著者
小野 佐和子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.361-366, 2000-03-30
被引用文献数
1

大和郡山藩主柳沢信鴻が致仕の後記した『宴遊日記』をもとに,安永・天明期の六義園での庭見物の様相を明らかにする。六義園では,家臣とその家族,奉公人とその親族,信鴻と交友関係にある者,さらには信鴻と直接関係のない部外者の庭見物が認められる。部外者は,藩の関係者を仲介に庭を見物し,その数は,安永9年(1780)以降著しく増加する。その理由としては信鴻が菊花壇を設けて見物を誘ったことと,当時の郊外の遊覧の盛況が考えられる。様々な人が見物に訪れる庭は,外部に閉じた構造をもつ大名屋敷が,外部の人々を導きいれ,外部社会と交わる装置の役割を果たしたと考えられる。
著者
松久保 隆 佐藤 亨 小野塚 実 藤田 雅文 石川 達也
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、研究-1:偏位性咀嚼習癖を持つ患者の聴力変化の機構を明らかにするため、コットンロール噛みしめ時の聴性誘発脳磁場(AFEs)を定量的に比較検討すること。研究-2:歯科診療所に来院した患者の偏咀嚼と聴力値との関連性を疫学的に検討すること、である。本年度に得られた新しい知見は、研究-1:申請者らの開発した最大咬合圧の40%以下までのコットンロール噛みしめの条件でAFEs測定を行う方法を用いて研究1を行い、以下の結果を得た。噛みしめ時のAEFs応答は、左右側音刺激に対するAEFs応答はすべての被験者で低下しており、特に噛みしめ側と同じ聴覚野の応答に有意な差が認められた。噛みしめが聴覚野応答を低下させる理由として1)顎関節の偏位による形態的変化、2)中耳および内耳の神経支配への影響、あるいは3)gate controlによる中枢での抑制が考察された。本研究は、コットンロール噛みしめが、聴覚誘発磁場に影響を与えていることを客観的に示すものである。また、本研究に用いた方法は、噛みしめの聴覚応答をはじめとする体性感覚に影響を与えていることを実験的に検討する方法として有用であることを示している。研究2:オージオグラムの咬合咀嚼機能の動的評価への応用について20症例による検討を行った。すなわち、プレスケールおよびシロナソアナライジングシステムによる咬合咀嚼機能の評価にオージオグラムを加えることの有効性を評価しました。その結果、質問紙調査、口腔内診査、プレスケール、咀嚼運動ならびに作業用模型による分析にオージオグラムの周波数別の聴力低下パターン評価を組み合わせることにより、咬合咀嚼運動のより正確な動的評価が可能であることが示された。
著者
小野 英哲
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、塗床,張り床における床下地面および床仕上面凹凸の評価方法に関する研究を行った。始めに直径・深さの異なる2種の凹部を設けたアクリル製床下地に、メタクリル樹脂・エポキシ樹脂・ウレタン樹脂をそれぞれ3種の塗厚で施工し、硬化後に塗床表面に生じた凹凸量を測定し、床下地の凹部直径・深さおよび塗厚との関係を示した。次にエポキシ樹脂について官能検査を行い、塗床表面の凹凸量に関する視覚的観点から気になるか・気にならないかの尺度を構成し、この尺度を用いて床下地凹量の限界値を推定できる可能性を示した。さらに、床凹凸試料上をキャスターが走行した際にキャスターに生じる鉛直方向の加速度による床凹凸試料の序列の相関を、キャスターの仕様(重量,車輪の径,走行速度,車輪のかたさ)間で検討し、加速度により床凹凸に相対的序列をつけることが可能であること、加速度の観点から床凹凸を評価する際には床凹凸の断面形状のみでなく、かたさの要因も含めて評価する必要があることを示した。さらに欠陥に起因する床の不具合を調査し、欠陥のないコンクリート床下地の重要性を確認した。次に、コンクリート床下地表層部分の欠陥を発生させる施工における不適正の現状を把握し、さらに不適正に起因する欠陥を実験的に検証した。以上より、適正な計画,管理下における床下地コンクリート施工の重要性を再確認および指摘した。
著者
小野 善康
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1. 2国貨幣経済動学モデルを構築し,各家計が資産として自国通貨と自国・外国の収益資産を選択するという前提で,非飽和的な流動性選好を持つ家計の動学最適化行動を定式化し,その経済動学と定常状態を調べた.その結果,対外資産を多く保有し,生産性の高い豊かな国ほど失業が発生しやすく,貧しい国ほど完全雇用が成立しやすいことを明らかにした.また,失業下では,完全雇用の場合とは異なり,対外資産を多く保有し生産性の高い国ほど失業が深刻になり,かえって消費が減少してしまうことを示した.さらに,流通機構の非効率性が生み出す内外価格差と失業の発生状況,中央銀行による為替介入の効果の有無,2財モデルの場合のマーシャル・ラーナー条件(為替レートと経常収支の関係)の正否など,国際マクロ経済学の諸問題を,動学的最適化を前提とする不況モデルの枠組みで再検討した.これらの結果については、後述の著書にまとめた.2. 実際に,家計が非飽和的な流動性選好を持つことを裏付けるための研究として,小川一夫教授(阪大)および吉田あつし助教授(大阪府大)とともに,各県別の資産と消費量,日経レーダーによる個別家計の資産と消費データを使って,実証研究を行った.その結果,流動性選好の非飽和性を強く裏付ける実証結果が得られた.3. 雇用を生み出す直接投資がある場合の国際経済モデルを構築し,直接投資に対する税制やローカルコンテンツ規制などが受入国に与える影響を調べた.さらに,生産者と販売者が異なり,それらが自国企業と外国企業である場合の,最適関税の性質についても調べた.これらの研究は,S.Lahiri教授(Essex大)とともに行い,研究発表の項の雑誌論文として挙げた,5つの論文としてまとめた.
