著者
山本 晃輔
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.423-450, 2015 (Released:2018-06-19)
被引用文献数
3
著者
山本 聡美
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.121-144, 2021

<p>近代的疾病観においては、病を健全な身体の対極にあるものと捉え、加療を通じて健常なる状態へ近づけることに価値が置かれる傾向にある。一方、古代・中世日本においては、これとは異なる疾病観が存在していた。特に仏教の教義や実践において、病には、人間の存在の根源に関わる現象としての重要な意味が見出されていた。病を生存への脅威として排除するのではなく、これと折り合い、場合によっては、秩序ある社会を構築する梃子として肯定的に捉えていくことさえなされた。</p><p>本稿では、平安時代末期の浄土僧、永観による「病は善知識なり」との成句に着眼する。善知識とは、仏教における発心や成道への導き手を指す。通常、多くの修行を積んだ高徳の僧を言うが、悟りに至るきっかけとなる人物や事物を広く指す言葉でもある。「粉河寺縁起絵巻」に描かれた病に発心の契機としての肯定的な意味を読みとくことからはじめ、そのような疾病観が形成された歴史的経緯を、古代日本における造像の伝統から明らかにする。</p>
著者
片岡 龍峰 山本 和明 藤原 康徳 塩見 こずえ 國分 亙彦 Ryuho KATAOKA Kazuaki YAMAMOTO Yasunori FUJIWARA Kozue SHIOMI Nobuo KOKUBUN
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科 / 葉山町(神奈川県)
雑誌
総研大文化科学研究 = Sokendai review of cultural and social studies (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.16, pp.17-29, 2020-03

日本最古の天文現象の記録は、『日本書紀』巻二十二、推古二十八年十二月一日(西暦六二〇年十二月三十日)の條に記される「十二月庚寅朔、天有赤気。長一丈餘。形似雉尾」という一節である。「赤気」は、彗星の類と理解され、日本古典文学や歴史学などの研究では悪い兆候を示すもの、といった理解がなされてきた。その一方、地球物理学においては、オーロラと理解され、オーロラの最も早い事例としてこの『日本書紀』が位置づけられてきた経緯がある。今回の考察では、「赤気」だけではなく、文中の「雉尾」という言葉にも着目し、『日本書紀』諸本での記述を踏まえたうえで、扇形をした赤いオーロラが日本などの中緯度で観察されやすく、真夜中より前に見られ、かつ雉の尾に似た形状をし、「長一丈」に該当する角距離十度相当で見えるという最も構造が際立った形態であるということを、雉の生態など、鳥類学の研究も踏まえて明らかにした。文献学的な考察に加え、雉の生態や尾羽の特徴を理解する鳥類学、彗星に関する古天文学の知識も合わせて新たな考察を加えたことによって、『日本書紀』の編纂に当たった人々の記述に対する責任感や知性、私たち日本人のルーツとなった倭の人々の観察眼や感性を伺い知るうえで一定の視点を与えることに寄与しうるものである。The oldest record of an astronomical phenomenon in Japan was recorded in the Nihon-shoki as follows: "On December 30 in 620, a red sign appeared in heaven. The length was more than 1 jo (10 degrees). The shape was similar to a pheasant tail (Suiko-Tennou, 28)". The appearance of a red sign has been recognized as an expression of a bad omen in literature, while it has been interpreted as the northern lights in geophysics. First we examine the description of the pheasant tail in detail. We then introduce the latest scientific findings that the northern lights show a fan-shaped appearance with a red background when appearing over Japan. After showing that the fan-shape is similar to a pheasant tail, also pointing out the low possibility of comets, we conclude that the oldest record of the red sign is consistent with the appearance of the northern lights over Japan. We hope that this examination contributes to increasing awareness of the sensitivity of Japanese people 1400-years-ago who compared a beautiful behavior of birds with a magnificent and rare natural phenomenon.
著者
木野 民奈 丸山 康世 中川 沙綾子 山本 賢史 中島 文香 小河原 由貴 平吹 知雄 宮城 悦子
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.309-314, 2021 (Released:2021-09-06)
参考文献数
19

