著者
小野 容照
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文学報 = Journal of humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
no.110, pp.1-21, 2017

本稿は, 朝鮮独立運動と第一次世界大戦の終結の関係を考察するものである。1917年にアメリカが連合国側で参戦すると, 朝鮮人活動家は日本の敗戦に乗じて独立を達成するという戦略を諦め, 来るべき講和会議で少しでも多くの権利を獲得する方針に切り替えていく。第1章では, ニューヨークで在米ヨーロッパ人によって結成された弱小従属民族連盟の分析を通して, これに参加した朝鮮人活動家のウィルソンに対する認識を明らかにした。第2章では, 終戦後に民族自決原則が講和会議の議題として浮上するなかで, 朝鮮人活動家がこの原則にどのように対応していたのかを論じた。ウィルソンにとって自決の担い手である「民族(ネイション)」とは, 民主的自治の能力を持つ政治共同体を意味していた。朝鮮人活動家はこうしたウィルソンのネイション観を理解しており, それを踏まえて, パリ講和会議に向けて民主主義国家の運営能力をアピールした。第3章では, 1920年代前半に朝鮮半島で展開される民族改造運動が, 第一次世界大戦経験を反映したものだったことを明らかにした。This paper aims to examine the relationship between the Korean Independence Movement and the end of World War I. After the United States entry into the war in 1917, Korean activists gave up the plan to achieve independence taking advantage of Japan's defeat and made preparations to expand their rights during the forthcoming peace conference. Chapter 1 elucidated how Korean activists recognized the President of the United States Woodrow Wilson's peace plan, analyzing the League for Small and Subject Nationalities which Koreans took part in. This organization was formed in New York by Europeans residing in the United States. Chapter 2 discussed how Koreans reacted to the principle of self-determination while this principle became major agenda of the Paris Peace Conference. Wilson's view on "nation" with an emphasis on a political community's capability of democratic self-governing. Korean activists had understood such Wilson's concept of the "nation". Therefore, they appealed about their democratic self-governing capabilities to Paris Peace Conference. Chapter 3 dealt with Reconstruction Movement developed in Korean Peninsula in early 1920s. This movement was reflected in Korean's WWI experiences.
著者
村井 和夫 樋口 明文 小原 能和 小野寺 耕 浅野 義一 立木 孝 村川 康子
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.253-264, 1992-06-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

急激に発症する感音難聴には強大な音響曝露後に見られるように, 原因の推定されるものの他に原因が明らかでない突発性難聴がある。今回, 音楽聴取後に聴覚の異常を訴えて受診したいわゆるコンサート難聴症例の聴覚障害の臨床像を検討し, コンサート以外の音響によって起こった急性感音難聴および原因不明急性感音難聴, いわゆる突発性難聴と主にその治療成績について比較検討した。その結果, コンサート難聴の予後は良好であったが, コンサート以外の音響の曝露によって見られた急性感音難聴の予後はいずれも突発性難聴より低値であり, 音響が原因で発症した急性感音難聴は, 突発性難聴と比較してより早期に治療を行う必要があると考えられた。
著者
林 博史 小野沢 あかね 吉見 義明 兼子 歩
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本軍「慰安婦」制度と米軍の性売買政策・性暴力の比較研究をおこなうことを目的として本研究をおこなった。米国や英国などの公文書館や図書館などにおいて、関連史料を多数収集することができた。また各国の研究者との研究交流をおこない、研究協力のネットワークも作ることができた。こうした研究活動を通じて、日本軍のケースと米軍のケースについてその相違についてかなり把握できるようになってきた。同時に、日本軍「慰安婦」制度を世界史のなかで位置づけるためには日米比較だけでは不十分であり、欧州や韓国を含めて国際比較が必要であることも強く認識するようになった。
著者
生田 和良 西野 佳以 今井 光信 石原 智明 関口 定美 小野 悦郎 岸 雅彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

