著者
山本 めゆ
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.103-119,184, 2012

There were at most 800 Japanese residents living in South Africa during the era of apartheid. They were predominantly expatriate employees sent from Japan who were permitted to reside in white residential areas. The existence of this resident population group who would normally have been classified as "non-white" in terms of South Africa's race categories under apartheid led to the Japanese being described as 'honorary whites'. In this paper, the 'honorary white' status will be discussed, with a focus on what is called the 'looping effect' (Hacking), or interactions between a concept that classifies people and those who are classified. For this study, 15 Japanese people who had resided in South Africa under apartheid were interviewed, and documentary materials were also collected both in Japan and in South Africa. These data were used, first, to create a general history of the status of the Japanese in South Africa from the beginning of the 20th century. The study follows the genesis of the title 'honorary white' in the early 1960s, and considers the influence of the concept on the Japanese and Chinese communities at that time. Finally it describes the way in which the title 'honorary white' affected the identities and actions of the Japanese residents in South Africa, and at the same time how their actions in turn constructed the image of 'honorary whites'.
著者
小川 祐樹 山本 仁志
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_178-3_186, 2014-07-25 (Released:2014-09-10)

本研究では,人は身近な近接他者や集団の多数派から影響をうけるという関連研究をふまえ,Axelrodのシミュレーションモデルを拡張し,集団の集約情報と相互作用するモデルを導入した.そして提案モデルをもとにシミュレーションを行うことで,集約情報が社会における意見や嗜好の分布多様性に与える影響を検討した.シミュレーションの結果,集約情報は文化種類の多様性の維持において有効であるが,集約情報の範囲によってその効果に違いがみられることがわかった.具体的には,局所的・中域的・大域的の異なる範囲における集約情報の効果を分析し,中域的範囲の集約情報が,文化の多様性を維持するうえで有用であることがわかった.
著者
山本 芳明
出版者
学習院大学
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.358-336, 2007

葛西善蔵は、平野謙以来、破滅型の私小説作家の代表的存在として位置づけられてきた。しかし、これは晩年の作品を中心に考察されてきた研究の偏向によるものである。「子をつれて」で文壇的地位を確立して以降の葛西の作品世界を詳細に検討していけば、自らの破滅的な人生を忠実に描くタイプの私小説に分類できない多様な世界が浮かびあがってくる。葛西を連想させる人物の登場しない作品あり、代作あり、社会主義への関心を示すものあり、女性嫌悪が描かれたものや心境小説風のものもある。何より注目されるのは、自虐的に自己を語るように見せて他者をデフォルメして描くことによって、自己を正当化し卓越化しようとする作品だろう。また、葛西は不能や肺結核などの決定的ともいえる自己表象をその場しのぎで運用する傾向もあった。こうした一貫性のない混乱した作品世界を同時代の評者は厳しく批判していた。つまり、平野らが作り出した〈私小説作家〉としての葛西善蔵は、一貫性の欠如した作品世界と同時代の厳しい評価を不可視の領域に封じ込めることによって成立したのである。そのことは〈私小説〉言説の虚構性とその基盤の不安定さを物語っている。
著者
山本 聡 辻 博治 原 信介 田川 泰 綾部 公懿 劉 中誠 澤田 貴裕 白藤 智之 田村 和貴 岸本 晃司 新宮 浩 赤嶺 晋治 岡 忠之
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.493-496, 1997
参考文献数
5
被引用文献数
4

鈍的外傷による頸部気管完全断裂の2手術例を経験した。症例1は21歳, 男性。バイク乗車中転倒, チェーンにて頸部受傷。第1と第2気管軟骨間において完全断裂, 両側反回神経と食道の合併損傷も認めた。症例2は55歳, 男性。ショベルカーのアーム部にて前胸部, 頸部を受傷。第1と第2気管軟骨間において完全断裂, 両側反回神経と頸髄の損傷を認めた。両症例とも気管損傷に対しては気管端々吻合術を施行した。鈍的外傷による気管完全断裂症例は受傷早期の気道確保を確実に行えば, 比較的救命率の良い外傷であると考えられた。また, このような症例では気管のみではなく他臓器の合併損傷の可能性もあることが示唆され, 術中術後の充分な検索が必要と思われた。
著者
藤井 秀則 山本 広幸 田中 猛夫 谷川 允彦 村岡 隆介
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.1681-1686, 1992-07-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

