著者
長崎 勤 宮本 信也 小野里 美帆
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

第I部では会話・ナラティブ発達研究の意義と課題について検討した。第II部・会話の発達では、健常幼児の2、3歳児は、母親の明確化要求に応答することで会話を継続し、かつ子どもが自発的に明確化要求を使用することで会話に参加する様相が認められ、広汎性発達障害児では、自ら明確化要求を使用することで会話を継続していくことはみられなかった。ナラティブの発達では、直前の「ケーキ作り」経験についての母子会話場面を分析した結果、3歳では複数の出来事に言及したり,それらを関連付けることが少なく、4歳になると複数の節を「時間」関係で関連付け、5、6歳になると「因果」「比較」「逆」等の多様な関係において節を関連付けるという発達過程が示された。フィクショナル・ストーリーの語りにおける視覚的手がかりの有効性を検討した結果、6歳児において周辺要素手がかりが物語理解と物語産出を促進し、物語理解においては5・6歳の年齢段階で中心要素がすでに獲得されていた。第III部では、自閉症児を対象に工作とおやつ場面の共同行為ルーティンを用いて、話者の不明確な発話に対する明確化要求の使用を目的とした指導を行った結果、指導者の曖昧な指示に対して、事物を差し出して「これですか?」と自発的に聞き返すことが可能になっていった。広汎性発達障害児を対象とし、物語文法の各要素を示す連続絵を提示し、「吹き出し」への書き込みを指導手続きに導入した結果、絵に描かれていない情報を含むCUが産出され、「欲求」「感覚」などが「吹き出し」に書き込まれるようになった。第IV部においては、以上の研究を基盤にした第I段階(通常2〜3歳代)から第III段階(通常5〜6歳代)までの「会話を通したナラティブ発達支援・基礎プログラム試案(NAP)」を提案した。
著者
守嶋 圭 小野 高幸 林 幹治
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.205-230, 1993-11

1990年第31次南極地域観測隊により昭和基地において観測された多波長フォトメータデータより, 844.6nm (OI)光, 並びに670.5nm (N_21PG)光強度を用いて推定された降下電子のエネルギーパラメータの関係を, タイプAオーロラ, パルセーティングオーロラ, ブレイクアップ時のオーロラについて調べた。解析の結果, オーロラのタイプ別に, エネルギーパラメータは異なる関係を示すことがわかった。特にディスクリートオーロラでは, 降下電子の全エネルギーフラックス(E_<tot>)は平均エネルギー(E_<av>)の二乗に比例する関係(E_<tot>=K′・E^2_<av>)が多く見られた。この関係はディスクリートオーロラを励起する降下電子が沿磁力線電位差で加速されるという理論的予測と一致する。実際の観測例の中には上記の比例関係が見られないディスクリートオーロラも存在するが, その原因として, (1)通過するオーロラがフォトメータの視野範囲を十分覆っていない場合, 及び(2)磁気圏側の電子密度, 温度が時間的に変動している場合があることが示された。
著者
小野 芳 柳 雅之 工藤 善 手代木 純 輿水 肇
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.74-79, 2006-08-31
被引用文献数
7 9

