著者
岩本 正実 田中 英一 伝田 耕平 山本 創太
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.705, pp.872-879, 2005-05-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
19

An anisotropic inelastic constitutive model of cortical bone was formulated to predict deformation and failure behavior in traffic accidents or falling by utilizing the framework of viscoplasticity and damage mechanics. The model can represent characteristic features of cortical bone, such as anisotropic elastic coefficients with strain rate dependency, viscoplasticity with strength anisotropy as well as strength asymmetry of tension and compression. The damage evolution equation also enables us to predict bone failure with rate dependency. Experimental data of uniaxial compressive or tensile loading tests of human cortical bone at various strain rates were used to validate the proposed model. Predicted stress-strain curves and failure points agreed well with those of experimental data at wide range of strain rates. This shows the present model can be used to predict bone failure in various impact simulations of traffic accidents or falling.
著者
瀬野 錦蔵 山本 荘毅 木内 四郎兵衛 清水 欣一
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-12, 1968-05-28 (Released:2009-10-16)

The lake Togo-ike with its area of 4. 1 km2 and maximum depth of 5. 2 m. is a brackish lake and situated on the middle part of Tottori Prefecture. There are many hot springs such as Togo, Shin-Togo and Asazu in and around the lake. The authors studied the influence of the change of lake level due to polderling on the discharge of hot springs. The results obtained are summarized as follows : (1) Togo hot spring group has the same chemical constituents and ground temperature, suggesting that they have the same origin under the ground.(2) Some of these springs discharge through the lake bottom into the lake, but they give little influence on the quality of lake water.(3) Factors which will affect the discharge of spring water are barometric pressure, rain-fall amount, lake level change, tidal change and pumping. Barometric change and tidal change are not separated. Distinguished effects of rain-fall and lake level upheaval are shown in Table 5. Pumping effect is also obvious.(4) The effect of lake water level change on the spring discharge, dQ/dh is larger at Azusa than that of at Togo (Table 6). It suggests that change of lake water level affects directly to the discharge of hot spring.The results above mentioned lead us to the conclusion that the polderling of this lake will cause the decrease of hot spring discharge.
著者
山本 聖子 池田 和子 大金 美和 杉野 祐子 谷口 紅 木下 真里 阿部 直美 紅粉 真衣 菊池 嘉 岡 慎一
出版者
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻
雑誌
保健学研究 = Health science research (ISSN:18814441)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.119-127, 2019-09

有効な患者教育の内容について検討することを目的とし,2016年1月~12月にHIV陽性の確定診断を受け,かつA病院のHIV専門外来受診を開始した成人患者20名を対象にアンケートおよびインタビュー調査を行った.内容は保健所等でHIVスクリーニング検査陽性の告知を受けてから外来に初診で来院し患者教育を受けるまでの間に閲覧したネット上の情報の内容,閲覧したサイトの種類,特に印象に残った情報や信憑性に不安を感じた情報は何か,信憑性の確認はどのように行ったか等であった.調査の結果,ネットで情報収集をしたと回答したのは16名であった.閲覧した内容(複数回答)については,「疾病・治療に関する情報」が最多で15名であり,次いで「他のHIV感染者の思い・体験」が14名であった.思いや体験などのようなナラティブ情報は患者の情緒的サポートに有用であるが,時に混乱を招くことがあり,患者の個別性に合わせた情報提供が必要である.またネット上の情報についての真偽を何らかの方法で確認すると回答したのは5名のみで,医療者側から意識的に,患者の持つ情報の内容や根拠の有無を確認していくことが必要であることが明らかになった.
著者
小濱 剛 加瀬 ちひろ 佐藤 那美 鷹野 翔太 山口 太一 山本 俊政
出版者
千葉科学大学
雑誌
千葉科学大学紀要 (ISSN:18823505)
巻号頁・発行日
no.12, pp.79-84, 2019-02

近年、世界的な水産資源の需要増加に伴い、好適環境水等の人工飼育水を用いた閉鎖循環式陸上養殖が注目を浴びている。本研究では、カクレクマノミ及びニホンウナギをそれぞれ対象にして、人工海水と好適環境水における行動特性の相違を検証する事を目的とした。カクレクマノミの行動結果より、水槽内の平均利用場所は、人工海水下では上面および下面利用率が同等だったにもかかわらず、好適環境水下では下面の利用率が大幅に増加した。条件提示直後の平均活動性より、人工海水提示直後に比べ、好適環境水提示直後で境界線の通過回数が半分以下になることから、現行の好適環境水がカクレクマノミに適さないことが示唆された。一方、ニホンウナギにおいては行動を抑制させるような結果は見られなかった。以上の結果から、好適環境水の塩分及び成分比について、飼育魚種毎に明らかにする必要があると推察された。
著者
池上 隆彦 東 禹彦 山本 哲雄 中野 和子 中尾 正敏
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.141-146, 1973

