著者
小林 正行
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.1-16, 2006-10-01

本稿は、「強調」や「例示」の意を表すとされる助詞バシについて、狂言台本における使用実態を明らかにし、その用法の変遷を考察するものである。この調査で以下の事実を明らかにした。・上接語は、名詞を直接上接するものが大半を占める。そのうち、目的格相当は全期通じて用いられ、主格相当は近世中期以降の台本で新たに多用される。デ・ニテを上接するものも近世中期以降多用される。・共起する句末表現は、疑問表現が大勢を占める。禁止表現は謡など定型的な用例に限られ、新しいバシはほぼすべて「ゴザルカ/オリャルカ」という丁寧な疑問表現と共起する。これらの事実から、用法の変遷についての考察を行い、以下の結論を得た。・本来上接語を際立たせる「強調」の働きを持っていたバシは、その代表的な用例の性質から、「例えばこのようなもの」と上接語の同類の集合を想定させる「例示」の働きとして解釈され、さらに、新たに上接語の同類の集合を仮想的に表して、「品位」を持って疑問を表す用法が近世中期以降の台本に見られるようになる。
著者
吉田 正 中村 光士郎 小林 泰輔 富所 雄一
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.96, no.9, pp.783-789, 2003-09-01 (Released:2011-10-07)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

Mycosis in the paranasal sinus is commonly found in the maxillary sinus, but rarely in the sphenoid sinus. In this paper, three cases of sphenoid sinus mycosis are reported and the clinical feature are compared with the 25 other cases reported in Japan since 1968. Our three patients had complained of headache and eye pain, which were thought to be characteristic symptoms in the 25 previous cases. One of the three patients had onset with a background of rheumatoid arthritis and needed steroid medication, but the other two patients had no improvement with medication for sinusitis. By CT scanning and MRI, a localized sphenoid sinus lesion was detected as a characteristic findings for paranasal sinus mycosis, showing irregular mosaic contras on CT scanning and low intensity signal on T1 and T2 MRI imaging. The definite diagnosis was made by means of histological examination for a block age in the affected sinus cavity. Endoscopic sphenoidectomy was performed through the parsnaslis of the anterior wall of sphenoid sinus and was usefull for total removal of the lesion.
著者
三好 弘子 奥田 豊子 小林 紀崇 奥田 清 小石 秀夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.165-170, 1987 (Released:2010-02-22)
参考文献数
33
被引用文献数
3 2

5人の健康な若年成人男子を被験者として, 白米食と玄米食を比較することにより, 米繊維のミネラルの出納, およびみかけの吸収率に対する影響を検討した。体重当たり1.2gのタンパク質を含んだ玄米食, 白米食をそれぞれ2週間与えたが, 食物繊維としては, 玄米食は白米食の約2倍含んでいた。摂取ミネラル量は, 白米食, 玄米食ともミネラル必要量を充足していたが, 玄米のほうが白米よりミネラル含量が多く, とくにK, P, Mgの摂取量が玄米食で多くなった。糞中排泄量は玄米食で白米食に比べて, K, P, Mgが有意に多くなり, 摂取量を反映していた。また, Na, Caにおいても玄米食で糞重量が約2倍と有意に多かったことを反映して糞中排泄量が多くなる傾向がみられた。しかし, これから計算される吸収量においてはK, P, Mgとも有意差は認められなかった。みかけの吸収率ではK, Pで摂取量が多かったにもかかわらず, それ以上に糞中排泄量が大きく, 玄米食で有意に低下した。その結果, 出納をみると, 各ミネラルとも白米食と玄米食の間に有意差は認められなかった。血漿ミネラル濃度ではNa, K, Cl, P, Ca, Mgのいずれの項目にも白米食と玄米食で有意差はみられなかった。
著者
河本 薫 細川 嘉則 河村 真一 野波 成 岡村 智仁 大西 道隆 津崎 賢治 小林 宏樹 三上 彩
出版者
日本情報経営学会
雑誌
日本情報経営学会誌 (ISSN:18822614)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.32-40, 2011-07-15 (Released:2017-08-07)
参考文献数
3

In this paper, we focused on the process of creating information through data in a company. In most companies, such processes are conducted under business units. However, business units are lack in the motivation and the ability of innovating this process. For solving these problems, we proposed an in-company mission for empowering the function of creating information through data. Furthermore, we presented a guideline for establishing this mission in a company, including the positioning in an organization, the relationship with business units, and human resources suited for conducting above mission.
著者
森丘 保典 杉田 正明 松尾 彰文 岡田 英孝 阿江 通良 小林 寛道
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.414-421, 2000-05-10 (Released:2017-09-27)
被引用文献数
1

