著者
前田 清 吉川 和彦 寺尾 征史 山本 祐夫 梅山 馨
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.87, no.7, pp.1525-1531, 1990
被引用文献数
12

大阪社会医療センターにて過去5年間に経験した10例の赤痢アメーバ症の臨床的検討を行つた. 性別は全例男性で, 平均年齢は41歳であつた. 既往歴では海外渡航歴は全例認められず, 7例 (70%)に男性同性愛好者を認めた. 各種血清学的検査ではアメーバ抗体 (ゲル内沈降反応) 100% (6/6), 梅毒反応 (TPHA法) 60% (6/10) の陽性率を呈したが, AIDS抗体は0% (0/3) であつた. 赤痢アメーバの検出率は便中で70% (7/10), 肝膿瘍膿汁中で50% (2/4), 直腸生検粘膜で25% (1/4) であつた.<br>以上, 本症の診断には血清アメーバ抗体の測定が有用で, また, 感染経路としてホモ行為による感染が疑われた.
著者
山本吉則 嘉戸直樹 鈴木俊明
雑誌
第49回日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
2014-04-29

【はじめに,目的】運動学習の初期には,速い運動よりも遅い運動を行う方が適しているといわれており,遅い運動では体性感覚が入力されやすい可能性がある。感覚機能の客観的な評価法として体性感覚誘発電位(SEP:Somatosensory evoked potential)が用いられている。運動中には,SEP振幅は低下することが知られておりgatingと呼ばれる。このgatingの機序としては,運動の準備や実行に関与する運動関連領野による求心性インパルスの抑制や,運動時の固有感覚入力や触圧覚入力と上肢刺激で生じた求心性インパルスとの干渉作用が推測されている。我々は先行研究において運動頻度の異なる手指反復運動がSEPに及ぼす影響について検討し,0.5Hzや1Hzの手指反復運動では体性感覚入力は変化しないが,3Hzの手指反復運動では3b野および3b野より上位レベルの体性感覚入力に抑制効果を示すと報告した。しかし,臨床ではさらに詳細な運動頻度を設定する必要があると考える。そこで本研究では,運動頻度を詳細に設定し,運動頻度の増加が体性感覚入力に及ぼす影響について検討した。【方法】対象は整形外科学的および神経学的に異常を認めない健常成人8名(平均年齢24.9±3.5歳)とした。SEPは安静条件(安静背臥位を保持する),注意課題条件(0.25,0.5,1,2,3,4Hzの頻度の聴覚音に注意を向ける),運動課題条件(0.25,0.5,1,2,3,4Hzの頻度の聴覚音を合図とした右示指MP関節屈曲・伸展の反復運動を3cmの範囲で実施する)において記録した。注意課題条件と運動課題条件の課題の順序はランダムとした。SEPの記録にはViking4(Nicolet)を使用した。SEP導出の刺激条件は,頻度を3.3Hz,持続時間を0.2ms,強度を感覚閾値の2~3倍とし,右手関節部の正中神経を刺激した。加算回数は512回とした。記録条件として探査電極を国際10-20法に基づく頭皮上の位置で刺激側と対側の上肢体性感覚野(C3´),および第5頸椎棘突起上皮膚表面(SC5),刺激側と同側の鎖骨上窩(Erb点)に配置し,基準電極を刺激側と対側の鎖骨上窩(Erb点),前額部(Fpz)に配置した。C3´-Fpz間からはN20とP25,SC5-Fpz間からはN13,同側Erb点-対側Erb点間からはN9の振幅および潜時を測定した。安静条件,注意課題条件,運動課題条件における振幅と潜時の統計学的比較にはDunnett検定を用いた。なお,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には,本研究の目的と方法,個人情報に関する取り扱いなどについて書面および口頭で説明し理解を得た後,研究同意書に署名を得た。なお,本研究は本学の倫理委員会の承認を得て行った。【結果】安静条件,注意課題条件では,各振幅に有意差は認めなかった。運動課題条件では,N9,N13振幅には有意差を認めなかったが,N20,P23振幅は安静時と比較して2Hz以上の運動頻度において有意に低下した(p<0.01)。安静条件,注意課題条件,運動課題条件の潜時には有意差を認めなかった。