著者
坂本 圭 辻野 博之 中野 英之 浦川 昇吾 山中 吾郎
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.175-188, 2018

<p>著者らの海洋大循環モデル「気象研究所共用海洋モデル(MRI.COM)」は,開発が始まってから20 年近くが経過し,気象研究所と気象庁の様々な部門で利用されるようになるとともに,ソースコードの大規模化・複雑化が進んだ。このような状況の下でも,バグの混入や意図しない影響を抑えながらモデルを効率的に開発するため,現代的なソフトウェア開発で用いられるツールと手法を取り入れ,開発管理体制を一新した。まず,ソースコードの開発履歴(バージョン)を管理する「Git(ギット)」を導入した。このツールにより,複数の開発者が複数の課題に同時に取り組む並行開発が可能になった。また,プロジェクト管理システム「Redmine(レッドマイン)」を導入し,開発状況を開発者全員で共有した。このシステムによってデータベースに逐一記録された開発過程が,他の開発者や次世代の開発者にとって財産となることが期待される。これらのツールを用い,さらに開発手順を明確にすることで,開発チーム内の情報共有と相互チェックを日常的に行う開発体制に移行することが可能となったことは,コード品質の向上に大きく寄与している。現在,気象庁では,MRI.COMだけでなく,気象研究所と気象庁で開発しているほぼ全てのモデルをGit(またはSVN)とRedmineで一元的に管理するシステムを構築しており,モデルの開発管理及び共有化が大きく前進している。</p>
著者
山中 淳彦 佐藤 雅彦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.4_388-4_401, 1997-07-15 (Released:2018-11-05)

本論文では、代入を持つ関数型言語Λを提案する.この言語の定義を示し、操作的意味論がChurch-Rosser性や参照透明性のような良い性質を持つことを示す.次に、Λと[5]で提案された同様の関数型言語Λ94とを比較し、両者の間に成り立つ関係を調べる.Λの操作的意味論はΛ94のそれよりも簡潔に与えられており、そのためΛに対しては決定的な操作的意味論を自然に定義することができる.
著者
山中 長閑 吉永 尚孝 旭 耕一郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.382-387, 2018-06-05 (Released:2019-02-05)
参考文献数
15

夜空に輝く星々や我々人間を構成する電子と原子核,つまり物質は実際宇宙の主成分の一つをなしている.しかしながらそもそも宇宙に物質が多く存在し反物質がほとんど存在しない,というこの一見当たり前の事実は,実は非自明な現象である.CP対称性とよばれる対称性の破れがあってこその現象なのであり,観測から導かれる物質の量は,素粒子物理の標準模型に組み込まれたCPの破れで説明できる量をはるかに超えている.加えて宇宙には,標準模型内の粒子ではないと考えられる粒子(暗黒物質)や未知のエネルギー(暗黒エネルギー)が存在する.標準模型は現在までに地上で行われた加速器実験の結果のほとんど全てを説明する強力な素粒子物理模型であるにもかかわらず,その奥に私たちの知らない新しい物理が控えているのではないかと,多くの研究者が期待を胸に新物理の探索に挑戦している.新物理の候補のうち,多くの研究者に有望視されていた電弱スケールの超対称標準模型は,超対称粒子が期待される質量領域に見つからないことから最近その特別な地位を譲りつつある.新物理の解明へのこれまでの指針が変更を余儀なくされ,次第に新物理の証拠探しはエネルギーを上げた加速器実験によって新粒子の直接検出を目指す「エネルギーフロンティア」から,標準模型で禁止されているはずの物理過程に新物理の効果を探索する「超精密フロンティア」へと,その重心を移しつつある.この際に鍵となるものの一つは上述のようにCPの破れである.スピン方向に沿って定常的に生じた粒子の電気分極を電気双極子モーメント(Electric Dipole Moment, EDM)と呼ぶ.EDMはスピンに沿って定義されているのに,空間反転と時間反転に関してスピンとは異なる変換性を示すという奇妙な物理量.時間反転に関するこの性質は,CPT定理を通じてEDMがCP対称性の破れに関係する観測量であることを物語っている.新物理は標準模型とは異種のCPの破れを含むはずである.標準模型のCPの破れはフレーバー混合に関わるものであるため,フレーバー対角な観測量であるEDMには低次で現れず,観測にかからない.もし実験で大きな値のEDMが見つかったなら,それは間違いなく新物理に由来するものである.EDMの研究は現在,スピンを持つ様々な粒子―中性子,反磁性原子,常磁性原子,ミュオン,陽子・重陽子―を対象に世界中で探索実験が実施または計画されている.理論的にも検討が進み,これら異なる粒子のEDMがそれぞれどのような新物理に感度を持っているのか,それらの実験データが得られた時にどのような解析をすればよいのかもわかってきた:各々の新物理が生み出すCP非保存相互作用は低エネルギーでは限られた個数のパラメータで表され,これらのパラメータはハドロン物理・核物理・原子物理の過程を通じて様々な素粒子・複合粒子にEDMを生じさせる.これを逆に辿ると,測定されたEDMから各パラメータの値が求められ,その値が新物理の存在の証拠を与えることとなる.我々は,キセノンや水銀などの反磁性原子のEDMが素粒子からハドロン,原子核,原子の各階層を繋げて新しい物理を解明する際に持つ感度を明らかにしてきた.こうして今後実験の進展によりEDMが,それもただ一例ならず決定されるようになれば,提案されているいずれの模型が描く新物理が実際に現れるのかを判別する道が拓かれることになる.
著者
田中 朱美 高橋 潔 申 龍熙 増冨 祐司 山中 康裕 佐藤 友徳
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_237-I_248, 2012
被引用文献数
1

