著者
丸山 剛史 白石 崇人 内田 徹 船寄 俊雄 笠間 賢二 釜田 史 山本 朗登 大谷 奨 井上 惠美子 亀澤 朋恵
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、第二次大戦前日本の小学校・国民学校教員(以下、初等教員)検定制度の府県比較と中央の初等教員検定関係法令制定・改正過程に関する総合的研究である。府県比較に関しては、北海道、鳥取県、長野県、埼玉県、宮城県、山口県の道県を取り上げた。中央法令制定・改正過程の検討には『公文録』・『公文類聚』等の法令起草・成文関係史料等を用いる。本年度は学制発布から小学校教員検定等ニ関スル規則施行下の時期(1872-1900年)に限定し、検討を行った。検討の結果、次のことが明らかになった。1)府県比較に関して。北海道に関しては、資料調査により北海道道立文書館には初等教員検定関係の史料はほとんど残されていないことが判明したが、北海道教育会の機関誌に初等教員検定制度を活用した教員養成講習会に関する記事が掲載されているほか、合否判定基準等を記した検定内規も掲載されていることがわかった。検定関係規則は「小学校教員検定等ニ関スル細則」、「小学校教員検定細則」等の名称により北海道庁令で規定されていたことも判明した。長野県に関しては、資料調査により長野県立歴史館に『長野県報』、検定関係文書が所蔵されており、特に検定関係文書はこれまで非公開文書が多かったが、問い合わせにより非公開文書のほぼすべてが公開されることになった。また、検定関係規則は長野県令により「小学校教員検定等ニ関スル細則」、「小学校教員検定及免許状ニ関スル細則」、「小学校令及小学校令施行規則実施ニ関スル規程」等の名称により規定されていたことがわかった(他県に関しては文字数の制限により省略)。2)中央法令制定・改正過程の検討に関しては、国立公文書館には画期的な史料は見つけ出すことはできなかったが、府県教育会機関誌等に「小学校教員検定ニ関スル規則」制定過程に言及した記事があることがわかった。
著者
小田 麻代 山本 福壽
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.99-103, 2002-09-30
参考文献数
20

水耕栽培法を用い、培地に添加したアルミニウムがクヌギ(Quercus acutissima Carr.)、クスノキ(Cinnamomum camphora (L.) Sieb.)およびユーカリ(Eucalyptus viminalis Labill.)の2年生苗木の成長とバイオマス配分におよぼす影響を調べた。苗木は0、0.027、0.27、2.7、および27mMのアルミニウムを添加した改良Hoagland培地を用いて水耕栽培した。2.7mMのアルミニウム処理をした苗木は、バイオマスの増加が認められ、新根の形成による増加は他の器官での増加に比べて顕著であった。これらの結果から、樹木のアルミニウム耐性には根量増加が重要な役割を果たしているものと考えられた。
著者
小田 麻代 山本 福壽
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.79-84, 2008-04-30
参考文献数
18

我が国の森林土壌は,一般に弱酸性であり,特に針葉樹林では酸性土壌(pH4-5)が見られることがある.土壌酸性化の過程では,カルシウム,マグネシウム,ナトリウム,カリウムなどの陽イオン溶脱の後に,アルミニウムの滲出が生じ,それによる植物への毒性が指摘されている.作物の研究ではアルミニウム感受性の植物で,アルミニウムによるリン欠乏症などのほかに,根における細胞膜や細胞分裂への影響があることが知られている.一方で,アルミニウム耐性植物の報告もいくつかおり,チャノキやユーカリの一種は酸性土壌に適応し,アルミニウム解毒能があるとされている.我々の過去の実験では,シラカシ,ミズメ,ユーカリ(Eucalyptus viminalis),オオバヤシャブシ,クヌギ,クスノキなどでアルミニウムによる著しい発根が確認されている.そこで本研究では,クヌギ実生苗に及ぼす酸とアルミニウムの影響を,伸長成長,根の伸長,光学顕微鏡による根の細胞の観察,サイトカイニン様物質の分析により調べた.一年生のクヌギ実生苗をpH5.8の1/5濃度のHoagland培地で水耕栽培し,対照区とした.また,1/5濃度Hoagland培地にpH4.0及び2.7mMの酸とアルミニウム添加処理を行い,処理後4週間の伸長,肥大成長及び根の伸長量を計測した.同じ苗木から光学顕微鏡による観察用の根の切片を採取した.また,4週間後の各器官の乾物重量を測定した.その結果,2.7mMのアルミニウム処理によって,葉と茎の乾物重は減少した.しかしながら,対照区の根の伸長が8.5cmであったのに対し,2.7mMのアルミニウム処理区の根の伸長はおよそ31cmであった.また,2.7mMアルミニウム処理区の根の木部と師部の細胞数は増加し,水平方向の表皮細胞数も増加した.表皮細胞の直径と長さ,および表皮の幅も2.7mMアルミニウム処理区で増加し,根の直径と木部及び師部の幅も増加した.また,一部のサイトカイニン様物質にもアルミニウム処理によって増加したものがあった.これらのアルミニウムによるクヌギ実生苗の根量の増大は,根細胞にアルミニウムを蓄積し,地上部へのアルミニウム毒性の発現を抑制する機能であると予測している.
著者
平井 宏幸 長谷見 雄二 安井 昇 木村 忠紀 山本 幸一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.73, no.625, pp.489-495, 2008-03-30 (Released:2008-10-31)
参考文献数
5

