著者
松﨑 隆朗 清水 太郎 安藤 英紀 異島 優 山中 勝弘 三輪 泰司 濱本 英利 石田 竜弘
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

【目的】近年、がん抗原に対して特異的な免疫反応を誘導できるがんワクチンが注目されている。従来の皮下投与に比べて、免疫反応を増強するために抗原提示細胞が多く存在する皮膚を標的としたワクチンが注目されてきている。以前、我々は角質層透過性を持ち経皮吸収促進剤として利用できるイオン液体(ILs)にアジュバントとがん抗原模倣ペプチドを溶解させたワクチンを調製した。腫瘍を皮下移植したマウスの腹部にアジュバントを24時間貼付した後にペプチドの24時間貼付を行う免疫を3週間で3回行ったところ、有意な腫瘍増殖抑制効果が得られることを示した。本検討では、腫瘍増殖抑制効果が得られたメカニズムを明らかにするために、貼付部位の皮膚および流入リンパ節での免疫細胞の存在割合の変化を経時的に評価した。【方法】アジュバントであるResiquimod(R848)を含むILs(R848-ILs)およびOVAペプチド(OVAp)を含むILs(OVAp-ILs)を調製し、それぞれを貼付したマウスの貼付部位の皮膚およびリンパ節を経時的に回収し、その中の白血球(CD45)、更にはマクロファージ(CD11b)及び樹状細胞(CD11c)の存在割合をフローサイトメーターで測定した。【結果・考察】R848-ILsを貼付したマウスの皮膚では、各細胞の割合が貼付12時間以降に有意に増加した。また、R848-ILsの24時間貼付し続けた後にOVAp-ILsを貼付したところ、OVApの抗原提示を行っている細胞の割合が皮膚ではOVAp-ILs貼付3時間後から有意に増加し、リンパ節では貼付の6時間後から増加した。腫瘍増殖抑制効果が得られたメカニズムとして、R848-ILsによって皮膚免疫細胞が増加し、そこにOVAp-ILsを貼付することで、皮膚でペプチドが抗原として捕捉される機会が増加するのと同時にリンパ節へと運搬されやすくなり、結果として細胞傷害性Tリンパ球の活性化が強くなり、高い腫瘍増殖抑制効果に繋がったものと考えられた。以上より、イオン液体を利用したワクチン製剤は皮膚免疫反応の増強を可能とすることが示され、新規の非侵襲性ワクチンへの展開が可能であることが示唆された。
著者
岩佐 厚志 裏 直樹 山中 武彦 川村 康博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.E-145_2-E-145_2, 2019

