著者
岩崎 賢
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.679-702, 2003-12-30 (Released:2017-07-14)

本稿の目的は古代アステカ人の宗教伝統の中心的要素である人身供犠に関して、宗教学的視点から新たな解釈を行い、従来と異なるより適当なアステカ宗教像を提示することにある。メキシコの歴史家アルフォンソ・カソの議論以来、研究者はアステカ人の供犠の説明として、アステカ人の神話に基づいて、彼らは人間の体を食料として捧げることで守護神である太陽神に活力を与え養おうとした、という説を採用してきた。しかし近年のいくつかの考古学的発見により、このような「太陽神の食事」式の説明はもはや支持し得ないものとなってきている。実際、この儀礼はいわゆる原初巨人解体神話という神話的主題、および建築儀礼との関連において理解されるべきである。筆者はここで「食べる」と「建てる」という二つの概念を鍵として、アステカ宗教と供犠の新たな理解のあり方を探りたいと考えている。
著者
徳永 純一郎 延永 尚志 中谷 龍男 岩崎 徹 福田 和廣 國武 吉邦
出版者
The Japan Society of Naval Architects and Ocean Engineers
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.183, pp.45-52, 1998 (Released:2009-09-16)
参考文献数
7
被引用文献数
1 3

This paper proposes a new concept for the frictional drag reduction technique. The new technique makes use of a specific coating surface (Super-Water-Repellent Surface) which has a highly repellent effect and an ability to form a thin air film over it under water. When supplying a small amount of air to the specific coating surface from the outside continuously, the supplied air (secondary air) is absorbed in and joined with the primary air film and spread to form a filmy air flow along the surface. This technique reduces the frictional drag because of this phenomenon.A frictional drag test in the rectangular pipe flow and a resistance test of horizontal flat plate were carried out in order to verify the validity of this technique. As a result of these tests, it was confirmed that drag reductions of about 80% and about 55% were obtained for flow velocities of 4 m/s and 8 m/ s, respectively.
著者
森川 浩史 石田 正人 岩崎 幸司 梅村 和夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.395-400, 1989-05-20

I.はじめに 舌骨は周囲を軟部組織に囲まれ,可動性があり,さらに下顎骨により保護されているため外力の影響を受けにくく,損傷されにくい。喉頭外傷にさいしても舌骨の損傷を合併することは少ない。われわれは最近,舌骨骨折2例を経験したので報告する。
著者
ジョヨンジュン 岩崎 敦 神取 道宏 小原 一郎 横尾 真
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2445-2456, 2012-11-15

本論文では不完全私的観測付き繰返しゲームの均衡を分析するプログラムを提案する.不完全私的観測付き繰返しゲームは,プレイヤが相手の行動についてノイズを含むシグナルを観測し,そのシグナルを他のプレイヤは観測できないという特徴を持つ.こうしたゲームは人工知能や経済の分野において様々な適用領域を持つため,大きく注目されている.しかし,このゲームにおける均衡を求めるには,非常に複雑な統計的推論が必要になるため,従来難しい未解決問題として知られていた.近年,均衡における振舞いを有限状態オートマトン(finite state automaton,FSA)で記述し,部分観測可能マルコフ決定過程(partially observable Markov decision process,POMDP)の理論を用いることで,あるFSAが均衡を構成するかどうかを明らかにできることが示された.しかし,その具体的な実装方法や実際の問題へ適用するためのプログラムは提供されていない.そこで本論文ではまず,標準的なPOMDPソルバのラッパとなるプログラムを開発する.このプログラムでは私的観測付き繰返しゲームの記述とFSAを入力として,そのFSAが対称的均衡を構成するかどうかを自動的に確認できる.さらに,このプログラムを繰返し囚人のジレンマに適用し,k-期相互処罰(k-MP)と呼ぶ新しいFSAのクラスを発見した.k-MPにおけるプレイヤは,初めに協力し相手の裏切りを観測するとそれ以降自分も裏切るが,続けてk回裏切りを観測すると元に戻り協力する.このプログラムを用いて状態数3以下のFSAを全探索した結果,繰返しゲームにおける観測構造パラメータのいくらかの範囲で,2-MPが他の純粋戦略均衡より優れており,従来よく知られている均衡である無限期罰則のトリガ戦略(grim-trigger)よりも効率的,つまり高い平均利得を実現することが分かった.The present paper investigates repeated games with imperfect private monitoring, where each player privately receives a noisy observation (signal) of the opponent's action. Such games have been paid considerable attention in the AI and economics literature. Since players do not share common information in such a game, characterizing players' optimal behavior is substantially complex. As a result, identifying pure strategy equilibria in this class has been known as a hard open problem. Recently, Kandori and Obara (2010) showed that the theory of partially observable Markov decision processes (POMDP) can be applied to identify a class of equilibria where the equilibrium behavior can be described by a finite state automaton (FSA). However, they did not provide a practical method or a program to apply their general idea to actual problems. We first develop a program that acts as a wrapper of a standard POMDP solver, which takes a description of a repeated game with private monitoring and an FSA as inputs, and automatically checks whether the FSA constitutes a symmetric equilibrium. We apply our program to repeated Prisoner's dilemma and find a novel class of FSA, which we call k-period mutual punishment (k-MP). The k-MP starts with cooperation and defects after observing a defection. It restores cooperation after observing defections k-times in a row. Our program enables us to exhaustively search for all FSAs with at most three states, and we found that 2-MP beats all the other pure strategy equilibria with at most three states for some range of parameter values and it is more efficient in an equilibrium than the grim-trigger.
著者
高木 佐恵子 岡田 陽介 岩崎 慶 吉本 富士市
出版者
The Society for Art and Science
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.135-144, 2005

