著者
久島 繁 渡辺 恒夫 新井 勇治 THORPE Trevor A.
出版者
日本植物細胞分子生物学会
雑誌
植物組織培養 (ISSN:02895773)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.52-58, 1985

ラクトース適応のメカニズムを検討するため, アサガオの非耐性および耐性培養株を用いて, いくつかの検討を行った. 両接細胞にラクターゼ, UDP-ガラクトースピロフォスフォリラーゼ, UDP-グルコースピロフォスフォリラーゼおよびUDP-ガラクトースエピメラーゼ活性は存在した. それゆえ, 非適応細胞も潜在的にはラクトース代謝能を持つものと思われた. しかし, この細胞ではUDP-ガラクトースエピメラーゼ活性は極めて弱く, 細胞壁結合型ラクターゼ活性は適応細胞のそれの約30%であった. ラクトース適応細胞をラクトース培地で培養した場合, 培養期間を通じて細胞内グルコース含量は低く, ガラクトース含量は高かった. それゆえ, これらの細胞はガラクトースよりグルコースをプレファレンシャルに利用するものと思われる. ガラクトースに培養した非適応細胞のG-6-P, G-1-PおよびGal-1-Pの含量はショ糖で培養したそれの約3倍であった. また, UDPGおよびUDP galの含量はショ糖で培養した場合のそれぞれ約1.5倍, 僅増であった. それに比して, ガラクトース培養非適応細胞のG-6-P, G-1-P, Gal-1-Pの含量はショ糖培養のそれの約2倍となっており, ガラクトース培養適応細胞のそれより約20%低かった. この事は適応細胞が非適応細胞に比して大きなガラクトースおよびラクトース代謝能を持っている事を示唆している. これらの結果に基づきラクトースおよびガラクトースの阻害とそれに対する適応について論議した.
著者
新井 修 芝田 房枝 沢 仁子 池添 正哉 山口 博
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.149, 2005

【目的】<BR> 阪神淡路大震災から10年、地震列島であり台風の通過点と言われる日本において、どんな災害がいつあるかわからない。本年10月23日には透析中に新潟中越地震があり、当院においても震度2を経験した。緊急離脱及び避難について患者、スタッフ共に意識も高まってきている。しかし透析患者の高齢化も進み、自分で緊急離脱できる患者の減少が見られるため、5年前との離脱、避難について比較し、今回患者のレベルにあった対処方法をまとめたので報告する。<BR>【方法】<BR>1.全患者へアンケート調査、分析、検討<BR>2.緊急離脱・避難訓練<BR>3.環境整備<BR>4.患者会を含め学習会<BR>5.上記による患者個人に合わせた対応の検討と実施<BR>【結果および考察】<BR> 危機管理、災害対策についてスタッフ、患者とともに毎年「離脱訓練」「避難訓練」を行なってきた。5年前との比較を見ると高齢化が進んでおり、今回患者アンケートで介助者の増加がわかった。訓練後患者から「パニックになりそう」「自分の命は自分で守らないと」といった意見が見られた。患者個別の離脱方法、避難方法の用紙を渡すことで、患者個々の避難方法が認識でき安心感へとつながった。透析自体も自己血管型から人工血管、テシオカテーテル等多種多様化されてきているため、離脱方法、避難方法を患者の選定をすることでスタッフも動きやすくなり、無駄が少なくなった。患者会と協力し学習会を行なうことで災害に対して意識を高めることができた。スタッフも病院防災訓練時同時に訓練することで災害に対する意識も高まり、環境も整えることができた。当施設においても長野県内の透析施設災害ネットワーク加入により災害面への対処も一歩前進しつつある。<BR>【まとめ】<BR> 災害時には、まず患者の安全を第一に優先する。それとともに、スタッフ自らも一次、二次災害などに巻き込まれないことも重要である。それには患者層に沿った訓練、離脱方法を確立することは大切であり、スタッフの日々の意識と、訓練が大切である。<BR>※倫理的配慮として研究に当たって患者へ趣旨を充分説明、理解していただいた上でアンケート調査等を行なっている。
著者
新井 正一 土居 亮介 久志野 彰寛 大沼 雅明
出版者
純真学園大学
雑誌
純真学園大学雑誌 = Journal of Junshin Gakuen University, Faculty of Health Sciences (ISSN:21866481)
巻号頁・発行日
no.5, pp.75-80, 2016-03