<p>【はじめに・目的】</p><p>延髄外側梗塞において特徴的な所見のひとつにlateropulsion(以下:LP)がある.LPは,病巣側に体が不随意に倒れる症候である.これまで,急性期におけるLPに対する病巣を考慮した治療や客観的指標を用いた効果に関する報告は少ない.そこで本研究では,脳画像所見よりLP出現の責任病巣を同定し,損傷神経路を考慮した治療の選択と,体圧分布測定システムで測定した立位足圧分布を用いて治療効果を検証した.</p><p>【方法】</p><p>症例は,50歳代男性.左延髄外側に梗塞巣を認め,立位・歩行時wide baseでありLPのため左への傾きを認めた.第1病日から理学療法(以下,PT)を開始.第4病日より本研究を開始した.LPに対する治療効果は,シングルケースデザイン(ABA法)を用いて検証した.A1期,A2期は一般的なPTを実施.B期は一般的なPTを行う際に,左膝関節に対して弾性包帯(Osaki製ウエルタイ)を,足底には表面に凹凸のあるインソール(キャンドゥ製オウトツタイプインソール)を装着し,触圧覚入力を増強した状態で実施した.各期は各々1日とした.足圧分布は体圧分布測定システム(NITTA製BPMS)を用いて開眼閉脚立位にて20秒間測定し,左右比率,左右差の平均値を算出した.臨床的指標としてPostural Assessment Scale for Stroke Patients(以下,PASS),Scale for the assessment and rating ataxia(以下,SARA)を用い,その他立位時の傾きに対する内省を聴取し,転倒に対する恐怖感をvisual analogue scale(以下,VAS)で評価した.評価時期は足圧分布,VASを各期の前後に,PASS・SARAはA1前,B前,B後,A2後に行った.</p><p>【結果】</p><p>A1前,A1後,B前では足圧左右比率,左右差,PASS,SARA,VASに明らかな変化を認めなかった.B前とB後では,足圧左右比率が右64%から51%,左36%から49%,足圧左右差は5591mmHgから369mmHg,SARA 5点から3点,PASS30点から33点,VAS4/10から1/10と改善を認めた.傾きに対する内省はA1前とB前で「自分ではよくわからないけど倒れそう」であったが,B後では左足に「違和感を感じ右へ重心が行くようになった」「左足に意識が行くようになった」と左下肢に対する認識に変化を認めた.また,A2前後では各評価項目ともに明らかな変化を認めなかった.</p><p>【考察】</p><p>今回,延髄外側梗塞によりLPを呈した症例に対し,下肢への触圧覚入力により即時的な効果を認めた.LPの責任病巣として前脊髄小脳路,後脊髄小脳路,前庭脊髄路などの報告がある.本症例は拡散強調画像より,前脊髄小脳路の損傷が疑われた.前脊髄小脳路はL2以下の意識にのぼらない深部感覚を伝える上行性伝導路であることから,膝、足底への触圧覚刺激の増強により,LPが改善したと考える.このようにLPの原因となる損傷神経路を脳画像により同定し,治療方法を決定していくことは重要であり,前脊髄小脳路損傷によるLP例に対しては膝,足底への触圧覚入力が効果的であることが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき,対象者に研究内容の説明と書面による同意を得た.</p>
著者
鈴木 浩子 山中 克夫 藤田 佳男 平野 康之 飯島 節
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.139-150, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1

目的 何らかの在宅サービスが必要であるにもかかわらず,介護サービスの利用に至らない高齢者に関して,介護サービスの導入を困難にしている問題を明らかにし,問題の関係性を示すモデルを共分散構造分析にもとづいて作成することにより,有効な対策について検討する。方法 高齢者相談業務に従事する本州地域657か所の行政保健師に対し,自記式質問紙による郵送調査にて事例調査を実施した。調査対象事例は,本研究に該当する介護サービスの導入が困難な高齢者で,回答する保健師が,2000年 4 月以降家庭訪問による介入援助を行った,とくに印象に残る 1 事例とした。調査内容は,回答者および所属する自治体の属性,対象事例の基本的属性,対象事例への介入援助の結果,事例調査および文献検討により作成した介護サービスの導入を困難にする問題43項目である。有効回答を得た311通(有効回答率47.3%)を解析対象とした。介護サービスの導入を困難にする問題について,因子分析を行った後,共分散構造分析により関係性の検討を行い,最も適合度の高いモデルを選定した。結果 1) 介護サービスの導入を困難にする問題は,項目分析,因子分析の結果,第 1 因子『生活の変化に対する抵抗』,第 2 因子『親族の理解•協力の不足』,第 3 因子『手続き•契約における能力不足』,第 4 因子『インフォーマルサポートの不足』,第 5 因子『受診に対する抵抗』が抽出•命名された。2) 因子分析で得られた 5 因子を潜在変数として共分散構造分析を行った結果,GFI=0.929,AGFI=0.901,CFI=0.950と高い適合度のモデルが得られた。このモデルから,『生活の変化に対する抵抗』,『親族の理解•協力の不足』の問題に,『手続き•契約における能力不足』,『インフォーマルサポートの不足』,『受診に対する抵抗』の問題が重なり,介護サービスの導入が困難となっていることが示された。結論 行政保健師を対象とした事例調査により,介護サービスの導入を困難にする問題の関係性が示された。このような高齢者への支援には,個々の問題に応じた介入援助方法の他,手続き能力やサポートが不足し,支援が必要な高齢者を早期に把握,対応する体制を地域レベルで検討することが必要である。
著者
尾野 薫 山中 英生 中西 雄大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_859-I_869, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
15