本研究では,屋上緑化の熱環境への負荷低減効果を定量的に算定するための基礎データとして,屋上緑化の蒸発散量の測定を行った。使用した土壌は黒土とパーライト系の人工軽量土,土壌厚は7cm,14cm,21cmの3種類であり,各土壌厚につき裸地と3種の植物の計4試験区を設け,夏・秋・冬・春の4シーズンの蒸発散量を小型ライシメータの重量減少によって測定した。その結果,黒土区で人工軽量土区より植物生育が悪いものが多く,蒸発散量が抑えられ,黒土区のペチュニアの8月の蒸発散量は裸地より少なかった。各土壌厚の中で8月の蒸発散量が最大だったものは,人工軽量土区のローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)が7.2kg/m^2/day,人工軽量土区のバーベナ(Verbena.×hybrids)が12kg/m^2/day,黒土区のオオムラサキツツジ(Rhododendron pulchrum Sweet cv. Oomurasaki)が14kg/m^2/dayであった。
著者
小野寺 恒信
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では、光触媒還元法を確立し、新規な有機・無機ハイブリッドナノ構造体を創製するとともに、有機・無機双方の特性を相乗的に活かした物性・機能を探求する。本年度は、作製した有機・高分子ナノ結晶をコアとする金属ナノシェル複合体の評価と、複合体の集積化を行った。1.有機・高分子ナノ結晶をコアとする金属ナノシェル複合体の評価ポリジアセチレンナノ結晶をコアとする金属ナノシェル複合体について、SEM/TEM観察および分光測定を行った。金属ナノシェルは、金属種によってシェルの凹凸に顕著な違いが認められた。その中でも、銀ナノ粒子は被覆率の違いと表面プラズモン吸収ピークのシフトに相関かおり、銀ナノ粒子間の双極子-双極子相互作用により議論できた。さらに、共同研究として単一粒子のレイリー散乱スペクトルの測定、特に偏光依存性を評価した結果、ポリジアセチレンナノ結晶の光学異方性に対応したスペクトルを観測すると共に、銀ナノ粒子の表面プラズモン吸収についてもコア結晶の屈折率の異方性に影響されたスペクトル変化が観測され、単一粒子レベルでコアーシェル間の相互作用を詳細に評価できた。これらは、複合体の構造と電場増強効果の相関解明に向け、重要なデータと成り得る。2.金属ナノシェル複合体の集積化交互積層法を用いて、複合体を35層まで積層し、非線形光学特性評価に必要な吸光度1程度の薄膜の作製に成功した。しかし、薄膜のSEM観察から、μmオーダーの凝集体が確認でき、より光学品質の高い薄膜を作製するには積層過程での複合体の分散安定性に留意する必要がある。以上のように、金属ナノシェル複合体の評価を行い複合化の特色を明確にすると共に、複合体の集積化を行うという当初の目標を達成できた。また、本研究の成果は学会および論文発表を行った。非線形光学材料・触媒・メタマテリアルなどの作製に貢献すると期待している。
著者
小野 尚之 堀江 薫 上原 聡 ハイコ ナロック 中本 武志
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、語彙意味論モデルと構文研究を基に語彙情報と事象構造の融合に関する日英語の比較対照研究を行うものである。中心課題は次の3つに集約される。(1)生成語彙意味論によるレキシコン研究の推進。生成語彙意味論モデルのクオリア(語彙情報)が事象構造の解釈をどのように決定するかという問題の解決を目指す。(2)言語における主観性(subjectivity)問題の解明。主観性が事象構造の解釈(例えば、心理状態述語など)にどのように影響するか。そして、構文選択にどのように影響するか。(3)語彙化・文法化における語彙情報と構文の融合についての新たな提案。語彙情報が構文に融合しさらに文法化していく過程には、類型論的に捉えるべき普遍性があることを示す。
著者
小野 玲
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、食道癌の診断による食道切除再建術施行患者について、術前より行動変容技法を用いた術前運動指導プログラムを実施することが術後呼吸器合併症予防につながるかを検討することである。対象は、当院食道胃腸外科にて食道癌と診断され、食道切除再建術を施行した患者100 名(男性87 名、女性13 名、平均年齢66.5±8.6 歳)であった。これらを、7 日以上運動プログラムを実施できた群(実施群)63 名(男性44 名、女性9 名、平均年齢67.0±9.3 歳)と実施できなかったまたは7 日未満しか実施できなかった群(非実施群)31 名(男性28 名、女性3 名、平均年齢64.6±7.9 歳)の2 群に分け、術後呼吸器合併症の発症率を比較検討した。主要アウトカムは術後呼吸器合併症の発症率とした。2 群間の比較にはχ2 検定とロジスティック回帰分析を使用し、交絡要因で調整を行った。術後呼吸器合併症は実施群で4 名(6.4%)、非実施群で9 名(24.3%)と実施群において有意に術後呼吸器合併症が低下(p = 0.01)しており、その関係は交絡要因で調整を行っても同じであった(オッズ比; 0.14)。食道切除再建術施行患者において、術前からの積極的な呼吸リハ介入により術後呼吸器合併症が予防できることが示唆された。