精神疾患の原因は明らかにされていない。現在、精神分裂病やうつ病などの精神疾患の原因として遺伝因子と環境因子の両方が関わると考えられている。本研究では、精神疾患との関連性が示唆されているボルナ病ウイルス(BDV)に関する検討を行った。これまでのドイツを中心に行われた疫学調査から、BDVはウマ、ヒツジ、ウシ、ネコ、ダチョウに自然感染し、特に、BDVに感染したウマやヒツジではその一部に脳炎を引き起こすことが明らかにされている。私達は、日本においてもドイツとほぼ同じ状況でBDVがこれらの動物に蔓延していること、さらに末梢血単核球内にBDV RNAが検出しえることを報告してきた。また、同様の検出法により、精神分裂病に加え、慢性疲労症候群においてもBDVとの関連性を認めている。しかし、献血者血液においても、これらの疾患患者に比べ低率ながら、BDV血清抗体や末梢血単核球内のBDV RNA陽性例が存在することを報告した。そこで、本研究では安全な輸血用血液の供給を目的として研究を行い、以下の結果を得た。1) 健常者由来末梢血単核球への精神分裂病患者剖検脳海馬由来BDV感染により、明らかなウイルス増殖の証拠は得られなかった。2) ヒトの血清抗体ではBDV p24に対する抗体が主に検出され、ヌクレオプロテインであるp40に対する抗体検出は稀である。同様に、ヒト由来末梢血単核球内のBDV RNA検出においても、p24 mRNAが主であり、p40 mRNAは稀である。この現象を検討するため、ラットおよびスナネズミ脳内へのBDV接種実験を行った。その結果、新生仔動物への接種ではp24抗体が主として産生され、成動物への接種ではp24とともにp40に対しても上昇することが判明した。
著者
深見 悠矢 北原 曜 小野 裕 藤堂 千景 山瀬 敬太郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.8-13, 2011 (Released:2011-04-16)
参考文献数
13
被引用文献数
2 4

森林には土石流緩衝機能があることが知られている。しかし, 土石流発生時の条件を模した状態での力学的評価や林分の造成方法に関する研究は少なく, 森林の土石流緩衝機能は不明な点が多い。そこで本研究では, 三つの立木引き倒し試験を行い, 飽和含水状態の土壌と自然含水状態の土壌, 実生更新木と苗木植栽木, 立木密度の違いによる立木の力学的抵抗性の差異を明らかにすることを目的とした。対象樹種は, 順に, カラマツ, コナラ, カラマツである。いずれの引き倒し試験も, 対象木の根元から1 mの高さにワイヤーをかけて重機ないしチルホールで牽引し, 最大引き倒し抵抗モーメントを算出した。試験の結果, 異なる土壌水分条件下において立木の引き倒し抵抗モーメントに差異はないこと, 実生更新木と苗木植栽木の引き倒し抵抗モーメントに差異はないこと, 立木の引き倒し抵抗モーメントは立木密度と負の相関関係にあることがわかった。
著者
中山 睿一 小野 俊朗 上中 明子 野口 雄司
出版者
岡山大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

1.CHP(cholesterol hydrophobized pullulan)は、プルラン鎖に、コレステロールを配したナノパーティクルである。CHPとNY-ESO-1蛋白の複合体をDCにパルスし、健常人から得たCD8T細胞をin vitroで刺激し、特異的な反応の誘導を検討した。2回以上の刺激で特異的CD8T細胞の反応が認められた。同じ、CHP-NY-ESO-1複合体パルスDCを用いてCD4T細胞を刺激して、同様に特異的に反応が誘導されるか否かを検討した。やはり、2回以上の刺激でCD4T細胞の反応が誘導された。オーバーラップペプチドを用いて、DR1501拘束性の新しいエピトープを同定した。このように、DC細胞は、CHP-NY-ESO-1複合体を取り込んで、クラスIおよびIIのいずれのエピトープも発現することを明らかにした。2.CHP-NY-ESO-1を用いた臨床試験を開始した。臨床試験プロトコルは、ニューヨーク、ラドウィック癌研究所および岡山大学大学院医歯学総合研究科で承認された。第一目的は、安全性およびNY-ESO-1に対する免疫能の検討で、第二目的は、腫瘍の反応を観察することである。2週おきに4回投与する。他に有効な治療法がない進行癌患者を対象とする。現在、参加登録患者は4名で、その内訳は、食道癌(IV期)1名、および前立腺癌(D期)3名である。現在、評価可能患者数は3名であるが、3名ともに強い抗体産生が認められた。抗体認識エピトープの解析では、特に抗原性の強いエピトープが認められた。CD8およびCD4T細胞の反応は、比較的早くから認められた。腫瘍に対してもある程度の効果を認めた。
著者
中山 睿一 小野 俊朗 上中 明子 小野 俊朗 上中 明子
出版者
岡山大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

がんワクチンとして用いるがん抗原は、がん特異的が高く、さらに免疫原性が強いことが必須である。われわれは、新しいがん抗原CCDC62、HERV-KおよびXAGE-1bを見出し、特異性および免疫原性に優れていることを明らかにした。また、がん・精巣抗原NY-ESO-1の全長タンパクを用いて、がんワクチン臨床試験を実施し、がん患者には、免疫が誘導されることを明らかにした。さらに臨床効果も認めた。
著者
小野蘭山 鑑定
出版者
巻号頁・発行日
vol.[2],
著者
御手洗 毅 山浦 弘 小野 京右
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.72, no.723, pp.3576-3583, 2006-11-25 (Released:2011-03-04)
参考文献数
5
被引用文献数
1

