で30〜50m)であった.被害スケールはF1から局所的にF2であった.被害域は連続しておらず,かつ蛇行していた.また,最も被害の大きかった公郷小学校付近で被害幅が広がっており,竜巻の複雑な挙動が示唆された.最大風速に関しては,被害が最も甚大であった場所の東端に位置する道路標識から少なくとも風速は34〜38ms^<-1>と見積もられ,被害スケール(F1)を裏付けた.今回の突風は以下の理由から竜巻であったと推測された.地上被害の特徴から,1)被害域の幅が狭く直線的である.2)回転性(低気圧性)の風による痕跡が確認された.3)吸い上げ渦とおもわれる痕跡が2か所確認された.4)吸い上げ渦の痕跡近傍では,実際に体育館の屋根や空調室外機が少なくとも高さ10mは吹き上げられた.上空の積乱雲の特徴は,5)強エコー域の南西端に被害域が対応していた.6)ドップラー速度パターンには直径7kmの渦が上空に確認された.7)このメソサイクロンの影響をうける地上観測点では,1hPaの気圧降下が確認された.横須賀市の竜巻被害は,発達した低気圧の暖域で形成された積乱雲群が広範囲にわたりもたらした竜巻(ダウンバースト)の中のひとつに位置づけられる.
著者
小林 芳規
出版者
広島大学文学部
雑誌
広島大学文学部紀要 (ISSN:04375564)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.1-182, 1971-03

From the twelfth through the fourteenth century is of great moment as the transitional period from Ancient to Modern Japanese. Nevertheless, the study of the language of this period lags comparatively behind due to the incomplete collecting and editing of contemporary materials.As early as the twelfth century Katakana (the square Japanese syllabary) came to be established as a respectable means of writing Japanese. Katakana-writing--actually, a mixed writing of Katakana with Chinese characters--found great favour with the priesthood, cultural élite of the time, then grew popular among the samurai (warriors) and the common people educated by those priests. Consequently, an inquiry into this species of writing will give us a very good idea of what the language was like in those days.This study is intended to illuminate the actual usage of Medieval Japanese, drawing for the primary sources upon over twenty pieces of Katakana-writing of the twelfth and thirteenth centuries, and for the secondary sources upon various sorts of contemporary materials. It is divided into the following six chapters, paying particular attention to the making of Modern Japanese :
著者
小林 昭二
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.179-190, 2002-05-25 (Released:2017-07-14)

群馬県安中市の板鼻層(中期中新世後期〜後期中新世前期)から発見された海牛化石は,右肩甲骨,胸骨,肋骨,胸椎を含み,産地名にちなみ下秋間標本という.これらの部位をジュゴン科(ジュゴン亜科,ヒドロダマリス亜科,ハリテリウム亜科3亜科),トリケクス科のアメリカマナティーと比較した結果,特に第1から第4肋骨では遠位ほど太く,全体的に肥厚していることと大きさの点でMetaxytheriumメタキシテリウム属に,さらに各部位の大きさや台形の肩甲骨,長方形の胸骨,縦長の胸郭などの形態においてMetaxytherium crataegense, M. serresiiなどとよく似ている.また,胸椎の形態,中位・後位肋骨の肋骨角後外側部の膨らみなどはHalitherium schinziに似ているが,下秋間標本は幅広い背縁と強い烏口突起をもつ大きな肩甲骨を有する点でより派生的である.以上のことから下秋間標本をハリテリウム亜科とした.下秋間標本はわが国最古のジュゴン科の一つと考えられ,わが国の中新世以後の海牛目の分布,さらに大西洋・ヨーロッパ起源の海牛の日本進入の経路を考える上でも重要な資料である.
著者
小林 ミナ
出版者
北海道大学留学生センター
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.54-67, 1997-10

