著者
湯浅 龍彦 根本 英明 木村 暁夫 吉野 英 山田 滋雄 西宮 仁
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.601-605, 2001-12-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
16

慢性硬膜下血腫除去術の直後に発症したCreutzfeldt-Jakob病(CJD)を経験した. これはきわめて特殊な経過であり, 術前にはもちろん, 術後においてもCJDの診断を下すことは困難であった. そのなかで, 進行性に悪化する臨床症状に加えて拡張強調MRIがCJDの診断の糸口になった. つまり, 脳波に未だ周期性同期性放電(PSD)の出現していない発病初期の脳MRIにおいて, T1強調画像やT2強調画像にほとんど変化がみられないのに対し, 拡張強調MR画像に明瞭な病変がみられたことは特異なことであった.また, 本例においてはCJDの初期の臨床症状は明らかな左右差をもって発症しており, かつ, 同時期の脳MRIの病変分布にもまた著しい左右差が見られた. これは先行した慢性硬膜下血腫がCJDの脳病変の発現経過に影響を与えたものと推論され興味深いことであった.さらに本例は, CJD患者が外科手術を受ける事態が現実に起こりうることを示すものであり, CJDの診療に当る施設においては, 感染防御対策の面からだけでなく, 手術を受け入れるために必要な整備と具体的な手順書を早急に整えるべきであろう.
著者
武田 聖司 西村 優基 宗像 雅広 澤口 拓磨 木村 英雄
出版者
一般社団法人 日本原子力学会 バックエンド部会
雑誌
原子力バックエンド研究 (ISSN:18847579)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.23-38, 2012 (Released:2013-02-28)
参考文献数
40

TRU廃棄物の地層処分の安全評価において,多量のセメント系材料を使用した処分施設から溶出する高アルカリ性地下水がバリア機能へ影響を及ぼす可能性があることがとくに懸念されている.そこで,セメント系材料から溶出する高アルカリ性地下水の母岩への影響を,地下水流動場において地球化学と物質移行の連成解析でシミュレートし,TRU廃棄物の地層処分における高アルカリ性領域の拡がりに,二次鉱物の生成の有無がどのように影響するかを検討した.また,母岩の水理特性の影響の解析も実施した. ゼオライトの沈殿に関して,1) 実験での観察により沈殿する可能性がとくに高いと考えられるanalcimeとphillipsite(2種類)のみを考慮した場合や,2) それ以外で沈殿する可能性のある13種類のゼオライト(clinoptilolite(2種類),heulandite,laumontite,mordenite,erionite(2種類),chabazite(2種類),epistilbite,yugawaralite,stilbite,scolecite)も含めた計16種類のゼオライトを考慮した場合では,高アルカリ性領域の拡がりや二次鉱物の沈殿量に関してほぼ同様の結果が得られ,高アルカリ性領域(pH>11)は40 m程度までしか拡がらず,当該領域で0.1Vol.%以上の二次鉱物が沈殿し,いずれのケースでも主にゼオライトとしてはanalcimeとphillipsite,ゼオライト以外としてはsepioliteの沈殿が支配的であった.一方,3) それらのゼオライトの沈殿を考慮しない場合には,二次鉱物の生成量はゼオライトを考慮した場合に比べて少なく,高アルカリ性領域が広範囲に拡がる計算結果となった.このことから,二次鉱物としてゼオライトが生成するか否かが高アルカリ成分の拡がりや二次鉱物の沈殿量に影響することがわかった.また,地下水流速の影響をみるために10倍速い流速を設定した場合では,もとの流速を設定したケースより広範囲に高アルカリ成分が拡がることが示された.これは高アルカリ成分を中和する化学反応が,母岩に含まれる鉱物の溶解反応速度によって制限されているためと考えられた.
著者
木村 勝彦
出版者
筑波大学
雑誌
哲学・思想論集 (ISSN:02867648)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.31-52, 1998

一 カントは宗教について、あるいは宗教的な事柄について実に多くのことを語っている。そして、宗教をめぐるカントの言説は、批判哲学の確立と決して無関係なものではなく、批判哲学そのものの目指すところと深く関わり、むしろそれを一貫して導き続けているのである。 ...
著者
山辺 高司 永田 正毅 石蔵 文信 安田 聡 木村 晃二 宮武 邦夫
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.12-17, 1991-01-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
12

経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術(PTMC)を施行するにあたりバルーン径設定が開大弁口面積,僧帽弁逆流に及ぼす影響について検討した.対象は僧帽弁狭窄症患者46例.旧型28mm仕様の井上バルーンカテーテルを用いてPTMCを施行した.設定バルーン径を<26mm,26mm,26mm<の3群に分けて開大弁口面積,僧帽弁逆流を比較した.設定バルーン径26mmの14例,26mm末満の5例について最大開大時の中央径をシネフィルム上で計測,検討した.また,バルーンの特性を知るため狭窄弁ロモデルとして設定径よりも小さな穴の中で開大し,内圧を測定した.開大弁口面積は,設定バルーン径が小さい場合に小さい傾向にあった.僧帽弁逆流は設定26mm未満の場合は認められなかった.設定バルーン径と実測バルーン径の比をとると,設定26mmでは平均0.94,設定26mm未満では平均O.83と有意な差を認めた.バルーン内圧は中央径の増大に伴い上昇した.バルーン中央部に抵抗がかからない状態では26mm設定と24mm設定の間の内圧の差は0.3kg/cm2程度であったが,抵抗が加わった場合その差は0.9~1.Okg/cm2になった.以上より,バルーン内圧の高い26mm設定の場合,より設定径に近く開大することが判明した.バルーン径を大きくすると僧帽弁逆流の増悪の頻度が増し,小さくすると内圧が下がり十分な開大の効果が得られなかった.目標とするバルーン径で十分な圧が得られるバルーンの開発が望まれる.
著者
佐々木 太一 木村 富士男
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.65-74, 2001-02-28
被引用文献数
18

