著者
山田 晶
出版者
京都大学
雑誌
京都大學文學部研究紀要 (ISSN:04529774)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-95, 1971-09-20

この論文は国立情報学研究所の学術雑誌公開支援事業により電子化されました。
著者
三田村 理恵子 小山田 正人 河内 智子 小幡 明雄 Rieko MITAMURA OYAMADA Masahito KOUCHI Tomoko OBATA Akio 藤女子大学人間生活学部食物栄養学科・藤女子大学大学院人間生活学研究科食物栄養学専攻 藤女子大学人間生活学部食物栄養学科・藤女子大学大学院人間生活学研究科食物栄養学専攻 キッコーマン株式会社研究開発本部 キッコーマン株式会社研究開発本部 Department of Food Science and Human Nutrition Faculty of Human Life Sciences and Division of Food Science and Human Nutrition Graduate School of Human Life Science Fuji Women's University Department of Food Science and Human Nutrition Faculty of Human Life Sciences and Division of Food Science and Human Nutrition Graduate School of Human Life Science Fuji Women's University Research and Development Division Kikkoman Corporation Research and Development Division Kikkoman Corporation
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.27-34, 2014-03-31

本研究は健常な女子大学生を対象とし、乳酸発酵野菜入り野菜・果実混合飲料の摂取による排便と皮膚水分への影響を明らかにすることを目的とした。インフォームドコンセントの得られた健常な女子大学生53名(19~22歳)を対象とし、非摂取期間2週間(観察期)、試験飲料(1缶190g/日)摂取期間2週間(飲用期)の合計4週間、排便状況、食事内容、排便に影響を及ぼす可能性がある特記事項について毎日記録を行った。Corneometreによる皮膚水分量の測定と食物摂取頻度調査を観察期、飲用期にそれぞれ1回ずつ行った。飲用期終了後には事後アンケート調査を行い、自覚症状を評価した。被験者53名のうち2名を解析除外者とし、51名を解析した結果、飲用期では観察期と比較して、排便回数(13.5±4.5から14.4±5.0)と排便量(15.7±6.9から17.3±8.0)が有意に増加した。また、本飲料摂取後では「排便後に爽快感が得られる」との回答が増加し、「形の良い便が毎日出るようになった」、「便が柔らかくなったのが実感できた」などの便通改善効果が得られた。皮膚水分量(49.0±9.67から56.6±9.73)も有意に増加した。食事調査では、観察期、飲用期で試験食品摂取分を除いた場合では栄養価等に差が見られなかった。以上の結果より、乳酸発酵野菜入り野菜・果実混合飲料の摂取が、排便や皮膚水分の改善に役立つことが示された。
著者
八井田 朱音 大塚 理子 山田 安咲紀 中野 和彦 松井 久美 関本 征史 稲葉 一穂 伊藤 彰英
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7.8, pp.341-350, 2020-07-05 (Released:2020-11-07)
参考文献数
25
被引用文献数
2

キレート固相抽出法を併用するICP-MS法により,多摩川の中流域から河口域までの15地点で採水した河川水試料を分析し,Sc,Y及びPmを除く14元素の希土類元素を定量した.分析結果をPAAS(Post-Archean Australian Average Shale)で規格化して希土類元素存在度パターン(希土パターン)を作成して考察したところ,多摩川では中流域の下水処理放流水合流地点から河口域までの試料で,Gdの存在度が隣接する他の希土類元素よりも明らかに高いGdの濃度異常が定常的に確認された.この濃度異常は,MRI造影剤として人体に投与されたGd化合物により引き起こされることが確認されており,Gd濃度を約20〜25年前の文献値と比べると,中流域と河口域の2地点について,それぞれ2〜4倍,3〜4倍の濃度であった.したがって近年,多摩川河川水においてはGd濃度が上昇していることが明らかになった.さらに,Gdの濃度異常について国内外の他の文献値と比較するために,Gdの濃度異常をGd異常度として数値化し,多摩川の潜在的人為汚染の現状を評価した.その結果,本研究で分析した多摩川中流域河川水のGd濃度及びGd異常度の最大値は,これまでの国内河川水の文献値と比較して最も高く,国外河川水のすべての報告値を含めて比較しても,ドイツのハベル川に次いで高いことが明らかになった.
著者
山田 幸正
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.61, no.482, pp.199-210, 1996
被引用文献数
1 2