要旨 : 2011年3月15日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故によって放射性物質が放出された. 震災後., 原発より南に20km離れた福島県双葉郡広野町において., 震災後1年目の2012年3月および3年半後の2014年8月にダストサンプラーを用いて空気中浮遊塵を収集し., その中に含まれる放射性物質を同定., 量を算出した. その結果., 2012年3月時点では134-Csが9.26×10-7 Bq/l ., 137-Csが2.42×10-7 Bq/l 含まれていた. この空気を吸った場合の内部被ばくを算出すると0.95 μSv/年 となった. 2014年8月時点ではこれら放射性セシウムは検出限界以下となった. 被ばくには内部被ばく., 外部被ばくの合算で評価されるが., 本研究結果および他の先行論文の結果も踏まえて., 福島住民の年間被ばく線量は1mSv以下になることが示唆された. Abstract : Radioactive substances were released due to the accident at the Tokyo Electric Power Company Fukushima Daiichi Nuclear Power Station in relation to the Great East Japan Earthquake occurred in March 2011. After the earthquake disaster, we collected drifting dust in the air by using dust samplers in Futabagun Hironomachi, Fukushima, about 20km south of the nuclear power plant in March 2012, which was one year after the earthquake disaster, and in August 2014, which was three and half years after the earthquake disaster, and identified and calculated the concentration of radioactive substances. As a result, 9.26×10-7 Bq/l of 134-Cs were included and 1.39×10-6 Bq/l of 137-Cs were included. When internal exposure was calculated in case of breathing this air, it was 0.95 μSv/year. As of August 2014, especially radioactive cesium among these radioactive substances was the below detection limit.Radiation exposure is evaluated by the total of internal and external exposures, and in consideration of the results of this research and the precedent researches, it was suggested that the annual radiation exposure level of the residents in Fukushima was below 1mSv.
著者
金村 米博 市村 幸一 正札 智子 山崎 麻美 渋井 壮一郎 新井 一 西川 亮
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.436-444, 2015
被引用文献数
1

&emsp;近年, 髄芽腫の分子遺伝学的診断および国際コンセンサス4分子亜群分類 (WNT, SHH, Group 3, Group 4) は, 腫瘍特性解析, 腫瘍分類, 臨床的リスク評価, 新規治療法開発に大きなブレークスルーを引き起こしている. 国内では, 日本小児分子脳腫瘍グループ (JPMNG) が組織され, 全国から試料を収集し, 国際的コンセンサスに基づく小児脳腫瘍の遺伝子診断実施体制の構築が開始されている. 髄芽腫の分子遺伝学的診断は, 今後の診療および研究において, 重要かつ不可欠な手法になると思われ, 本邦のJPMNG研究は, 現在いまだに完治が困難な髄芽腫の診療水準のさらなる向上と予後改善に大きく貢献し得ると考える.
著者
新井 康平 梶原 武久 槙下 伸一郎
出版者
日本原価計算研究学会
雑誌
原価計算研究 (ISSN:13496530)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.58-67, 2012

本論文では,スタートアップ企業における予算管理システムの有効性について,経験的な調査を実施している。先行研究が限られたサンプルでしか調査を実施していないことに対して,本論文では,ひろくスタートアップ企業からデータを収集した。結果として,スタートアップ企業における予算管理システムの採用は早期の黒字化に有意に影響するという証拠を得た。
著者
二階堂 諒 杉 正夫 太田 順 田村 雄介 新井 民夫 佐藤 洋一 高増 潔 鈴木 宏正
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2005年度精密工学会春季大会
巻号頁・発行日
pp.165, 2005-03-10 (Released:2005-10-06)