当院で分娩した妊産婦の風疹抗体保有率と産後の風疹ワクチン接種状況について,後方視的研究を行ったため報告する.2014年1月から2017年12月までに生産児を分娩した妊産婦3,322名を対象とした.妊娠初期の血液検査で風疹抗体価HI ≦ 16倍を低抗体価とし,経産回数や不妊治療の有無,年齢別に,低抗体価の割合と産褥入院中の風疹ワクチン接種の有無を検討した.低抗体価の妊産婦の割合は31.5%,その中で風疹ワクチン接種率は43.6%であった.35歳未満の妊産婦に比べ,35歳以上の妊産婦は抗体保有率が高く,年齢と共に上昇した.また,初産婦は経産婦に比べワクチン接種率が高かった.さらに,不妊治療後の妊産婦でも低抗体価の妊産婦が一定数存在した.風疹・先天性風疹症候群予防のための妊産婦における風疹ワクチン接種率は依然として低く,官民一体となった施策が必要である.
著者
山本 晃輔
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.65-73, 2008-08-31 (Released:2010-07-09)
参考文献数
28
被引用文献数
4 2 6

本研究では日誌法を用い,“プルースト現象”——におい手がかりによって自伝的記憶が無意図的に想起される現象——の調査を行った.30名の参加者は1カ月間,プルースト現象が生起したときに記憶の内容およびその想起状況について記録するように求められた.その結果,ほとんどの記憶が古く,快でかつ情動性が高く,特定的で追体験感覚を伴った出来事であることが示された.加えて,手がかりとなったにおいは快でかつ感情喚起度が高く,命名が容易であった.また,想起状況の分析から,想起時の活動が副次的な手がかりとして作用することはまれであった.さらに,感情一致効果が見られた.これらの結果はにおい手がかりによって喚起された感情がプルースト現象の生起に影響することを示唆している.
著者
鈴木 徹 竹内 友里 益田 和徳 渡辺 学 白樫 了 福田 裕 鶴田 隆治 山本 和貴 古賀 信光 比留間 直也 一岡 順 高井 皓
出版者
公益社団法人 日本冷凍空調学会
雑誌
日本冷凍空調学会論文集 (ISSN:13444905)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.371-386, 2009 (Released:2011-05-23)
参考文献数
24

Recently, several food refrigeration equipments that utilize magnetic field have attracted much attention from food production companies, consumers and mass media. However, the effectiveness of the freezers is not scientifically examined. Therefore, the effectiveness should be clarified by experiments or theoretical considerations. In this study, the effect of weak magnetic field (about 0.0005 T) on freezing process of several kinds of foods was investigated by using a specially designed freezer facilitated with magnetic field generator. The investigation included the comparison of freezing curves, drip amount, physicochemical evaluations on color and texture, observation of microstructure, and sensory evaluation. From the results of the control experiments, it can be concluded that weak magnetic field around 0.0005 T provided no significant difference on temperature history during freezing and on the qualities of frozen foods, within our experimental conditions.
著者
山本 聡美
出版者
九州大学大学院比較社会文化研究院
雑誌
障害史研究
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-13, 2021-03-25