Fire resistance tests have been conducted to develop wooden floor-beam assemblies of 45 minutes fire resistance for design loading conditions based on Japanese traditional post and beam construction. The tests were initiated with a 2m x 3m floor specimen consisting of six 1m x 1m small specimens of different specifications including four designs with beams exposed to the lower floor and two designs with ceiling panel beneath the beam to verify the integrity and thermal penetration through the floor panels. Beams to bear with the standard loading for domestic use and assemblies for 45 minutes standard fire exposure were then designed with the vertical deflection as the temporary index for compliance with the fire resistance standard. Large scale loaded fire tests were conducted on two designs, one with bare beam and another with ceiling panel, resulting in the achievement of 45 minutes prevention of flame and thermal penetration or buckling.
著者
藤本 昌紀 堀内 克啓 内田 裕也 杉浦 勉 山本 一彦 川上 正良 杉村 正仁
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 = Journal of Japanese Society of Oral Implantology (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.54-62, 2001-12-31
参考文献数
23
被引用文献数
2

An alveolar bone graft, followed by the insertion of threaded titanium endosseous (Brnemark System) implants, was performed in two patients with cleft lip and palate.<br/> One patient, with bilateral cleft lip and palate, underwent an iliac bone graft after orthodontic treatment. An oronasal fistula was simultaneously closed by bilateral labial flaps and a tongue flap. Brnemark System implants were placed for treatment of congenital missing lateral incisors, 17 months after the grafting. The other patient, with unilateral cleft lip and alveolus, underwent a chin bone graft. Although necrotic bone resulting from exposure of the palatal side of the grafted bone was removed, most of the grafted bone survived. Six months later, occlusal reconstruction using Brnemark System implants was performed. The postoperative course was uneventful in both cases. Moreover, these patients were satisfied with both esthetic and functional results, which improved the patient's QOL.<br/> These results indicate that endosseous implants combined with bone grafting are more reliable than conventional procedures for occlusal reconstruction in patients with alveolar cleft.<br/>
著者
山本 千鶴子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.93-103, 2007-03-01

ディラン・トマス(1914-1953)は南ウェールズのスウォンジーに生まれ、幼、少年時代はそこで過ごした。1934年にロンドンに住むようになったが、後に終生愛したウェールズに戻って、作品を生みだした。彼の詩は、初期、中期、そして後期と大別される。中期の詩は、詩人が幸せな幼、少年時代を過ごした地方の自然や四季などを通して体験した回想詩である。本稿では、中期の作品に当たる`Reminiscences of Childhood'(First Version,1943),`The Hunchback in the Park'(1941),`After the Funeral'(1938)をとりあげ、これらの作品中に描かれる<Sense of Place>について考える。トマスの心の故郷である<スウォンジー>、彼と共に成長したクムドンキン公園、彼が詩人として想像力豊かに歌っているその公園内でのせむし男と色々なものとの共感、そして田園的な環境のアン伯母の農場で体験した愛別離苦と彼自身が詩人としての復活などには、どのような<Sense of Place>が含まれているのか、本稿はこの点についての考察を目的とする。
著者
三池 忠 田原 良博 山口 由美 原田 拓 安倍 弘生 楠元 寿典 沼田 政嗣 蓮池 悟 山本 章二朗 児玉 眞由美 永田 賢治 林 克裕 下田 和哉
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.1362-1366, 2008 (Released:2008-09-05)
参考文献数
11
被引用文献数
1

症例は66歳男性.潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis; UC)を合併したC型慢性肝炎(chronic hepatitis(C); CH(C))に対して,インターフェロン(interferon; IFN)βの投与を行った.投与前の内視鏡的重症度は中等度であったが,投与開始後8週間で内視鏡的重症度は軽度となった.しかしIFN投与終了後は再び内視鏡的重症度は中等度となり,増悪を認めたため,IFN投与にて潰瘍性大腸炎が改善したと考えられた.
著者
山本 勉 小久保 芙美 神野 祐太 伊波 知秋 ヤマモト ツトム コクボ フミ ジンノ ユウタ イナミ チアキ Tsutomu YAMAMOTO Fumi KOKUBO Yuta JINNO Chiaki INAMI
出版者
清泉女子大学人文科学研究所
雑誌
清泉女子大学人文科学研究所紀要 (ISSN:09109234)
巻号頁・発行日
no.35, pp.95-167, 2014