現在気候下の北海道のコメ収量変動を再現するため,潜在作物生産性モデルGAEZの北海道への適用可能性評価および改良を実施した.改良前のGAEZでは計算対象期間の大半で北海道のほぼ全域で気温条件を満たさず収量がゼロとなり,耐冷性の強化によってコメ栽培が可能となった北海道にはそのまま適用できなかった.モデルの改良として(1)気温条件の緩和,(2)バイオマス計算論理の変更,(3)出穂日推定論理の追加,および(4)障害型冷害の考慮を実施した.(1)により寒冷地でも収量を得ることが可能となるが,観測の収量変動をほとんど再現しなかった.(1)に加え(2),(3),(4)を組み合わせることで再現性は大幅に向上した.特に障害型冷害の考慮と出穂日の推定が北海道の観測収量変動の再現性向上に大きく寄与した.
著者
山中 幸宏
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.7, pp.85, 2006

70歳代の網脈略膜萎縮の女性は、娘さんの手にしがみつくようにして来店されたが、遮光眼鏡CCP-YGを掛けることで「曲がった腰もしゃんと伸び、大またで歩けるようになった」…。60歳代の糖尿病網膜症の女性は「度数が入っていないのに遮光眼鏡CCP400FLを掛けるととてもよく見えるようになる。度数が入っていないメガネでも良く見えるようにする山中さんは手品師か!」と喜んでいただいた。<br>1997年に視覚学会で発表した聞き取り調査では、糖尿病網膜症の方で矯正視力0.6以下に低下した事例では70_%_の方が羞明を感じ、そのうち70_%_の方が自覚的に遮光眼鏡装用により見やすくなることを述べていた。<br>しかし、その後のコントラスト検査装置を使った実験では、糖尿病網膜症の方は、コントラストのほぼ全域で低下する傾向があることもわかった。<br>今回は各事例を紹介すると共に、臨床面では有効性が高いとされる遮光眼鏡の秘めたパワーの理由を検証したい。
著者
鈴木 悠 三木 通保 大須賀 拓真 山中 冴 松村 直子 松原 慕慶 金本 巨万 藤原 潔 佐川 典正
出版者
公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所
雑誌
天理医学紀要 (ISSN:13441817)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.44-50, 2017-12-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
18