【考察】上肢刺激によるSEPの各成分の発生源として,N9は腕神経叢,N13は楔状束核,N20は3b野,P25は3b野より上位レベルの由来と考えられている。本結果より,運動課題条件による2Hz以上の運動頻度では,3b野および3b野より上位レベルで体性感覚入力が抑制されることが示唆された。この要因として,運動頻度の増加に伴う求心性インパルスと運動関連領野の影響を考えた。Blinkenbergらは,0.5Hzから4Hzの頻度での右示指のタッピング運動において,対側の第一次運動野,第一次体性感覚野,補足運動野や小脳が賦活し,さらに第一次運動野および第一次体性感覚野の血流と運動頻度には有意な正の相関を認めると報告している。本研究においても,2Hz以上の運動頻度では,右示指MP関節の屈曲・伸展に伴う触圧覚入力や固有感覚入力の増加,運動関連領野の活動の増加により3b野および3b野より上位レベルで体性感覚入力が抑制されると考えた。この体性感覚入力を抑制する役割として,西平らは感覚フィードバックを利用して適宜修正すれば期待した運動を実現できるが,その働き自体はゆっくりであると述べている。2Hz以上の運動頻度では,運動を円滑に遂行するために3b野および3b野より上位レベルで不必要な体性感覚入力を抑制する可能性がある。【理学療法学研究としての意義】体性感覚入力を促して感覚フィードバックを利用する際には,低頻度の運動を実施し,運動が習熟するに伴い低頻度の運動から高頻度の運動へ移行する必要がある。
著者
藤岡 周助 岡 香織 河村 佳見 菰原 義弘 中條 岳志 山村 祐紀 大岩 祐基 須藤 洋一 小巻 翔平 大豆生田 夏子 櫻井 智子 清水 厚志 坊農 秀雅 富澤 一仁 山本 拓也 山田 泰広 押海 裕之 三浦 恭子
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【背景と目的】ハダカデバネズミ (Naked mole rat、 NMR) は、発がん率が非常に低い、最長寿の齧歯類である。これまでに長期の観察研究から自然発生腫瘍をほとんど形成しないことが報告されている一方、人為的な発がん誘導による腫瘍形成に抵抗性を持つかは明らかになっていない。これまでにNMRの細胞自律的な発がん耐性を示唆する機構が複数提唱されてきた。しかし、最近それとは矛盾した結果も報告されるなど、本当にNMRが強い細胞自律的な発がん耐性を持つのかは議論の的となっている。さらに腫瘍形成は、生体内で生じる炎症などの複雑な細胞間相互作用によって制御されるにも関わらず、これまでNMRの生体内におけるがん耐性機構については全く解析が行われていない。そこで、新規のNMRのがん耐性機構を明らかにするため、個体に発がん促進的な刺激を加えることで、生体内の微小環境の動態を含めたNMR特異的ながん抑制性の応答を同定し、その機構を解明することとした。【結果・考察】NMRが実験的な発がん誘導に抵抗性を持つかを明らかにするため、個体に対して発がん剤を投与した結果、NMRは132週の観察の間に1個体も腫瘍形成を認めておらず、NMRが特に並外れた発がん耐性を持つことを実験的に証明することができた。NMRの発がん耐性機構を解明するために、発がん促進的な炎症の指標の一つである免疫細胞の浸潤を評価した結果、マウスでは発がん促進的な刺激により強い免疫細胞の浸潤が引き起こされたが、NMRでは免疫細胞が有意に増加するものの絶対数の変化は微小であった。炎症経路に関与する遺伝子発現変化に着目し網羅的な遺伝子解析を行なった結果、NMRがNecroptosis経路に必須な遺伝子であるRIPK3とMLKLの機能喪失型変異により、Necroptosis誘導能を欠損していることを明らかにした。【結論】本研究では、NMRが化学発がん物質を用いた2種類の実験的な発がん誘導に並外れた耐性を持つこと、その耐性メカニズムの一端としてがん促進的な炎症応答の減弱が寄与すること、またその一因としてNecroptosis経路のマスターレギュレーターであるRIPK3とMLKLの機能喪失型変異によるNecrotpsosis誘導能の喪失を明らかにした。
著者
山本 修弘 西田 芳伸 伏見 亮 國本 拓也 野村 裕之 中矢 健次
出版者
マツダ株式会社
雑誌
マツダ技報 (ISSN:02880601)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.219-224, 2019