近代的疾病観においては、病や障害を健全な身体の対極にあるものと捉え、加療を通じて健常なる状態へ近づけることに価値が置かれる傾向にある。一方、古代・中世日本においては、これとは異なる疾病観、障害観が存在していた。この点について仏教を中心とした宗教思想から論じた池見澄隆は、近代以前の日本における病気観に、大別して「治病」と「病の受容」の二つの対処があったと指摘する。前者には祈祷や医療があるとし、後者を「病に、正の価値を見出し積極的に意義づけて受けとめようとする姿勢」と換言した上で、その極地ともいうべき事例として、平安時代末期の浄土僧、永観(一〇三三~一一一一)による「病は善知識なり」との成句に着眼する。 / 善知識とは、仏教における発心や成道への導き手を指す。通常、多くの修行を積んだ高徳の僧を言うが、悟りに至るきっかけとなる人物や事物を広く指す言葉でもある。天永二年( 一一一一)、三善為康編『拾遺往生伝』所収の永観伝においては、「病」という本来なら修行の妨げともなり、出家受戒が許されないこともあり得る身体の状態そのものが「善知識」と位置付けられており、疾病や障害に「正の価値」が与えられている。このことを手掛かりに、本稿では「法華経変相図」「病草紙」「一遍聖絵」「粉河寺縁起絵巻」「法華経曼荼羅図」など、経絵や仏教説話画に描かれた病や障害のモチーフを分析し、そこに、人を発心への誘う善知識としての「正の価値」が生じている実態を明らかにする。 / 論述にあたっては、まず『妙法蓮華経』譬喩品や普賢菩薩勧発品、『大般涅槃経』梵行品などに説かれる因果応報観に基づく疾病観がいかにして絵画化されているのかという観点から図像を分析する。その上で、平安末期から鎌倉時代にかけて、施療を通じた病者救済に尽力した永観、一遍、忍性といった僧侶らの実践を通じた図像解釈を試みる。 / 以上の考察を通じて、本稿では、「病者救済場面」として一義的に理解される傾向にある病者の図像について、「病や障害を契機とした発心の表徴」という新たな解釈を提示する。中世仏教説話画を通じ、現代とは異なる論理で構築されていた、中世日本における病や障害との共生の思想を浮き彫りにすることを目指す。Modern perspectives on disease and disability are considered antithetical to a healthy body and there is a tendency to place value on bringing the body closer to a healthy state through medical treatment. On the other hand, in ancient and medieval Japan, a different perspective on disease and disability existed. IKEMI Choryu, who has discussed this from the point of view of religious thought centered on Buddhism, points out that they were, broadly classified into two measures, "treatment of the disease" and "acceptance of the disease", in Japan before the modern period. The former is said to have included prayers and medical care, while the latter is referred to as "an attitude of finding positive value in the disease, considering it meaningful, and actively trying to accept it." As an example of what should be called an extreme view, we consider the phrase "Disease is an admirable friend (J:善知識 Zenchishiki, Skt: kalyāṇa-mitra)" by Eikan (1033–1111), a Jōdo (Pure Land) monk during the late Heian period. / Zenchishiki refers to a method guiding religious awakening or spiritual enlightenment in Buddhism. Usually, it refers to a noble priest who is highly trained, but it is also a word that broadly refers to a person or thing that leads to enlightenment. In Eikan's biography included in Shūi-Ōjōden edited by Miyoshi no Tameyasu in Ten'ei 2 (1111), Zenchishiki is defined as a view of "disease" that would usually interfere with training, and as a bodily state that may not allow one to receive religious precepts and become a priest. A "positive value" was also attributed to disease and disability. With this as the key, this paper analyzes the motifs of disease and disability depicted in medieval Buddhist Paintings including the Illustrated Manuscript of the Lotus Sūtra, the Illustrated Scroll of Illnesses, the Illustrated Biography of the Priest Ippen, the Miraculous Origin of Kokawadera, and the Mandara of the Lotus Sūtra, that clarify the actual conditions that give birth to the "positive value" of Zenchishiki leading to a person's awakening. / In these descriptions, we first analyze the iconography in terms of the disease depicted based on the perspective of retributive justice as explained in Chapter 3: Simile and Parable and Chapter 28: Encouragement of the Bodhisattva Universal Worthy of the Lotus Sūtra, and Chapter of Brahmachary/Chapter of Bongyō-bon of the Mahāparinirvāṇa Sūtra. Furthermore, we also attempt to interpret the iconography through the practices of monks including Eikan, Ippen and Ninshō who provided relief to the sick through free medical treatment, from the late Heian to the Kamakura period. / Based on the above considerations, this paper presents a new interpretation of the iconography of a diseased person, which has conventionally been understood as primarily "situations of relief for the sick," as "a symbol of the awakening of the mind." Through medieval Buddhist imagery, we aim to highlight the idea of co-existence with disease and disability in medieval Japan built on a logic that differs from that of the modern period.
著者
鈴木 泉 山本 正悟 塩山 陽子 藤田 博己
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第57回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.59, 2005 (Released:2005-10-17)