著者らのグループは,セル生産システムを知能化,機械化して人間作業者を情報面,物理面の両面から支援するシステム“Attentive Workbench”を提案している.AWBの構成要素である自走式トレイ群は,物品の搬送を担当するが,搬送対象物の大きさや形によっては複数のトレイが集まって大きな形態を生成し,協調搬送を行う.この形態生成を効率良く行うヒューリスティクスを提案し,その有効性を検証する.
著者
樋口 彰宏 斉藤 大 新井 基洋 岡本 牧人 八尾 和雄
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.438-443, 1997

1996年6月より我々は整形外科関節手術用シェーバーシステムである, SE5, ペースセッター (ラージハンドピース) をESSに使用し始めた。56例 (99側) にSE5 (あるいはペースセッター), ハマー, 通常手術器具でESSを行い, その有用性の検討を行ったところ, SE5 (あるいはペースセッター) 使用症例 (あるいは側) はハマー, 通常器具使用症例 (あるいは側) に比して, 手術時間, 出血量, 術中副損傷, 創傷治癒など全てにおいて優れていた。シェーバーの安全性, 有用性はそのままで, ハマーの欠点を克服できた。SE5, ペースセッターは整形外科で広く普及していて, すでに所有している施設も多いため, 多くの耳鼻咽喉科医が, すぐにでもESSにシェーバーを使用できるという利点もある。
著者
新井 孝喜
出版者
日本カリキュラム学会
雑誌
カリキュラム研究 (ISSN:0918354X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.27-38, 1994-03-30 (Released:2017-10-17)

The purpose of this paper is to clarify the formation of curricula for the object lessons in the elememtary school attached to Tokyo Higher Normal School (Koshi-Husho) in the Taisho Era. In the latter Meiji era, Koshi-Husho provided the subject for the lower grades which was called "Jinjo Shougaku Chiri Rekishi Rika" (an integrated curriculum geography, history, and nature study). The subject put emphasis on the observation and the activity of the children. In the Taisho era, in 1912, the subject called "Kyodo-ka" (Community Study), and also the contents was changed. I will examine the formation of this subject by focusing on the contents. In conclusion, the Community Study was divided into the Nature Study in the Lower Grades and "Kyodo-Chiri" (geography of the community). And the contents of "Object Lesson" in Taisho 13 (1924) were restricted within the subject matter of the natural science. The contents are as follows. 1. The subject of this study 2. The principles and contents of Community Study in 1912 3. The formation of "object lesson" in the Taisho Era 4. The principles and contents of Nature Study in Lower Grades 5. Conclusion
著者
船越 公威 岡田 滋 永里 歩美 新井 あいか
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.167-181, 2015 (Released:2016-01-28)
参考文献数
35