<p>NAロードスターレストアサービスは,Webで申し込みいただいたお客様のお車を,近くの販売会社様で事前確認し,その後,広島の宇品工場の中にある(株)マツダE&Tの工房で作業する。そのプロセスは受付検査から始まり,分解,塗装,組立,完成検査,TUV(テュフラインランド社様)の認証を取得する。また,車両をレストアするだけでなく,お客様のクルマの分解前後の検査記録,記録写真,お客様のロードスターとの想い出,ロードスター誕生の記録などを収めたフォトブックをお渡しする。レストアサービスと同時に復刻部品の検討も行い,現時点で170部品を復刻した。レストアサービスとパーツ供給サービスを継続することで,愛するロードスターを長く乗り続けてもらえる環境と,古いクルマを大切にする自動車文化に貢献していく。</p>
著者
山本 圭
出版者
日本社会学理論学会
雑誌
現代社会学理論研究 (ISSN:18817467)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.86-98, 2009 (Released:2020-03-09)

ラディカル・デモクラシーという現代民主主義理論のー潮流には、それ自体の内部においても多様なパースペクティブが存在しており、そのなかでも本稿が焦点を当てるのは、エルネスト・ラクラウの政治理論である。ラクラウの政治理論はこれまで、今日のアカデミズムへの甚大な影響にも関わらず、主題的に論じられることはあまりなかった。したがって本稿の目的は、ラクラウの提示した民主主義理論の可能性を検証するためにも、彼がどのように自身の政治理論を醸成させていったかを明らかにすることである。そこで手掛かりとなるのが「主体」の概念である。つまり『ヘゲモニーと社会主義戦略』において主体は、構造内部の「主体位置」と考えられていたが、後に精神分析理論からの批判を取り入れることにより、それを「欠如の主体」と捉えるようになったのである。そしてこの主体概念をめぐる転回が、ラクラウ政治理論を脱構築との接合や普遍/個別概念の再考などの新しい展開へと促したことを示すことにしたい。最後にこの「欠如の主体」の導入が、ラクラウの民主主義理論をどのように深化させたのかを議論し、ラクラウが提唱するラディカル・デモクラシーが何たるかを明らかにする。
著者
山本 祐美子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第57回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.299, 2008 (Released:2009-02-04)

【はじめに】 当病棟は、循環器・血液内科の急性期病棟であり、緊急の処置を要する患者が多い。特に循環器内科においては、昼夜を問わず緊急入院が多く多忙を極める。また入院患者も高齢化している。このような状況の中で、頻回なナースコールも多く看護師はどのような思いでいるのかを知る目的で調査を行った。その結果、頻回なナースコールに対し看護師は感情をコントロールし対応している事が分かったので報告する。 【研究】 期間:平成20年3月1日~21日 対象:病棟看護師23名(卒1~2年5名、3~5年5名、6~9年8名、10年以上6名) 看護体制:チームナーシング、受け持ち看護師制 【方法】 頻回なナースコールへの対応に対する思いをアンケート調査により明らかにする。 【結果】 アンケート回収率は100%であった。 (1)「1時間にナースコールが何回なると頻回だと感じますか?」3~4回12名(52.1%)5回以上10名(30.4%)2回1名(8.7%) (2)「頻回と感じる時間帯は?」深夜帯16名(69.5%)準夜帯7名(30.4%) (3)「頻回だと感じた時、仕事は忙しいですか?」忙しい12名(52.2%)とても忙しい6名(26.1%)少し忙しい4名(17.4%)忙しくない1名(8.7%) (4)「ナースコールを頻回に押してくる患者の気持ちが理解できましたか?」よくできた1名 (8.7%)できた9名(39.1%)少しできた12名(52.1%)できない1名(8.7%) (5)「頻回にナースコールが鳴ってもにこやかに対応できましたか?」よくできた3名(13.0%)できた12名(52.1%)少しできた7名(30.4%)できない1名(8.7%) (6)「イライラする感情がどのくらい持続しますか?」5分~10分16名(69.5%)1時間以上5名(21.7%)15分~30分2名(8.6%) (7)「イライラしている時の気持ちの切り替え方法は?」(自由記載)深呼吸をする3名、患者の立場に立って考える6名、その他、仕事と割り切る、楽しい事を考える、気持ちの切り替えができないなどであった。 (8)「患者に対する感情は?」(自由記載)何かあったのか?8名、イライラ4名、不安なのかな?、また?、ため息、一度に用件を言ってほしいなどであった。 (9)「患者の話をきちんと聞けましたか?」については、聞けた23名(100%) 【考察】 アンケート結果から、ナースコールが頻回と感じる時間帯が深夜帯という回答が最も多く、頻回と感じるナースコールの回数は1時間に3~4回であったが、深夜帯はCCU への緊急入院や重症患者の頻回な観察にもかかわらず、頻回のナースコールにも自分なりの工夫で感情をコントロールして看護を行っていると考えられる。さらに、夜勤での身体的疲労に加え精神的緊張も重なるため少数意見ではあるが、イライラする感情が1時間以上持続する看護師や、気持ちの切り替えができない看護師もいた。忙しい中では当然の事だと考えるが、患者の立場を考えると、今後もいかに忙しい状況の中でも思いやりを持ってよりよい看護を実践してくかが今後の課題であると考える。また、頻回なコールの内容を検討し、対策をしていくことも重要である。 【まとめ】 (1)頻回なナースコールに対し看護師は、感情をコントロールし対応している事が明確になった。 (2)ナースコールが頻回と感じる時間帯は深夜帯であった。
著者
林 翔太 山本 雄平 中村 健二 田中 成典
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.781-782, 2015-03-17