昭和46年から47年にMicrosporum canisによる小水疱斑状白癬の3例とケルスス禿瘡の2例を経験した。この菌による小水疱斑状白癬の皮疹の特徴は小指頭大の小型の皮疹が多発し, それらが中心性治癒傾向に乏しいことであるが, 3例のうち1例はその大きさが鶏卵大に及んだ。ケルスス禿瘡は2例とも数個の浅在性頭部白癬を併発した。<BR>同菌による本邦白癬例280余例を数えるが, 関西地方では自験例を含めて最近数年間に19例に達している。自験5例の感染源はペルシャ猫のほか雑犬, 雑猫であったが, 高価な動物ばかりでなく, 雑犬, 雑猫, にも同症が拡っていることは, 今後, 関西地方での症例の増加を強く示唆するものと言える。
著者
小川 拓也 倉持 元陽 山本 昇志
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.35, no.8, pp.139-142, 2011-02-12

本稿では,光学的整合を必要とする複合現実において,既知物体が作る影の情報から光源位置を推定する手法を提案する.正確な光学的整合の実現には,鏡面球に映り込む画像を取得することにより周囲環境の光源位置を推定する手法が多く行われている.しかし,鏡面球には様々な物体が映り込むため,光源位置のみを正確に推定することは難しい.そこで提案手法では,正方形マーカを固定する4隅の押しピンが作る影を利用し,その重心座標と影の形状から光源位置を正確に推定する手法を検討した.再現実験の結果,推定した光源位置情報を元に生成した仮想物体の影が実際の影とほぼ一致することが確認できた.
著者
岩元 凜々子 佐久川 裕行 宮城 拓也 山口 さやか 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.22-25, 2021

<p>特に既往症のない 79 歳,男性。四肢に環状の紅斑が出現し,その後,胸痛,多発関節炎,有痛性皮下結節,発熱,リンパ節腫脹,上強膜炎が次々に生じ,最終的に,初発の皮膚症状の 4 カ月後に生じた耳介腫脹により,再発性多発軟骨炎の診断に至った。気道や心病変は合併しておらず全身状態は良好であるが,ステロイド内服と免疫抑制剤の併用では,いまだ病勢はコントロールできていない。<br>再発性多発軟骨炎は,軟骨組織を主体に多彩な全身性の自己免疫性の臨床症状を呈し,寛解再燃を繰り返す。半数以下の症例に皮疹を伴うが,皮疹自体も多様で特異的なものはない。自験例の様に,軟骨炎や鼻軟骨炎などの典型的な症状がない病期での診断は非常に困難である。</p>
著者
井上 哲朗 山本 利春 蒔田 実 井島 章 岩切 公治 山本 正嘉
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.27-34, 1994-08-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Isokinetic muscle strengths of kendo players were observed at fifteen male kendo players. The subjects were grouped into higher competitive ability (H-Group; 7 persons) and non-higher competitive ability players (NH-Group; 8 persons). Isokinetic muscle strengths at various speed were measured at elbow, trunk and knee by Isokinetic dynamometers. The results were as follows: 1) There were not significant differences in physique and body composition between two groups.2) Elbow extension force (absolute value) of H-group was significantly larger than NH-group.3) There were not significant differences in knee extension and flexion forces between two groups.4) Trunk extension force (back strength) of H-group was larger than NH-group.5) Circumferences of right upper arm, forearm and thigh were significantly larger than that of left ones, but the value of left calf was significantly larger than that of right one.6) Elbow extension force of right arm was significantly larger than that of left one, but for elbow flexion force the value of left arm was significatly larger than that of right one.
著者
山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.3-10, 2002 (Released:2002-07-24)
参考文献数
3
被引用文献数
16 4

