著者
小野寺 淳 出田 和久 平井 松午 藤田 裕嗣 小田 匡保 礒永 和貴 大島 規江 川村 博忠 倉地 克直 杉本 史子 三好 唯義 小野田 一幸 種田 祐司 野積 正吉 青木 充子 尾崎 久美子 中尾 千明 橋本 暁子 横山 貴史
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

オランダ、ライデン大学図書館にはシーボルトが収集した21鋪の手書き彩色の国絵図が所蔵されている。21鋪の国絵図を高精細画像で撮影し、国内の類似の国絵図と詳細に比較分析した結果、21鋪の基図は慶長図1鋪、寛永図6鋪、正保図と寛文図14鋪であることが明らかになった。対となる国絵図がある一方で、基図の作成年代も個々に異なる例が多く、シーボルトの手書き彩色国絵図の入手先は複数あったと想定される。
著者
小野 泱
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, 1989

北海道渡島半島から新種として記載されたオシマヤマブユの種名fulvipesは, Gnus属のSimulium属亜属への降格に伴い, simulium (Prosimulium) fulvipes Edwardsのhomonymとなったので, Simulium (Gnus) oshimaenseなる新置換名を与えた。
著者
小野 勇一
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

まず,メタルプリンタを用いて作製した多数の円錐状圧痕を有するステンレス板を使用して,微小な突起を有するニッケルリン合金薄膜を作製した.すなわち,硫酸ニッケルを主体とし,リン酸とホスホン酸を添加しためっき浴を用いて,圧痕密度の異なる2種類のステンレス基板にニッケルリン合金めっきを施した.めっき終了後,最終電着面には基板の圧痕に沿ってくぼみが残るため,耐水研磨紙によりくぼみがなくなるまで研磨して,最終電着面を平滑面とした.最後にめっき部をステンレス板から剥離して,突起密度の異なる2種類のニッケルリン合金薄膜を作製した.さらに,この薄膜に400℃×1hの加熱処理を施して,析出硬化させた.上述のニッケルリン合金薄膜に材料試験機に取り付けた炭素工具鋼製の圧力負荷治具を用いて種々の静圧を負荷し,突起部の塑性変形量を光学顕微鏡にて観察した.すなわち,突起の底面積Aと突起先端部と治具との真実接触面積Arの比Ar/Aを種々の静圧について計測した.静圧の増加とともに,突起の塑性変形量Ar/Aは大きくなるが,突起密度の高い薄膜では1.5GPa程度の圧力が作用しても突起が完全に塑性変形しない(Ar/A<1)ため,1GPa以上の静圧測定が可能となることが明らかとなった.これは,従来の銅薄膜を用いた方法で測定可能な圧力の最大値(300MPa)よりも格段に高い値である.しかしながら,突起密度の増加とともに静圧の変化に対する塑性変形量Ar/Aの変化は緩慢となるので,圧力感度は低下する.そこで低圧力の測定には突起密度をなるべく小さくして薄膜の圧力感度を向上させる必要があるといえる.この観点から,静圧の測定レンジに対して適切な突起密度を予測可能な汎用性のある較正式を導いた.さらに,本手法の有効性を検証するため,円柱同士が接触する問題として自作したローラ試験機に作用する圧力を求めてみた.すなわち,ローラ間に上述の突起を有するニッケルリン合金薄膜を挿入し,突起の変形量からローラ間の接触圧力を測定した.これにより得られるローラ間に作用する全荷重は,ロードセルから得られた値とほぼ一致し,本手法の有効性が確認できた.
著者
安田 知未 小野 智司 中山 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.470, pp.91-96, 2010-03-08

通信販売で衣服を購入する場合,試着が困難であるため,計算機上で試着を仮想的に実現する技術やシステムの研究が行われている.3次元空間上で人物の動きに応じた衣服の変形が研究されているが,試着者の体型データの取得に高価な装置が必要となるなどの問題がある.本研究では,試着者の画像から衣服の変形を近似的に取得することで,高価な装置を用いずに簡便に体型を考慮した仮想試着を実現するシステムを開発する.
著者
大塚 卓哉 小野澤 晃
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.162, pp.13-16, 2006-07-07