著者
岡本 玲子 谷垣 静子 小出 恵子 鳩野 洋子 岩本 里織 草野 恵美子 小寺 さやか 岡田 麻里 塩見 美抄 合田 加代子 井上 清美 尾ノ井 美由紀 松原 三智子 岡本 里香 小野 美穂 金藤 亜紀子 田中 祐子 星田 ゆかり 茅野 裕美 福川 京子 俵 志江 長野 扶佐美
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近年、健康課題の多様化・深刻化に伴い、保健師に求められる役割が拡大・高度化している。本研究の目的は、大学院博士前期課程の科目で実施する、保健師等のコンピテンシーを高めるための学習成果創出型プログラムを開発し効果を検証すること、及びそれを地域貢献に活かすよう普及することである。プログラムは、2回の試行と修正を経て開発された。プログラムのコンセプトは「私の学び、明日への貢献」であり、4か月間にグループ・セッションが5回、その間の個別面接4回で構成されている。期間中参加者は、現場の課題と、それを解決する自分の学習課題を明確にして、自分で決定した到達目標の達成に向けて取り組む。研究者は学習支援者として、参加者の学習成果が最大になるように支援した。プログラムを実施した結果、以下の結果に示す一定の効果が検証された。前後のアウトカム評価では、参加者の専門性発展力や公衆衛生の基本活動遂行能力、事業・社会資源の創出コンピテンシー、住民の力量を高める能力、活動の必要性と成果を見せる能力など多様な能力が有意に高まっていた。さらに、プログラム実施後の参加者の満足度と、費用に見合う効果を得られたと思う程度は高かった。また、参加者の学習プロセスにおいては、1)現状と課題への気づき、2)改善計画の実行、3)改善した成果の確認という3つの必須通過点が確認された。本プログラムは今後、大学院教育や大学と連携した自治体や企業、看護協会保健師職能による現任教育への適用可能性がある。
著者
小野寺 祐夫 石倉 俊治 香川 容子 田中 恵子
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
衛生化学 (ISSN:0013273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.196-205, 1976-08-31
被引用文献数
10 5

As fundamental studies on chemical changes of organophosphorus pesticides during chlorination of the water, fate of 11 kinds of P=S type and 2 kinds of P=O type pesitcides in the chlorinated water was examined by thin-layer and gas chromatographic methods. Most of these pesticides examined were found to undergo a chemical change in water containing free chlorine as small as 0.1 ppm. Therefore, at a higher concentration of free chlorine, the P=S compounds were easily oxidized to P=O analogs in the water. However, P=O analogs were not detected from Dimethoate and Ethion in the water, while Dipterex, a P=O compound, underwent dehydrochlorination and rearrangement to form DDVP. Among the P=O derivatives formed from P=S compounds, Malaoxon, Paraoxon, and Diazoxon were comparatively stable in the water but Methyl paraoxon, Sumioxon, and Phosvel-oxon were markedly hydrolyzed and formed phenolic compounds in the water. Oxidation of P=O compounds with free chlorine was hardly influenced by the presence of magnesium, calcium and ferric ions less them 1.0 ppm but suppressed by a ferrous ion.