日本語学習者が、外国語が外来語として日本語にとりこまれる際の日本語化規則を習得する過程を調べるために、初級の日本語学習者(17名)を対象に、「英語を日本語の外来語としてかたかなで表記する」という48の英単語からなる調査を実施した。学習者の回答をパーソナルコンピュータ上でデータベースに入力し、正解率、誤答例などを日本語化規則ごとに出力した。本稿では、このうち、開音節化に関する規制をとりあげ、考察する。開音節化規則の平均正解率は56.43%であり、音韻に関する規則の中で、もっとも高かった。しかし、「かたかなで表記する」という調査方法そのものが、開音節化と直結しているため、学習者が本当の意味で日本語の音韻体系の習得に成功しているかどうかについては、本調査の結果からは判断することはできない。次に、開音節化規則が適用された36語、延べ55箇所(=チェックポイント)に対する回答に基づいて、S-P表を作成し分析したところ、次の3点がわかった。1)17名の学習者は、開音節化規則について等質と考えられる。2)問題項目としての開音節化規則も、ほぼ等質と考えられる。しかし、[t / d / dʒ / tʃ / m] の開音節化規則については、異質であることが観察される。3)前舌母音に後続する[k]、[tʃ / dʒ / ʃ / θ ] 、音節末の[ŋ]、音節末以外の[p]、[u] が添加される[t]、は習得しにくい。以上のことから、音韻論上の制約、また、年代的に古い外来語などにしか適用されない生産性の低さ、などの点で、開音節化規制において例外といえる規則は、習得の面においても、習得しにくい、言い換えれば、有標(marked)な規則であることが示唆される。また、本調査の被験者間にみられた習得の傾向が、縦断的な習得のプロセスを反映しているとすれば、日本語学習者は「基本的な開音節化規則→子音による例外規則→語彙による例外規則」の順で、開音節化規則を習得していることが推測される。
著者
小平 寛岳 国分 貴徳 瀧谷 春奈 藤嶋 弾 平田 恵介 名字 名前 塙 大樹 小林 章 金村 尚彦
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.22-26, 2018 (Released:2018-04-03)
参考文献数
31

【目的】歩行速度の違いによる立脚初期の股関節伸展筋群活動の変化に着目し,歩行速度が股関節キネマティクスに及ぼす影響について検討した。【方法】整形外科疾患のない成人男性 7 名を対象とし三次元動作解析装置,床反力計付きトレッドミル,表面筋電図を用いて0.9 m/s 歩行と1.8 m/s 歩行を計測した。計測から得られた立脚初期(10% 歩行周期)の筋活動量(大殿筋,大腿二頭筋,半腱様筋),外的股関節屈曲モーメント,股関節屈曲角度,重複歩長を条件間で比較・検討した。【結果】 0.9 m/s 歩行と比較し 1.8 m/s 歩行で外的股関節屈曲モーメント,重複歩長,股関節屈曲角度,半腱様筋活動に有意な増加がみられた。一方で,大殿筋と大腿二頭筋には有意な変化はみられなかった。【結論】歩行速度の増加に対し,立脚初期では股関節屈曲角度,重複歩長の増加による対応が行われ,この対応には半腱様筋の筋活動量増加の関与が示唆された。
著者
加藤 文崇 星野 宏光 山本 為義 小林 省吾 棟方 哲 大里 浩樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.2022-2026, 2016 (Released:2017-02-28)
参考文献数
21

爪楊枝の胃壁穿通による肝膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は53歳の男性.心窩部痛を主訴に受診した.胆石発作が疑われ経過観察していたが,腹痛の改善を認めなかったため,腹部超音波検査・CT検査を施行したところ,肝外側区域に約3.5cm大の膿瘍と内部に針状陰影を認めた.異物の胃壁から肝への穿通による肝膿瘍と診断した.抗生剤による保存的治療を行い炎症の改善を得た後,異物除去を目的に腹腔鏡下肝外側区域切除術を施行した.異物は爪楊枝であった.術後は特に合併症なく,術後10日目に退院となった.異物の胃壁穿通による肝膿瘍の診断にはCT検査が有効であった.腹腔鏡下手術は低侵襲で可能であり,異物除去に有効であった.
著者
長谷川 雄太 青木 尊之 小林 宏充 白﨑 啓太
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.85, no.870, pp.18-00441, 2019 (Released:2019-02-25)
参考文献数
18