本研究は,自転車の普及や法的整備の歴史から道路通行システムにおける自転車の位置付けと通行実態の変遷を明らかにし,自転車の歩道通行の常態化や双方向通行の要因について一示唆を得ることを目指す.各法制度の変遷から,1970年と1978年の道路交通法改正で自転車の位置付けが変化したことがわかった.次に,1960~85年の自転車通行状況を写した写真や映像資料からデータベースを作成し自転車の道路通行実態の変遷を把握した結果,改正前は自転車の車道・左側走行が浸透していたが,1970年の道路交通法改正後に歩道走行が出現し,1978年の道路交通法改正後に車道走行が減少し歩道走行が増加したことがわかった.最後に,道路通行システムへの理解不足,自転車の車両特性との齟齬が自転車の歩道通行の常態化や双方向通行の要因である可能性を示唆した.
著者
斉藤 貴明 犬塚 和徳 佐野 真規 片橋 一人 矢田 達朗 嘉山 貴文 露木 肇 山中 裕太 山本 尚人 海野 直樹 竹内 裕也
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.413-417, 2018-12-21 (Released:2018-12-21)
参考文献数
27

症例は45歳女性.糖尿病性腎症のため左上腕内シャントで透析を行っていた.透析導入から6年後にシャント静脈高血圧による左顔面および左上肢の浮腫が出現し,当科紹介となった.造影CT検査でシャント静脈高血圧の原因となる左腕頭静脈の高度狭窄を認めた.最初に左腕頭静脈の経皮経管的バルーン拡張術を行ったが,3週間後には症状が再燃したため14 mm×40 mmステント(SMART, Cordis, Dublin, Ohio, USA)留置術を施行した.以降,顔面および上肢の浮腫は軽減したが,術後1カ月で左胸水が出現した.超音波検査にてシャント血流量が1537 mL/minと高値であったため,シャント血流過多による心不全の診断で,人工血管PTFEグラフト(PROPATEN, GORE, Newark, USA)を使用しシャント静脈バンディング手術を施行した.術中超音波検査を併用しシャント血流量を491 mL/minに減量させた.術後は心不全の改善を認め,顔面および上肢の浮腫も増悪なく経過している.
著者
山中 一雄 内田 健康 示村 悦二郎
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.318-323, 1977-08-30 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7

In a stochastic linear composite system, which is composed of several subsystems, it may be desired to obtain an estimate of the state of only one particular subsystem. A usual approach to this problem will be to construct a Kalman-Bucy filter for the total system, and to obtain the required partial state estimate as a part of the total one. That is, a dynamical filter of the same dimension as that of the total system is necessary for only the partial state estimation. From the computational view point, it is preferable to obtain a partial estimate by a suitable dynamical filter, which is not necessarily optimal, of the dimension of that subsystem. In this paper, we consider a class of composite systems in which two subsystems are coupled and their time responses are widely different. And we propose a method to synthesize an approximate filter for the “slower” subsystem. It is also shown that the approximation error vanishes as the ratio of the maximum eigenvalue of the “slower” subsystem to the minimum eigenvalue of the “faster” subsystem approaches to zero.
著者
山中 崇弘 新木 健一郎 石井 範洋 塚越 真梨子 五十嵐 隆通 渡辺 亮 久保 憲生 大嶋 清宏 桑野 博行 調 憲
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.931-934, 2017-09-30 (Released:2018-02-27)
参考文献数
14
被引用文献数
1

【はじめに】侵襲性クレブシエラ感染症は,Klebsiella pneumoniaeを原因菌とし,肝膿瘍から眼内炎や中枢神経感染症などの転移性感染巣を引き起こす。当科での1例を報告する。【症例】73歳男性。主訴は腰痛,視力低下。精査の結果,肝膿瘍,眼内炎,敗血症の診断で抗菌薬治療を開始,第3病日に肝ドレナージを施行した。培養からKlebsiella pneumoniaeが検出された。転移性感染巣検索では,腰部に椎体炎,硬膜外膿瘍を認めた。転移巣は保存的に軽快し,第52病日に転院となった。【考察】本邦での肝膿瘍を伴う侵襲性クレブシエラ感染症の報告10例では,眼内炎を7例(70%),死亡2例(20%)と危険な病態と考えられた。肝膿瘍,眼内炎という特徴的な所見を認めた際は,侵襲性クレブシエラ感染症を疑い,転移性感染巣を考慮した抗菌薬治療と,外科的治療を含めた集学的治療を行うことが重要である。
著者
山中 英生 青山 吉隆 多田 恭章 永峰 崇二
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.524, pp.37-48, 1995-10-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
20