著者
川戸 和英 横山 勝彦 伊吹 勇亮 芝田 正夫 小野 豊和 石井 智 朝原 宣治 大八木 淳史
出版者
大同大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、企業や組織の社会的責任(CSR)を実践する媒体としてスポーツが有効であるとの仮説について、以下の研究成果を得た。第1は、CSRの基礎理論と成果指標開発に関して、CSRからソーシャル・キャピタル(SC)、そしてグローバル・コンパクト(GC)までの概念展開ができたこと。第2は日本各地や中国、韓国の調査で知見が得られたこと、第3に、成果発表として書籍出版の展望と4つの学会発表を行えたことである。
著者
小野 文子
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

地域美術館と教育現場との連携によっで行う鑑賞教育プログラムの開発を目指しで,今年度は以下のような研究を行なった。(1)長野県内の小・中学校を象として行なった,鑑賞教育に関するアンケート調査の結果の分析,及びアンケート回答者への結果報告。(2)長野県に所在する美術館・博物館を対象として行なった教育普及活動に関するアンケート調査の結果の分析。(3)学校教育の現場において,より充実した鑑賞学習を実現するために,信州大学教育学部附属長野中学校において,写生会の事前授業として鑑賞の時間を設け,第1学年(240名)全員に風景画を鑑賞する授業を行った。この授業では,風景画の歴史と鑑賞のポイントについで講義した後,長野県信濃美術館の協力を得て,東山魁夷の作品を美術室に持参してもらい,作品鑑賞を行なった。この写生会のための事前授業は附属学校の美術を担当する教諭との共同研究の一環のでもあり,来年度には,教育実習生のための鑑賞教育の教材開発へと発展させる方向で研究を進めることを合意した。(4)大学の講義である「美術史・美術理論研究」において,学習指導要領で定められている鑑賞学習について吟味すると共に,教育現場においてより有効,かつユニークな鑑賞教育を行うことを目指した教材開発を試みた。また,学生が考案した教材を用いて,須坂市内の小学校の協力を得て実習を行なった。尚,鑑賞対象として,信州大学教育学部で所蔵している彫刻作品を用いた。
著者
児美川 孝一郎 青砥 恭 小野 方資 南出 吉祥
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大阪府内の公立高校,地元企業,地域における子ども・若者支援機関,高校にスタッフ派遣を行なっているNPO等にヒアリング調査を行い,高校の「進路多様校」における生徒の社会的自立支援・就労支援への取り組みの実態を把握した。多くの高校では,生徒に対するキャリア支援に困難を抱えており,少なからず中退者を出していること,教育・福祉・労働の連携が無ければ,事態への対処が不可能になっていることを明らかにした。
著者
小野寺 淳
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.383-406, 1991-12-31
被引用文献数
2

中国の農村工業は, 経済改革が進行するにつれて「郷鎮企業」として急速に発展を遂げ, これまでの都市・農村間の社会経済的格差を解消することが期待されている. 本稿では, 都市・農村関係を変化させてゆく媒体としての農村工業に注目して, 南京郊外の江寧県を例に, 農村工業の立地展開と存立基盤について考察を行った. その結果, 以下のことが明らかになった. 南京郊外の農村工業は農村経済の中で農業に代わり中心的な部門となった. その立地の変化を見ると, 比較的遍在していたものが南京ヘアクセスの良い地域に集積しつつある. さらに業種別にみると, 地元の資源あるいは農業と関連するよりも, 機械, 繊維, 化学など都市企業との連関を求める業種の比重が高まり, 総じて南京との関係を指向する傾向が見られる. このような農村工業の存立基盤として, 第一に都市企業との連合経営関係の形成があげられる. 