過去の交際相手の写真等のコンテンツを嫌がらせ目的でSNSや画像投稿サイトに公開するリベンジポルノが問題視されている.これらのコンテンツは,削除申請があった場合,法律にしたがって削除されるが,適切に削除されたかの確認は申請者側で行う必要がある.しかし,これらのWebサイトでは,新しい投稿によりページの表示内容が更新されるため,削除申請したコンテンツが別のページへ移動している場合があり確認が困難である.そこで,本研究では,Webサイト中の動的な変化に着目し,削除対象と同一のコンテンツ探索手法を提案する.実証実験では,動的なWebサイトと同様の環境を再現し,コンテンツの探索可否を検証する.
著者
山本 和郎
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.68-77, 1989

The purpose of this paper reviewed the studies concerning community stress in the research field of social psychology, sociology, environmental-architectuatal psychology, community psychology and psycho-somatic medicine. First, the useful definition of community for studying on the stress of community is examined. Second, the evaluation studies on the aspects of community in terms of community satisfaction are main approach particulary in social psychology. This approach is able to grasp on which aspects of community the inhabitants are dissatisfied, however the paper insisted that it is needed which aspects of community the inhabitants want to improve toward the government of their community. The QOL contribution model (Murrell & Noris 1988) is introduced from the research field of community psychology for this purpose. Third, the studies concerning the effect of community on psycho-somatic health are examined. We should progress on more detail research including the elements of social support and coping resources interacting stress aspects.

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著者
山本 福壽
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.29-31, 2018-02-01 (Released:2018-03-23)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
井川 達也 勝平 純司 山本 澄子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.35-38, 2013 (Released:2013-04-11)
参考文献数
17

〔目的〕高齢者と若年者の平地歩行・階段昇降動作時の筋の同時活動の筋電図学的相違を分析し,その要因を明確にすることとした.〔対象〕高齢者と若年者を各々14名とした.〔方法〕筋電計測の対象はヒラメ筋,前脛骨筋とした.床反力計および表面筋電計を用い,平地歩行・階段昇降動作中に計測された位相ごとの筋活動を分析し,高齢者と若年者との間で比較した.〔結果〕歩行立脚後期および階段昇降の全周期において,高齢者は若年者に比べ前脛骨筋活動量が有意に高値を示した.〔結語〕高齢者は前脛骨筋活動量を増大させ,足関節の剛性を高めていることが示唆される.
著者
青山 幸生 牧 裕一 山本 達夫 広門 靖正 永田 勝太郎
出版者
公益財団法人 国際全人医療研究所
雑誌
全人的医療 (ISSN:13417150)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.22-28, 2020-01-25 (Released:2020-07-02)
参考文献数
13

