著者
岩本 美江子 百々 栄徳 米田 純子 石居 房子 後藤 博 上田 洋一 森江 堯子
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1116-1123, 1989-02-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
25
被引用文献数
7 17 2

これまで著者らは生体に対する騒音ストレス作因の生理的影響に関する研究を行うなかで,生理的のみならず心理的な影響をも把握することの必要性を感じた。物理的ストレスが心理的,情動的ストレスとなって不安を生ずる事は,Aiken1)の不安とストレスは[異体同形]であるとの提言からも考えられることである。従来不安の問題は,Kierkegaard2)に代表されるように,主として哲学ことに宗教と倫理学の課題であった。それを心理学の領域で,はじめて病態心理との関連において概念づけたのは精神分析学を樹立したFreud3)であり,彼は神経症的状態の治療においても不安を中心的な問題として重視した。一般に用いられるようになった最初の不安検査は,Taylor4)によって開発され公表された顕在性不安尺度(Manifest Anxiety Scale: MAS)である。その後一連の不安研究の後,Cattell and Scheier5)やLazarusら6)は不安をその特質から一過性にみられる気分としての不安状態と不安への陥りやすさとして捕えられる性格傾向としての不安特性の二つに分けることを提案した。この二つの不安についてSpielberger7)が明確に定義づけをした。すなわち不安には,ある状況下で大きく変動するような状態としての不安(state-anxiety以下A-Stateと略記)と,ある個人において比較的一定していると言われる性格特性としての不安(trait-anxiety以下A-Traitと略記)の二つがある。さらにSpielberger, Gorsuch and Lushene8)は諸種の不安尺度を検討して,既存のどの尺度も状態としての不安と性格としての不安を区別せずに測定しており,不安に関するこれまでの全ての質問票テストはA-Traitを測定していると指摘し,最終的にこのA-StateとA-Traitを測定する尺度として1970年に状態-特性不安尺度State-Trait Anxiety Inventory(略してSTAIと呼ばれる)を発表した。本研究の目的は,若年者および高齢者,また各種状態におけるSTAIの検査結果から,この尺度の妥当性,信頼性を検討することである。さらに衛生学分野において,環境の変化特に騒音が人に対して精神的ストレス因子となって負荷したときのSTAIの応用の良否を検討することをも目的とするものである。
著者
後藤 正司 岡本 卓 亀山 耕太郎 林 栄一 山本 恭通 黄 政龍 横見瀬 裕保
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.146-150, 2003-03-15
被引用文献数
6 2

18年の長期経過をたどった気管支内異物による反応性肉芽腫の一例を経験した.症例は25歳男性.健康診断の胸部X線写真で,右下肺野の帯状影を指摘された.気管支鏡検査で右B^<9+10>を閉塞する腫瘤を認めた.生検で肉芽腫と診断.腫瘤の末梢側の観察が不可能で悪性疾患の合併も否定出来ず,開胸術で腫瘤を摘出した.腫瘤は有茎性ポリープ様で炎症性肉芽腫と診断した.術後8日目の胸部X線写真で術前と同様の無気肺が出現,気管支鏡検査でも術前と同様に腫瘤を認めた.生検鉗子で肉芽腫を可及的に摘出すると,開存したB^<10b>に3.0×2.0cm大のビニール片を認めこれを摘出した.以後,肉芽腫の再発は認めていない.仔細に問診すると,7歳時のパン食い競争後に強い咳嗽,胸痛を自覚していた.今回の気管支内異物は,この際誤嚥したビニール片と考えられこの異物による物理的刺激が反応性肉芽腫の成因と推察された.
著者
後藤 佑斗 三原 鉄也 永森 光晴
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.192-197, 2021