都市企業の協力によって資金, 技術, 管理方法あるいは市揚との連係を獲得し, 時には下請関係を結ぶことによって生産の拡大, 経営の安定化を図っているが, その一方で農村(郷・鎮)所属の企業として独立性を保とうとする対応も見られる. 第二に戸籍上農民である工業労働者(「農民工」)の存在がある. 都市への移動が制限され, 農業との兼業状態にあり, 食糧・福利厚生面でコストのかからない「農民工」によって農村内部労働市場が形成され, これが農村工業の存立基盤になっている. 第三に郷・鎮政府の関与がある. 農村工業の上納利潤に依存し雇用創出・所得向上に期待する郷・鎮政府は, 工場長責任制の導入, 流動性に乏しい生産要素の確保など農村工業の活性化・発展に積極的である. その努力は, 郷・鎮経済全体にとっての利益を強く意識している.
著者
清野 純史 宮島 昌克 鈴木 崇伸 酒井 久和 五十嵐 晃 野津 厚 小野 祐輔 鍬田 泰子 古川 愛子 デュラン フレディ 奥村 与志弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011

線的・面的な拡がりを持つ線状地下構造物の地震被害は、都市型災害の嚆矢とも言える1923年関東大震災以降枚挙に暇がないが、その構造を3次元的な拡がりの中の点(横断方向)としてではなく,縦断方向の線や面あるいはボリュームとして捉え、その入力地震動から地震時挙動までを統一的に捉え、設計や地震対策へ結びつけることを目標に、地震被害の分析や各種解析に基づく詳細な検討を行った.
著者
小野 修三 永岡 正己 小笠原 慶彰 坂井 達朗 米山 光儀 松田 隆行 永岡 正己 小笠原 慶彰 坂井 達朗 米山 光儀 松田 隆行 長沼 友兄 安形 静男 安東 邦昭
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

石井十次の岡山孤児院は明治20年に、加島敏郎の大阪汎愛扶植会は明治29年にそれぞれ設立され、一時合併話もあったが、競合する児童保護団体だった。この両者の運命を決定的に分けたのは明治43年韓国併合と同時に、加島が朝鮮扶植農園という移民事業に挺身した点である。本研究は事務所日誌の翻刻により、また朝鮮総督府文書の調査により、両者間の比較を行ない、殖民思想の違いの他、セツルメントに着手するなど社会事業としての共通性も明らかにした。
著者
大岩 政基 南 俊輔 辻 健一郎 小野寺 紀明 猿渡 正俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LQE, レーザ・量子エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.93, pp.31-36, 2009-06-12

時間軸Talbot効果(TTE)を用いた全光クロック抽出法は,OOK(On-off keying)変調された信号光に伝送速度で定まる特定の1次の波長分散を与えるだけで光クロックパルスが抽出できる.しかし,本方法は信号光に{0}符号連続が生じると,抽出光パルス列に長周期の振幅変動が生じる難点がある.一方,能動モード同期を利用した全光クロック抽出法として,SOAファイバリングレーザ(SOA-FRL)への光注入法が報告されている.この方法は,ファイバ共振器中に光遅延回路を挿入することにより任意のビットレートに適用可能となる利点があるが,SOAの変調速度制限のため,出力パルス列に短周期のパターン効果が生じる欠点がある.本報告では,上記の2つの方法を組み合わせることで互いの欠点を補償した新規の全光クロック抽出法を提案し,その動作特性を評価する.