著者
上北 恭史 花里 利一 稲葉 信子 松井 敏也 小野 邦彦 箕輪 親弘
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は2006年5月27日に起こった地震によって被災したインドネシア共和国ジャワ島中部の世界遺産プランバナン遺跡群及びその周辺の石造による組積造建造物遺産の破損メカニズムと修復計画策定の手法の開発を行うものである。研究は、1)常時微動測定と亀裂変位測定をシバ祠堂を中心に行い、2)シバ寺院内部構造解明のため、植民地時代に修復された記録をオランダの国立図書館にて調査を行い、3)遺跡公園の観光マネジメントの調査を行った。研究の結果、シバ祠堂は構造的に安定していることが明らかになった。またシバ祠堂に内部構造を示す歴史的資料はオランダにも現存していないことがわかったが、一部の資料からシバ祠堂の内部はコンクリートで補強されていることが想定される。そして遺跡公園を訪れる観光客の多くはプランバナン遺跡の中心であるロロ・ジョングラン寺院に集中して訪れているため、災害時の避難のためのガイドラインが必要なことが明らかになった。
著者
酒井 孝司 坂本 雄三 倉渕 隆 岩本 靜男 永田 明寛 加治屋 亮一 遠藤 智行 今野 雅 大嶋 拓也 赤嶺 嘉彦 小野 浩己
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,複雑な事象を総合的に評価する必要がある住宅の温熱環境を対象に,非定常気流・温熱環境解析手法を用いたバーチャルハウスシミュレータの開発を行った。異なる暖房方式を採用した居室の定常・非定常温熱環境の実測を行い,検証用データベースを作成した。実測を対象に各種解析モデルを用いて解析を行い,実測と比較して精度を検討した結果,本研究で開発したシミュレータが住宅の温熱環境評価として実用的な精度を有することを示した。
著者
生田 和良 小野 悦郎 岩橋 和彦 LUFTIG Ronal RICHIT Juerg 鐘 照華 ARUNAGIRI Ch
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1)HIV-1はウイルス遺伝子変異が容易である。実際、HIV-1は幾つかのサブタイプに分かれる。しかし、これまでの大部分のHIV-1に関する知見は欧米や日本に蔓延しているB型ウイルスを用いて行われた結果である。HIV-1感染により引き起こされるAIDS病態を理解するためには、サブタイプ間に共通する現象とそれぞれのサブタイプにのみ認められる現象を正確に把握する必要がある。タイにおけるHIV-1E型感染者から得られた末梢血単核球(PBMC)と健常者由来PBMCとの共培養により2株のウイルス(95TNIH022および95TNIH047)を分離した。これらのウイルスを感染させたPBMCから抽出したプロウイルスDNAを用いて、HIV-1全長にわたりPCR増幅を大きく3領域に分けて行った。これらのPCR産物を用いて全長のHIV-1E型の遺伝子配列を決定した。さらにこれらのPCR産物を用いて、HIV-1E型ウイルスの感染性DNAクローンを作製した。また、このウイルスのnef遺伝子を大腸菌で発現し、Nef蛋白に対する免疫応答能を検討した結果、B型感染者の約40%で検出されたが、その大部分がB型HIV-1に特異的な抗体であった。一方、E型感染者での大部分では抗Nef抗体が極めて低かった。2)コスタリカにおいて、ウマおよびうつ病患者においてボルナ病ウイルス(BDV)感染例が認められた。また、中国の精神分裂病患者末梢単核球内のBDV遺伝子検出を試み、約40%に認めた。これらの多くに抗BDV抗体も検出した。3)米国の神経疾患患者の剖検脳サンプルを入手し、現在BDVおよびHIV-1遺伝子の検出を行っている。
著者
石山 聡子 小野 一男 ライ シバ クマール ライ チャンドラ カラ ライ ガネッシュ 辻 英高
出版者
神戸常盤短期大学
雑誌
神戸常盤短期大学紀要 (ISSN:03899578)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.81-86, 2003-03-31