東京都荒川区の社会福祉法人上宮会所蔵聖徳太子像は、像内銘により、文永七年(一二七〇)に仏師尭慶が製作したことの知られる鎌倉時代後期の規準作品である。本稿では、二〇一三年五月に大学院思想文化専攻開講科目「美術史学演習Ⅲ」における演習の一環で実施した調査の概要を、「伝来」「像の概要」「銘記および納入品」の三章に分けて報告し、さらに日本彫刻史上の意義や周辺の問題についても、「聖徳太子造像における位置」「形式と表現」「仏師尭慶について」の三章に分けて論述する。この像は、聖徳太子像の典型的形式のひとつである孝養太子像の初期作例として貴重である。銘記によれば不退寺(現在も奈良市に所在する不退寺にあたる可能性がつよい)の像として造られたもので、さらに十六歳の肖像であると明記し、その形式の原型となった像の存在が暗示されることも注目される。また、形式や表現の点で奈良・元興寺の善春作聖徳太子像と共通する点が多く、作者尭慶はその他の事績をふくめても、鎌倉中・後期の奈良で活躍した善派仏師と関係が深いこと、などが明らかになった。末尾には、近代以降のこの像の伝来に関する文献を関連史料として付載した。 The statue of Shotoku Taishi owned by the Jyogu Hospital Social Welfare Group (Jyogu Kai), Arakawa-ku, Tokyo is a standard work in the late Kamakura Period, known to be created by Busshi (sculptor of Buddhist statues) Gyokei in 1270 from the inscription in the statue. This paper reports an outline of an investigation conducted as a part of a seminar in "Art History Seminar III", a course offered by the Department of Cultural History, Graduate School in May, 2013, in three chapters; "History", "Outline of the Statue", and "Inscription and Items inside the Statue" and discusses its meaning in Japanese sculpture history and peripheral issues in three chapters; "Position in Creation of Shotoku Taishi Statues", "Style and Expression", and "Busshi Gyokei". This statue is valuable as an example of the early stage of statues of Kyoyo Taishi (considered to be a style of praying, being concerned about the condition of his father), which is one of typical styles of statues of Shotoku Taishi. According to the inscription, this statue was made for Futai-ji temple (this temple is likely to be Futai-ji still located in Nara city) and is clearly described as an image at 16 years old, and the suggestion of presence of a statue used as a model of the style attracts attention. The statue has many points in common regarding style and expression with the statue of Shotoku Taishi made by Zenshun in Gango-ji temple in Nara, and it was found out that Gyokei had a close relationship with the Zen-pa School Busshi who were active in Nara in the middle to late Kamakura period also in terms of other achievements. Materials relating to the history of this statue in the modern period and after are attached to the end of the paper.
著者
山本 久夫 法村 俊之 片瀬 彬
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.514-521, 1999-08-15 (Released:2011-03-10)
参考文献数
16

テレビジョンのCRT (cathode ray tube) 前面ガラス中に含まれている40K, トリウムおよびウランの放射能濃度を, γ線スペクトロメトリにより定量した。トリウムおよびウランについては, CRT製造者により約2倍も放射能濃度に差があることが示された。一方, 40Kについては, いずれのCRTガラスについても濃度差はほとんどなかった。また, 得られたγ線スペクトルからCRT前面における線量を算定した結果, トリウムおよびウラン濃度が最も高いガラスでも表面から20cm以上離れれば自然放射線線量の1/10以下となり, 無視できるものであることがわかった。
著者
吉永 明弘 寺本 剛 山本 剛史 熊坂 元大
出版者
江戸川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

学術雑誌『環境倫理』を発行した。2016年度に、小平の住民運動、福島第一原発事故後の双葉町長の避難に関する諸問題、吉野川河口堰に関する住民投票について、キーパーソンにインタビューを行い、ローカルな環境倫理を現場から掘り起こすことを試みた。それらを今年度は原稿にまとめ、解題もつけて雑誌に掲載した。並行して、勁草書房より、吉永明弘『ブックガイド環境倫理』と吉永明弘・福永真弓編『未来の環境倫理学』を刊行した。これらによって、過去の環境倫理学や環境論をレビューすること、最先端の環境倫理学の議論を紹介すること(原発に対する応答、世代間倫理、環境徳倫理、未来倫理、気候工学、環境正義、人新世における倫理など)が達成された。1年間に3冊の本を刊行することができ、関係者に献本したところ、たいへん好評だった。
著者
中嶋 秀治 山本 博史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.2681-2688, 2001-11-15
参考文献数
15
被引用文献数
2