<p> Web上で提供されるマンガには内容に基づく探索のためにタグやキーワードなどの主題語が付与されているが,意味的な探索のための構造化が不十分で,その活用は限られている.本研究では日本十進分類法(NDC)の持つ主題の意味関係に即した探索のために,Web上でマンガと共にその内容を示すタグおよびマンガのあらすじの2種の情報を利用して,マンガと主題に基づくLinked Data版日本十進分類法(NDC-LD)を機械的に結びつける手法を提案する.タグを利用した手法ではNDC-LDの相関索引語とタグの文字列の類似度に基づいて同一性を判定しリンキングを行った.あらすじを利用した手法ではあらすじ文中のNDCの見出し語と相関索引語についてTF-IDFを用い,特徴語として抽出されたものをリンキング対象とした.更に,マンガ146作品に対してこれらの提案手法を適用し,人手による分類及び機械学習によるNDCの推定手法と比較した結果,提案手法が人手での分類の再現に有効であった.(393文字)</p>
著者
後藤 みち子
出版者
吉川弘文館
雑誌
日本歴史 (ISSN:03869164)
巻号頁・発行日
no.838, pp.19-36, 2018-03
著者
花田 惇史 吉田 裕一 佐藤 卓也 後藤 丹十郎 安場 健一郎 田中 義行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.161-169, 2016 (Released:2016-06-30)
参考文献数
27
被引用文献数
3 4

近年,受粉用ミツバチがしばしば不足し,果実を中心に園芸作物の生産コスト増大や品質低下を引き起こしている.その解決策の一つとして,医療用の無菌ウジ増殖技術を応用して生産したヒロズキンバエについて,施設栽培作物の花粉媒介昆虫としての実用化の可能性を検討した.イチゴ,トマト,ナスおよびメロンを対象として,開花期にヒロズキンバエをハウス内に放飼し,着果率や果実形態の比較によって,各作物への受粉効果を調査した.トマト,ナスおよびメロンにおいては,明確な着果促進効果は得られなかった.一方,イチゴでは,ハエは羽化直後から盛んに花に飛来する姿が観察され,ハエ搬入前と比較して受精不良果発生率は大きく低下した.ただし,90 m2当たり400頭の搬入では品種によって効果が不十分であった.しかし,1000頭搬入した場合は,ミツバチと同等の効果が得られたことから,ヒロズキンバエはミツバチの代替ポリネーターとして十分利用可能であると考えられた.
著者
後藤 仁敏
出版者
鶴見大学
雑誌
鶴見大学紀要. 第3部, 保育・歯科衛生編 (ISSN:03898024)
巻号頁・発行日
no.51, pp.71-86, 2014-03

現在ではヒトをはじめとする哺乳類の歯の組織について、「エナメル質」「セメント質」「歯肉」というのが一般であるが、かつて日本では、「琺瑯質(ほうろうしつ)」「白亜質(はくあしつ)」「歯齦(しぎん)」という用語が使用されていた。事実、私が若い頃は、東京歯科大学の先生方は、「琺瑯質」「琺瑯質稜柱」「琺瑯芽細胞」という用語を使用されていた。私は、なぜ、東京歯科大学の先生だけがこのような「間違った」用語を使用するのか理解できず、不思議に感じていた。しかし、その後、調査した結果、じつは「間違った」のは私たちで、かつて1940年代までの日本では「琺瑯質」などの用語が一般であったことを知った。「エナメル質」が用いられ始めたのは1950年代からで、藤田(1957)以降急速に普及した。しかし、鶴見大学歯学部では松井隆弘教授により1981年まで「ほうろう質」が、東京歯科大学では1994年まで「琺瑯質」が使用され、それ以後「エナメル質」に変わっている。その経過と原因について追究した結果を報告したい。また、魚類の歯の外層については、「象牙質(dentine)」「硝子象牙質(vitorodentine)」「硬象牙質(durodentine)」「変化象牙質(modified dentine)」とか、「エナメル質(enamel)」「中胚葉性エナメル質(mesodermal enamel)」「間葉性エナメル質(mesenchyal enamel)」「エナメロイド(enameloid)」とか呼ばれてきた。私も、かつては「間葉性エナメル質」(後藤, 1976, 78, 88; 後藤・大泰司,1986)を使用していたが、最近は「エナメロイド(enameloid)」(後藤, 1987, 96, 99; 後藤ほか,2014)を使用するようになった。その経緯と、理由について述べる次第である。
著者
渡辺 満久 鈴木 康弘 熊原 康博 後藤 秀昭 中田 高
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