陸生ヘビ類へのマダニ寄生例に関する報告は少ない.そこで,宮崎県宮崎市内の1地域(K渓谷)でヘビ類を捕獲し,その種類と寄生マダニについて調査した.ヘビ類捕獲時に触診法と視診法でマダニ寄生が確認された場合には,飽血までヘビ類を飼育してマダニを採取した.また,マダニ付着を認めない場合も,許される範囲で約2週間飼育し,寄生の有無を確認した. 調査地域ではシマヘビ,ヤマカガシ,アオダイショウを主体に7種類のヘビの棲息が観察されている.今回,ヤマカガシ,マムシ,アオダイショウでマダニ寄生が認められたが,寄生種はタカサゴキララマダニ若虫のみで,成虫や幼虫の寄生は確認されなかった.また,フラッグスィープ法で行なった同地域のマダニ相の調査では,チマダニ属が優勢で,タカサゴキララマダニの採取例は希であった. 以上の結果から,ヘビがタカサゴキララマダニの生活環の中の一部に含まれていること,ヘビ捕獲法がマダニ相の調査に有用なことが示された.
著者
玉那覇 彰子 向 真一郎 吉永 大夢 半田 瞳 金城 貴也 中谷 裕美子 仲地 学 金城 道男 長嶺 隆 中田 勝士 山本 以智人 亘 悠哉
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.203-209, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3

沖縄島北部地域(やんばる地域)を東西に横断する県道2号線および県道70号線の一部区間は,希少な動物の生息地を通過する生活道路となっており,ロードキルの発生が問題となっている.この県道を調査ルートとして,2011年5月から2017年4月までの6年間,ほぼ毎日,絶滅危惧種のケナガネズミDiplothrix legataのルートセンサスを行い,生体や死体の発見場所を記録した.6年間の調査において,ケナガネズミの生体75件,ロードキル個体47件の合計122件の目撃位置情報を取得した.その記録に基づき,ヒートマップを利用して調査ルートにおけるケナガネズミのロードキル発生のリスクを表現することで,リスクマップを作製した.また,生体とロードキル個体の発見数からロードキル率を算出し,現在設定されているケナガネズミ交通事故防止重点区間(以下,重点区間とする)におけるロードキルの発生状況を評価した.リスクマップと重点区間を照合すると,交通事故リスクの高いエリアのいくつかが,重点区間の範囲外にあることが明らかになった.また,重点区間のロードキル率は他の区間と同様のレベルであった.本研究で提示したリスクマップやケナガネズミの行動記録を活用することで,より現実の状況に即した取り組みの展開が可能になると期待される.
著者
山本 雄大 佐藤 潤美 大渕 憲一
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.85.12044, (Released:2014-06-01)
参考文献数
33

The present study examined the negative evaluations and discrimination against smokers among the Japanese. In Study 1, 52 students rated one of four target-persons differentially depicted in terms of gender and smoking habit using scales to measure coolness, sociability, intellectuality, and earnestness. The results showed that participants rated smokers more negatively than nonsmokers except for sociability. Those who perceived smoking as controllable rated smokers’ earnestness even more negatively, suggesting that the negative evaluations are partially moderated by the perceived controllability of smoking. To examine a hypothesis that negative evaluations of smokers would mediate discrimination, in Study 2 we measured how participants (96 students) responded to target persons asking for a loan or a job, as well as their ratings of the targets on the Big Five personality dimensions. The results support the hypothesis of mediation.
著者
山本 修身 佐藤根 寛
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.419-426, 2011 (Released:2011-02-22)
参考文献数
8
被引用文献数
2

The fifteen puzzle is a sliding puzzle which has fifteen pieces on which numbers from 1 to 15 are printed. Using the IDA* algorithm with an admissible evaluation function, we can obtain an optimal solution of the puzzle. The performance of the algorithm depends on the evaluation function. The most simple evaluation function is the Manhattan evaluation function, whose value is the sum of the Manhattan distances from the positions of the corresponding pieces in the goal configuration. In this paper, we propose an evaluation function whose values are greater than or equal to that of the Manhattan evaluation function. Our evaluation function refers an approximated database of the gap-2n set. The database is computed beforehand like pattern databases, but it is completely different from pattern databases. The belongingness of a configuration of pieces to the set has to be checked by the database. Using an evaluation function based on the gap-8 set, we were able to reduce the number of search nodes to about 2.5×10-4 times in average with the IDA* algorithm compared with the Manhattan evaluation function. We also show that combining an evaluation function by gap-8 set and an evaluation function by additive pattern databases of disjoint seven and eight pieces, we were able to reduce the number of search nodes by about 53 compared with the evaluation function only by the additive pattern databases.