自然な話し言葉での対話においては,1回の発話(または発声)で複数の文が話されることがしばしば起こる.音声認識では,1回の発話を単位として処理が行われるが,複数の文を含んだ発話をそのまま1つの単位にして理解や翻訳や要約などの言語処理を行うことは困難であり,音声認識の後か言語処理の前に発話を文などへ分割することが必要となる.このため,本稿では通常の単語と同様に文境界としての句点を音声認識することによって複数の文が含まれる発話を各文に分割する手法を提案する.評価実験の結果,発話から文への分割性能の点では,最高で再現率94%適合率100%という性能が得られた.また,言語モデルに句点を含むか否かの違いによる句点以外の単語認識率の劣化はないという結果が得られ,本手法の有効性が確認された.In spontaneous dialogs, there are utterances containing several sentences.Although speech recognizers process utterances one by one,language processing such as understanding, translation or summarizationneeds to split utterances into sentences.This paper presents utterance splitting by recognizingperiods, i.e., sentence boundaries, as well as usual words.We evaluate the performance of the model in terms of splitting and word (except for periods) accuracy. Experimental results show high recall/precision rates of splitting (the highest scores are 94%/100%) and no reduction of other word accuracy, proving the applicability of the proposed method.
著者
山本 哲生 山崎 裕司 山下 亜乃 片岡 歩 中内 睦朗
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0122, 2017 (Released:2017-04-24)

【目的】変形性膝関節症は,病期の進行に伴い疼痛,変形,関節拘縮,筋萎縮等の症状が進行し,歩行能力や動作能力の低下が生じる。一方,歩行能力は下肢筋力や立位バランスによって規定されることが知られ,適切な運動療法や日常生活指導によって筋力や立位バランス能力が維持された場合,病期が進行した変形性膝関節症患者でも歩行能力が維持される可能性がある。本研究では,変形性膝関節症の病期と身体機能が歩行能力に及ぼす影響について検討した。【方法】対象は60歳以上で変形性膝関関節症を有し,独歩での通院が可能な症例196名(男性13名,女性182名,年齢75.5±6.3歳)である。疾患内訳は,両変形性膝関節症112名,片側性変形性膝関節症84名であった。病期分類は,横浜市大分類を用いGrade1:3名,Grade2:41名,Grade3:108名,Grade4:42名,Grade5:2名で,両変形性膝関節症患者は左右で重度な側を採用した。体重,年齢,歩行速度,Functional Reach Test(FRT),膝伸展筋力(アニマ社製 徒手筋力計測器μTasF-1)の5項目を調査・測定した。膝伸展筋力は左右の平均値を体重で除したものを採用した。分析はまず上記計測項目で歩行速度と関連の強い項目を重回帰分析で算定した。病期はG1.2,G3,G4.5に分類した。歩行速度が1.0m/secを下回った者を不良群,それ以外を良好群とし,病期別にその割合を比較した。また良好群,不良群での身体機能の差を比較した。最後に病期別に歩行速度が1.0m/secを下回る症例の膝伸展筋力とFRTのcut-off pointをROC曲線によってもとめた。【結果】重回帰分析の結果,歩行速度との間に有意な偏相関係数を認めたのは,膝伸展筋力(r=-0.40)とFRT(r=-0.32)であった。病期別にみた歩行速度不良群の割合は,G1.2 11%,G3 19%,G4.5 25%であり,重症度が高い群で多い傾向であったが,統計学的には有意ではなかった。各病期における膝伸展筋力は良好群と不良群の順に,G1.2では0.35kgf/kg,0.23kgf/kg,G3では0.36kgf/kg,0.24kgf/kg,G4.5では0.30kgf/kg,0.24kgf/kgであり,いずれも不良群で低値を示した(p<0.05)。同様に,FRTは,G1.2では28.8cm,20.8cm,G3では26.6cm,22.2cm,G4.5では24.8cm,21.4cmであり,いずれも不良群で低値を示した(p<0.05)。病期別のcut-off pointは,G1.2で膝伸展筋力0.26kgf/kg以上,FRT24.0cm以上,G3は膝伸展筋力0.25kgf/kg以上,FRT25.0cm以上,G4.5は膝伸展筋力0.25kgf/kg以上,FRT24.5cm以上と病期による差を認めなかった。【結論】変形性膝関節症の重症度と歩行速度には明確な関連は認めなかった。いずれの病期においても歩行速度不良群の膝伸展筋力,立位バランス能力は低く,理学療法による身体機能の維持が変形性膝関節症患者の歩行能力を維持するうえで重要なことが明らかとなった。