特定外来生物のフイリマングースHerpestes auropunctatusの生息が,2006年~2011年の間に鹿児島県本土の2ヶ所(鹿児島市と薩摩川内市)で確認された.鹿児島市では,確認されて以後,生け捕り用カゴワナを利用して駆除事業が2009年7月から開始された.同時に,自動撮影装置による生息確認を2009年~2013年にマングース捕獲地点(耕作放棄地,荒地,竹藪および果樹園等)とその周辺域および山地林内で行った.また,2012年度にはヘアトラップによる体毛を採取し,マングースの根絶に向けた捕獲と在来種の生息状況を把握した.その結果,マングースの捕獲総数は115頭(雄47頭,雌68頭)であった.捕獲ゼロとなった2011年2月以降も集中捕獲を実施したが,捕獲されなかったことから,根絶またはそれに近い状況に入ったと判断された.一方,薩摩川内市で2011年12月に1頭が目撃され,2月4日に成獣雄1頭が捕獲された.その後のモニタリングでは捕獲ゼロであった.鹿児島市にマングースが定着して30年経過しながら,山地林内へ進出することなく喜入地区とその周辺の開けた地域で閉鎖的に存続していた理由として,本種の低温適応への生理的制限と競合関係あるいは天敵としてのテンの存在が考えられた.マングース駆除に伴う在来種の混獲による捕獲率や撮影率の変化から,在来種の生息状況を考察した.
著者
新井 沙也加 横川 実加 小島 聖 中屋 順子 渡邊 晶規
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】ハイヒールを着用した歩行では足関節底屈位が強制されることから,下肢関節への悪影響が懸念される。この影響について,これまで重心動揺や姿勢との関連を検討した報告が散見される。しかし,裸足とハイヒール着用での歩行における角速度の相異については不明な点が多い。そこで今回,裸足とハイヒール着用での歩行について,膝関節の角速度の変化を明らかにすることを目的に本研究を実施した。【方法】対象は下肢に整形外科的な既往のない健常女性8名(平均年齢21±2.1歳,平均身長158.8±6.7cm,平均体重49.2±5.3kg)とした。すべての被験者は,日常生活にてハイヒールを愛用しており,それを着用した歩行に十分慣れている被験者に限定した。また,ハイヒールは被験者が履きなれたものとし,足長に対して40~45%のヒール高を本研究で用いた。角速度の測定は,3軸ジャイロセンサ(MP-G3-01B,MicroStone社製)を用いた。センサの装着部位は右下腿の脛骨粗面下1横指に貼付し,動作中の筋収縮によってセンサが動かないことを確認した。X軸上の運動は膝の屈曲(+)・伸展(-),Y軸上の運動は下腿の内旋(+)・外旋(-),Z軸上の運動は膝の内反(+)・外反(-)に一致するように設置した。センサは疼痛のない範囲でビニールテープを用いて強固に固定した。サンプリング周波数は10msにて導出した。センサからの出力は信号処理ボックスを介してパーソナルコンピューター(dynabook T350,TOSHIBA社製)に取り込み,専用データ解析ソフトにて解析した。歩行の測定は,初めに裸足歩行,次にハイヒール歩行を実施した。歩行速度は被験者の快適スピードとし,加速と減速の影響を排除するため最初の4歩行周期を除外した5,6,7歩行周期の立脚期を抽出してデータ解析に使用した。1歩行周期の時間が被験者により異なるため,各被験者の歩行周期を時間で正規化した。なお,被験者は測定中のセンサ装着状況に慣れる必要があり,通常の歩行に可能な限り近似するよう測定前には十分練習を行った。また,測定中にバランスを崩した際には再度測定を行った。各方向への角速度からピーク値を算出し,それぞれ裸足歩行と比較した。統計学的手法としては,統計ソフトR(Ver.2.15.1)を用いピーク値の群間比較に対応のあるt検定を行った。危険率5%未満で有意差の判定を行った。【結果】膝の屈曲・伸展および内反・外反における角速度の変化については,裸足歩行とハイヒール歩行は概ね同様の波形を示した。しかし膝の内旋・外旋角速度は裸足歩行に比してハイヒール歩行の方が内旋角速度が減少しピーク値は有意に低値であった(p<0.05)。その他については有意差は認められなかったものの,いずれにおいても裸足歩行に比してハイヒール歩行は低値を示す傾向が認められた。【考察】ハイヒールを着用した歩行では,動作中に足関節底屈位を強制されることから,膝関節の伸展可動域が減少すると考えられている。本研究の結果で得られた膝内旋角速度の減少は,膝関節の伸展可動域減少に追随する終末強制回旋運動の不足が生じ,結果として角速度が減少したものと考えられる。すなわち,ハイヒールによる不安定さを可動域を減少させることにより担保しているものと推察される。【理学療法学研究としての意義】履物による足関節への影響は種々の報告があるものの,膝関節への影響については不明な点が多い。今回,膝関節の角速度について検討し,履物が身体に与える影響を明らかにした点で意義がある。
著者
星 昭夫 官沢 文彦 榑谷 和男 実吉 峯郎 新井 祥子
出版者
The Japanese Cancer Association
雑誌
GANN Japanese Journal of Cancer Research (ISSN:0016450X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.145-146, 1971-04-30 (Released:2008-10-23)
参考文献数
8
被引用文献数
4