全人的医療では,身体・心理・社会・実存レベルにおいて患者を理解することが必要であり,具体的方法論として,パソジェネシスand/orサルトジェネシス的アプローチを的確に,しかもタイムリーに実践できることが求められる.さて,全人的医療の主柱のひとつである,「患者固有の資源を見出し,それを活性化していく」ことは,まさにサルトジェネシス(健康創成論)の考え方であり,「資源」は具体的な「患者力」そのものであると考えられる.さらに患者がコヒアレンス感(sense of coherence; SOC,人生への対処姿勢,人生には意味があると思える感覚)をどの程度有しているかにより,資源をうまく活用し患者力をさらに高めていけるかの決め手となる.患者力を意識しながら,治療者,患者が相互主体的関係の中でともに資源(患者力)に気づいてそれらを活性化していくところに従来のパソジェネシス(病因追究論)単独でのアプローチとの大きな違いがある.今回,45歳女性で,抗うつ薬離脱時,その副作用により約10年間にわたり心身ともに苦しめられ,その間もともとあった多くの資源をベースに,家族や友人などの暖かい傾聴,受容,支えにより自身の患者力をさらに伸ばすことができた結果,ゆっくりではあるが夢に向かっての一歩を踏み出せた症例を経験したので合わせて報告したい.
著者
山本 さやか
出版者
北海道大学高等教育推進機構国際教育研究部
雑誌
日本語・国際教育研究紀要
巻号頁・発行日
vol.24, pp.84-103, 2021-03

本稿は、中級理解(運用)クラスにおいて、書評ゲーム「ビブリオバトル」をオンライン授業の中で実践した報告である。普段教室で行っている実践をオンライン上で行った結果および今後の課題について明らかにすることを目的としている。今期はオンライン授業でコミュニケーション機会が限られたため、学習者には通常の教室授業時よりさらに「相手の立場に立った発表」をするよう働きかけた。その結果、オンライン上ゆえの限界があるものの、学習者はそれぞれ工夫を凝らし相手の立場にたった発表を行うことができた。またこの活動を通じて日本語で本を読む楽しさを知り、聞き手との深い議論をすることができた。本実践の結果から、オンライン上であってもビブリオバトルは中級日本語学習者にとって総合的な日本語力訓練のための意義ある活動になることが示唆された。
著者
高木 章好 梶田 哲 豊田 典明 山本 明美
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.148-151, 2000-04-15

ウイルス性疣贅の一型である尋常性疣贅の中には液体窒素による凍結法などに反応せず,治療に苦慮する症例がある.今回我々はモノクロロ酢酸による腐食療法を行い,本法が安価で簡単,安全かつきわめて有効な治療と思われ報告する.方法は,少量のモノクロロ酢酸飽和水溶液を楊枝の先で直接疣贅に塗布し(疣贅上に付着した液を数回軽く突くようにして疣贅内に浸透させるが,周囲に流れないように気をつける),乾燥を確認し帰宅させ,処置した日は入浴をさける.原則とし1週間に1度の間隔で施行した.結果は,1998年1月から6月まで総数377例,男171例,女206例に施行し,最年少は2歳男児,最高齢は83歳女性であった.ほとんどの症例で著効または治癒し,不変,悪化は足底で1.8%,手背は0.6%であった.
著者
山本 美紀
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.283-294, 2005-03

ジョージ・オルチン(George Allchin 1852-1935)による幻燈伝道は、彼の日本での宣教師としての仕事において、賛美歌の仕事と並ぶ大きな活動である。彼の伝道旅行は地方にも及び、多くの人々にとって福音のみならず賛美歌や聖歌といった西洋文化に初めて生でふれる機会となっていた。本論文は、時に一〇〇〇人以上という動員数を誇った彼の「幻燈伝道集会 Lantern Lecture」に焦点を当て、特に彼のオリジナル作品「ほととぎす」「世は情け」を中心にとりあげる。この二つの作品は聖書のたとえ話「放蕩息子」「善きサマリア人」の翻案である。本論では、オルチンの幻燈伝道を追うことにより、彼独自の宣教観や興行的センスと同時に、一般社会のレヴェルにおける実質的な文化反応の諸相を明らかにする。
著者
津田 孝範 深谷 吉則 大島 克己 山本 明 川岸 舜朗 大澤 俊彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.430-435, 1995-06-15
参考文献数
18
被引用文献数
2 11