3次元動作分析システムを用いて1名の片麻痺者(下肢Br.stage 4,発症後18週)の歩行を計測し,結果を正常歩行と比較しながら片麻痺歩行に共通した特徴について述べる。計測項目は,体重心の動き,麻痺側と非麻痺側の床反力,関節角度,関節モーメント,関節パワーである。正常歩行では両脚支持期に低い位置にあった体重心が単脚支持期に向けて上昇していくが,片麻痺者の麻痺側接地時にはこの動きが見られない。これは麻痺側の接地時に足関節背屈筋と股関節伸展筋の活動が正常に行われないことが原因と考えられる。これらのことから,非麻痺側から麻痺側への体重移動の重要性について考察した。
著者
川崎 和男 舩山 俊克 山本 浩一
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.355-363, 2017-11-25 (Released:2018-05-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究の最終目標は,強い殺菌効果で知られている深紫外線を生体に利用することである.本論文ではそのための検証の一つとして,深紫外線の近接場における殺菌効果の生体への影響について調べた.大腸菌および創傷を付けたラットの皮膚を対象に,深紫外線の近接場が与える影響を,観察からデータを取得し比較検討した.その結果,深紫外線の近接場において,大腸菌に対しては670 mJ/cm2の照射量で90%の細菌を死滅させることができ,同様にラットの創傷に対しては傷の回復に悪影響がないことが観察された.これらから近接場においては,大腸菌への殺菌効果がある線量でも,ラットを対象とした場合は生体の回復に悪影響を与えないことがわかった.本研究は,デザイン工学者が工学者の新技術を理解し,医学者とともに医学的な提案を考え,実験の実施まで行った.
著者
大谷 剛 山本 道也
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.43-76, 1985