介護施設や病院施設において、認知・理解力、及び、運動能力の低下が見られる高齢者が単独で寝具から離床を試み寝具から転落事故が問題となっている。本稿では、重量計を寝具の各脚下に配置する事で、寝具上の被介護者の重心位置を計測し、重心位置の時系列データから、離床につながる動作を認識する手法について述べる。本手法により、被介護者が単独で離床しようとする動作を検出し、被介護者を離床前に介助する事で転落事故を未然に防ぐことが可能となる。
著者
小野江 和之 河合 聖子 丹羽 さやか 八木 健郎 馬場 研二 山口 悦郎
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2519-2521, 2007-11-10
被引用文献数
1 1

症例は61歳,女性.持続する微熱,乾性咳嗽あり当科受診した.外来検査中に症状増悪し緊急入院,自然経過のみで自他覚所見の改善を認めた.過敏性肺炎を疑い精査したが血清学的には抗原同定困難であった.誘発試験にて羽毛布団に原因抗原が含まれることを確認した.<br>
著者
小野 正樹
出版者
筑波大学留学生センター
雑誌
筑波大学留学生センター日本語教育論集 (ISSN:13481363)
巻号頁・発行日
no.18, pp.1-15, 2003-02-22

モダリティ研究の枠組みで、「ト思う」と「のだ」についてコミュニケーション機能の違いを追求した。両者とも「寒いと思います」「寒いんです」のように、話し手の主観を伝えることができるが、用法の比較を行うと、「ト思う」述語文の方が聞き手を配慮し、かつ、わきまえ性が高い。そして、両者の原理を明らかにするために、両者が連続した場合を観察すると、「ト思う」が「のだ」に先行する「と思うんです」の場合には主張の文機能となるが、「んだと思います」では理由説明の文機能となり、理由がスコープされるが、その理由が明示的な場合には不自然になることを述べた。
著者
山下 光雄 室岡 義勝 小野 比佐好 林 誠 山下 光雄
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

マメ科植物と根粒菌との共生系を利用して、生物的窒素固定能に加えて重金属集積などの有用機能を付与し発現する共生工学基盤技術を構築し、環境浄化に応用する目的で下記の研究を行った1.共生工学基盤技術の開発:共生分子遺伝機構を解明するため、マメ科モデル植物のミヤコグサを用いて共生状態と非共生状態における遺伝子発現の違いをマクロアレー技術を用いて測定した。2.メタロチオネイン4量体遺伝子およびファイトケラチン合成酵素遺伝子の根粒バクテロイド内での発現:メタロチオネイン4量体遺伝子とアラビドプシスより分離したファイトケラチン合成遺伝子をベクターにつないでレンゲソウ根粒菌Mesorhizobium fuakuii subsp. rengeiに導入し、この組換え根粒菌をレンゲソウ種子に感染させ根粒を形成させた。インサイチュハイブリダイゼーションにより根粒バクテロイド内で両遺伝子が発現していることが観察された。3.根粒バクテロイドの輸送系の改変による植物組織への物質移動の試み:上記遺伝子を導入した組換え根粒菌は、野性株に比べて20倍のカドミウムの取り込みを示したが、この組換え菌をレンゲソウに接種して、根粒を形成させたところ、組換え根粒では野生型根粒の1.5-1.8倍のカドミウム蓄積にとどまった。これは根粒内への重金属取り込み能の不足と考えられた。そこで、金属イオンの膜透過に関与するシロイヌナズナのIRT1(iron-regulated transporter)遺伝子を取得し、上記組換え根粒菌株に組み込んだ。IRT1遺伝子を組み込んだ根粒菌はカドミウムを1.5倍近く取りこんだ。そこで、この組換え根粒菌をレンゲソウに感染させ、根粒を形成させた。4.創生レンゲソウの重金属集積能試験:B3:PCS(IRT1)を感染して根粒形成させたレンゲソウを、カドミウムを含む人工土壌で生育させ、植物組織各部位のカドミウム濃度を測定した。その結果、IRT1遺伝子発現によるカドミウム集積能には差が見られなかった。したがって、根粒内における根粒菌によるカドミウム集積の限定要因は、植物細胞によるものだと考えられた。5.土壌のファイトレメディエーション:稲田の土壌を用いて組換えレンゲソウを栽培して、カドミュウム浄化能を試験した。非組換え根粒菌を感染させたレンゲソウでは、汚染人工土壌中のカドミウム取り込み効率が約0.4%であったのに対して、MTL4およびAtPCSの2つの重金属結合遺伝子を組み込んだ根粒菌を感染させたレンゲソウは、同程度のカドミウムに汚染されたフィールド土壌中のカドミウムを約9%も吸収していた。
著者
角田 裕之 小野寺 夏生
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-20, 2006