Rhönrad is a gymnastic equipment that is interesting in terms of dynamics and control. We presented an analytical model and governing basic equations of the Rhönrad mechanism with a human body model. Then, a control method named as Synchronous control was proposed. In this control method, the human body moves synchronously with the rotation angle of the Rhönrad. The motion caused by Synchronous control was numerically analyzed. After that, a standalone miniature Rhonrad robot that consisted of three gyro sensors, an actuator, a micro-computer and batteries was manufactured. The validities of the Synchronous control were shown by experiments with the robot.
著者
小野 雅司 登内 道彦
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.147-157, 2014

我々は気象庁の協力を得て,国内 6 都市(気象台)において 2007 年より黒球温度の連続観測を行い,WBGT(湿球黒球温度)を算出,ホームページより公開してきた.これらの観測データを元に,黒球温度,湿球温度を使わず通常気象要素のみにより WBGT を簡便に推定する方法を提案する.<br> 乾球温度,相対湿度,全天日射量,風速,及び,これら気象要素を組み合わせた乾球温度 &times; 相対湿度,全天日射量の二次項を用いることにより極めて高い精度で WBGT を推定できる式を得た.また,異なる都市,異なる年度のデータを用いて求めた推定式は,同一都市・同一年度のデータを用いて求めた推定式と比較して,ほぼ同程度の推定精度が得られ(推定誤差 1.0&deg;C 以内:98.3~99.8%),全国共通の WBGT 推定式としての使用が可能と考えられる.<br>
著者
中島 松一 小野 史郎 林 宏仁
出版者
The Japanese Cancer Association
雑誌
GANN Japanese Journal of Cancer Research (ISSN:0016450X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.411-416, 1974-10-31 (Released:2008-10-23)
参考文献数
25

Both humoral and cell-mediated immunity were suppressed by four intravenous injections of 100μg each of 4-hydroxyaminoquinoline 1-oxide, employing bacterial α-amylase and picryl chloride as antigens. Preimmunization of mice with diazotized 4-aminoquinoline 1-oxide-conjugated rabbit serum protein by the use of complete Freund's adjuvant prevented immunosuppression by 4-hydroxyaminoquinoline 1-oxide. Anti-hapten titers of these mice were 25 to 28 estimated by passive hemagglutination during the course of the experiments. Passive immunization by transfer of the specific anti-hapten antibody induced prevention from immunosuppression by the reagent. Therefore, it was suggested that the humoral anti-hapten antibody might play an important role in preventing mice from immunosuppression by the reagent by preimmunization with the hapten-carrier conjugate.

1 0 0 0 OA 緜考輯録

著者
[小野景湛] [等編]
巻号頁・発行日
vol.第31冊, 1000
著者
小野 功一郎
出版者
日本デジタル教科書学会
雑誌
日本デジタル教科書学会発表予稿集 日本デジタル教科書学会第6回年次大会 (ISSN:24326127)
巻号頁・発行日
pp.31-32, 2017 (Released:2017-12-07)
参考文献数
1

平成32年度(2020年度)から実施される小学校新学習指導要領では、「プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付ける」と明記され、プログラミング教育が必修化となる。 児童にわかりやすく教えるにはどうすれば良いのか?どのようなプログラミングシステムがあるのか? Scratch・MOONBlock・プログラミン・VISCUIT・Google Blocklyというプログラミングシステムを実際にプログラミンしてみながら比較研究し、図工を例として授業をおこなう教育内容・教育教材を提案する。
著者
松本 浩 下村 彰男 熊谷 洋一 小野 良平
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.225-228, 1996-03-29
参考文献数
12
被引用文献数
7 3

本研究では,身近な自然が豊かな東京西部の野川流域において,環境問題を扱う市民団体の活動の変遷を明らかにし,今後の活動の展開について考察することを目的とした。野川流域に存在し,かつ野川流域の環境や開発に関心を持ち活動している市民団体を対象にし,ヒアリング,会報等の出版物をもとに,活動対象,目的を達成する手段としてみた住民との関わり,行政との関わりの3つの観点から検討を進めた。その結果,野川流域の市民団体の活動の変遷は,「行政要求型」の1種類だった活動のタイプが,「まち型」「浸透実践型」が加わり,3種類に多様化してきたことがわかった。