This paper refers to a few observations on plan and structure of the funduqs in the Medina of Fez, reporting some results based on a field survey in July and August, 1988. Paying attention to their forms composing the courtyard-facade, 63 existent funduqs can be classified five architectural typos as follows : (1) Gallery type ; with colonnaded galleries surrounding the courtyard on the second and third floors, (2) Terrace type ; with open-terraced passageway around the courtyard on the second floor. (3) Composite typo ; with colonnaded gallery on the second floor and open-torraced passageway on the third floor, (4) Wall type ; having neither the gallery nor the terrace on the upper floors, the wall facing the. courtyard, (5) One-story type ; having no upper floor. It is the Gallery type (33 examples) that characteristic of funduqs in Fez. Two-story gallery type is simpler in design and more practical in use. Three-story gallery type might assume a significant function, distinguished from the others.
著者
羽崎 完 藤田 ゆかり 山田 遼
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab0440, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 筋連結とは,隣接するふたつの骨格筋において,筋膜,筋間中隔などの結合組織や互いの筋線維が交差して接続していることを指し,全身のいたる所で観察できる。Myersは,個々の筋連結による筋の全身におよぶ連続したつながりを経線としてとらえ,ほとんどの運動が経線に沿って拡がるとしている。つまりこれは,ある筋が収縮したとき,その筋に連なる筋にまで活動が伝達されることであり,この概念は広く臨床に応用されるようになっている。しかし,筋連結や経線についての概念は解剖学的な考察や経験に基づいており,筋の機能的な連結について明確にされていない。我々は,Myersの述べる経線のひとつであるラセン線上にある前鋸筋と外腹斜筋に着眼し,両筋が機能的に筋連結していることを明らかにし,第46回日本理学療法学術大会においてその成果を報告した。本研究では,その延長線上にある菱形筋と前鋸筋も機能的に連結しているか否かを明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は,健常成人男性10名(平均年齢21.2±1.8歳,身長170.4±9.7cm,体重65.6±26.2kg)とした。測定は,前鋸筋に負荷を与えたときの前鋸筋と菱形筋の筋活動を導出した。測定肢位は,高さの調節できる椅子に膝関節90°屈曲位になるように座らせ,肘関節伸展位にて肩関節90°屈曲位,肩甲骨最大外転位とした。この肢位で,前腕遠位部に自重(負荷なし),2kg,4kg,6kgの負荷を加え,それぞれ5秒間保持させた。測定筋は第6肋骨前鋸筋,第8肋骨前鋸筋,菱形筋とした。第6および第8肋骨前鋸筋は肋骨上で触診できる位置に,菱形筋は肩甲骨最大外転位で,僧帽筋下部線維外側縁,肩甲骨内側縁,肩甲骨下角から第5胸椎棘突起を結んだ線でできる三角形内に電極を貼付した。なお、電極が正確に菱形筋に貼付できているか,超音波画像診断装置(日立メディコ社製Mylab25)を用いて確認した。筋活動の測定は,表面筋電計(キッセイコムテック社製Vital Recorder2)を用い,電極間距離1.2cmのアクティブ電極(S&ME社製)にて双極導出した。筋活動の解析は,自重時の平均筋活動量を1として,各負荷における筋活動量の変化率を算出し行った。第6および第8肋骨前鋸筋と菱形筋の関係は,Pearsonの相関係数を求め検討した。さらに,第6肋骨前鋸筋と第8肋骨前鋸筋のどちらがより菱形筋と関係が強いか検討するために重回帰分析を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者の個人情報は,本研究にのみ使用し個人が特定できるような使用方法はしないことや研究の趣旨などの説明を十分に行った上で,対象者の同意が得られた場合にのみ,本研究を実施した。【結果】 Pearsonの相関係数を求めた結果,菱形筋と第6肋骨前鋸筋との相関係数は0.791,第8肋骨前鋸筋との相関係数は0.817となり、いずれも有意な強い正の相関が認められた(p<0.01)。重回帰分析の結果,第6肋骨前鋸筋の標準偏回帰係数は0.356,第8肋骨前鋸筋の標準偏回帰係数は0.517となり,第8肋骨前鋸筋にのみ有意な影響が認められた(p<0.05)。【考察】 五十嵐らは解剖実習献体を用いて,菱形筋と前鋸筋が肩甲骨内側縁で線維性結合組織で連結されていることを肉眼にて確認している。また,竹内らも解剖実習献体の大菱形筋付着部を観察し,それが前鋸筋筋膜に折りたたまれるように接着していることを確認している。このように菱形筋と前鋸筋が解剖学的に連結していることは明白であり,菱形筋の筋活動の変化率と前鋸筋の変化率が強い相関を示した今回の結果から,機能的にも連結していることが明らかとなった。一般的に菱形筋は肩甲骨の内転・下方回旋に,前鋸筋は外転・上方回旋に作用し,両筋は拮抗筋の関係にあるとされている。その一方でPatersonが経験に基づき推察しているように菱形筋と前鋸筋は共同筋として肩甲骨の安定に作用していることが知られている。今回の結果は,この推察を科学的に証明した。菱形筋と前鋸筋は,解剖学的にも機能的にもあたかもひとつの筋のように肩甲骨の安定に作用すると考える。また重回帰分析の結果から、第6肋骨前鋸筋よりも第8肋骨前鋸筋の方がより菱形筋との関係が深い傾向が認められた。これは,第6肋骨前鋸筋よりも第8肋骨前鋸筋の方が菱形筋の走行の向きに近似しており,肩甲骨の安定に対して共同筋としてより機能しやすいためと考える。Myersもラセン線は前鋸筋のより下部を通過するとしており,下方の前鋸筋の方が菱形筋との関係が深いことが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果は,不安定な肩甲骨に対して前鋸筋のみにアプローチするのではなく,菱形筋と前鋸筋をひとつの筋としてアプローチする必要があることを示唆している。
著者
山田 光胤
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.505-518, 1996-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
17

