著者
山田 秀哉 小野田 千明
出版者
日本デジタル教科書学会
雑誌
日本デジタル教科書学会発表予稿集 日本デジタル教科書学会第7回年次大会 (ISSN:24326127)
巻号頁・発行日
pp.61-62, 2018 (Released:2018-10-03)

2020年度から小学校でもプログラミング教育が行われることになり、関連のハードウェアやソフトウェア等のツールに注目が集まってきている。しかし、小学校学習指導領における例示では、第5学年算数科、第6学年理科、総合的な学習の時間に留めている。ここで「小学校高学年になればプログラミングとすぐに向き合えるのか」「中学年や低学年で素地を作らなくてもよいのだろうか」という問題に気付く。本報告では、プログラミング教育を指導したことのない教員(筆頭者)が初めて取り組んだ実践を報告する。算数科、生活科での授業事例を児童の様子、教師の配慮、使用したアプリケーションなどに着目して報告していきたい。
著者
島峯 隆浩 米満 郁男 渋谷 直樹 纐纈 美沙子 今井 治樹 藤田 紘一 大村 進 小野 卓史
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.226-234, 2018 (Released:2018-09-28)
参考文献数
38
被引用文献数
2

This study aimed to compare cephalometric changes in the upper airway morphology, including the hyoid bone position, after the conventional Le Fort I (LF) osteotomy, and an LF and horse-shoe osteotomies. Twenty-two patients diagnosed as having skeletal maxillary protrusion at the Department of Oral and Maxillofacial Surgery/Orthodontics, Yokohama City University Medical Center, were included. They were divided into two groups as follows: 13 patients underwent LF and sagittal split ramus osteotomies (LF group); and 9 patients underwent LF, horse-shoe and sagittal split ramus osteotomies (HS group). The following linear variables were measured on lateral cephalometric radiographs taken before (T0), immediately after (T1), and 1 year after (T2) surgery: palatal pharyngeal space (PPS), the length from the posterior pharyngeal wall to the posterior nasal spine (PNS); superior posterior palatal space (SPPS), the length from the posterior pharyngeal wall to the middle point between the PNS and the lowest point of the soft palate; middle posterior palatal space (MPS), the length from the posterior pharyngeal wall to the lowest point of the soft palate; inferior posterior palatal space (IPS), the length from the posterior pharyngeal wall to the tongue passing the lowest point of the second cervical vertebra; epiglottic pharyngeal space (EPS), the length from the posterior pharyngeal wall to the tongue passing the front end of the epiglottis; S-H, the length from the lowest point of the hyoid bone to the Sella; and C3-H, the length from the lowest point of the hyoid bone to the lowest front point of the second cervical vertebra. Statistical analyses were performed using the Mann-Whitney U test. P values of <0.05 indicated statistical significance. SPPS and MPS decreased at T2 in the HS group. IPS and EPS increased at T1 in both groups but decreased at T2 in the HS group. S-H decreased at T1 in both groups and at T2 in the LF group. C3-H increased at T1 in both groups but decreased at T2 in the HS group. The anteroposterior diameter of the oropharynx was unchanged in the LF group because the tongue moved upward after the palate moved upward but changed in the HS group because the tongue moved backward and the oral volume decreased due to the absence of palatal segment movement. In conclusion, the anteroposterior diameter of the oropharynx decreased after backward and upward movements of the maxilla by LF and HS in the patients with skeletal maxillary protrusions.
著者
春日 遥 坂本 大介 棟方 渚 小野 哲雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.1520-1531, 2018-08-15

ペット動物は人類の最も古い友人である.人々は彼らと生活を営み,今日では家庭において家族としてのペットと人の関係が研究されてきた.近年になってコミュニケーション・ロボットの登場により,家庭における人とペット動物に加え社会的ロボットを考慮した3者関係に注目した研究分野が生まれつつある.本研究では,社会的ロボットが家庭における人とペット動物の関係に対してどのような影響を与えるのかを調査するために実験的なフィールド調査を行った.調査には10家庭22人と12頭のペット動物(犬が4頭,猫が8頭)が参加した.調査においては社会的ロボットとして小型人型ロボットNAOを使用し,各家庭において小型人型ロボットと人,ペット動物が対話する様子の観察を行った.対話ではペット動物に対してポジティブに話しかける正条件と,相対的にネガティブに話しかける負条件の2つのシナリオで調査を実施した.両条件では約2分間の対話シナリオのうち,約30秒間のロボットからペット動物への発話内容が異なった.結果として,ロボットのペット動物に対する発話内容と態度の違いが,参加者からロボットへの印象に影響を与えていた.
著者
徳永 宗正 曽我部 正道 後藤 恵一 山東 徹生 玉井 真一 小野 潔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.392-409, 2013 (Released:2013-08-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