著者
大岩 政基 南 俊輔 辻 健一郎 小野寺 紀明 猿渡 正俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OPE, 光エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.92, pp.31-36, 2009-06-12

時間軸Talbot効果(TTE)を用いた全光クロック抽出法は,OOK(On-off keying)変調された信号光に伝送速度で定まる特定の1次の波長分散を与えるだけで光クロックパルスが抽出できる.しかし,本方法は信号光に{0}符号連続が生じると,抽出光パルス列に長周期の振幅変動が生じる難点がある.一方,能動モード同期を利用した全光クロック抽出法として,SOAファイバリングレーザ(SOA-FRL)への光注入法が報告されている.この方法は,ファイバ共振器中に光遅延回路を挿入することにより任意のビットレートに適用可能となる利点があるが,SOAの変調速度制限のため,出力パルス列に短周期のパターン効果が生じる欠点がある.本報告では,上記の2つの方法を組み合わせることで互いの欠点を補償した新規の全光クロック抽出法を提案し,その動作特性を評価する.
著者
小野 大助 中村 正樹
出版者
地方独立行政法人大阪市立工業研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

非環状アセタール基または1,3-ジオキソラン環を有する3種類の新規両親媒性化合物を考案し、その合成方法について明らかにした。すべての分解性両親媒性化合物の臨界ミセル濃度cmc は、通常型に比べ、低い値を示したことから、これらは良好なミセル形成能を有していることがわかった。すべての両親媒性化合物は、酸性条件下で容易に分解した。4間後の生分解度は、60%以上と良好であり、通常型の界面活性剤よりも優れていた。両親媒性化合物をスチレンをモノマーとする乳化重合反応に用いた場合、重合反応終了後、酸添加により界面活性剤を分解させることにより、容易に高分子量ポリスチレンの単離を行うことができた。タイプ3を用いた場合、ポリオキシエチレン系の市販非イオン界面活性剤よりも生成ポリマーの重合度が大きく、分子量分散度が小さくなった。また、塩析によりポリマーを析出する必要がないためポリマー中のナトリウムイオン濃度が市販非イオン界面活性剤よりも少なった。
著者
趙 衍剛 小野 徹郎 井戸田 秀樹 平野 富之
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.66, no.546, pp.31-38, 2001
被引用文献数
1 12

1.序 構造信頼性解析では、外力や抵抗に含まれている不確定性は一般に確率変数として表され、確率変数の分布形を仮定・決定することは構造信頼性解析および構造信頼性設計の肝要なステップとなる。確率変数の分布形を決定するために、観測データにフィットする予想分布として幅広く用いられる正規、対数正規分布などの分布形はほとんど平均値と標準偏差の二つのパラメータで決められる。一旦平均値と標準偏差が決定すると、分布形の高次モーメントも決められ、分布形の重要な特徴としての歪度などは自由に選択できないことは大きな欠点である。本研究では統計データを精度よくフィットするために平均値、標準偏差、歪度の三つのパラメータで決められる分布形を提示することを試みる。2.三つのパラメータを有する分布形の提示 三つのパラメータを有する分布形を式(1)の累積確率分布関数(CDF)および式(2)の確率密度関数(PDF)で定義する。この分布形を有する確率変数χと標準正規確率変数μの関係は式(4)と式(5)のように得られ、χの3次までのモーメントは式(6)と式(7)のように求められる。式(6)と式(7)より、χの平均値と標準偏差はそれぞれパラメータμとσ,に等しいことが分かる。歪度には平均値μと標準偏差σ,を含めず,歪度はパラメータλだけの関数である。即ち,式(1)(2)の分布形は平均値,標準偏差および歪度の三つのパラメータで決められる。パラメータλの絶対値が小さいときλと歪度α_1の間には式(8)の簡単な線形関係で表わされる。式(8)を前節の各式に代入することにより式(9)と式(10)の分布形が得られる。