妊婦に対して腹腔鏡手術を行う機会は近年増加しており,開腹手術と比して妊娠予後に差がないことが示唆されている.報告の多くは妊娠12週から16週までの間に手術が行われており,16週以降では少ない.今回我々は妊娠16週から18週の4症例に対して腹腔鏡下卵巣腫瘍核出術を施行したので,文献的考察を加えて報告する.腫瘍径は7.5から9 cm 大で,3例は成熟嚢胞奇形腫,1例は漿液性嚢胞腺腫と成熟嚢胞奇形腫であった.手術時間は157分から232分であり,週数の進行とともに手術時間の延長を認めたが,術後の妊娠経過には異常を認めなかった.手術を行うに際しては,増大した妊娠子宮が障害にならないよう,トロッカーの位置は臍より頭側で,腫瘍患側におくことなどの工夫が必要であった.妊娠16週以降でも画像診断により術前に腫瘍の位置を確認し,トロッカーの配置などを工夫すれば,腹腔鏡下手術は安全に施行できると考えられた.
著者
永野 君子 松沢 栄子 大塚 慎一郎 高橋 史人 山中 正彦 山口 和子 熊野 昭子 小森 ノイ 菅 淑江 竹内 厚子 下志万 千鶴子 大野 知子 長谷川 孝子 西岡 葉子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.133-141, 1987
被引用文献数
1

肉, 魚, 卵, 豆腐, 牛乳を主な材料とする料理13種の作り方と伝承傾向の調査を, 全国8地区17都市に居住する女子, 昭和55 (1980) 年3,252名, 昭和57 (1982) 年3,094名を対象に実施した。<br>1) 伝承された時期は, 10歳代後半と20歳代前半が多く, 次いで20歳代後半であった。和風で古典的イメージの強い伝統的料理は20歳代, 普及年数の浅い洋風・中国風料理は30歳代, 40歳以上を伝承時期としていた。<br>2) 伝承形態は, (1) 母を主とする家庭内伝承パターン, (2) 専門家, 活字を主とする家庭外伝承パターン, (3)"自然に覚えた"と家庭内伝承が半々の中間パターンの3つに分類され, それぞれの料理に特徴がみられた。<br>3) 料理の作り方は, どの食品についても素材からの手作りが60%と高く, 次いで加工材料・半調理材料導入である。調理済み料理の利用は11%の低い回答率にとどまっていた。<br>4) 家庭への普及年数が比較的浅い麻婆豆腐は, 料理の作り方によって伝承形態に著しい差がみられた。手作りは専門家, 料理本・料理カードによる伝承が高く, 調理済み料理の利用は商品の説明書が有意に高かった。
著者
進賀 知加子 下野 勉 仲井 雪絵 紀 瑩 守谷 恭子 瀧村 美穂枝 加持 真理 竹本 弘枝 森 裕佳子 山中 香織
出版者
The Japanese Society of Pediatric Dentistry
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.584-592, 2007

妊婦の口腔内ミュータンスレンサ球菌群(MS)の菌数レベル,喫煙習慣,食事習慣に関する実態調査を目的として,産婦人科医院を受診した妊娠3-6か月目の妊婦400名(平均年齢29 .2±4.2歳,19-43歳)を対象にデントカルトSMを用いた唾液検体中のMS菌数レベルの測定,食事調査および喫煙習慣に関する質問調査を行ったところ,以下の結果を得た。<BR>1.各SMスコアの割合は,8.5%(SM=0),35.3%(SM=1),38.0%(SM=2),18 .3%(SM=3)であった。MS菌数レベルがハイリスク(SMスコア>2)を示した者は半数以上(56 .3%)であったにも拘らず,歯科医院を受診中の者は1割未満であった(7.8%)。その中で受療目的が「予防」であった者の割合は29.0%であった。歯科医療者と妊婦に対し,妊娠期の口腔衛生管理の重要性について認識を広めるための社会的啓蒙活動や教育が必要である。<BR>2.喫煙習慣の既往がある妊婦はMS菌数レベルがハイリスクになる傾向を認めた(10 .7%vs.6.3%;P=0.08)。<BR>3.「シリアル(無糖)」「アイスクリームまたはシャーベット」「ドーナツまたはマフィン類」「クッキー」「チョコレート」「あんパンまたはジャムパン」「まんじゅう」「ようかん」の8項目の食品においてハイリスク群はローリスク群より有意に摂取頻度が高かった。
著者
八木 勇治 菊地 正幸 吉田 真吾 山中 佳子
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.139-148, 1998-07-03 (Released:2010-03-11)
参考文献数
26
被引用文献数
16 23