近年高速鉄道で採用の多い背の高い防音壁は,固有振動数が低く,従来支配的な設計要因とはならなかった列車風圧との共振による動的増幅が懸念された.本論文では,動的応答増幅を考慮した防音壁の設計法の提案を目的に,測定・数値解析に基づく検討を行った.列車通過時の防音壁の応答において,200km/h以下では列車荷重による応答が支配的となる一方,列車速度200km/h以上では列車風圧による応答が90%以上を占め,設計においては列車風圧のみを考慮すればよいこと,列車風圧による防音壁の応答は,列車風圧パルスと固有振動モードによる共振効果,後尾部パルスの重畳効果により増幅されること等を解明した.さらに,列車通過時の防音壁の動的応答を一般化し,防音壁の設計法として,シミュレーションによる手法と簡易法を提案した.
著者
山村 隆 小野 紘彦 佐藤 和貴郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.35-40, 2018-01-01

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の生物学的病因を探索する近年の研究により,血液・脳脊髄液における種々のサイトカイン上昇,ME/CFS亜群と関連した自己抗体などの異常が明らかにされている。またB細胞を除去する抗CD20抗体(リツキシマブ)がME/CFSに有効であるという医師主導治験の報告もあり,自己免疫応答亢進などの免疫異常を背景とする中枢神経系炎症がME/CFSの本態である可能性が議論されている。
著者
坂本 大介 小野 哲雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.109, pp.15-20, 2005-11-08
参考文献数
7

ロボット技術の発展に伴い,今後実際に社会に出て人と共に暮らすことのできるロボットが登場することが予想される.ロボットが実際に人とともに社会生活を行うためにはいまだ様々な問題が残されている.特に,ロボットが既存の人間関係や社会関係にどのような影響を与えるのかという問題に関する研究は多く行われていない.本稿では社会的なロボットが人間関係,社会関係にどのような影響を与えるかを扱う学問であるロボット社会心理学を提案し,この有効性を確かめるための実験を行った.これによりロボットが実際に人間関係に良い影響も悪い影響も与える可能性があることを確認した.つまり,ロボットは人間関係を壊すことが可能性であり,同時に人間と共に良い関係を築くことも可能であることを確認した.これについて報告する.With the developments in Robotics, Robots that live with us will appear on the daily life in near future. However, there are many problems on social robots. In particular, the effects of robots behaviors influence the human relations and societies have not clarified. In this paper, we conducted an experiment to verify the effect of robots behaviors influence the human relations using the 'Balance theory'. The result shows that a robot can affect a good or bad influence on the human relations. A Human's impression of another human, had undergone a change by a robot. In other words, robots can construct or collapse the human relations.
著者
小野 房子 大松 孝樹
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.19-23, 1974

東京農業大学厚木農場他7県産の玄米を試料として米のナトリウム及びカリウム含有量を調べた。<br>玄米にはカリウムが多量に含まれ258.1±20.0mg%であったが, ナトリウムはきわめて少量しか含まれていない。玄米を歩留り90%に精白するとカリウムの約1/2は米糠中に移行した。精白米を水圧式洗米機で洗米すると精白米のカリウムの約36%が流失した。<br>東京都内6病院の米飯のナトリウム含有量は4.6±0.7mg%, カリウム含有量は26.7±1.4mg%でいずれも余り差異がなかった。
著者
田中 英樹 鈴木 究真 小野関 由美 泉 庄太郎 青柳 久仁子 久下 敏宏
出版者
群馬県水産試験場
雑誌
群馬県水産試験場研究報告 (ISSN:13421085)
巻号頁・発行日
no.20, pp.1-12, 2014