We implement and perform large-scale LES analysis for running groups of cyclists. The mesh-refined lattice Boltzmann method (LBM) and coherent-structure Smagorinsky model (CSM) are adopted for the simulations to achieve a high performance computing on the recent GPU supercomputer. In the simulation with 16 cyclists, the mesh spacing around cyclists is 4 mm, and the total number of the mesh is up to 8.1×108 and the number of GPUs utilized is up to 64. Each calculation took 4 or 5 days for the 8~11 seconds of physical duration. The flow around 16 cyclists in various arrangement is calculated, and the results show that the in-line arrangement is more effective than the rhomboid arrangement in the viewpoint of the total aerodynamic drag of the group; however, a specific person in rhomboid arrangement can obtain larger drag reduction and save the endurance. Results on two groups also suggest that the frontal group in rhomboid arrangement will be exploited as the wind protection of the backward groups.
著者
吉岡(小林) 徹
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.21-37, 2018-06-30 (Released:2018-12-14)
参考文献数
54
被引用文献数
3

デザイナーが商品開発の上流工程から関わること,とくに,デザイナーが他の職能組織の活動に積極的に関与していくことは,製品・サービスのイノベーションの実現につながるのだろうか。本研究は,デザイナーによる他の職能組織の活動への関与の一つとして,技術開発への関与が,技術開発の質を高め,かつ,製品の質を高めているのかを,市場で成功を収めた事例の分析と,国際的なデザイン賞受賞製品90製品の調査により検証した。その結果,デザイナーの技術開発の関与は,①新たな要素技術を着想し,新規な製品コンセプトを実現する,②技術的課題を設定するか,技術開発チーム内での共有を促し,技術者の開発効率を高める,③他組織の技術を橋渡しし,新たな技術を生み出す,のいずれかの形で高い質の技術を生み,かつ,製品自体の質を高めていたことが確認できた。これらはデザイナー固有の寄与とまでは断言できないが,デザイナーの強みが生きた機能組織間連携の効果であると考えられる。
著者
鈴木 貴久 小林 哲郎
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.99-107, 2014-11-30 (Released:2015-07-24)
参考文献数
29

This study investigated the effects of reputation-making norms on personal network size. Someone who behaved cooperatively/non-cooperatively toward a “bad” person is denoted as C to B/D to B. Reputation-making norms are then defined by a combination of the assessment of C to B and the assessment of D to B. We hypothesized that (1) those who judge C to B negatively would form smaller personal networks than those who judge C to B positively, and (2) those who judge D to B negatively would form smaller personal networks than those who judge D to B positively. We used scenarios to assess the internalized reputation-making norms as an independent variable and investigated their effects on the size of participants' support networks as a dependent variable. Results indicated that the size of the support networks of participants following a norm which does not permit C to B was smaller than that of participants following a norm which does permit C to B. These findings suggest that using reputation made by norms which do not permit spoiling narrows the size of cooperative relationships.
著者
惠多谷 雅弘 鶴間 和幸 中野 良志 村松 弘一 小林 次雄 吉田 愛 福島 惠
雑誌
学習院大学国際研究教育機構研究年報 (ISSN:21890838)
巻号頁・発行日
no.3, pp.89-112, 2017-02-01