χの3次までのモーメントは式(14)のように求められ、χの平均値,標準偏差および歪度がそれぞれパラメータのμ,σ,α_3に等しいことが分かる。α_3>0およびα_3<0のときの標準型の確率密度関数はそれぞれFig.3とFig.4に示す。式(9)と式(10)の分布形はは直接平均値μと標準偏差σおよび歪度α_3で定義されており,パラメータを決める手間も必要としない。本研究では式(9)と式(10)を三つのパラメータを有する分布形として提示する。この分布形はα_3が0に近付くことにつれて正規分布の分布形に近付く。3.応用と考察 3.1実測データによる分布形の考察 H型鋼の断面積に関する718個のデータ及び残留応力に関する320個のデータをフィットする正規、対数正規分布および本提案分布の確率密度関数をFig.5とFig.6に示す。提案分布は正規、対数正規分布より明らかにこれらのデータをよくフィットすることが分かる。正規、対数正規分布および本提案分布に対する検定の結果をTable 1及びTable 2に示す。正規、対数正規分布より、本提案分布の適応度かなり小さい、提案分布は正規,対数正規分布より明らかにこれらのデータを良く適応していることが分かる。3.2鋼構造信頼性解析における構造特性の分布形 鋼構造信頼性解析における構造特性として、降伏応力、極限応力、ヤング率、伸び率、ポアソン比、断面積、残留応力などの統計データについて、3次までのモーメントおよび検定結果をTable 3に示す。正規分布,対数正規分布はそれぞれヤング率と伸び率の統計データによく適応し、提案分布は降伏応力、ポアソン比、断面積、残留応力などの統計データによく適応していることが判る。3.3二つのパラメータを有する分布形との比較 既存の二つのパラメータを有する分布形との比較により提案分布形の一般性を検討する。変動係数が0.1,0.2,0.3と0.4の4ケースのGamma, Weibullおよび対数正規分布の確率密度関数と提案した確率密度関数の比較をそれそれFig.7,Fig.8,Fig.9に示す。Fig.7,Fig.8,Fig.9により,ほとんどの場合では細い実線と太い破線はほぼ重なっている。即ち,α_1が大きくないとき,提案分布は既存分布を含む一般的な分布として使うことができる。3.4モーメント信頼性指標としての応用 式(12)を限界状態関数Z=G(X)の標準正規化関数として取り扱い、3次モーメント信頼性指標β_<TM>は式(21)のように得られる。式(24)の1層1スパン骨組の終局限界状態関数に対して、限界状態関数の3次までのモーメントは容易に計算でき、3次モーメント信頼性指標は2.6145として得られ、この結果が精算値にかなり近いことが判る。3.5分布形が分からない確率変数の取り入れ 分布形が分からない確率変数に対してその統計データから必ず平均値、標準偏差、歪度等のモーメントが計算できる。分布形の変わりに、式(12)と式(13)のx-uとu-x変換を用いれば、分布形が分からない確率変数をFORM/SORMに取り入れることができる。されに、式(13)のχはuの簡単な陽的関数なので、標準正規確率変数uの乱数を利用して、χの乱数も容易に発生でき、MCSにも適用できる。式(25)の限界状態関数には、χ_1,χ_2の分布形が未知であり、統計データからその3次までのモーメントが得られている。χ_1,χ_2の分布形が未知であるものの、式(12)と式(13)のχ-uとu-χ変換を用いて、FORMの解析結果はP_1=0.1032のように得られる。式(13)によりχ_1,χ_2の乱数を発生し、サンプル数が10,000で得られたMCSの結果はP_1=0.1012となる。4.まとめ 1.提案分布形は予想分布として応用することができ、二つのパラメータを有する分布形より統計データをよく対応することが判る。2.歪度が小さいときの既存のGamma、Weibull、対数正規分布などの二つのパラメータを有する分布形を代表することができる。3.三つのパラメータを有する分布形より、3次モーメント信頼性指標が容易に得られる。4.提案分布形に基づく標準正規化手法を用いて、分布形が分からない確率変数をFORM/SORM及びMCSに取り入れることができる。5.構造特性の不確定性を表す確率変数は一般に正的歪度を有する。提案分布は降伏応力、ポアソン比、断面積、残留応力などの統計データによく適応している。6.提案分布形の適用範囲は|α_3|$le;1である。