タマリンド種皮抽出物の抗酸化性を食品加工へ利用するための基礎について検討した.<BR>(1) タマリンド種皮抽出物は,リノール酸モデル系において強い抗酸化性を示し,クエン酸及びα-トコフェロールとの間に相乗効果を示した.<BR>(2) タマリンド種皮抽出物は,100℃,2時間の加熱に対して安定であり,pHの変化に対しては,pH 5.0で抗酸化性の低下が認められた.また塩化ナトリウム存在下では,10%溶液中でも抗酸化性は,70%以上の残存率を示した.<BR>(3) 実際の食用油脂としてラード及びコーンサラダ油にタマリンド種皮抽出物を添加したところ,いずれの油脂においても抗酸化性を示した.
著者
浦上 勇也 山地 康文 篠永 浩 河田 由紀子 久家 哲也 山本 和幸 飯原 なおみ
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.117-124, 2020-08-31 (Released:2020-09-02)
参考文献数
19

【背景】保険薬局において喘息患者に対する吸入指導を医師と連携して行うことは難しい.【目的】吸入指導連絡票を用いた,医療機関と連携した保険薬局における吸入実技指導が,臨床効果に与える影響を検討した.【方法】医療機関から吸入指導連絡票が発行された喘息患者に対し,薬剤師が吸入実技指導を実施した.吸入アドヒアランス,理解度・吸入手技,臨床効果指標(ACT,%PEF)を指標とし,指導1,2,3回目に測定して,その変化を全患者および年齢層別に解析した.【結果】解析対象31名において,全ての指標値は1回目に比べ2,3回目で有意に改善した.年齢層別では,60歳未満群では一部改善しない指標値があったが60歳以上群では全ての指標値が有意に改善した.【考察】吸入指導連絡票を用いた保険薬局における吸入実技指導は,医師と薬剤師の双方向の情報連携を可能とし,喘息コントロールを維持する上で有効である.
著者
廣重 優二 山本 敏充 吉本 高士 石井 晃
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.97-111, 2013 (Released:2013-07-30)
参考文献数
26

In general, the attachment of human hair sheath is considered as one of the most important factors in detecting STR genotypes from single hair samples. Thus, it is difficult to genotype STRs from naturally shed human hair samples using AmpFℓSTR Identifiler PCR Amplification Kit. In this study, we examined the conditions involved in determining STR genotypes from a single hair root of naturally shed human hair focusing on two kinds of commercially available DNA extraction kits; a QIAamp DNA Micro kit (Micro kit) and an ISOHAIR kit (ISOHAIR kit), and the relationship between the concentration of extracted DNA and the numbers of STR loci genotyped.   As a result, based on the protocol of DNA quantification adopted in the police labs in Japan, the DNA amounts were sufficient to quantify in approximately 28% or 36% of 72 naturally shed human hair samples using a Micro or an ISOHAIR kit, respectively. There was no significant difference in genotyping STRs between the two extraction methods. If a quantitative value was estimated based on a Ct (cycle threshold)-value, the extracted DNA was duplicated to amplify by 28 PCR cycles. Alternatively, if a quantitative value showed “ND (not detected)”, the extracted DNA was performed by duplicate PCR amplification for 32 cycles.   Consequently, in the case of a 28 cycle-amplification, when a quantitative value was more than 0.04 ng/μl, the genotyping result was obtained accurately at almost all loci by both extraction methods. On the other hand, in the case of a 32 cycle-amplification, there was a tendency that more accurate genotypes are obtained by a smaller size of an amplicon except a few loci. It indicated that the accurate genotyping rate should not depend only on the size of PCR products.   Therefore, when a DNA sample shows “ND” as an estimated value, more careful interpretation should be necessary to genotype by increasing PCR cycles to 32, or more strict making decision not to proceed to any PCR amplification should be performed.