医療は専ら西洋医学を修めた医師によって行うこととし, 漢方を学んでも医師の資格は与えないという明治政府の処置によって, 明治16年 (1883) 以降漢方医学を学ぶ者は次第に絶え, 我が国の伝統医学・医療は絶滅に瀕した。これは, 日本人の特に当時の政府人の西洋崇拝, 伝統蔑視の思想が強く関与しているものと思われた。このような風潮は, 現在でも引き継がれていると考えられる。しかし, 幕末から明治にかけて, 日本漢方を西洋医学と対比するに, 外科手術の面は別として, 内科的治療のレベルは, むしろ日本漢方が優れていた。この具体的な症例を, 浅田宗伯は著書『橘窓書影』の中に記録している。そのような時流の中で, 東洋医学を学んで医師となった和田啓十郎は, 漢方医学の有用性・重要性を唱えて, 明治43年 (1910),『医界之鉄椎』を著した。この書は実に, 漢方医学復興の一粒の種子となった。金沢医専出身の医師・湯本求眞は, この書によって啓発され, 和田門下となって生涯を漢方医学の究明と, それによっての患者の治療に尽し, 昭和2年,『皇漢医学』3巻を著した。この書は, 西洋医学の知見を混えて, 傷寒論, 金匱要略の解釈を中心にした, 漢方最初の現代語による解説書である。湯本の『皇漢医学』は, その後の我が国に於ける漢方医学の復興に, 大きな影響を及ぼしたのみでなく, 中国に於ても, その伝統医学の温存に力を与えたといわれる。ともあれ昭和年代初頭では, ごく僅かな生き残りの漢方医と数名の医師によって, 漢方医学が伝承されていたが, やがて, 漢方復興の機運が, 次第に醸成され, 種々な運動が起こった。昭和11年 (1936), 当時新進の漢方医学研究者が志を同じくし, 漢方医学復興を目指してその講習会を開催した。偕行学苑と名付けられたが, 翌年より拓大漢方講座と名を改めた。この漢方講座は, 昭和19年 (1944) 迄8回, 毎回約3ヵ月乃至4ヵ月間ずつ開催され, 第2次大戦後の昭和24年 (1949) に, 第9回紅陵大学漢方講座として15日間開催された。通算9回, 700名以上の有志が聴講し, 中からはその後, 漢方医学界の柱石となる人物も輩出した (筆者も, 戦後の第9回講座を, 医学生の身分で聴講した)。第2次大戦前の昭和16年, 南山堂より『漢方診療の実際』という書が発行された。この書は, 従来の「証」に随って治療する漢方の本質から一歩踏み出して, 現代医学的病名に対して, 使用した経験のある漢方処方を列挙して解説している。当時とすれば画期的な漢方医学の解説書であった。そして, 第2次大戦後, 昭和29年 (1954) に改訂版が発行された。さらに昭和44年 (1969) に発行された『漢方診療医典』(南山堂) は, 漢方診療の実際を大改訂した書である。これらの書を通じて解説された, 現代医学病名に対応して用いられる漢方処方の延長が, 現在の日本で, 大量に使用されている漢方製剤の応用なのである。これらの書が, 現代日本漢方に及ぼした影響は多大なものがある。その『漢方診療の実際』初版は, 大塚敬節, 矢数道明, 木村長久, 清水藤太郎の共著となっている。これらの著者達こそ, 拓大漢方講座講師団の中核であって, その後の漢方復興運動を成し遂げた人達である。それらの人達の系譜こそはまた, 現代日本漢方の正統でもある。即ち大塚敬節は, 湯本求眞門下の古方派の学統を継ぎ, 木村長久は, 明治の大家・浅田宗伯の直門・木村伯昭の嗣子で折衷派の学統を継ぎ, 矢数道明は, 大正時代に活躍した漢方医・森道伯の流れを汲む後世派・一貫堂の後裔であった。
著者
松垣 直宏 山田 悠介 引田 理英 平木 雅彦 千田 美紀 千田 俊哉
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.56-61, 2020-02-29 (Released:2020-03-06)
参考文献数
21