高分解能衛星データで秦始皇帝陵墳頂を通る南北中軸線の方位を計測すると,北方向は現在の真北からやや東偏している。この南北中軸線を方位図法投影した地球の三次元球体衛星画像上にプロットしたところ,その北方向は驪山北方約700 km に位置する陰山山脈烏拉山の最高峰近くに達した。またこの時,『史記』の記述で統一秦の東門がおかれた場所とされる胊県(現在の連雲港市)を通る東西線は,『三輔旧事』で秦西門との記述がある約1,100 km 西方の汧水(千河)を横切り隴山に達することも分かった。『史記』や『三輔旧事』の記述は統一前後の秦に当時の方位を意識した空間的概念が存在したことを示唆しているが,衛星画像の解析結果は秦帝国形成において胊県(東海),隴山(汧水),驪山(渭水),烏拉山(黄河)の山水を東西南北のランドマークとした壮大なグランドプランが存在した可能性を示唆している。
著者
北梶 陽子 曽根 美幸 佐藤 浩輔 小林 翼 大沼 進
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.115-122, 2016-11-30 (Released:2016-11-30)
参考文献数
26

This study investigated the effects of imagining others on cooperation in a one-shot Prisoner’s Dilemma (PD) game. There are two ways to imagine others’ perspectives: “imagining the other” or considering how the other person feels, and “imagining the self” or projecting oneself onto the other person. Participants were assigned to one of three conditions: a) the imagining-other condition, b) the imagining-self condition, and c) the control condition (thinking about a landscape). Participants played a one-shot PD game and completed the social value orientation (SVO) scale, which measures one’s cooperative tendency. Results showed that the cooperation rate was higher in the imagining-other condition, and participants in the imagining-other condition expected that the partner would cooperate and that the partner thinks they would cooperate. In contrast, in the imagining-self condition, no significant differences were observed about these variables. Furthermore, the cooperation rate increased mediated by two-way expectations in the imagining-others condition, while it was not observed in imagining-self conditions. These results show the importance of imagining others not as a reflection of self, in increasing expectation of mutual cooperation and promoting cooperation.
著者
藤井 公一 宮武 諭 石山 正也 大木 基通 冨岡 秀人 加瀬 建一 小林 健二
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.478-480, 2014-06-30 (Released:2015-01-23)
参考文献数
10

2011年1月から2013年1月の2年間に,肺塞栓症と診断され失神を伴った5例について,その特徴を診療録より後方視的に検討した。平均年齢73.6歳。2例は随伴症状を認めなかった。来院時のvital signsは,収縮期血圧低値1例,頻脈2例,SpO2低値1例であった。D-dimer 値は全例で上昇していた。心電図異常4例,心エコー検査による右心負荷所見は全例で認めた。治療は全例で抗凝固療法が施行され,うち1例に血栓溶解療法が施行された。失神を伴わなかった肺塞栓症患者12例との比較では,平均年齢が高く(p=0.045),右心負荷所見を認める割合が高かった(p=0.049)。心エコー検査とCTを施行するまでの時間は,失神を伴っていた患者で長くなる傾向がみられた。失神を伴う肺塞栓症患者は典型的症状に乏しく,心エコー検査やD-dimer測定は失神患者の原因検索としても有用である。
著者
小林 高四郎
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:24240508)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1-2, pp.36-46, 1956-08-10 (Released:2018-03-27)

As formerly Prof. Egami published an article titled "On the beverages and foods of the Hsiungnu (匈奴), Mr. Hotta recently dealt with the same problem in detail also (vide "The Shigaku", Vol.27, No.4, a journal of the Keio University). But owing to the anbiguousness of the Mongolian language and the inaccuracy of the Chinese documents, we are not yet able to understand exactly the substances and their Mongolian names. So some questions remain uncertain still. Accordingly the present author aimed to explain the real meanings of such Mongolian words as "airan", airaq, araxi, esug, cigen, kumys etc., and the identity with the Chinese characters denoting the above mentioned beverages, 酪 lo, 馬酪 ma-lo, 賣 su, 阿児赤 arci, 哈刺赤 haraci, 馬〓子 ma-nai-tzu, 醍醐 ti-hu etc., principally from the philological points of view. The results led us to the correction of the opinions of Mr. Hotta, late Prof. Ramstedt, and Prof. Karlgren. Moreover the author explained the Mongolian words, 'sarχud', 'bisilarγ' and 'bor'.