A survey on intestinal parasitosis and its pre-disposing factors was done among public primary school (1-5 classes) children (n=221 ; M : 107 and F : 114, Age : 5 to 16 years) in a suburban area of Kathmandu Valley, Nepal. Fecal samples were preserved into Cary-Blair transport media and in 10% formal. -saline. Parasites were detected by formal. -ether concentration technique. Blood hemoglobin was estimated by cyanmethemoglobin method. A questionnaire was done to reveal pre-disposing factors. The overall prevalence of parasitosis was 72.4% with significant difference in boys and girls (p<0.05). Approximately half of the infected children (46.9%) had multiple parasitic infections. Altogether eleven types of parasites were recovered. Trichuris trichiura was most frequently detected followed by Ascaris lumbricoides and Giardia lamblia. Hemoglobin level also did not differ significantly in children with and without parasitosis.
著者
細川 隆 小野 諭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.355, pp.15-18, 2008-12-10

インターネット空間で個人が活動を行うサービスが増加している.個人は管理者の存在する空間において,管理者に発行されたIDの元で行動した時,個人の行動の履歴と他者から個人に下す評価の履歴を時系列と共に積み重ねていくことによって,個人の信頼を構築することができる.本研究では管理者の存在するサイト内で構築した信頼をサイト外へと流通させることを目標としている.これにより個人の信頼を参照するエンドユーザー達は複数のサイトの信頼を元に,個人に対してより総合的な信頼を得ることを可能とする.本論文では,個人の信頼を他者が利用することや信頼を構築した本人が否認をすることを防ぐためにグローバルなIDと各サイトで用いるユーザーIDの結び付けを行う.
著者
小野 雄一
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、普通教室において実施される外国語の授業におけるモバイル機器の利用の可能性を探るものである。本システムの特徴は、普通教室の中に無線LANおよび授業支援用サーバを設定し、学習者にはモバイル機器としてiPod Touch を使用していることである。本研究の大きなテーマは、(1)システムの使用感に関する性能評価、および、(2)実際の外国語の授業における実践と評価、であった。本研究の結果、iPod Touchの性能面における課題や小さな画面に起因する不便性があるにも関わらず、適切に授業にブレンドさせることによって、学習者の意識や動機づけ等にポジティブな影響をもたらすことを示している。このことは、ポストCALLシステム設計の上で、大きな指針を提示するものと考えられる。
著者
下田 正弘 小野 基 落合 俊典 蓑輪 顕量 永崎 研宣 宮崎 泉 鶴岡 賀雄 中村 雄祐 MULLER Albert 苫米地 等流 三宅 真紀 田畑 智司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

研究成果の概要(和文):知識の蓄積・発信の手段が紙からデジタル媒体へと大規模に移行し、ウェブをとおして知識が世界規模で連結されつつある現在、研究資源と研究成果の双方を適切に継承する知識の枠組みを構築することは、人文社会学における喫緊の課題となっている。本研究は、国内の学会や機関、およびドイツ、アメリカ等で進める関連諸事業と連携して、仏教研究の知識基盤をSATデータベースとして構築し、次世代人文学の研究モデルとして提供するものである。http://21dzk.l.u-tokyo.ac.jp/SAT/参照。
著者
小野 洋三
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.378-383, 1980-05-01

NHKの国際放送「ラジオ日本」は, ヨーロッパ, 中東, アフリカ, 北米東部および中南米では, 受信状況が劣化し, 改善が強く要請されてきた.受信改善のための抜本的解決策である海外中継放送が, ポルトガル・シネスから, ヨーロッパ, 中東地域向けに開始されたので, その概要について紹介する.
著者
内藤 建 亀井 智成 中島 浩二 小野 伸幸 坂口 正雄 矢永 尚士 大橋 俊夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス
巻号頁・発行日
vol.94, no.261, pp.63-68, 1994-09-29
被引用文献数
1

我々は発汗と心拍変動の同時計測が可能な携帯型自律神経モニタ装置の開発を行った。本装置は記録媒体に無接点式フラッシュメモリカードを使用し、24時間中4時間分(任意の1時間×4回)の局所発汗と心拍数、RR50、RR間隔の同時計測が可能である。本研究では生理学的負荷中、および日常生活行動中での精神性発汗と心拍変動の無拘束同時計測に本装置を適用した。