著者
田原 英一 後藤 雄輔 吉永 亮 井上 博喜 矢野 博美
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.94-101, 2020 (Released:2020-12-07)
参考文献数
24

四物湯を含む処方が奏功した6例を経験した。症例1は13歳男性で起床困難であったが,集中力低下を目標に治療したところ,通学も可能になった。症例2は18歳女性で,起床困難だったが,同じく通学が可能になった。症例3は10歳女性で,治療により部分的に通学可能となった。症例4は42歳男性で,社交不安に対して四物湯を追加したところ改善した。症例5は多愁訴であったが,四物湯を含む処方で症状が軽減した。症例6は56歳女性で同じく多愁訴であったが,四物湯を含む処方で症状が軽減した。いずれの症例もうつ,不安が明らかであり,4例でコルチゾールの低下を認め治療により回復した。四物湯は血虚を治療することで集中力,判断力を回復し精神症状を改善すると考えられる。
著者
後藤 丹
出版者
日本音楽表現学会
雑誌
音楽表現学 (ISSN:13489038)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.49-66, 2010-11-30 (Released:2020-05-25)
参考文献数
13

岡野貞一(1878 〜 1941)はいわゆる文部省唱歌の代表的な作曲家とされている。しかし、『尋常小學唱歌』中のどの歌の作曲に関わったかについては不明な部分が多い。 本稿では、まず、「合議制」による『尋常小學唱歌』の制作の過程を、近年になって東京藝術大学で発見され 2003 年に翻刻出版された『小學唱歌教科書編纂日誌』によって検証し、作曲に関しては岡野を含む 6 人の楽曲委員が基本的に独立して仕事をしたことを確認した。 次に、『尋常小學唱歌』以外の資料から、他の楽曲委員 5 名および岡野が作った旋律を探し出し、比較・分析して共通の要素および岡野固有の作曲手法をまとめた。 最後に、抽出した岡野旋律の特徴を『尋常小學唱歌』全 120 曲と照合し、曲同士の関連も考慮に入れつつ、《紅葉》《朧月夜》《故郷》《冬景色》《雁》《秋》《廣瀬中佐》《浦島太郎》《春が来た》《入営を送る》等については岡野作曲の可能性が極めて高いと推論した。
著者
後藤 新弥 遠藤 大哉

“地元”柏市の「ふつうの人」のスポーツへの愛好度や,スポーツ活動の実態を等身大で探ろうと,学生らとともに柏市駅前で「町行く人」を対象に調査したまとめ報告である。複数の項目に亘ってアンケートを実施した結果,以下のような興味深い傾向が抽出された。* プロサッカーは好感度が高かった。ところが,地元柏レイソルの大看板の下で調査したにもかかわらず,レイソルの名前を言えない人が2 割以上いた。* さらに,地元柏レイソルの選手を1 人も知らない人が6 割近かった。一方日本代表なら3 人以上の名前を知っている人が9 割近かった。J リーグ側は「地元密着」を掲げているが,現状は地元未着である*大相撲を「大嫌い」と決めつける人が3 割近くいた。八百長疑惑などが背景か。*東京五輪の「招致活動」に好感を抱いたのは半数に満たなかった(7 月時点)。* 文武両道という概念を「重要である」と答えたのは,平成生まれが約44%,大人世代が38%で,若い人の方がスポーツの倫理観を重要視している傾向がうかがわれた。* 「日常的にスポーツをしている」人は全体の42%を占めたが,「したいけどしていない」人が27%に達し,スポーツ行政への大きな課題が見えてきた。* 「町を行くふつうの人」のスポーツ活動へのさらなる支援が必要だと痛感した。東京五輪開催への最優先課題は,イベントとしての成功やトップ選手のメダル数ではなく,実は日本のスポーツの実数値であり,またその土台である,「ふつうの人のスポーツ活動」の支援促進ではないだろうか。
著者
宮津 大輔 立石 裕樹 與田 賢作 松浦 徹 山下 大貴 安部 由起子 後藤 貴央 秋吉 正貴 田中 博和 平川 雅章
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.345-357, 2021-07-10 (Released:2022-07-10)
参考文献数
23