近年腹部超音波検査の進歩と普及により肝嚢胞の診断が容易となり,発見の機会は増加している.当院における1990年1年間の腹部超音波検査件数は約5,100件で168例(3.3%)に肝嚢胞を認め,大きさでは直径4cm以下がほとんどで8cm以上は3例であった.巨大肝嚢胞例2例に対し超音波ガイド下によるエタノール少量注入を施行し良好な結果を得た.自験例を含めた本邦報告例66例の検討では,注入薬剤はエタノール62例,塩酸ミノサイクリン4例であった.注入方法としては超音波ガイド下に7~8Frのピッグテールカテーテルを嚢胞内に挿入して行うのが一般的で,注入後10~30分の体位変換を行い排液する.エタノール注入例を検討すると, 1回の注入量は少量にとどめ,注入後は排液を充分に行い,持続ドレナージを行い2回あるいは3回以上の反復注入をするのが最適と考えられた.
著者
山本 雅史 冨永 茂人
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.136-139,

与論島における主要な在来カンキツが6種類確認できた。それらは,1)イラブオートー(Citrus kerajivar. kabuchii, カブチー類縁種), 2)ユンヌオートー(C. oto, オートー), 3)ウンジョウキ(C. nobilis, クネンボ類縁種), 4)イシカタ(C. rokugatsu, ロクガツミカン), 5)キンカン(C. depressa, シイクワシャー), 6)ノボルミカン(C. sp., 雑柑タイプ)である。このうち,ウンジョウキとノボルミカンは,与論島において偶発的に生じたものと考えられる。残る4種類は南西諸島の他の島でも同じ種類のものが栽培されている。しかし,いずれの在来カンキツの呼称も他の島とは異なっており,これらのカンキツが近年導入されたものではなく,古くから与論島で栽培されてきたことがうかがえた。Six citrus accessions grown in Yoron island were classified as follows; 1) Irabu otou (Citrus keraji var. kabuchii, Kabuchii relative), 2) Yunnu otou (C. oto, Otou), 3) Unjouki (C. nobilis, Kunenbo relative), 4)Ishikata(C. rokugatsu, Rokugatsumikan), 5) Kinkan (C. depressa, Shiikuwasha), 6)Noboru mikan (C. sp., hybrid type). Unjouki and Noboru mikan were considered to be chance seedlings arisen in Yoron island. The other four accessions were observed in the other islands of Nansei archipelago. Since the names of all accessions in Yoron island were differed from those of other islands, it could be considered that there has been long history of cultivation of local citrus accessions.
著者
浪花 志郎 西山 和光 原 曜子 白石 達雄 山本 俊比古 内田 寛
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.1022-1026, 1982-12-01 (Released:2012-03-21)
参考文献数
9

パシフラミン(パッシフローラエキス製剤)を皮膚そう痒症を始めそう痒を伴う各種皮膚疾患計29例に投与し, その鎮静作用がもたらす止痒効果について検討した結果, 一日量3錠ないし6錠の投与で, 比較的早期に止痒効果が発現し, 併用された抗ヒスタミン剤, マイナートランキライザー, またはステロイド剤の有する止痒効果に補助的に作用する傾向がうかがわれた。副作用を示した症例は1例も認められなかつた。従つて, 上記薬剤による止痒効果が不十分であつたり, 副作用のために投与継続が困難な症例では, パシフラミンによる鎮静的止痒効果を期待して補助的に用いることは有用と考えられる。
著者
山本 達也
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
vol.445, pp.133-139, 1993-03-30 (Released:2017-12-25)