Applying long wavelength X-ray (ca. longer than 2 Å) in macromolecular crystallography has been limited due to the lack of dedicated measurement environment. Photon Factory BL-1A, as an MX beamline optimized for diffraction experiment using the wavelength from 2.7 to 3.3 Å, offers the opportunity to routinely perform data collection for Native SAD phasing or light atoms identification with much sophisticated manner. Sample optimization is another key for successful experiment at the wavelength where severe absorption is inevitable. We describe how the difficulties in use of long wavelength X-ray were overcome at the beamline and the auxiliary facility, as well as the current results of Native SAD phasing.
著者
岩本 さき 笠井 新一郎 苅田 知則 長嶋 比奈美 稲田 勤 塩見 将志 間野 幸代 石川 裕治 山田 弘幸
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.23-32, 2001-03-31 (Released:2018-08-29)
参考文献数
8
被引用文献数
2

平成11年度より,香川県坂出市では,1歳6ヶ月児健診で未通過だった子どもの発達状況のフォローを一つの目的として,保健婦と言語聴覚士による2歳児を対象とした発達相談(以下,2歳児相談)を行っている.しかし,実施に際して,評価時間の短さや,子どもの語彙発達を評価する指標がない点が問題として挙げられた.そこで,2歳児相談時にスクリーニングとして使用できる語彙チェックリストを作成することを目的とし,2歳児の語彙発達の現状を明らかにするための調査研究を行った.調査の対象者は,香川県坂出市内の全保育所(12施設)に所属する1歳11ヶ月から2歳11ヶ月の子どもの保護者であり,161名であった.調査においては,名詞・代名詞・抽象語・動詞・形容詞・形容動詞・副詞・感動詞を含む,全語彙数452個のチェックリストを,調査用紙として用いた.分析を加えた結果,2歳児相談でスクリーニングの指標となる平均語彙数は,2歳0ヶ月児で183.9語,2歳6ヶ月児で288.7語であった.また,2歳9ヶ月〜2歳11ヶ月にかけて350語を超えており,グラフはほぼ横這い状態を示した.これらの結果から,今回用いたチェックリストの適用範囲は2歳9ヶ月以前と考察された.
著者
山田 真由美
出版者
日本道徳教育学会
雑誌
道徳と教育 (ISSN:02887797)
巻号頁・発行日
no.333, pp.43, 2015 (Released:2019-09-02)

本論文は、中教審答申・別記「期待される人間像」に明記される「生命の根源」がいかなる概念であるかということを念頭に、主査として同文書をまとめた京都学派の哲学者・高坂正顕の歴史哲学を再検討する。教育行政に積極的に関与したことから高坂は、国家や天皇に従属する「人間像」を主張する国家主義者であると解されることが一般的であった。しかしながら彼の思索を吟味してみると、その根柢には西田哲学を継承した「絶対無」の思想が横たわり、一貫して絶対の不在が説かれている。特に本稿でみた『歴史の意味とその行方』1950では、人間性の超越的否定性なる性格ゆえに、歴史的世界に存するすべては絶対的相対性をその本質とする旨が強調される。そして高坂のいう「無」の概念を引き受けたとき、道徳教育は「無限の探究」という新たな可能性をひらくのである。
著者
山田 峰彦 柿崎 藤泰 渋谷 まさと 中山 秀章 廿楽 裕 田中 一正 鈴木 一 本間 生夫
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.646-652, 1996-06-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
20
被引用文献数
1