内水面漁業と水圏生態系に重大な影響を及ぼすコクチバスMicropterus dolomieuは、群馬県内において1998年5月に榛名湖で初めて採捕され、翌1999年5月には奥利根湖で生息が確認された。2002年と2005年には神流湖で採補されたが、その後は奥利根湖以外における採捕事例は途絶えていた。本種は群馬県はもとより、全国的にも公式な放流事例はなく、他魚種の種苗放流に混入した生息域の拡大も著しく否定されている。2005年に施行された「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」、いわゆる「外来生物法」に基づき、飼育を始め、他地域への放流や運搬が禁止されている「特定外来種」に指定されているにもかかわらず、近年では群馬県内の河川でも生息が確認され、2009年の烏川での採捕に端を発し、2011年に鏑川、渡良瀬川、碓氷川、2012年には鮎川で採捕され、その生息分布域が拡大しており、繁殖抑制および拡散防止、ならびに駆除を行うことが急務となっている。一方、コクチバスの日本での生態は未だに不明な点が多く、実態の解明が早急の課題となっている。そこで今回、コクチバスの生息河川を管轄する漁業協同組合と遊漁者、水産行政の協力のもと、群馬県内の河川に生息するコクチバスの胃内容物と河川の水温変化に伴う摂餌行動に着目した調査を行い、その食性等に関する知見を得たので報告する。
著者
中田 久美子 小野 千紘 吉田 薫 吉田 雅人 吉田 学 山下 直樹
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第108回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.OR1-11, 2015 (Released:2015-09-15)

【目的】現在,テオフィリン等の薬剤がヒト不動精子の運動性回復に使用されているが,顕微授精の際に刺入精子とともに卵子細胞内への薬剤が混入することが危惧されている。一方,水素分子は細胞毒性の高い活性酸素種を選択的に還元する作用を有し,副作用が極めて少ないことが知られている。本研究は,解糖系と電子伝達系によるATP産生の阻害剤を用いて,ヒト精子の運動性に対する水素分子の作用機序を明らかにすることを目的とした。 【方法】インフォームドコンセントの得られた,治療後廃棄予定の精子(n=26)を用いた。本実験では85%以上の運動性を有する正常精子を材料とした。その精子をTYB(Test-Yolk-Buffer,JX日鉱日石エネルギー)にて凍結,融解を2回繰り返し,2回目の融解後の洗浄にはグルコース非添加のTYH(G-N区)を使用し,100μlに調整した後,室温に静置した。24時間後,再度遠心処置を行い,ペレットを3等分にし,50μlのグルコース添加のTYH(G+N区),水素分子含有のグルコース非添加のTYH(G-H区)とG-N区にそれぞれ混和した。また,一部のG-N区およびG-H区に40μMのアンチマイシンAを添加した(G-N-A区,G-H-A区)。各過程で,マクラーチャンバーおよびSCAにて運動率および運動性を測定した。 【結果】G-N,G+N,G-H区の運動率はそれぞれ,2.2%,9.7%,8.3%であり,G+N,G-H区はG-N区よりも有意に高かった(P<0.01)。G-N-A区の運動率は0.07%であるのに対し,G-H-A区は1.8%であり,有意に高かった(P<0.05)。 【考察】グルコース非添加かつ電子伝達系阻害剤の存在下で水素分子は,ヒト精子の運動性を有意に改善させた。これらの結果は,水素分子は精子ミトコンドリアの電子伝達系のATP産生を促進する効果があることが示唆している。
著者
石塚樹 小野 哲雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.26, pp.23-29, 2007-03-14
参考文献数
5

昨今,情報処理技術の発達にともない,パーソナルコンピュータや携帯電話端末をはじめとした,高度な情報処理を実行することのできる機器が社会に広く普及し,人と機器との間に,従来の「使う」に加えて「対話する」という新たな関係が生まれはじめている.本研究では,集団における人の振る舞いを取り扱う領域において共通して重要な概念であるミクロマクロループと,そのループ構造を持つ例である拍手という行為に注目する.また,実際の人との間に同ループ構造を形成するように拍手を協創するシステムを実装し,それを用いた実験から,人と社会的相互行為を図るシステムにとって同ループ構造が重要であることを示す.Recently, the equipment that can execute advanced information processing including the personal computer and the cellular phone widely spreads to the society as information processing technology develops, and a new relation "Dialogue" in addition to "Use" arises between the person and the equipment. In this research, we focus on the concept "micro-macro loop" that is important to discuss about group interaction and the act of applause that is the example with micro-macro loop. We implement the system that collaborate applause with actual human as building micro-macro loop structure, and sustain that this structure is important for the system aims social interaction with human.
著者
大橋 啓太 小野 くみ子 川手 勇也 渡瀬 涼 石川 朗
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.303-309, 2018-08-01 (Released:2018-07-18)
参考文献数
16