We investigate the rupture process of Hyuga-nada earthquake of April 1, 1968 (MJMA 7.5). Applying a multiple-time window inversion scheme to teleseismic body wave data, we obtained a detailed spatio-temporal distribution of moment release. The main source parameters are: the seismic moment=2.5×1020[Nm]; the rupture area=64×48[km2]; the stress drop=3.4[MPa]; the focal depth=15[km]. The rupture consists of three major asperities: the first asperity centring about 10km south and 20km west from the hypocenter and having a maximum slip of 4.0m, the second one centring about 8km north and 5km east from the hypocenter and having a maximum slip of 3.0m, and the third one centring about 50km west from the hypocenter and having a maximum slip of 3.2m. We compared the rupture area with that of a few large events (M>6.5) subsequent to the 1968 event. Then we found that the above three asperities of 1968 event coincide with the low seismicity area in the Hyuga-nada region, and do not overlap with the source area of the subsequent large events (M>6.5). This rupture pattern and the seismicity suggest that an area of slab bending as well as fracture of the slab can behave as barriers during earthquake rupture. These barriers may control the maximum size of earthquake source in this region.
著者
清水 洋 松本 聡 酒井 慎一 岡田 知己 渡辺 俊樹 飯尾 能久 相澤 広記 松島 健 高橋 浩晃 中尾 茂 鈴木 康弘 後藤 秀昭 大倉 敬宏 山本 希 中道 治久 山中 浩明 神野 達夫 三宅 弘恵 纐纈 一起 浅野 公之 松島 信一 福岡 浩 若井 明彦 大井 昌弘 田村 圭子 木村 玲欧 井ノ口 宗成 前原 喜彦 赤星 朋比古 宇津木 充 上嶋 誠 王 功輝 ハザリカ ヘマンタ 矢田 俊文 高橋 和雄
出版者
九州大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2016-04-22

2016年熊本地震について、地震活動や地殻変動、活断層、火山活動への影響、地震災害の特徴などを調査した。その結果、熊本地震は布田川・日奈久断層帯の右横ずれ運動によって発生したが、複数の断層面と複雑な断層形状を持つことを明らかにした。また、建物被害や土砂災害の地盤との関係、特に、地盤の過剰間隙水圧が地すべりの発生要因であることを明らかにした。さらに、災害情報や災害過程、被災救援、エコノミークラス症候群などについての調査から、広域複合災害の問題点と対応策を提示した。
著者
松尾 光弘 松田 理登 石橋 孝明 菊池 優花 山北 伊織 盛 夏希 今村 鮎美 坂本 貴良 田代 佑治 酒井 泰良 山中 佳樹 西立野 興文 湯淺 高志
出版者
Japanese Society of Cryobiology and Cryotechnology
雑誌
低温生物工学会誌 (ISSN:13407902)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.37-43, 2015-04-15 (Released:2017-06-15)