魅力的な外見は一般に好まれる傾向にあるため,通常,人々は自分をよりよく見せようとする傾向がある.我々は,顔の個人的特徴をできるだけ残しつつ,その美しさを向上させるために,顔データを変形する手法を提案する.顔の魅力に関する既存研究を調査した結果,小さい,かつ/または,アンバランスな目と,突出した口を変形対象とする.変形は,3 次元の顔データに対して適用される.用いる顔データには,顔の部分(目や唇など)に分類された特徴点が含まれている.変形は,特徴点の移動により実現し,その移動は特徴点を囲む計測サンプル点の座標にも反映される.提案手法を適用して変形した8 人分の顔データを用いて,アンケート調査を行った.その結果,提案手法が個人的特徴を残しつつ美男美女化することに有効であることが確認された.
著者
岩崎宏美
雑誌
臨放
巻号頁・発行日
vol.43, pp.1061-1064, 1998
被引用文献数
3
著者
岩崎 洋一郎 川田 真也
出版者
電気・情報関係学会九州支部連合大会委員会
雑誌
電気関係学会九州支部連合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.65-65, 2008

赤外線サーモグラフィから得られる温度動画像を用いた車両位置とその静動状態を認識する手法を提案する。本手法を用いることにより、円滑な交通流、渋滞流の判別ができ、さらに、事故、車両故障などの突発事象の発生を検知できる可能性がある。また、温度画像を使用するため、環境変化にロバストで24時間の自動監視が期待できる。時空間温度画像の時間軸での画素値変化から、走行車両領域を特定する。また、画像フレーム毎にHaar状特徴によるパターン認識を適用し車両位置を特定する。走行車両領域と車両位置情報とを統合して識別することにより、各車両の位置情報とその静動情報が得られる。
著者
岩崎 久夫 金子 憲雄 小野 承行 大久保 薫 磯田 政恵 岩瀬 賢介 安藤 泰正
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.382-385, 1973-07-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12

Liver cirrhosis was detected at a high rate from among pigs brought to the Omiya Abattoir, Saitama Prefecture, by a swine husbandry man over a period of January to May, 1969. The affected pigs presented no marked gross changes other than liver cirrhosis. Histologically, the liver showed thickening of the stroma and formation of septula, paeudolobules, or pseudo-biliary ducts. Hepatic cells were mostly affected with focal vacuolar degeneration, necrosis, and colliquation. Large nucleated or polynuclear cells appeared. In the kidney, vacuolar degeneration occurred to epithelial cells of some uriniferous tubules, and large nucleated and polynuclear cells appeared. The ovary had follicular cyst.
著者
岩崎 義則
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

第九代平戸藩主松浦静山の随筆「甲子夜話」(全278巻)について、東洋文庫本『甲子夜話』(全20冊)を底本とした全文のテキスト入力データをもとに、ネットワークサーバ上に全文検索システムを構築し公開した(http://yosi-iwa.sakura.ne.jp/programs/essay/contents)。あわせて、『甲子夜話』執筆にあたり、重要な情報源となった平戸藩楽歳堂文庫とその蔵書目録について調査研究を行い、蔵書目録の作成・伝来過程を明らかにした。
著者
屋敷(土肥) 圭子 木曽 昭典 周 艶陽 岩崎 大剛 神原 敏光 水谷 健二
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.274-280, 2009
被引用文献数
1