The aim of this study was to investigate the effects of the difference in the ways to carry a baby using a baby carrier on the respiratory response during upslope walking. Fourteen healthy adults participated in this study. We set the individualized walking speed at 30% of the maximum oxygen uptake at 0% grade. The test began at 0% grade walking on the treadmill and increased by 2% every 5 min until 8%. The test was performed randomly in these two conditions: holding an infant model weighing approximately 15% of body weight in front of the subject with a baby carrier (F) and backpack with a baby carrier (B). Heart rate (HR), oxygen uptake (VO2), minute ventilation (VE), tidal volume (TV), respiratory exchange ratio (R), and respiratory rate (RR) were measured and the values from the last 1 min of each grade were averaged. HR, VO2, VE, TV, R, and RR significantly increased with increasing grade in each condition. There were no significant differences in interaction effects in HR, VO2, VE, TV, R, and RR. This study suggests that the difference in the ways to carry a baby using a baby carrier has no effects on the respiratory response during upslope walking at a speed corresponding to 30% of the maximum oxygen uptake at 0% grade until 8% grade.
著者
北川 勲 陳 兆隆 吉原 実 小林 勝也 吉川 雅之 小野 尚彦 吉村 祐次
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.104, no.8, pp.858-866, 1984-08-25 (Released:2008-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
10 16

The alkaloidal constituents of two types of "pao-fuzi ( ?? ?? ?? )", the processed tuber of Aconitum carmichaeli DEBX., were investigated. Aconitine (1), hypaconitine (2), mesaconitine (3), talatizamine (5), 14-acetyltalatizamine (6), isotalatizidine (7), karakoline (8), neoline (9), lipoaconitine (10), lipohypaconitine (11), lipomesaconitine (12), and lipodeoxyaconitine (13) were identified from"banshu-fuzi ( ?? ?? ?? ?? )", while benzoylaconine (1a), benzoylhypaconine (2a), and benzoylmesaconine (3a) together with 1-3, 5-9 were identified from"fupian ( ?? ?? )". By use of a dual-wavelength thin layer chromatography scanner, lipo-alkaloids (10-13) were shown to be distributed as major alkaloids in thirteen out of fifteen kinds of "fuzi"and wutou". It was also found that these lipo-alkaloids were less toxic as compared with the corresponding fatally toxic alkaloids such as 1 and 3. However, lipomesaconitine (12) was found to exhibit antiinflammatory and analgesic activities. It was suggested that the substitutions of the acetyl residues attached to the C-8 hydroxyls of 1-4 for the fatty acid residues were the other possible chemical modifications in the decrease of toxicities of Aconiti Tuber.
著者
小野 尚彦 山崎 靖人 山本 紀之 角南 明彦 三宅 秀和
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.205-213, 1986 (Released:2007-03-02)
参考文献数
13
被引用文献数
3 2