2, 2'-O-Cyclocytidine was active against L-1210 leukemia. Cures were observed at the optimal dose of the compound, though no cures were obtained at any dose of any of the known antitumor agents. The compound was less toxic than 1-β-D-arabinofuranosyl-cytosine and resistant to cytidine deaminase.
著者
高橋 昌也 新井 克明 本間 真人 鈴木 勝 佐藤 信一 幸田 幸直
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.172-175, 2002-04-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

To investigate the description of the expiration date and manufacturing number on the drug packages, “pillow” packages and “heat-seal” packages, the questionnairing was carried out to pharmaceutical companies. Fifty-six drugs consisting of three hundred thirty-seven items, with sales of over 10 billion yen in 1998, were investigated at the corresponding 26 companies. The recovery rate of the questionnaire from the company was 100%, and the answer for all questions was also perfect. Three hundred fourteen items (93%) have had description regarding the manufacturing number and/or the expiration date on the heat-sealed packages. The manufacturing number took precedence over the expiration date. Of 269 pillow packages, 69 items (26%) have had description of manufacturing number and/or expiration date on the pillow package. There were 41 products (12%) that the company did not guarantee an expiration date being described on the box container when the packages were taken out from the box container.As a result, the description of the manufacturing number and expiration date on the packages, “pillow” and “heat-seal”, is still not complete even though the companies guarantee the expiration date when the drugs were stored with these packages. Since the information of the expiration date is necessary for the appropriate management of tablet and capsule products, it is required to describe manufacturing number and expiration date on every drug package including “pillow” and “heat-seal” packages.
著者
本田 真大 大島 由之 新井 邦二郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.336-348, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
23
被引用文献数
11 3

本研究の目的は集団社会的スキル訓練(以下, CSST)が不適応状態にある生徒に与える効果を検討することであった。訓練対象は6学級の生徒228名であった。ターゲットスキルを決定するにあたり, 教師と生徒にニーズ調査を行い, その結果を生徒対象のオリエンテーションでフィードバックした。ターゲットスキルは「上手な聴き方」と「心があたたかくなる言葉」であり, それぞれ授業(50分)で1回ずつ, 合計2回の訓練が行われた。効果の検討にはターゲットスキルの自己評定, 教師評定, 仲間評定を用いた。分散分析で効果を検討した結果, 不適応状態にある生徒の仲間評定のスキル得点と仲間からの受容得点が増加した。3年生では仲間評定のスキル得点に加えて自己評定のスキル得点も一部増加したが, 教師評定のスキル得点は一部低下した。これらの結果から, ターゲットスキルの決定に生徒のニーズを考慮する実践の有効性, 不適応生徒に対するCSSTの効果の限界, 評定者間の結果の違いに関して考察され, 中学校でCSSTをより効果的に行うための方法が提案された。
著者
新井 聖子
出版者
GRIPS Policy Research Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.18-13, 2018-10