皮膚組織における皮下脂肪の増加は,リンパ管や血管を圧迫し皮膚のたるみやむくみなどのトラブルを引き起こすだけではなく,ボディラインを崩すセルライトなどを形成する。われわれは,植物抽出物のさらなる応用を化粧品に広げるために,皮下由来の脂肪細胞に対する分化誘導抑制作用および脂肪分解促進作用について検討した。本研究では,ヒト皮下由来の前駆脂肪細胞を用いて,分化誘導抑制作用について数種類の植物抽出物をスクリーニングした結果,オウレン抽出物とその主成分であるベルベリンに作用があることを見出した。さらに,前駆脂肪細胞から成熟脂肪細胞へ分化するさいに関与する遺伝子発現を解析した結果,オウレン抽出物およびベルベリンにこれらの遺伝子を抑制する作用が認められた。また,オウレン抽出物およびベルベリンには,成熟脂肪細胞に対して脂肪分解作用および熱産生関連遺伝子の発現促進作用を有することが明らかになった。本研究においてわれわれが検討したオウレン抽出物およびその主成分ベルベリンは,中性脂肪を増やさず,すでに蓄積した脂肪を分解することが期待され,ボディケア製品やスリミング化粧品などへの応用が示唆された。
著者
元木 悟 柘植 一希 北條 怜子 甲村 浩之 諫山 俊之 藤尾 拓也 岩崎 泰永
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.269-279, 2019 (Released:2019-09-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1

露地夏秋どりミニトマトのネット誘引無整枝栽培(ソバージュ栽培,以下, ソバージュ)の収量は,主枝1本仕立て栽培(以下,慣行)に比べて,株数が6分の1程度であるにも関わらず,慣行と同等以上の収量が見込める.また,ソバージュは収穫作業以外の作業時間を慣行に比べて有意に短縮できる.そこで本試験では,ソバージュを全国に普及させるため,温暖地の神奈川圃場に加え,ソバージュと同じミニトマトの夏秋どり栽培(ただし,ハウス雨除け夏秋どり栽培)が一般的である岩手および広島圃場おいて,3年間(岩手圃場は2年間),ソバージュと慣行の収量および品質を比較した.また,ソバージュの経済性を検討するため,ミニトマトの夏秋どり栽培の農業経営指標を参考に,各地域におけるソバージュの経済性評価を行った.その結果,露地夏秋どりミニトマトのソバージュにおける収量については,既報と同様,岩手および広島圃場においても単位面積当たりの収量は慣行と同等であり,株当たりの収量は慣行に比べて多かった.ソバージュの品質については,岩手圃場では既報と同様,ソバージュの糖度は慣行と同等か低い傾向であったものの,リコペン含量は栽培法および栽培年の間に一定の傾向が認められなかった.一方,広島圃場では,ソバージュの糖度およびリコペン含量は慣行と同等か高い傾向であった.ソバージュの経済性評価については,広島県の農業経営指標を参考に,本試験で実際に栽培した‘ロッソナポリタン’の可販果収量の月別平均値を用い,既報の作業性の結果を参考に試算した結果,ソバージュの利益は10 a当たり86万~110万円,労働時間は333~568時間,1時間当たりの利益は1,933~2,661円であった.
著者
稲津 忠雄 岩崎 賢一 古田 武
出版者
香川県産業技術センター
巻号頁・発行日
no.7, pp.70-75, 2007 (Released:2011-02-04)

麺(うどん)の収縮および力学物性変化を数学的にモデル化することにより、麺乾燥中の応力分布を計算し割れ発生の予測を試みた。麺の収縮係数は、水分含量変化に対して各寸法方向ともほぼ同じ値であったが、温度には依存しなかった。ヤング率、降伏応力および破壊応力は水分含量の指数関数として表された。乾燥に伴う応力分布変化は、有限要素法を用い、水分移動方程式と構成方程式を連立させることにより推算した。計算した応力分布は、急激な乾燥速度が大きな内部引張応力を引き起こすことを示した。本研究で用いたスキームは、長さ方向に沿った割れ形成の可能性を評価するのに有効であり、その予測は実際工場で発生する割れのパターンと一致した。