In January 2020, Fukuoka Tokushukai Hospital started Protocol Based Pharmacotherapy Management (PBPM), which allows pharmacists to order regular blood and urine tests for drugs that are recommended in the package insert, with the permission of the physician. The purpose of this initiative is to improve the quality of drug therapy for patients through the intervention of pharmacists, to reduce the burden on physicians, and to provide a solution to the three problems of drug therapy at our hospital. As a result, 204 PBPMs (203 blood tests and 1 urine test) were performed for a period of 8 months after the start of drug therapy. Most of them were additions to existing physician orders. All suggestions to the physician for tests were accepted, and 95% (96/101) of these were ordered by the pharmacist. In 37.3% (28/75) of the cases, the medication was changed after the test results.In addition, the "compliance rate of vancomycin (VCM) trough concentration measurement," "compliance rate of hepatitis B virus DNA (HBV-DNA) monitoring in oral chemotherapy alone," and "compliance rate of serum P concentration measurement during Continuous hemodiafiltration (CHDF)" increased after the start of PBPM compared with before (81.3% vs 91.7%, 82.6% vs 93.9%, and 65% vs 100%, respectively). We suggest that our PBPM is a useful tool for pharmacists to proactively promote appropriate drug therapy.
著者
星野 高志 小口 和代 大高 恵莉 木戸 哲平 田中 元規 早川 淳子 佐藤 浩二 後藤 進一郎
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.432-439, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
23

【目的】回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期)における移乗・トイレ・歩行の自立判定と,自立後の転倒を調査した。【方法】対象は回復期の脳損傷者135 名とし,各動作の自立および自立後の転倒状況を調べた。自立は,①療法士が動作評価,②病棟スタッフが実生活で動作観察評価,③医師を含む多職種で判定した。また入棟時FIM,SIAS 運動,BBS を自立後の転倒の有無により比較した。【結果】各自立後の転倒者は,移乗自立77 名中9 名(11.7%),トイレ自立70 名中3 名(4.3%),歩行自立60 名中8 名(13.3%)だった。転倒者の入棟時の機能は,移乗ではFIM 運動,SIAS 運動,BBS,歩行ではBBS が有意に低かった。トイレでは有意差はなかった。【結論】移乗,歩行自立者の約1 割が転倒していた。移乗,歩行自立者のうち運動機能が低い者が転倒していた。今後,客観的指標を含めたさらなる検討が必要である。
著者
田澤 聖子 菅野 敦子 秦 規子 小林 昭子 原澤 佳代子 毛塚 剛司 後藤 浩
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.107-111, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
15

小児の外転神経麻痺は多くの場合、脳腫瘍や頭蓋内圧亢進、外傷などによって引き起こされる。一方、ウイルス感染やワクチン接種に関連した外転神経麻痺の発症は比較的稀である。 インフルエンザワクチン接種後に良性再発性外転神経麻痺を繰り返し発症した5歳女児の症例を経験したので報告する。初回の麻痺は2か月後に回復したが、その1年後に再発した。再発時の麻痺は、約3か月後に回復した。発症の度に頭部CTを施行したが、明らかな異常は発見されなかった。 小児の外転神経麻痺ではウイルス感染やワクチン接種について詳細に尋ねること、再発の可能性を考慮して経過観察を続けることが重要である。
著者
後藤 奈美
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.4, pp.210-216, 2012 (Released:2017-12-11)
参考文献数
36

国産ワインのレベル向上などからワインに関する研究が多く行われている。最近,赤ワインの渋みに関する研究も多く報告されている。ここでは,渋み成分の生合成から,渋みを感じる仕組み,ぶどう栽培やワイン醸造を含めて最近の知見や筆者の取り組みも交えて,詳細に解説いただいた。
著者
後藤 純信 萩原 綱一 池田 拓郎 飛松 省三
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.8-18, 2012-02-01 (Released:2014-08-20)
参考文献数
24
被引用文献数
4