本研究は, 郊外幹線街路沿道の独立広告物のうち, 特に田園地域に掲出される野立広告物に対する規制に関して, 受認限度の視点から規制水準を分析することを目的としている. 具体的には, 各県の条例における規制方法を概観する一方で, 徳島市周辺の独立広告物掲出実態を把握して現状の規制方法の問題点を把握している. また, CGアニメーションを用いた実験によって, 視野内の広告物総量規制という観点から, 野立広告物の掲出量に対する心理的受認限度の分析を行い, その結果, 広告面積と広告物高さや設置間隔等, 屋外広告物条例における形態規制からみた受認限度のレベルを明らかにしている.
著者
若林 奈津子 石黒 直子 葉山 愛弥 山中 寿 清水 悟 川島 眞
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.417-418, 2013-12-25

我々は2013年4月25日発行の本雑誌に発表した論文(若林奈津子ほか 東京女子医科大学雑誌 第83巻 第2号 86頁〜94頁)で、皮膚型結節性多発動脈炎23例(計24例中、1例は欠測)、リベド血管症11例、健常人コントロール16例で抗フォスファチジルセリン・プロトロンビン複合体(anti-PS/PT) IgM抗体を測定し、皮膚型結節性多発動脈炎におけるanti-PS/PT IgM抗体の関与の可能性について述べた。その後、皮膚型結節性多発動脈炎2例、健常人コントロール38例を追加し、皮膚型結節性多発動脈炎計25例、健常人コントロール計54例について再検討した結果、皮膚型結節性多発動脈炎と健常人コントロールの間でanti-PS/PT IgM抗体の値に有意差が得られたので、追加報告にて可及的速やかに報告する。,再検討の結果、皮膚型結節性多発動脈炎の25例中20例(80 %)でanti-PS/PT IgM抗体が陽性であり、健康人コントロールと比較して有意差(p < 0.05)をもって高値を示したことから、anti-PS/PT IgM抗体が皮膚型結節性多発動脈炎の発症機転において何らかの役割を担っていると考えた。一方、anti-PS/PT IgM抗体 はリベド血管症でも11例中5例(45 %)で陽性であり、1例では高値を示したことから、皮膚型結節性多発動脈炎とリベド血管症の一部の症例ではanti-PS/PT IgM抗体陽性という共通の基盤をもつことが示唆された。,以上より、皮膚型結節性多発動脈炎においては、リベド血管症でみられるような血栓形成が血管内皮障害をきたした結果、最終的に血管炎に発展することが推察され、全身型結節性多発動脈炎からは独立したclinical entityである可能性を考える。
著者
山中 マーガレット/安藤 義久 安藤 義久
出版者
岐阜女子大学
雑誌
岐阜女子大学紀要 (ISSN:02868644)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.53-57, 2016-01-31

この論文では,「大草原の小さな家」と「チャーリーとチョコレート工場」という二つの小説を日本の外国語教育に取り入れる際の問題点について考察する。「大草原の小さな家」は,19世紀のアメリカ中西部を舞台に,インガル一家がウィスコンシンからカンザスへ移動する際の様々な出来事を描いている。日本人学生にとってのこの作品の難しさは,当時の生活に関する英語の語彙,高校までに教えられていない熟語や擬声語の多さである。特に,アメリカの昔の生活や,日本文化とは異なる文化的語彙の多さのために,小説の理解が難しくなってしまうのである。次に,「チャーリーとチョコレート工場」は,現代を舞台にした空想小説であるので,「大草原の小さな家」のような文化的語彙の多さから生じる難しさはあまり無いが,高校までに教えられていない語彙,熟語,抽象概念のために理解が難しい部分はある。最後に,この二つの教材の中で,どちらが日本の外国語教育で妥当であるかを,筆者達の実践例から示した。
著者
寒川 美奈 山中 正紀 片寄 正樹 大西 祥平
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C1024, 2004 (Released:2004-04-23)