第1報の行動目録(OHTANI,1985)にある主要な行動型について,生態学的な側面から分析を試みた(行動型のリストはTable1).観察したフィールドは北海道大学の構内(Fig.1)で,そこで個体追跡したのは31個体である(Table2).私たちが採用した「1個体追跡法」では特別な記録用紙(5秒間隔のスケールが横1列に60個並んで5分,全体で1時間のもの)を用いている.記入の手順は次のとおり:観察している個体の行動が変化したとき,すばやく時計の針の位置を確認,続いて記録用紙の相当する場所に縦線を入れ,すばやく行動型の略号を書き入れる.「結果および論議」では7節に分けたが,まとまりのある結論に至ったところで,「まとめ」を挿入した.これが斜体で書かれたS-1-S-11である.S-1:オスは白っぽい植物上で休息し,メスは産卵植物上で休息する傾向がある.Table3にはモンシロチョウが休息したときの植物とその回数を示してある.世代ごとに雌雄の休息回数の比率を比較してみると,S-1の傾向が読み取れる.S-2:オスはメスよりも高い位置で休息する.Table3の第3グループは白っぽい植物でも産卵植物でもないが,オスが多く休息するのは丈の高い植物,メスは低い植物の傾向がある.そこで,雌雄各1個体で休息位置の高さを測定(目分量)した例をTable4にまとめた.同じ植物(アカザ,C.album var. centrorubrum)でもS-2の傾向が明らかである.S-3:吸蜜の際,オスはメスよりも花にとどまる時間が短い.吸蜜植物に関する情報はTable5に集めた.吸蜜した回数(V)と総時間(D)に分けてある.各世代のものを総合して平均吸蜜時間(D/V,右端の欄)を出すと,S-3の傾向が認められた,詳しく見ていくと,S-1,S-2の傾向も存在する.S-4:飛翔(FL)の継続時間は,産卵メス,非産卵メス,オスで大きく違い,また,メスの越冬世代(G_h)では第一,第二世代(G_1,G_2)より長くなる傾向にある.Fig.2に飛翔の継続時間の分布を示した.探雌飛翔(Ff),逃避飛翔(Ef),移動飛翔(Wf)の3つは記録紙から分けて取り出すのがかなりむずかしいので,Fig.2では混ざったままになっている.オスの飛翔の大半はFfなので,30秒以上のものが多く,非産卵メスでは,あまり動く必要がないので,短いWfが多いと考えられる.産卵メスでは産卵植物への移動がやや長いWfを必要とする.「吸蜜→飛翔」(Fig.2右)の場合は「休息→飛翔」(Fig.2左)の場合より花から花への短い移動を含むので,分布は左側に偏っている.メスの越冬世代の飛翔時間の長さには春の植物の少なさが関連すると考えられる.S-5:飛翔オスは白っぽい物体に引き付けられる.飛翔中のオスは,枯れ葉・タンポポの綿毛・ネギぼうず・ビンの白い蓋など白っぽいものに興味を示して近づき,ときにはちょっと触ったりする.S-6:個体間行動をみると,若い個体は飛翔中の反応が多く,老齢個体では休息中の反応が増える.とくに,老齢メスでは尻あげ反応(Ae)が増加する.Table6は,個体間行動の観察回数を日齢別にまとめたものである.追尾(Ch/),被追尾(/Ch),回転(Gy),上昇飛翔(Af)という飛翔中の行動,および,飛び立ち反応(To),傾き反応(Le),尻あげ反応(Ae),翅閉じ反応(Wd),はばたき反応(Ft)という休息中の反応は,それぞれ雌雄とも日齢を7日で分けると,違いが出てくる.S-7:上昇飛翔(Af)は若い雌雄によって行なわれ,これが若いメスの羽化地からの移出につながるものと考えられる,すなわち,若いメスは老齢メスよりAfをするので,定住的なオスに追い出される格好となる.Afの情報はTable7にまとめた.♂11を除くと,雌雄ともAfをした平均日齢は3.6日であり,時間も午前中が多い.表の右側はAfの前後の行動の流れ.Ch→Af→FLの形をとることが多い.また,Afのあと視界から消えた4例も示してある(→oversighted).S-8:メスは,接近してくるオスに気づかれなくとも,翅閉じ反応(Wd)と傾き反応(Le)をする.生スが気づいて25cm以内に接近すると,メスは尻あげ反応(Ae)に切り替える.休息しているメスに頻繁に見られる3つの反応が引き起こされる距離をTable8に示した.3つの反応に属さないわずかな動き(twitching)と反応があるべき距離の無反応(no response)も示してある.WdとLeの翅の動きがAeと全く違うので,どちらの反応にすべきか迷う場合もあると考えられる.不完全な反応の例を()内に示したが,Aeの不完全なものは完全なものより遠い距離で生じているので(中央値,5.4cm:19.3),判断の迷いが現れたものとみなした.S-9:個体間行動が生じる頻度は,3つの世代ともオスの場合の方がメスよりもずっと多く,オスの活動性の高さを物語っている.各行動型の頻度を世代で比べると,総個体数の変化(G_h<<<G_1≧G_2)と必ずしも一致しない場合がある.G_1とG_2のオスの行動に差があると予想される.個体間行動ではS-8で見たように日齢で影響が出るので,少ない老齢個体データを省き,世代間の違いをTable9(不活動時の個体)とTable10(飛翔時の個体)に分けてまとめた.各世代の比較は,Gの観察総時間を1.00としたときの比を他世代で出し(Table9,10のm),それで観測数を割ったもの(括弧内の数値)で行なった.また,総観測数に対する%でも比較した.S-10:交尾中に接近してくるオスは交尾時間を引き伸ばす原因となるが,飛来するオスが少ないうちは,交尾オスのはばたき反応(Ft)は追い払う効果をもつ.交尾に関する情報は,1976年のデータが少なかったので,1980年に同じ北大構内,1981年に長崎県北松浦郡田平町で追加したものを一緒にしてTable11に示した.交尾を邪魔された指標として,はばたき反応の回数(NFt),結合飛翔に飛び立った回数(Nbf),結合飛翔の総時間(Dbf)を調べたが,交尾時間(DC)との相関係数はNFtが最も高かった(r=0.9055).しかし,NFtが25以下の18例で相関係数を出して見ると,r=0.2825となり,ほとんど相関はないといえる.これを,25以下ならはばたき反応が飛来オスを追い払っている結果と解釈した.Fig.3の写真は,SUZUKI et al.(1977)が報告したスジグロシロチョウの「求愛ホバリング」に似たものとして掲げた.S-11:メスは多くの卵をつぎつぎと広い範囲に産んでいくが,G_2のメスではこの傾向が弱くなる.17個体のメスの産卵についてはTable12に示した.1時間当たりの産卵数(A),1回の産卵行動(El)に費やされた平均時間(B),1時間当たりのElの数(C),1回のElに産まれた卵の平均数(D),1時間当たりの「空産卵」の数(E)を調べ,AとB-Eとの相関係数(CC)を一番下に示した.CとDの間は,1回のEl中に産まれた卵数(1-14)で,それに相当する1時間当たりの例数である.1回のElで1個しか産まないときより,2個,3個と産む場合の方が相関係数が高い.つまり,Elを始めたとき,何個も産む個体の方が多くの卵を産むようである.また,A,B,Dについて世代の集計のところを見ると,G_2の数値がG_h,G_1と違っている.以上のS-1-S-11を踏まえ,総合考察をして,Fig.4に仮想的なモンシロチョウの生活をまとめた.オスの生活はほとんどすべて「メス捜し」にあてられている.しかも,できるだけメスに近いものに引き付けられるために,メスの次によく似ているオス同士で引き合うことになり,これが前から知られている「オスの定住性」につながるものと考えることができる.一方,メスは交尾のときオスに出合うだけでよく,交尾以外のオスをなるべく避けるようにしている.つまり,「オス避け」または「交尾避け」生活である.そして,若いメスは上昇飛翔(Af)でオスを避ける傾向にあり,その結果メスは羽化地をどんどん離れていくことになる.そして,老齢になるに従い,尻あげ反応(Ae)でオスを避けるようになるので,新たな生息地に落ち着くことになる.このように,オスの生活とメスの生活が組み合わさって,メスを初めの生息地から移動させるという構造を作り出し,それが,すばやく多くの卵をばらまいていく移動中のメスの特性とともに,不安定な環境をうまく利用するモンシロチョウの生活を構成している,と考えられる.