- 著者
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後藤 拓也
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:13479555)
- 巻号頁・発行日
- vol.80, no.1, pp.20-46, 2007-01-01 (Released:2010-03-12)
- 参考文献数
- 41
- 被引用文献数
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本稿は, 飼料産業をアグリビジネスの一部門ととらえ, 日本の飼料企業における立地戦略の変化について地理学的な視点から分析を試みた. 1970年代前半まで, 日本の飼料企業は商系・全農系にかかわらず, 自社工場を全国的に配置するという立地戦略によって発展を遂げてきた. しかし, 畜産地域が国土周辺部へ立地移動したことや, 畜産物自由化に伴う飼料需要の減退によって, 飼料企業は立地戦略の大幅な転換を迫られるようになる. そこで, 商系企業の大手10社に着目し, 各社の立地戦略がどのように変化したのかを分析した. その結果, 各社とも1980年代後半から (1) 合弁工場の設立, (2) 他企業への委託など, 企業間提携を重視した合理化を進めたことが確認された. それに対して, 農協組織である全農は自らの組織内で合理化を進め, (1) 系列飼料企業の集約化, (2) 飼料供給圏の広域化など, 産地との関係を合理化する方向で飼料供給体系の再編成を図ったことが判明した. しかしながら, 全農は自らの抱える独自の組織体質によって立地戦略の円滑な転換を阻まれており, 商系企業とのシェア獲得競争において苦境に立たされていることが明らかになった.