【はじめに】 スキーは,日本で最も楽しまれているスポーツのうちの1つである.そのなかでフリースタイルスキー(モーグル)は競技としては新しく,コブ斜面を一気に滑走し,2回のエアー(ジャンプ)を組み合わせて行うという種目であり,スキー競技の中でも危険度が高いスポーツであるといえる. 今回,2003年10月14日から11月1日までスイスにて行われた全日本フリースタイルスキーモーグルチームの合宿に理学療法士として参加する機会を得た.その際実施したメディカルチェックの結果,7名中7名にてOber test陽性,うち3名に膝蓋腱炎(内側)の既往があった.1名は,チェック実施時にも同部の疼痛を有していた. 我々はフリースタイルモーグルスキー選手にみられた膝蓋腱炎の発生メカニズムについて考察し,若干の知見を得られたので報告する.【症例】 27歳女性.モーグルスキー歴9年.4年程前よりスキー練習中膝蓋腱内側に疼痛有し,超音波及び電気治療などを受けていたが,増大時にはステロイド注射にてコントロールしていた.2002年12月右MCL損傷後,膝蓋腱の疼痛増大していた.2003年10月初期評価実施.両Frog eye.右Patella下位.筋力右膝関節伸展筋,両股関節外転筋,内転筋低下.Ober test陽性.大腿四頭筋柔軟性に左右差あり.片脚スクワットでknee in傾向.膝蓋骨可動性低下.圧痛は膝蓋骨下内側部にあり,運動開始時,あるいは疲労を感じてくると疼痛出現.自発痛はなかった.これらの評価に基づき,超音波,腸脛靭帯や大腿四頭筋に対するストレッチング,膝蓋骨に対するモビライゼーション,3 point Straight Leg Raising,片脚スクワット,片脚バランスなどを指導した.また腱炎に有効とされる遠心性収縮を用いての筋力強化も行った.練習後には,必ずアイシングを行わせた.【結果】 合宿中であったにもかかわらず,疼痛をコントロールすることができた.疼痛は膝蓋骨下内側部にのみ限局して存在したが,他部位に広がることはなかった.膝蓋骨の可動性も増大した. 【考察】 疼痛をコントロールできた理由として,アイシング実施による炎症の最小限化,膝蓋骨の可動性が増大,遠心性収縮を利用した筋力強化などを用いたためと考えられた. スキー滑走姿勢が常に体幹前傾,股関節屈曲・膝関節屈曲位であるため,腸脛靭帯は短縮しやすい肢位であるといえる.その際下肢は外旋位をとり,膝蓋骨は外側変位となり,膝蓋腱内側部にストレスが加わると考えられた.したがって,今後は本症例だけではなく同様の受傷を回避するために,他選手にも腸脛靭帯のストレッチングを意識的に実施させるべきであると考えられた.
著者
中田 誠司 三木 正也 岡部 和彦 真下 透 小林 幹男 山中 英寿 高橋 修 大貫 隆久
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.507-514, 1991-05
被引用文献数
1

GU 205例(47.7%),NGU 225例(52.3%),平均年齢32.5歳は両群で大差なし.感染源はホステス76.3%,以下ソープランド,ガールフレンド,海外,妻の順であった.尿道分泌は87.7%に認められ,排尿時痛,尿道不快感がこれにつづいた.検尿,尿道分泌物塗抹染色陽性は両群で72.7%,100%と50.9%,92.2%で,GUのペニシリン抵抗性は29.4%;25.6%にクラミジア混合感染あり,NGUのクラミジア陽性は71.8%となった.GUのNQ, PC治療1週間後の有効は80.6%,83.8%で,NQによる淋菌消失は89.7%である.NGUではNQ, MINO治療1週間後の有効は70.4%,85.3%,クラミジア消失は70.0%,100%であった.NQのOFLX有効は84.3%で最高,両群共治療は2週間の方が再燃が少なかったWe reviewed 497 patients with male urethritis diagnosed between January, 1986 and March, 1989 at the Asama General Hospital. The incidence of gonococcal urethritis (GU) was 47.7%, and that of non-gonococcal urethritis (NGU) 52.3%. There was no difference in the age distribution between GU and NGU. Prostitutes were the most common source of the infection in both GU and NGU. Incubation periods were longer in NGU than in GU, statistically. Urethral discharge was the most common symptom. Purulent urethral discharge was seen more commonly than serous urethral discharge in GU. On the contrary, serous urethral discharge was more common in NGU. Penicillin-resistant gonococcus comprised 29.4% and mixed infection of the C. trachomatis existed 25.6% in GU. C. trachomatis was detected in 71.8% in NGU. In GU, new quinolones and penicillins were administered frequently. The effective rates 1 week after the administration were 80.6% and 83.3%, respectively. In NGU, new quinolones and minocycline were administered frequently. The effective rates were 70.4% and 85.3%, respectively. Ofloxacin (OFLX) showed the highest effective rate to NGU among the four new quinolones. The relapse rate for the two-week administration group was lower than that for the one-week-administration group, but the difference was not statistically significant.
著者
宮崎 清宏 山中 知紗 野村 朋江 政岡 由紀
出版者
高知県農業技術センター
雑誌
高知県農業技術センター研究報告 = Bulletin of the Kochi Agricultural Research Center (ISSN:09177701)
巻号頁・発行日
no.29, pp.35-38, 2020-03