2016.04.14に熊本地震の前震(M6.5)が、04.16には本震(M7.3)が発生した。これらの地震を引き起こした活断層への評価(地震本部、2013)には、指摘すべき大きな問題がある。また、地震断層近傍では、「震災の帯」と呼ぶべき被害の集中域が認められる。このような現象は1995年兵庫県南部地震後にも指摘されていたが、その教訓が生かされたとは思えない。 本震発生時、既知の布田川・日奈久断層に沿って総延長31kmの地表地震断層が現れた。ところが、前震は日奈久断層帯が、本震は(主に)布田川断層帯が起こしたものである(前震と本震は別々の活断層によって引き起こされた)との見解がある。それは、地震本部が布田川・日奈久断層という1つの活断層を、布田川断層帯と日奈久断層帯という別々の活断層として評価しているためである。 明瞭な地震断層が全域で現れたのは本震の時であり、前震の震源域は本震のそれに包括されている。また、都市圏活断層図に示されているように、布田川・日奈久断層は完全に連続した活断層である。これらのことから、別々の断層が連動したという理解は誤っている。かつて地震本部は、連続した布田川・日奈久断層として正しく評価されており、今回の震源域ではM7.2の地震が発生すると予測されていた。ところがその後、変動地形学的な証拠が軽視され、1つの活断層が2つの活断層(帯)に分割されてしまった。それによって想定地震が過小評価され、M7クラスの本震発生への警鐘に結びつかなかった可能性がある。 益城町の市街地では震度7を2度記録したが、本震時の建物被害が著しかった。被害激甚な地域は、南北幅が数100km以内、東西に数km連続する「震災の帯」をなしている。ここでは、新耐震基準に適合している建物までもが壊滅的な被害を被っている。「震災の帯」の中には、益城町堂園付近から連続する(布田川断層から分岐する)地震断層が見出されるため、その活動が地震被害集中に寄与している可能性が高い。ただし、地震断層直上でなくても、近傍における建物物の被害も著しい。 南阿蘇村においては、複数の地震断層が併走して現われた。地震断層直上およびその近傍では、ほとんどの建物が倒壊した。この地域においては、少なくとも5台の自動車が北~北西方向へ横倒しとなっていることも確認した。強いS波が自動車を転倒させ、南阿蘇村における大規模な斜面災害の引き金にもなったと考えられる。 このように、地震断層近傍では、土地のずれに加えて、強震動による被害が集中したと考えられる。堂園付近では、布田川断層の存在は知っていたという声が少なくなかった。しかし、そこに被害が集中する可能性があるとは理解されていなかった可能性が高い。活断層情報の活用の仕方について、再検討すべきであろう。 熊本地震によって、活断層の位置情報が地震防災上極めて重要な情報であることが再確認された。変動地形学的な物的証拠を重視していない地震本部による活断層評価には、非常に大きな問題がある。また、兵庫県南部地震時の教訓を十分に生かすことができなかったのは、活断層情報の活かし方に問題があったと考えられる。防災・減災に向けて、地形学からさらに積極的な提言を続けることが必要であろう。なお、熊本地震の地震断層は既知の活断層の範囲以外にも出現している。「見逃された」理由を検証し、今後の活断層調査に関して解決すべき問題を見極めなければならない。全国の都市圏活断層図の改訂など、熊本地震を貴重な事例として、明確となった問題を解決してゆく必要がある。
著者
後藤 京子 杉本 侃
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
民族衛生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.53-64, 1996-03-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
23
被引用文献数
1

The Japan Poison Information Center (JPIC) received 205, 199 inquiries from citizens and medical personnel for 5 years from April, 1989 to March, 1995. And, the number of inquiries concerning with suicide in those was 5, 778. In July 1993, the book named the Suicidal Manual were published in Japan and since then, the inquiries concerning with suicide attempts have increased. So, I analyzed these data about implicated products and contrasted the data received before the publication of the manual to the data received after that on purpose to make clear the affection of the Suicidal Manual. In regard to the substance that was selected in suicide attempts cases, teen-ager and the twenties tend to use medicines, especially over-the-counter drugs and older people tend to use agricultural chemicals. After the book was published, the number of inquiries about some over-the-counter drugs that were shown as appropriate way for easy and painless death in the book had increased. So, it is very important to give the young people the information of drug toxicity and appropriate management of drugs to decrease the influence of the book.