呼吸筋ストレッチ体操 (RMSG) プログラムを作成し, 肺機能, 運動能力, 呼吸困難感, 生活の質 (QOL) に与える効果について4週間のトレーニングの前後で検討した. 13名の慢性閉塞性肺疾患患者 (平均FEV1: 1.24L) を対象とし, 4週間にわたりRMSGを1日3回実施した. 12名が検討終了した. FRC (前4.19±1.27, 後3.88±1.03L), TLC (前5.98±1.35, 後5.66±1.20L), RV (前3.29±1.16, 後2.89±0.89L), 残気率 (前53.9±11.2, 後50.6±9.74%) はそれぞれ有意 (p<0.01) に低下した. 6分間歩行距離 (6MD) は平均43±30m (+15%, p<0.01) 延長した. 6MD終了時の呼吸困難感 (150mm VAS) は (前65.1±40.8, 後36.1±36.8mm) と有意 (p<0.05) に低下した. QOLは Guyatt らの The Chronic Respiratory Disease Questionnaire により評価し, 有意な改善が認められた. RMSGは呼吸リハビリテーションとして有用性があると考えられた.
著者
三谷 奈保 山田 千紘 小松 孝明
出版者
森林野生動物研究会
雑誌
森林野生動物研究会誌 (ISSN:09168265)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.7-13, 2015-03-30 (Released:2018-04-01)
参考文献数
21

市販の小型GPSロガー(GT-120)の精度と有用性について検証した.ハリネズミ4頭にGT-120および特定小電力無線を利用した発信器を装着し,そのうち3頭をラジオ・トラッキングにより再捕獲した.1分間隔でおよそ2日分以上の測位地点が得られた.また,巣の位置や休息時間を特定することが可能であった.GT-120を用いて,ラジオ・トラッキングに比較して著しく多い測位地点を省力的に得ることができた.ただし,留意すべきこととして,測位誤差が平均33.2±41.9m(SE)であった.
著者
山田 康弘
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.1-39, 1997-10-10 (Released:2009-02-16)
参考文献数
247

本稿は縄文時代の子供の埋葬例を集成・検討することによって,当時の人々の生活史の一端を明らかにすることを目的としたものである。まず,初めに集成した子供の埋葬例を年齢段階順に新生児期・乳児期・幼児期・小児期・思春期の5段階に区分し,埋葬形態を施設・単独葬か合葬か・合葬の場合の相手の性別・単葬か複葬かというように分類したうえで,各地域・時期別にそれぞれの埋葬形態を把握した。その結果,子供の埋葬形態は,大人のそれと同じように単独単葬例が最も多く,土器棺葬例は幼児期以前に,多数合葬例は幼児期以降に多いという傾向性が明らかになった。また,埋葬時に付加された様々な属性,埋葬姿勢・位置・赤色顔料の散布・土器棺内の人骨の週齢・合葬人骨の性別・装身具の着用などを検討し,次の点を指摘した。埋葬姿勢は大人とあまり変わらない。埋葬位置は住居跡に絡んで検出される場合が多い。赤色顔料の散布は新生児期からされるが,地域性がある。土器棺内から出土した新生児期の人骨は週齢38週以上のものが多く,新生児早期死亡例と考えられる。また,土壙などに埋葬されたものは38週以下のものが多い。大人と子供の合葬例では,乳児期以前は女性と合葬されることが多く,幼児期以降には男性と合葬されるようにもなる。これは子供の行動範囲が幼児期を境に変化したことを意味する。装身具の本格的な着用は幼児期以降に行なわれるが,玉類・貝輪を中心とした首飾りや腕飾りに限られ,頭飾りや腰飾りなどは存在しない。これは装身具の着用原理が大人と子供で異なっていたためと考えられる。次に大人と子供の埋葬例が検出された6遺跡の事例を検討し,埋葬時に付加された属性の差異について具体的に明らかにした。これらの諸点を総合して,当時の子供の立場が年齢によって変化することを述べ,子供が大人になるまでの生活史モデルを提示した。