目的: 本論は,論文の引用関係をもとにして,研究者のインパクトを示す新たな計量書誌学的指標を提案することを目的とする.方法: 論文(Webページ等の資料を含む)とその論文から引用された論文との関係は,論文をノードとし,引用関係をエッジとする有向グラフで表すことができる.また,同一著者の論文,同一雑誌の論文等の論文集合体をノードとする引用関係グラフも考えることができる.これらの有向グラフに対応するグラフ行列の連立方程式や固有ベクトルを用いて,論文や著者のインパクトを示す指標を与えるいくつかのモデルを考案,検討する.結果と考察: 論文のインパクト評価モデルとして,次の2つを提案した: (1)引用元評価値配分モデル(DCM),(2)学術知識プールモデル(KPM),いずれのモデルも,引用が必ず過去への1方向であるという論文の特性を考慮して,インパクト評価指標としての連立方程式や固有ベクトルの解の存在を保証する工夫をしている.次に,著者のインパクト評価モデルとして ResearcherImpact(RI)を提案した.これは,グラフ行列の要素として,ある著者が引用した他の著者の論文数を用いる.計量書誌学の主要研究者15人に対し,この手法を適用した.結論: (1)ここで提案したDCM,KPM,RIでは,単純な被引用カウントに比べ,被引用数の多い論文/著者(ハブ)からよく引用される論文/著者が高い評価値を得る.すなわち,インパクトの高いコミュニティの抽出に有効である.(2)RIを用いてインパクトを計算する際には,同分野かつ同時代の研究者を対象とすること,自己引用及び同一所属機関内/同一研究グループ内の引用に注意することが必要である.
著者
坂田 清美 小野田 敏行 大澤 正樹 丹野 高三
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