This paper researches about development of dervish lodge that relates with popularization of Sufism. Various bektash dervish lodges in Turkiye were analysed in this research. Popularization of Sufism had two steps. First, Sufism joined men came to the stage, constructing tombs, meeting and pilgrimage rooms which had axis and Islamic proportion were built. Second step was patterned training (style of whirling dance). Beside to whirling dance room, library, Turkish bath and madrasa were constructed. In these buildings Islamic proportion and axis couldn't seem except the axis through Mecca.
著者
高取 克彦 梛野 浩司 山本 和香 下平 貴弘 森下 慎一郎 立山 真治 庄本 康治
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.352-356, 2003
参考文献数
15
被引用文献数
2

変形性膝関節症にて全人工膝関節置換術(total knee arthroplasty:以下TKA)を受けた症例に対して,深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:以下DVT)の予防を目的とした下肢の神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation:以下NMES)を実施し,その臨床的実用性を検討した。対象は,本研究に対して同意を得られた16例(男性2名,女性14名,平均年齢68.6 ± 8歳)とした。NMESは術直後から離床まで継続的に実施し,その臨床的実用性を以下の3項目(1.電気刺激に対するコンプライアンス,2.刺激強度の定常性,3.電極の皮膚への影響)で評価した。DVTの有無については,腫脹,Homan's徴候などの理学的所見と凝固線溶系マーカーのFDP D-dimer(以下D-dimer)値によるスクリーニング評価にて実施した。刺激に対するコンプライアンスは15例が手術直後からドレーンチューブ抜去までNMESが実施可能であり良好であった。1例のみ刺激に対する不快感によりNMESを一時中断した。刺激強度は麻酔の影響,発汗などにより定期的な調節が必要であった。電極の皮膚への影響は1例のみ皮膚の発赤が認められた。DVTスクリーニング評価では明らかな下肢腫張が3例,腓腹筋把握痛が3例に認められたが,D-dimer値は全症例正常範囲内であった。今回の結果から,本法は刺激強度の定常性や皮膚への影響などの課題を改善することで,臨床的実用性が獲得できるものと考えられた。
著者
山本 雅史 久保 達也 冨永 茂人
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.476-478, 2005-11-15
参考文献数
12
被引用文献数
2

わが国における主要中晩生および香酸カンキツ染色体のクロモマイシンA_3(CMA)染色を行った.染色体はCMA(+)バンドの有無および位置から5種類に区分できた.すなわち, CMA(+)をA: 両端および動原体近傍に有する, B: 一方の端部と動原体近傍に有する, C: 両端に有する, D: 一方の端部に有する, E: CMA(+)がない, である.各種はこれらのうち4, 5種類の染色体を有し, 独自のCMAバンドパターンを示した.ハッサクでは1A+1C+8D+8E, ヒュウガナツでは2A+2C+5D+9E, '川野なつだいだい'では1A+2C+7D+8E, '宮内伊予柑'では1A+1B+1C+8D+7E, タンカン'垂水1号'では1A+1B+1C+8D+7E, カボスでは3B+2C+5D+8E, スダチでは1B+2C+9D+6Eおよびユズ'山根'では2B+1C+11D+4Eであった.以上の結果, 本研究においても近縁の種間では似通ったCMAバンドパターンが観察された.
著者
浜田 亮 吉藤 和久 堤 裕幸 堀 司 吉川 靖 山本 晃代 寺田 光次郎 山本 大 足立 憲昭 浅沼 秀臣 小田 孝憲
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.153-156, 2017

<p>血友病は先天性血液凝固障害のなかでは最も頻度の高い疾患であるが,母体が血友病保因者の場合の分娩方法について明確な指針は定められていない.今回我々は経膣分娩時のストレスに起因すると考えられた頭蓋内出血をきたした症例を経験したので報告する.母親の実弟が重症型血友病Aであり,遺伝子診断でイントロン22の逆位を認めていた.祖母および母親は確定保因者であった.本児は胎児エコーで男児と判明しており器械分娩禁止の方針とした.正期産で経膣分娩で仮死なく出生し,出生直後は皮膚に出血症状はなく頭部エコーでも異常所見は認められなかった.生後19時間のエコー再検査で両側脳室の拡大認め,CTでは右小脳半球を中心に40×30 mmの血腫を認めた.第VIII因子製剤の投与により保存的治療を行い,血腫は拡大せずにその後自然消失した.現在2歳,神経学的異常を認めない.</p>