近年の日本の基礎研究力の国際的地位の低下は、特に日本の企業や大学の国際競争力が高い材料科学,工学,化学などの分野で顕著である。一方、逆に特にこれらの分野で中国、韓国の基礎研究力が向上している。その理由は、特に1990年代以降の日本政府の大学院生倍増計画、ポスドク等1万人計画、留学生30万人計画などの政策をきっかけとして、バランスを失する形で中国や韓国からの留学生やポスドクの受け入れが急増し、日本から知識のスピルオーバーが起こったためである。このことは同じ技術領域で日本の企業と東アジアのライバル企業の間での熾烈な国際競争を招き、日本の産業や経済に大きな負の影響を与えることにつながった。基礎研究の東アジア化の度合いは国によって違いがある。日本では90年代後半から急速に進んだが、米国では2000年代後半ごろからで、東アジア化の影響が大きい学術分野は日本と米国で似ている。欧州ではまだあまり東アジア化の影響は大きくないが、近年中国からの留学生が急増していることから、今後おそらくもっと大きくなるとみられる。現在の日本政府の予算は、日本から海外に出る者への支援は海外から日本に来る留学生への支援に比して格段に少なく、日本に来る留学生の9割はアジアからである。途上国援助や学術論文を増やす目的のために日本への留学生数を増やすことは一時しのぎでしかなく、持続可能な方策ではない。今後の日本の政策としては、量よりも質の向上、生産性の向上を図るため、基礎研究の中心である欧米の国々と協力をより推進することが重要である。In recent years, Japan’s science ranking has steadily declined in fields such as materials science, engineering, and chemistry, in which Japanese companies and universities are highly competitive internationally. At the same time, the basic science capability of China and South Korea is improving, especially in these fields. These are because a large amount of knowledge spillover occurred from Japan through international students and postdocs from China and South Korea to Japan. The number of the international students and postdocs actually increased rapidly as a result of the Japanese government policies since the 1990s, in matters such as the doubling of the graduate student plan, the 10,000 postdocs plan, and the 300,000 exchange students plan. Those policy based actions led to intense international competition between Japanese companies and their East Asian counterparts in the same science and technology fields, all of which has had a substantial negative impact on Japanese industry and economy.The degree of East Asianization of basic science varies from country to country in the world. In Japan East Asianization rapidly gained momentum in the latter half of the 1990s, but in the US this began in the latter half of the 2000s. Much the same fields showed the strongest effects of East Asianization in both Japan and the US. Although the impact of East Asianization is not yet so serious in Europe, it is likely to carry more weight in the near future, given the recent rapid growth of Chinese student numbers.The Japanese government’s current budget to support students going abroad from Japan is much smaller than that to support international students coming to Japan, and ninety percent of those international students are from Asia. Accepting more and more international students to support developing countries (and to compensate for the decreasing number of Japanese doctoral students) may serve to increase academic publications in the short term, but it is surely unsustainable in the long run. The Japanese government should focus on the promotion of cooperation with Western countries, which are centers of basic science, in order to improve Japan’s science quality and productivity rather than quantity.
著者
持永 芳文 浜田 博徳 新井 浩一
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.41-50, 1990-01-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
6
被引用文献数
1

In the single-phase AC railroad electrification, the voltage unbalance of three-phase electric power system has to be reduced. For this purpose, three-phase power is converted to two-phase power by the Scott-connected transformer, and the electric power is received from a powerful or high-tension source.Recently, regenerative braking has come to be applied to electric rolling-stocks, but occasionally the regenerative brake increases the voltage unbalance in the three-phase electric power source with the ordinary two-phase feeding system. So, in some cases unbalance power compensation may be found more profitable than the Scott-connected transformer.This paper describes a theoretical study and results of a test on a mini-model which uses a scalene Scott-connected transformer, switched reactors and capacitors for the purpose of reducing the voltage unbalance in the three-phase electric power source. By this method, main phase (M) and teaser transformer (T) voltages of scalene Scott-connected transformer secondary side are decided by a single load power factor, and the sum of the capacities of the reactors and the capacitors is equal to the apparent power of single-phase load.For example in SCR switched control of the reactors/capacitors which has four steps in power running and two steps in regenerative braking, the voltage unbalance in the three-phase electric power source can be reduced satisfactorily.