先ず、BMIを基本とした小児期の新しい肥満指標を開発し、使用マニュアルを作成した。次に、新しい肥満度評価指標(以下標準BMI法とする)を用いて、岩手県において、児童・生徒の肥満度調査を実施した。その結果岩手県では、全国同様小中高と学年が進むにつれて肥満者の割合が高くなる傾向が認められたと同時に、統計学的には有意ではなかったが市街地よりも山間部、沿岸部において肥満者の割合が高い傾向が認められた。使用の感想たついてまとめると、学年に関係なく利用できること、評価が安定していること、大人と連続して利用可能なことがメリットとして挙げられた。デメリットとしては、慣れていないこと、文部科学省のお墨付きがないことによる不安、パソコンが必要なこと等が挙げられた。また、文部科学省の指標では、学年が一つ上がることにより、身長、体重が変化していないにもかかわらず肥満度が突然上下してしまうことが上げられる。この点については、標準BMI法による方法では、安定して評価するころが可能である。和歌山地区における標準BMI法の活用状況調査結果では、和歌山市の小中養護学校の3分の2の学校において使用しており、使用校の8割ではとても使いやすいと答えている。使っている理由としては、パソコンに入力するたけなので簡単だから、使い方が簡単だから、時間がかからないからが上位を占めた。使っていない理由として多かったのは別の方法を利用しているからで、4分の1を占めた。別の方法としては、ローレル指、日比式、保健室用ソフトなどを使用していた。
著者
小野寺 康之
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ホウレンソウには雄花のみを着生させる雄株および雌花のみを着生させる雌株に加え、雌花と雄花あるいは両性花が様々な比率で混成する多様な間性が見出される。これまでの研究で、我々は花器形態に基づいて5種類の間性自殖系統を雌雄異花同株および雌花両性花同株の二つのタイプに分類できることを明らかにした。さらに、雌花形成割合(雌性率)および各間性形質の遺伝様式に基づいて、これらの間性系統の性型を4型(I型〜IV型)に分類した。本研究では、これまで解析に用いてきた間性系統の中で最も雌性率が低く、雌雄異花同株タイプに属する系統(03-336)が示す1型間性の発現を支配する遺伝子の同定を試みた。03-009♀x03-336によって得られたF1個体を雄株(系統03-009:XY)と交配してBC1世代を作出し、2007年4月から6月にかけてこのBC1集団を北海道大学構内のビニールハウス内で育成した。当該F1集団および前述のBC1集団のおよそ半数からY遺伝子マーカーが検出されたことに加えて、それらの全ての個体が雌性率0%(雄株)を示したことからY遺伝子はI型間性の発現を支配する遺伝子に対して優性もしくは上位性を示すと結論づけた.さらに、このBC1世代(169個体)において,雄株:間性株:雌株=2:1:1の比に適合する分離が生じていることも判明した(x^2検定,ρ=0.372).雌雄決定遺伝子XおよびYに加えてI型間性遺伝子としてM遺伝子を想定することによって,雄株:間性株:雌株=2:1:1(XY;Mm:XY;mm:XX;Mm:XX;mm=1:1:1:1)の分離が当該BC1世代で生じることが説明できる.
著者
秋元 芳明 小野 眞紀子 松本 裕子 藤井 彰 山本 浩嗣 平山 晃康
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成16年〜平成18年12月の期間中の歯性感染症611症例を対象として、膿・滲出液を採取し、細菌培養を行った。22症例からブドウ球菌(staphylococci)を分離した。同定の結果は、黄色ブドウ球菌(Staphulococcus aureu: S. auresu)16株、白色ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis: S.epidermidis)6株であった。S. aureus16株中、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は1株、S.epidermidis6株中、メチシリン耐性白色ブドウ球菌(MRCoNS)は2株検出された。MRSA分離頻度は、MRSA/全歯性感染症:0.002、MRSA/S. aureus:0.063であった。MRCoNS分離頻度は、MRCoNS/全歯性感染症:0.003、MRCoNS/S. epidermidis:0.333であり、MRCoNSの分離頻度が高かった。MRSA, MRCoNSが感受性を示した抗菌薬は、アルベカシン、バンコマイシン、リファンピシンであった。beta-lactamese産性は認めなっかた。全症例で皮下膿瘍形成を認めた。1症例は基礎疾患として糖尿病があったが、コントロールされていた。画像所見では、根尖病巣を認めた。処置法は、切開排膿・ドレナージを行い、膿瘍部を洗浄し治癒を得た。結果を誌上および学会発表した。なお、シンポジストととして5thInternational Symposium on Antimicrobial Agents and Resistance, Seoul, Korea, 4/28,2005にてMethicillin-resistant staphylococcal infections in odontogenicinfectionsを発表した。
著者
高梨 弘毅 大谷 義近 大野 裕三 小野 輝男 田中 雅明 前川 禎通
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本特定領域では、スピン流の生成と消滅、そしてそれらを通して生じる物理的信号の変換制御に関わる学理を確立し、新規なデバイス応用への可能性を探索することを目的としている。総括班は、本領域全体のコーディネータ的役割を果たし、同時に内部評価を行う。本年度は、本特定領域の最終成果報告会として国際ワークショップ「5th International Workshop on Spin Currents」を2011年7月25日(月)~28日(木)の日程で仙台国際センターにおいて開催した。最近のスピン流研究において注目される議題として、(1)スピンホール効果やスピンゼーベック効果に代表される純粋スピン流現象、(2)スピン注入磁化反転や自励発振、電流誘起磁壁駆動などのスピントランスファー現象、(3)非磁性体、特に半導体へのスピン注入、(4)磁化の電気的あるいは光学的制御、(5)スピン流の創出と制御のための材料探索・プロセス・評価の5項目について、それぞれの分野において世界最先端の成果を上げている研究者を組織委員会で選出し、口頭発表をお願いした。それ以外にも、特定領域研究で得られた成果が、ポスター講演において数多く報告され、4日間にわたって活発な議論が展開された。また、各計画研究代表者および公募研究代表者から、領域設定期間中の成果に関するデータを収集した。そのデータを元にして、原著論文、解説、著書、国際会議発表、国内会議発表、報道(新聞、TV等)、受賞、特許、その他(若手育成など)、の9項目について成果のとりまとめを行った。
著者
石川 雅章 小野 博志 王 歓 でん 輝 DENG Hui WANG Huan 石川 雅章 でんぐ 輝
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