視覚誘発電位 (VEP) は, 誘発脳波計で容易に記録でき, 視覚路の情報処理機能をms単位 (高時間分解能) で評価できる。しかし, 異なる伝導率を有する容積導体を通して頭皮上から記録するため, 後頭葉の軽微な機能変化や機能の左右差を検出するには難がある。一方, 視覚誘発脳磁場 (VEF) は, 生体内の透磁率がほぼ等しく磁場のひずみが生じないため, 時間分解能のみならず空間分解能 (mm) にも優れ, 視覚野の一側性機能異常や軽微な左右の機能差などを鋭敏に検出できる。しかし, 微弱な磁場反応であるため磁気ノイズの混入やそれを遮蔽するための環境整備が必要不可欠である。刺激を工夫して視覚路の機能局在や機能障害の有無を検討するためには, VEPとVEFの長所と短所を知ることが必要である。本稿では, 両者を理解する上で必要な電場と磁場の基礎知識や視覚の生理学に基づく基本的記録法と解析法を解説する。さらに, これらの手法を基にした我々の臨床研究成果の一端を紹介する。
著者
宍倉 正視 竹下 友美 後藤 史子 溝上 陽子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3+, pp.163-166, 2017-05-01 (Released:2017-10-07)
被引用文献数
1

高齢化社会における課題のひとつとして,高齢者にとって表示物の配色が見分けにくいケースへの対応がある.例えば,美術館や博物館など展示品の保護といった観点から照明を暗くしなければならない室内環境での案内板や説明パンフレットには,暗い環境下における読みやすさが必要とされている.そこで,我々は文字-背景配色印刷物を対象に,照度/年齢層/配色パターンが文字の可読性にどのような影響を与えるか評価した.評価には,無彩色または有彩色で着色した文字および背景矩形の印刷物サンプルを用いた.サンプル色として,無彩色は黒・グレー6色・白(紙白),有彩色用にJIS安全色に使用される2.5PB色相から明度・彩度の異なる19色を選定した.評価の結果,照度が低くなると,若年者に比べ高齢者では無彩色配色および2.5PB+黒配色の可読性低下がみられた.黒文字+無彩色背景に対する年齢層による可読性の違いは高齢者と若年者のコントラスト感度の違いが影響していると考えられ,黒文字+2.5PB低彩度背景色サンプルにおいては照度と加齢を考慮した色差値と可読性の関係が先の無彩色配色のコントラスト感度と同じような傾向を示すことが判明した.
著者
高嶋 裕美子 池田 梓 辻 恵 露崎 悠 市川 和志 相田 典子 後藤 知英
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.264-268, 2018 (Released:2018-08-16)
参考文献数
12

【目的】軽微な頭部外傷後の脳梗塞症例の臨床, 画像的特徴, 特にmineralizing angiopathy (以下MA) との関連を検討する. 【方法】1980年4月から2016年11月までに脳梗塞の診断で当院に入院した患者の診療録を後方視的に調査し, 軽微な頭部外傷後の脳梗塞患者を対象に, 臨床, 画像的特徴について検討した. 【結果】動脈性脳梗塞と診断された119例のうち5例が軽微な頭部外傷後の発症であった. 発症年齢は10か月から11歳 (中央値は2歳9か月) で全例男児であった. 1例で無症状, 4例で左片麻痺を認め, 全例予後は良好であった. 頭部画像は4例は右側, 1例は左側の大脳基底核に梗塞像を認めた. 5例中, 麻痺を認めた4例にCTで穿通枝のMAと考えられる線状の高吸収域を認め, うち3例は両側に認めた. 11歳の症例では今回の梗塞像の対側基底核に陳旧性梗塞像を認めた. 【結論】軽微な頭部外傷後の基底核梗塞症例で高率に穿通枝にMAの合併を認めた. 脳梗塞の原因となるその他の因子は明らかとなっておらず, MAが軽微な頭部外傷後の脳梗塞と関係がある可能性が疑われる. 軽微な頭部外傷後脳梗塞は乳幼児の報告が多いが, 本検討の最高齢は11歳で既報より高かった. 乳幼児期以降にも軽微な頭部外傷後脳梗塞の発症があることや, 再発の可能性を考慮する必要があると考えられた.
著者
北村 泰佑 後藤 聖司 髙木 勇人 喜友名 扶弥 吉村 壮平 藤井 健一郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.499-503, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
25
被引用文献数
3 4