This study was conducted to clarify the relationship between features of change in velocity and performance of world class athletes in the men's 400-m hurdle race(400mH).Nine final races of 400mH were videotaped with several video cameras panning from the start to the finish at 60 fields/s.After the time indication had been superimposed on each field of the VTR images, the time at touchdown immediately after hurdling was obtained.Using the flash of the starter's gun recorded on the VTR image, each hurdle touchdown time from the start, and each section thme(from each hurdle to the next)was obtained.The results of regression analysis showed a significantly high correlation (r=0.90, p<0.001)between 400mH performance and mean section velocity from the 5th to the 8th hurdle(H5-8), and a significant correlation(r=-0.61, p<0.05)between 400mH performance and te rate of deceleration in H5-8.These results indicate that in 400mH it is important to avoid decreasing velocity and to maintain a high velocity in H5-8 of the race in order to attain a high performance.
著者
吉村 健佑 川上 憲人 堤 明純 井上 彰臣 小林 由佳 竹内 文乃 福田 敬
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.11-24, 2013-02-20 (Released:2013-02-26)
参考文献数
25
被引用文献数
5 3 1

目的:本研究では,職場におけるメンタルヘルスの第一次予防対策の実施が事業者にとって経済的利点をもたらすかどうかを検討することを目的とし,すでに公表されている国内の研究を文献検索し,職場環境改善,個人向けストレスマネジメント教育,および上司の教育研修の3つの手法に関する介入研究の結果を二次的に分析し,これらの研究事例における費用便益を推定した.対象と方法:Pubmedを用いて検索し,2011年11月16日の時点で公表されている職場のメンタルヘルスに関する論文のうち,わが国の事業所で行われている事,第一次予防対策の手法を用いている事,準実験研究または比較対照を設定した介入研究である事,評価として疾病休業(absenteeism)または労働生産性(presenteeism)を取り上げている事を条件に抽出した結果,4論文が該当した.これらの研究を対象に,論文中に示された情報および必要に応じて著者などから別途収集できた情報に基づき,事業者の視点で費用および便益を算出した.解析した研究論文はいずれも労働生産性の指標としてHPQ(WHO Health and Work Performance Questionnaire)Short Form 日本語版,あるいはその一部修正版を使用していた.介入前後でのHPQ得点の変化割合をΔHPQと定義し,これを元に事業者が得られると想定される年間の便益総額を算出した.介入の効果発現時期および効果継続のパターン,ΔHPQの95%信頼区間の2つの観点から感度分析を実施した.結果:職場環境改善では,1人当たりの費用が7,660円に対し,1人当たりの便益は点推定値において15,200–22,800円であり,便益が費用を上回った.個人向けストレスマネジメント教育では,1人当たりの費用が9,708円に対し,1人当たりの便益は点推定値において15,200–22,920円であり,便益が費用を上回った.上司の教育研修では2論文を解析し,Tsutsumi et al. (2005)では1人当たりの費用が5,290円に対し,1人当たりの便益は点推定値において4,400–6,600円であり,費用と便益はおおむね同一であった.Takao et al. (2006)では1人当たりの費用が2,948円に対し,1人当たりの便益は0円であり,費用が便益を上回った.ΔHPQの95%信頼区間は,いずれの研究でも大きかった.結論:これらの研究事例における点推定値としては,職場環境改善および個人向けストレスマネジメント教育では便益は費用を上回り,これらの対策が事業者にとって経済的な利点がある可能性が示唆された.上司の教育研修では点推定値において便益と費用はおおむね同一であった.いずれの研究でも推定された便益の95%信頼区間は広く,これらの対策が統計学的に有意な費用便益を生むかどうかについては,今後の研究が必要である.
著者
加藤 紘一 小林 収
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1079, pp.182-184, 2001-02-19

——まず、いわゆる「加藤の乱」で、いったい何を訴えたかったのでしょうか。途中で党内の戦術論ばかりに注目が移ってしまった気がしますが。 加藤氏(以下敬称略) 私が当時言ったことは極めてシンプルなことです。いわゆる「永田町政治」をもう少し国民に近づけないといけないと思ったんです。
著者
長野 匡隼 中村 友昭 長井 隆行 持橋 大地 小林 一郎 高野 渉
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1L3J1101, 2019 (Released:2019-06-01)