日本人と中国人は、文化を背景とする民族は異なるものの人種的にはモンゴロイドに属し、極めて近縁とされる。顎・顔面頭蓋の成長発育には、遺伝的要因に加え環境的要因が少なからず関与し、部位によってその程度が異なる。本研究は北京医科大学口腔医学院小児歯科と協同して、中国人双生児の歯列咬合や顎・顔面頭蓋の遺伝的成長発育様式を調査し、日本人小児と比較することにより、モンゴロイドの顎・顔面頭蓋の形態変異について考察を深めようとするものである。平成6年度は北京市内で双生児を収集し予備調査を行ったところ、女児が男児よりも多く応募し、費用の観点から、調査対象を中国人女児双生児に限定することとした。また平成6年度と8年度では、顎・顔面頭蓋の成長発育にとっての環境的要因につながる中国人小児の生活習慣や食習慣を各地で調査した。都市化の進んだ地域とそうでない地域の間で、さらに、都市化した地域でも両親の職域によってこれらの習慣に比較的差異がみられた。あらかじめ、DNAフィンガープリント法により中国人女児双生児の卵性診断を済ませておき、平成7年から9月と12月に、計約90組の双生児資料採得を2年間にわたり行った。その内容は問診表記入、身長体重測定、口腔内診査、側貌および正貌頭部X線規格写真撮影、パノラマX線写真撮影、印象採得などである。平成9年2月現在、歯列模型と側貌頭部X線規格写真の分析を中心に研究が進行中である。歯列模型では口蓋の三次元形状分析を、顕著な不正咬合がなく側方歯群が安定し、かつ歯の欠損のない17組について行った。口蓋の計測には、格子パターン投影法による非接触高速三次元曲面形状計測システム(テクノアーツ、GRASP)を使用した。1卵性双生児群と2卵性双生児群での分散比から(双生児法)、歯頚部最下点間距離では左右第1大臼歯間においてのみ遺伝的に安定する傾向がみられ(p<0.05)、乳犬歯間、第1乳臼歯間、第2乳臼歯間では両群間に有意差は認められなかった。また、それぞれの口蓋の深さについても両群間で有意差は認められなかった。一方、口蓋の容積については、全体および左右乳犬歯より後方の容積が遺伝的に安定する傾向にあったが(p<0.01)、左右乳犬歯より前方の容積は、両群間に有意差が認められなかった。すなわち、混合歯列期の口蓋は遺伝的に制限された一定の容積のもとに、その構成成分である幅や深さは変異しやすいことが示唆された。側貌頭部X線規格写真上には、日本小児歯科学会による「日本人小児の頭部X線規格写真基準値に関する研究」と同様の計測点計測項目を設定し、当教室の頭部X線規格写真自動解析システムにて入力分析した。各双生児組の一人を用いた半縦断的な角度的および量的計測結果を、上記基準値と年齢幅が近似するよう三つのステージに分類し、日本人小児の成長発育様式と比較検討した。さらに双生児法により、各計測項目とその年間変化量などについて遺伝力を算出した。角度的分析から、混合歯列期中国人双生児の顎顔面頭蓋概形は日本人小児とおおむね近似していたが、前脳頭蓋底に対する上下顎歯槽骨前方限界は中国人小児が僅かに近心位にあり、上下顎中切歯歯軸傾斜はやや小さかった。また混合歯列前期のみであったが、前脳頭蓋底に対する下顎枝後縁角は中国人小児が有意に大きく、下顎角は有意に小さかった。一方、量的計測項目は全体的に中国人双生児の方が小さめであったが、日本人小児との身長差を反映していることも考えられる。量的計測項目の遺伝力は混合歯列中、後期と増加する傾向にあり、前脳頭蓋底で70%弱、鼻上顎複号体と下顎骨は70〜80%台であった。これら遺伝力は、男児や男女児双方を扱った他の双生児研究よりもやや大きく、本研究が、男児よりもネオテニ-的である女児のみを対象としたことと関連しているかもしれない。下顎骨のなかでは、下顎骨長が下顎骨の前後の高さよりも、遺伝的要因の占める割合が高くなると推定された。下顎骨構成成分間での遺伝力の差は、下顎骨が遺伝的に制限された一定の長さのもとに形態形成しやすいことを示唆していると考えられた。今後は、当教室に保管されている日本人双生児や北米白人双生児資料との比較研究を鋭意進めていく予定である。
著者
山本 博文 佐藤 孝之 宮崎 勝美 松方 冬子 松澤 克行 横山 伊徳 鶴田 啓 保谷 徹 鶴田 啓 保谷 徹 横山 伊徳 小宮 木代良 杉本 史子 杉森 玲子 箱石 大 松井 洋子 松本 良太 山口 和夫 荒木 裕行 及川 亘 岡 美穂子 小野 将 木村 直樹 松澤 裕作
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、江戸時代および明治時代に編纂された史料集を網羅的に蒐集し、その記事をデータベースとして一般公開すること、蒐集した史料の伝存過程および作成された背景について分析・考察すること、を目的としている。本研究は、従来、交流する機会のなかった異なる分野の研究者が、1つの史実を通じて活発な議論を戦わせる土壌を作り、近世史研究の進展に大きく寄与することになった。
著者
黒崎 順二 園田 立信 小野 茂 松山 宏 山中 将弘
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.324-329, 1982-10-28
被引用文献数
4