1. 葉ニンニク,カイラン,シュンギク,夏秋ホウレンソウ,水耕ミツバの呼吸量は,貯蔵温度が高いほど多かった。また,収穫日の呼吸量が最も多く,翌日には大きく減少するが,2日以降は徐々に少なくなった。2. カイラン,シュンギクの収穫翌日までの呼吸量は,主茎が側枝より多かった。3. 葉ニンニクを垂直または水平置きで貯蔵した場合の呼吸量の違いは判然としなかった。
著者
山中 仁美
出版者
名古屋商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、第1次世界大戦から第2次世界大戦までの期間(以下「戦間期」と記す)のイギリスにおける国際関係学の発展を、ナショナリズムをめぐる議論と関連付けながら歴史的に再検討することを目指した。研究の過程においては、新設されたシンクタンク「王立国際問題研究所(通称「チャタム・ハウス」)」の研究グループの議論に着目し、そこで戦間期の国際関係をめぐる概念や理論が、日々変化する国際政治情勢など経験的な事実と擦り合わされながら発展したことを明らかにした。これにより、国際関係をめぐるさまざまな知的営為が歴史的文脈を離れて抽象的には思弁され得ないことが示唆され、学説史研究に一つの視点を付け加えるに至った。
著者
山中 克己 明石 都美 宮尾 克 石原 伸哉
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.99-105, 1999-02-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
20
被引用文献数
1

An Investigation by questionnaire was conducted in 1996 to know the tuberculosis (TB) status and living conditions of 50 homeless people registered as TB patients at one of Nagoya city's 16 health centers.1. All patients had one or more symptoms of TB, 64% of them showed positive TB bacilli on smear, and 35.3% of them had a previous history of TB treatment. However, only 15.2% suspected they had TB at the onset of symptoms.2. Main reasons of seeking medical treatment: 28.6% arrived by ambulance after falling down from exhaustion, 25.7% had consulted with welfare agencies after the onset of symptoms, and 20.0% had been diagnosed during the treatment of other diseases.3. When they were admitted to the hospital they had many concerns 29.0% loss of income, 19.4% living expenses, 19.4% smoking prohibition, 12.9% admission fee, and 9.7% privacy.4. They lived in the following: 42.9% construction camps, 20.0% parks or streets, 17.1% single room occupancy hotels, 17.1% daily or monthly paid apartments, and 11.4% sauna baths.5. Past medical histories of the subjects included 40.6% injuries by labor accidents, and 25.0% stomach ulcers. Current diseases were 15.6% mental diseases, 15.6% liver diseases, 15.6% diabetes mellitus, and 9.4% alcoholic dependance. Seventy percent of them consumed alcohol daily (average pure ethanol 125m1 per day).6. From the results outlined above, the following proposals relating to TB control of the homeless should be considered.1) Educating the homeless as to the need for a health check when TB symptoms are present.2) Opening a clinic for the homeless for easy access to consultation on TB.3) Directly observed therapy, short-course, for TB in the homeless.4) Health examination of the employees of single-room occupancy hotels and sauna baths which are used frequently by the homeless.5) A fundamental countermeasure to deal with alcoholic dependancy among the homeless.