人は知覚した高次元の時系列情報を意味を持つ単語や単位動作に分節・分類することで認識している.ロボットが単語や動作を柔軟に学習するためにも,このような教師なしで分節・分類する能力は重要であると考えられる.本稿では教師なしで高次元の時系列データから特徴抽出すると同時に,単位系列に分節・分類が可能なHierarchical Dirichlet Processes-Variational Autoencoder-Gaussian Process-Hidden Semi-Markov Model (HVGH)を提案する.HVGHは,HDP-GP-HSMMにVariational Autoencoder(VAE)を導入したモデルであり,VAEとHDP-GP-HSMMのパラメータが相互に影響しあい学習される.VAEにより高次元データを分節化に適した低次元の潜在変数へと圧縮し,その潜在変数の遷移をガウス過程を用いて表現することで,高次元の複雑な時系列データの分節化を可能とする.実験では,様々なモーションキャプチャデータを用いて,提案手法が既存手法よりクラス数の推定精度及び分節・分類の精度が高いことが示す.
著者
シール フィリップ 大野 隆造 小林 美紀
出版者
人間・環境学会
雑誌
MERA Journal=人間・環境学会誌 (ISSN:1341500X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.19-28, 2000-05-01

フィリップ・シールのノーテイションと聞いて随分懐かしく思われる読者も多いかと思う。日本でそれが紹介されてから既に四半世紀が経っている。その間,短いモノグラフや雑誌での断片的な論説といった形で公表されてはきたが,その全貌が本の形で「人間,経路そして目的:人々の体験するエンバイロテクチャー(環建)の表記」(People, Paths, and Purposes: Notations for a participatory envirotecture)と題してUniversity of Washington Pressからようやく出版された。この本の推薦文でエイモス・ラポポートが「シール氏は1951年以来このようなシステムについて研究してきた。本書はしたがって,彼の生涯の研究生活の集大成といえる」と述べているように,そこに含まれる内容は膨大である。しかしワシントン大学での長年の教育を通してリファインされただけあって,興味深い図版や豊富な事例の引用を交えて大変わかりやすくまとめられている。この本で示されているフィリップ・シールの基本的な考え方は,「環境デザインと環境研究は環境を動き回るユーザーの視点による経験に基づいて考えるべきである」とする点であり,また「デザインはユーザーがどのような特定の要求や好みをもつかといったことを基本に考えるべきだ」とする点である。そして環境デザインと行動研究のこういったアプローチを実現するために必要な新たなツールと手順を発展させてきたのである。本稿は,東京工業大学の客員教授として来日中のフィリップ・シール(ワシントン大学名誉教授)が1999年6月21日に建築会館会議室で行った講演の記録である。なお,英文のアブストラクトは公演後にあらためて寄稿されたものである。
著者
小菅 瑠香 小林 健一 筧 淳夫
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.78, no.686, pp.765-773, 2013-04-30 (Released:2013-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
1 5

This study describes the effect of all single-room wards on hospital-bed management and how it differs from mixed multi-bed-room wards from a case of redesigned hospital building. Surveys were conducted for 32 days by nurses in these two types of wards with a recordkeeping of each patient's bed location, patient's nursing need degrees, and the reasons of each patient-bed transfer. It showed that both types of wards have a tendency to place patients who need high level of nursing care, around the staff station. The study concludes that the all single-room wards reduce the number of patient-bed transfers especially based on patient's request for favorable therapeutic environment.
著者
小林 正彬
出版者
関東学院大学経済研究所
雑誌
経済系 (ISSN:02870924)
巻号頁・発行日
vol.225, pp.77-94, 2005-10

岩崎彌太郎は,土佐(高知)地下浪人という低い階級の出身で,三菱という現在日本一のグループの創業者となった。しかし,政府後援の共同運輸との海商戦最中に死亡,その後の繁栄を見ていない。その50年の生涯を,戦前の同郷評論家の著書と,2004年に初めて公刊された岩崎家編集の傳記,そして,戦後,同郷入交好脩著と以後の研究を検討する。とくに少壮期の行動を通して,政府そして官僚,母美和との関係をみて,実像を再考したい。
著者
清水 順子 小林 浩明
出版者
北九州市立大学国際教育交流センター
雑誌
北九州市立大学国際論集 (ISSN:13481851)
巻号頁・発行日
no.7, pp.15-22, 2009-03

日本語教師の養成や教育に携わる中で、日本語教師をやめていく人を見ることは少なくない。本研究では、一人の元日本語教師の事例に注目し、なぜやめるに至ったのか、そしてやめたことをどのように捉えているのかを理解することを目的とした。インタビューを行い、M-GTA の分析方法を用いて構造化を行った結果、やめるに至るには、単にやめたいと思ったからではなく、その時の状況で仕事への復帰が先延ばしになった結果だとわかった。また、外側から見ると完全にやめてしまったようにみえた人が、実はいずれは仕事復帰したいと希望していることもうかがえた。