Low temperature have been broadly applied for storage technique of various vegetable and crops. Sweetpotato is one of the most popular crops grown in tropical and temperature regions. Because sweetpotato, originated from semi-tropical plants, is susceptible to cold stress, severe chilling stress by itself causes deterioration and/or irreversible damage in sweetpotato tuber tissues. However, mechanisms involved in physiological and biochemical changes of sweetpotato under chilling stress remain unclear. Thus, we focused on the gene expression profiles of cold stress-responsive transcriptional factors and carbohydrate metabolisms of sweetpotato in response to chilling stress. A sweetpotato homolog of Drought Responsive Element Binding factor (swDREB) is induced in sweetpotato within 6 h after treatment of chilling stresses. The expression of swDREB under chilling stress was maintained until 3 d. Chilling stress sequentially upregulated the expression of β-amylase (β-AMY) and trehalose-6-phosphate phosphatase (TPP). Increase of amylase activity and sugar content was also observed in sweet potato under chilling stress, These results suggest that swDREB mediates the expression of β-AMY and TPP via a cold stress-responsive transcription factor cascade, leading to degradation of starch in sweetpotato tuber and accumulation of maltose and trehalose.
著者
山中 高光 永井 隆哉 福田 智男 橘高 弘一
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.39, 2003

酸化物Mn<sub>2</sub>O<sub>3</sub>のうち多くの物質はコランダム型構造R c(M:Al,Ti,Cr,Fe等)であり,酸素と金属のイオン半径比がr(M)/r(O)>0.87の物質は希土類A型 P m (M:ランタニド), 0.60< r(M)/r(O)<0.87では希土類B型(M:Sm),希土類C型Ia (M:Mn, Pu, Sc, In)の構造をとる.(Mn,Fe)<sub>2</sub>O<sub>3</sub> (bixbyte) は立方晶(Ia3 , Z=16)であり,純粋なMn<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は少し歪んだ斜方晶(Pbca, Z=16)構造を示す.Mn<sup>3+</sup>のd電子軌道(high spin状態)からJahn-Teller 効果により,単純なイオンのサイズ効果から想像されるコランダム構造と異なる.高圧状態での格子系の圧力変化は興味がもたれて来た. Prewitt et at., (1969) は Mn<sub>2</sub>O<sub>3</sub> はC型構造から高圧下でコランダム構造に転移することを提案した.またShono et al., (1997)は20GPa以上でコランダム構造と異なる未知の高圧相の存在を報告した.<br> 高圧単結晶構造解析実験<br> 本実験ではbixbyite(USA Uta)(Mn0.4035Fe0.5485Ti0.0175Al0.0305)<sub>2</sub>O<sub>3</sub>についてダイヤモンドアンビル(DAC)を用いて0.0001, 4.7, 7.0GPaでは研究室のRIGAKU AFC-5を使用し,5.47,8.82,9.64, 11.0GPaは Spring-8(BL02B2), PF(BL-10A)で放射光を用いた高圧単結晶構造解析を行い,構造変化について調べた.等方性温度因子で最小二乗法の解析結果は総べてR=0.05以内に収束した.立方晶のbixbyiteには六配位の2つの陽イオンサイトM1( (8a))とM2(.2. (24d))がある.M1-Oの原子間距離は全て等しい.一方M2サイトはMn2-O(1), Mn2-O(2)とMn2-O(3)各2本ずつありM2-O(1)が著しく伸長している.M1は一様に圧力に対して体積収縮し,M2は著しく8面体の歪みを解消する方向に圧縮される.M2八面体の方が対称性の高いM1八面体より圧縮率が高い Mn<sup>3+</sup>による顕著なJahn-Teller効果は両サイトにおいて見いだせなかった.<br> SR粉末回折による高圧構造相転移と体積弾性率<br> PF(BL-18C)で加熱装置を設置したレバー式DACを用いて40GPaまでの加熱高圧粉末回折実験を行った.20GPa以上では希土類C型構造と異なる高圧相が確認された.降圧するとC型構造に戻ることからこの転移は可逆的であり,高圧相は常圧では維持できないことが明らかになった.32GPaまでC型構造の回折線が確認されたがDACの非静水圧性か転移の運動論かは判明しない.格子体積のP-V-TカーブからBirch-Murnagham のEOS式を用いて得られた体積弾性率はKo=176.5(4.8) GPa and Ko=7.56(0.67) でありAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>, V<sub>2</sub>O<sub>3</sub> , Cr<sub>2</sub>O<sub>3</sub>, Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub> と比較してほぼ同等であった.<br> 高圧相の解析<br> 新しく見い出された高圧相はPrewitt et at., (1969)が提唱したコランダム構造やM<sub>2</sub>O<sub>3</sub>から想像されるイルメナイト,LiNbO<sub>3</sub>型構造などの菱面体晶ではない単斜晶系の結晶である.現在電荷移動(2Mn<sup>3+</sup>=Mn<sup>2+</sup>+ Mn<sup>4+</sup>)について解析中である.高圧下でのスピンモーメントを測定中である.
著者
石光 俊介 福井 和敏 山中 貴弘 中山 仁史
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.408-412, 2014