indomethacin(IND)の誘導体であるproglumetacin maleate (PGM)の胃腸管障害作用をINDと比較検討した.ラットにPGMあるいはPGMと等モル用量のINDを経口投与し,胃および小腸粘膜障害の発生経過を検討した.PGMの胃および小腸粘膜障害作用のピークはそれぞれ投与後4および24時間で認められた.経口投与4時間後のPGMの胃粘膜障害作用は,絶食ラットにおいてモル比でINDの約1/7,摂食ラヅトにおいて約1/10であった.また経口投与24時間後のPGMの小腸粘膜障害作用はモル比でINDの約1/2であった.一方,PGMを7日間連続経口投与した際の胃粘膜障害作用はモル比でINDの約1/3,小腸粘膜障害作用は約1/2であり,INDよりも明らかに軽度であった.PGMの胃腸管障害がINDに比べて極めて弱かったことは,PGMの粘膜直接刺激作用が弱いことを反映しているものと考えられる.また腸管でのprostaglandin (PG)生合成阻害作用をマウスのアラキドン酸誘発下痢抑制作用を指標にして検討した.被験薬1あるいは4時間前投与時のいずれの場合もPGMの効果はモル比でINDの約1/2であり,PGMの腸管でのPG生合成阻害作用はINDよりも弱いものと考えられる.以上の結果から,PGMはリウマチ性疾患等の長期連用を要する炎症性疾患に対し治療係数の高い安全な非ステロイド性抗炎症薬であるものと考えられる.
著者
小野 尚彦 角南 明彦 山本 紀之 山崎 靖人 三宅 秀和
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.77-84, 1986 (Released:2007-03-02)
参考文献数
13
被引用文献数
4 2

indomethacin(IND)の誘導体であるproglumetacin maleate (PGM)の鎮痛・解熱作用を等モル用量のINDと比較検討した.マウスphenylquinone writhingに対するPGMの効果は,被験薬1時間前投与時ではINDの約0.8倍であったが,4時間前投与時ではINDの約2倍であった.ラット硝酸銀関節炎疼痛に対してもPGMはINDの約1.5倍の効果を示したが,ラットadjuvant関節炎疼痛に対してはINDの約0.7倍の効果であった.一方,PGMはラット正常体温には全く影響をおよぼさない投与量で,ラットyeast発熱に対する抑制作用を示したが,その効果はINDの約0.5倍であった.またウサギLPS発熱に対するPGM、の解熱効果はINDの約0.3倍と弱かった.これらの結果から,PGMはINDにほぼ匹敵する強力な鎮痛効果を有するが,解熱効果は概して緩和であることが示された.このPGMの鎮痛・解熱作用は主として生体内で代謝されたINDによるものと考えられる.以上より,PGMは抗炎症作用に加え,鎮痛・解熱作用を有した非ステロイド性抗炎症薬であることが示唆された.
著者
小野 尚彦 山本 紀之 角南 明彦 山崎 靖人 三宅 秀和
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.33-46, 1986 (Released:2007-03-02)
参考文献数
16
被引用文献数
6 2

新しいindomethacin(IND)の誘導体であるproglumetacin maleate(PGM)の急性ならびに亜急性・慢性炎症に対する作用を各種実験炎症モデルを用い,等モル用量のINDと比較検討した.急性炎症モデルである血管透過性亢進およびcarrageenin足浮腫に対して,被験薬1時間前投与時のPGMの効果はINDの約1/2であったが,4時間前投与時のPGMの効果は1時間前投与時の約2倍に増加した.kaolin足浮腫および紫外線紅斑に対するPGMの効果はINDよりも若干弱かった.carrageenin胸膜炎において,PGMの白血球遊走抑制作用は明らかにINDよりも強力であった.亜急性炎症モデルであるcarrageenin肉芽嚢法による抗滲出液作用および綿球法による抗肉芽腫作用は,PGMとINDでほぼ同等であった.慢性免疫炎症モデルであるadjuvant関節炎に対するPGMの予防効果は,adjuvant処置足の腫脹抑制でみるとINDとほぼ同等であったが,非処置足ではINDよりも強く,全身炎症症状の改善効果も著明であった.治療効果においても,PGMの効果はINDとほぼ同等以上であった.以上,PGMは急性炎症に対してはINDと同等か若干弱いが,その作用は概して遅効性であり持続的であった.急性炎症後期の白血球遊走抑制作用はINDよりも強く,亜急性・慢性免疫炎症に対してはINDより強いか同等の効果であった.これらの抗炎症作用態度より,PGMは特に慢性関節リウマチなどの慢性炎症性疾患に好ましい薬剤といえる.このPGMの抗炎症作用の大部分は生体内で代謝されたINDによるものと考えられるが,足浮腫試験でPGMを局所投与した際でも抗炎症作用が認められたことより,PGM本体も薬理活性を有する可能性も考えられ,PGMはいわゆるプロドラッグとは厳密な意味で少し挙動を異にするものであった.