2 0 0 0 OA 草木鳥獣之圖

著者
後藤光生 [編]
出版者
[後藤光生] [写]
巻号頁・発行日
1700

書名からは平凡なスケッチ集かと思われるが、じつは宋の王継先ほか撰の『[紹興校定]経史証類備急本草』(1159年成、略称『紹興本草』)の図の転写である。『紹興本草』は中国では早くに失われたが、日本には本資料のほか、当館の別10-56本、特1-477本、特1-518本、特1-601本など、かなりの数の写本が残る。本資料は植物図(257点)、ついで動物図(97点)の順に配列され、その全点が『紹興本草』からの転写である。植物図は抄写であるが、動物図は全図を転写している。著者の後藤梨春(名は光生[こうせい]、1697-1771)は江戸の町医で、晩年は幕医の多紀氏が創設した躋寿館(せいじゅかん:のち幕府医学館)で都講(教頭)を勤め、本草を講じた。本資料はその躋寿館への寄贈本であることが、末尾の書き込み「躋寿館都講 後藤光生寄附」からわかる。梨春の本草関係著作には、『随観写真』(123-29)や、『本草綱目補物品目録 前編』(104-306)、同後編(特1-946)、『採薬使記』(梨春編、特1-464、特7-128)などがある。(磯野直秀)
著者
河合 俊彦 後藤 満雄 梅村 昌宏 湯浅 秀道 石井 興 内田 和雄 木下 基司 河合 幹
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.997-999, 1995-11-20 (Released:2011-07-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

A prospective study was undertaken to evaluate dry socket (alveolar osteitis) in 1146 patients who surgically underwent extraction of impacted third molars. Dry socket occurred at a total rate of 5.4%; 27 cases occurred in males and 35 in females. There were no sexual differences. The prevalence of dry socket was highest: patients 40 years of age or over, followed by those from 30 to less than 40, 20 to less than 30, and under 20 years old.
著者
後藤 崇志
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.129-144, 2020 (Released:2021-08-05)
参考文献数
89

Individuals usually imagine the future, set goals, make plans, and invest much effort in achieving these goals. However, individuals also often fail to achieve their goals by giving in to temptation. “Being good at self-control” is traditionally assumed to be key in achieving future goals. The present paper aims to clarify what “being good at self-control” means by reviewing psychological research about self-control. We suggest that the concept of “good at self-control” can be organized into two dissociated concepts: (1) “good at conflict resolution,” based on executive function (or cognitive control) and value representation (e.g., temporal discounting, value integration), and (2) “good at goal achievement,” based on value updating (e.g., habituation, goal internalization). We discuss related issues such as socialization or the agentic aspect of self-control, and we suggest avenues for future research on organizing the concept of self-control.
著者
紙屋 信義 後藤 みゆき
出版者
学校法人 三幸学園 東京未来大学
雑誌
東京未来大学研究紀要 (ISSN:18825273)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.67-75, 2008

子どもたちが楽しく歌うためには、伴奏が必要である。幼稚園・保育園の就職試験の実技でピアノ伴奏を課すところは多く、ピアノは幼児教育の音楽活動になくてはならない存在である。保育現場で最も扱われている簡易伴奏とはどのようなものかを述べ、簡易伴奏とそれをアレンジした伴奏を使って幼稚園での実践を行い、子どもたちがどのような反応を示すか見て、ピアノによる伴奏作りの効果と意義について考える。結果としてアレンジを加えた伴奏を聴いて幼児が様々なことを感じることができた。幼児を歌にもう一度惹きつけるためには、アレンジは有効であることもわかった。子どもたちと触れ合う中で、音楽的感性を高めることは保育者の責任として大切であり、メロディーに対して変化のある和音設定をし、伴奏を工夫することは重要である。一つ一つの音を丁寧に、心を込めて伴奏する努力をすることが保育者にとって大切である。