構音障がい者を対象として発声支援システムの開発を行っている.このシステムでは健常者音声から推定した線形予測係数を用いて障がい者体内伝導音を明瞭化する.システムの概要の他,明瞭化手法の検討結果,および,その有効性を聴取実験および調音素性分析により評価した内容について発表する.
著者
宮本 圭造 伊海 孝充 高橋 悠介 石井 倫子 山中 玲子
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

能楽を伝える最古の家系である金春家の伝来文書は、その過半が明治維新後に流出し、主要な部分は現在法政大学能楽研究所に般若窟文庫として所蔵されている。一方、金春家にも今なお多くの文書が残されているが、これについては従来、十分な調査が行われてこなかった。本研究は、その金春家蔵の古文書の悉皆調査を行ったもので、四年間にわたる調査の結果、金春家には16世紀から20世紀にいたる1664点の文書が現存することを明らかにするとともに、大和地方の神事能や17世紀の江戸の勧進能の記録、明治期の金春家の動向を伝える貴重な資料を発見するなど、多くの成果を得た。
著者
井若 和久 上月 康則 山中 亮一 田邊 晋 村上 仁士
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_1261-I_1265, 2011 (Released:2011-11-09)
参考文献数
16

We examined values and applications of earthquake and tsunami stone monuments in Tokushima. The results of the study are as follows; (1) the purposes of stone utilization were to hand down records and lessons of earthquake and tsunami to posterity for its "presence", "conspicuousness" and "durability". (2) We recognized three cultural values of earthquake and tsunami stone monuments in Tokushima such as academic material, disaster prevention education material and disaster cultural asset. (3) We found that about 70% of earthquake and tsunami stone monuments in Tokushima have problems of their location and decipherment, and "teaching" function decreased remarkably. On the other hand, some stone monuments signs of their locations and/or explanations in modern Japanese were newly set up. (4) We collected the application cases of the earthquake and tsunami stone monuments in local municipals, areas and primary and junior high schools.
著者
鈴木 孝憲 黒川 公平 岡部 和彦 伊藤 一人 羽鳥 基明 今井 強一 山中 英寿
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.1742-1747, 1991
被引用文献数
2

雄雑種犬の骨盤内血管, 特に前立腺血管と椎骨静脈系との関係を, レントゲン撮影にて観察した.<br>腹大動脈は第6腰椎の高さで外腸骨動脈を左右に分岐し, 第7腰椎の高さで内腸骨動脈を左右に, また正中の位置で正中仙骨動脈を分岐していた. 仙腸関節の中央部で内腸骨動脈より分岐した尿生殖動脈は, 頭側に後膀胱動脈を, 尾側に前立腺動脈を分岐していた. 前立腺動脈は前立腺被膜部で分岐し, 尿道の中心部に向かうように実質内に入り, 網状に分岐分布していた.<br>前立腺静脈は実質内では網状に分布し, 動脈と並走し, 被膜部で合流し, 後膀胱静脈と吻合後尿生殖静脈へ流入していた. 尿生殖静脈は内腸骨動脈へ流入し, 外腸骨静脈と合流後, 総腸骨静脈, 後大静脈へと流入していた.<br>骨盤内静脈と椎骨静脈系との吻合は椎間静脈により行われていた. 椎骨静脈系との交通は, 後大静脈, 総腸骨静脈, 内腸骨静脈および内陰部静脈に観察された.