患者は86歳女性である.入院1年前より認知機能低下を指摘され,入院2週間前より食思不振,幻視が出現し,意識障害をきたしたため入院した.四肢に舞踏病様の不随意運動を生じ,頭部MRI拡散強調画像で両側基底核は左右対称性に高信号を呈していた.血液検査ではビタミンB12値は測定下限(50 pg/ml)以下,総ホモシステイン値は著明に上昇,抗内因子抗体と抗胃壁細胞抗体はともに陽性であった.上部消化管内視鏡検査で萎縮性胃炎を認めたため,吸収障害によるビタミンB12欠乏性脳症と診断した.ビタミンB12欠乏症の成人例で,両側基底核病変をきたし,不随意運動を呈することはまれであり,貴重な症例と考え報告する.
著者
櫻井 綾子 大河内 昌弘 山本 陽一 加地 謙太 田村 泰弘 浅田 馨 服部 孝平 後藤 章友 神谷 泰隆 大野 恒夫
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.65, 2010 (Released:2010-12-01)

症例は、70才男性。20年前より、糖尿病(2型)、高血圧、胃潰瘍を指摘され、内服治療を継続され、glimepiride 2mg、pioglitazone 15mg, Voglibose0.9mg最近1年のHbA1cは、6.1~6.8%で推移していた。H21年6/14に、急に、複視を認めるようになり、救急外来を受診された。来院時、意識清明で、瞳孔・対光反射に異常なく、右方視による複視(右眼内転障害)を認めた(pupillary sparing)。眼瞼下垂、舌偏位、顔面神経麻痺、四肢の麻痺は全て認めず、Barre sig、Finger-nose testに異常を認めなかった。頭部CT&MRI&MRAでは、lacunar infarctionを認めるのみで、内頸動脈・後交通動脈分岐郡脳動脈瘤や海綿静脈洞血栓症は認めなかった。加えて、両下肢の感覚神経障害を認め、アキレス腱、膝蓋腱反射の低下を認めた。眼科的にも眼球運動異常を認めるのみで、眼底異常、視野異常は認めなかった。以上より、脳の器質的な疾患による動眼神経麻痺は考えにくく、糖尿病性動眼神経麻痺と診断した。治療としては、リハビリ治療に加え、血糖コントロールの強化、血小板凝集抑制薬、血管拡張薬、アルドース還元酵素阻害薬、ビタミンB12製剤を併用したところ、1ヶ月程度で右眼内転障害および、複視は消失し、以後症状の再発は認めなかった。糖尿病性合併症としての動眼神経、外転神経麻痺は比較的まれな疾患であるため、脳梗塞の一症状と間違われやすいと考えられる。しかし、急性発症し、高齢者に多く、糖尿病の罹病期間・コントロール状態・眼底所見とは無関係に発症すること、一側の動眼神経、外転神経麻痺が多く、 瞳孔機能は保たれる(pupillary sparing)特徴的な所見から、比較的鑑別は容易であること、加えて、多くは数か月以内に回復する予後の良さから、その疾患を知ることは、疾患の迅速な鑑別・治療および患者指導に役立つと考えられ、典型的な自験例をここに報告する。