牛を高温環境で放牧する場合の管理法を究明する一環として,高温時における放牧行動の実態並びに高温時の放牧と呼吸数との関係を調査した。調査には宮崎大学住吉牧場のホルスタイン種の搾乳牛を用い,草地はバヒアグラスの優占草地で,10時30分から16時30分まで放牧し,調査を行なった。主要な調査結果は以下のとおりであった。1.6月下旬,7月および8月には,気温がそれぞれ27.0〜30.5℃,31.5〜35.0℃および29.5〜31.0℃の高温となり,このため牛は牧草地における採食と庇蔭林内における休息とを頻繁に繰り返し,放牧時間内における採食時間の割合が非常に少なくなった。これに対し,6月上旬,9月および10月の気温は,それぞれ24.5〜27.0℃,24.5〜27.0℃および21.0〜26.0℃で,採食と休息との繰り返しはほとんどみられず,また放牧時間の大部分が採食時間で占められるなど,高温時とは著しく異なった行動を示した。2.休息時の呼吸数は高温時期の6月下旬,7月および8月が6月上旬および9月よりも多くなり,10月はそれらよりも少なかった。その高温時には休息時間の経過に伴って呼吸数が著しく少なくなった。また,採食から休息に変るときは呼吸数が増加し,休息から採食に変るときは減少していたが,それらの呼吸数の変異は大きく,一定していなかった。このことは呼吸数自体が採食を阻害していないことを示す例証と考えられた。採食中の呼吸数は,季節的および個体的差異がみられるが,同一季節で同一個体の呼吸数はほぼ一定で大きくは変動しなかった。
著者
小野 展克
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.55-70, 2008

This paper shows how the mass media reports the management crisis of companies. Through my research, it is found that media reports could have a huge impact on corporate credibility as well as on the fate of the reported companies. As a result of One-factor ANOVA (analysis of variance) and t Test, I have found that when companies decide on voluntary liquidation such as through debt waivers, the media often uses the words that make readers image about corporate turnaround, such as "rebuilding" and "support." On the other hand, in the case of the legal liquidation such as using the Corporate Rehabilitation Law, words that tend to damage the image of corporate credibility, such as "bankruptcy," and "failure," were used in many media reports. How the media reports company liquidation greatly vary depending on whether companies go bankrupt voluntarily or by using functions of the court.
著者
小野田 恵介 土本 正治 勝間田 篤
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.9, pp.669-673, 2004-09-20
被引用文献数
1

神経サルコイドーシスにおいて水頭症を呈することは比較的稀である.水頭症を呈し,急激な増悪後,死亡に至った症例を経験し剖検を施行したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は18歳男性(ブラジル国籍), 2003年9月10日より頭痛があり,9月12日近医入院となった.9月16日軽度意識障害,両側外転神経麻痺も加わり当科紹介となった.来院時,髄膜刺激症状を認め,髄液検査を行ったが,初圧9cmH_2Oで,細胞数160/3(リンパ球優位),蛋白(750 mg/dl)は上昇しており,さらにanaiotensin converting enzyme(ACE)活性は2.6 1U/l と高度上昇していた.細菌培養は陰性で,結核菌群もDNA/PCRにて陰性であることが示された.CT,MRIでは水頭症を呈し,造影される肉芽腫性病変は認めなかったが,神経サルコイドーシスを強く疑った.入院後ステロイド投与を開始するも効果なく,けいれん,運動障害の出現,意識障害の進行を認めた.9月22日右脳室-腹腔シャント施行,脳室内髄液ACE活性は3.1 1U/lであった.重症肺炎の合併も認め,敗血症にて10月2日死亡された.同日剖検を施行した.頭蓋底髄膜に多発性のサルコイドーシス結節が確認された.原因不明の髄膜炎,水頭症を呈する例においては神経サルコイドーシスも鑑別診断に挙げるべきであり,また本例のように急速な増悪を呈する例があることを念頭に置く必要があると思われた.