1996, 97年の夏期の静穏日7日間について, 関東平野及び周囲の山岳域における可降水量の日変動を調べた.国土地理院により全国約1000地点において観測され, 3時間間隔で算出されているGPS大気遅延量から可降水量を求め, 他の気象データとともに解析した.日中には, 大規模な谷風及び太平洋あるいは日本海側からの海風と思われる地上風の収束が関東北部や西部の山岳域に見られる.この領域では可降水量が午後に大きく増加し18時頃に最大となる.一方, 関東平野の内陸部ではそれより遅れて24時頃に最大となる.可降水量の増大に対応して降水頻度が増加する傾向が見られる.これとは対照的に, 関東平野の沿岸部における可降水量の日変動の振幅は小さく, 特に海風の吹き込む時間帯にはほとんど増加していない.大島や石廊崎における可降水量や地上比湿が海上の水蒸気量を代表すると想定し本土と比較した結果, 海上は陸上に比べ大気下層は湿潤であるものの可降水量は小さいことがわかる.沿岸部において日中に可降水量が増加しない理由は, 海上大気の可降水量が小さいことと, この領域が局地循環による発散域に位置するためであると推測される.
著者
新良 力也 西田 瑞彦 森泉 美穂子 赤羽 幾子 棚橋 寿彦 佐藤 孝 鳥山 和伸 木村 武 矢内 純太
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.73-80, 2010
参考文献数
30
被引用文献数
1

我が国の水田ではコメの生産調整のために1969年から転作が開始され、1978年に水田利用再編対策が開始されてからは、連作の回避、地力回復、村落内の負担の公平性等の理由から田畑輪換が広く実施されている。1980年以降は水田面積約2,900,000haのうち調整面積は500,000haを超え、2009年度には作物の作付けされた水田面積2,330,000haの約3分の1(710,000ha)が畑地利用されているとみられる。このような状況の中でダイズ等の収量低下が顕在化し、土壌有機物含量等の肥沃度の低下が懸念されている。しかし、連作水田とは異なり、湛水・還元環境と落水・酸化環境の繰り返しが、有機物の蓄積や分解にどのような影響を及ぼし、土壌窒素給源等をどのように変化させているか、あるいは土壌リン酸の可給性が連作水田とどのように異なっているのか等についての知見は十分整理されていない。このため、田畑輪換条件での肥沃度変動の法則性やメカニズムの解明が必要である。一方、肥沃度維持対策では、家畜ふん堆肥や緑肥等の資材施用の有効性や適正施用量についての知見が必要であり、土壌からの養分供給や土壌への蓄積を踏まえた施用方法の確立が求められている。そこで、土壌肥沃度部門と肥料・資材部門が共同で、田畑輪換水田における肥沃度の現状と関連研究の到達点を共有し、今後の展望を明らかにするため、1.田畑輪換水田の現状と土壌管理についての問題提起、2.田畑輪換水田の土壌窒素と施用有機物の挙動、3.土壌有機態窒素の実体について、4.田畑輪換土壌におけるリン酸の挙動と各種資材による供給、5.家畜ふん堆肥を利用した肥培管理、6.緑肥を利用した肥培管理の6課題でシンポジウムを開催したので概要を報告する。
著者
長谷川達人 中村宗広 梶原祐輔 木村春彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.12, pp.1-7, 2013-12-12

近年モバイル端末の普及に伴い利用者のマナーやモラルが問題視されており,特に音量の設定は,公共交通機関や映画館,図書館,また,学校や会社の社会生活等様々な場所にて規制されていることが多い.Android スマートフォンにおいては,音量設定は大きく分けて 2 種類,着信音量とアプリ音量がある.着信音量は電話やメールが着信した際の音量であり,マナーモード設定と連動している.アプリ音量はゲームのようなアプリケーションで発される音量の設定であり,一般的にはマナーモード設定と連動されていない.本稿では特にアプリ音量に焦点を当て,Android スマートフォンから得られる様々なログ情報を用いてアプリ音量の自動化を行う.ログ情報として主に位置情報,起動中のアプリ名称,時刻などを用いて学習を行う.Because of the diffusion of a smartphone, user's manners or morals are indicated. Among them, the volume is frequently regulated in the public spaces like theater, library, school, and office. Android smartphone has two kinds of volume setting, one of which is ringtone volume, and the other is application volume. Ringtone volume, is a volume receiving a call or a e-mail, changes in conjunction with silent mode setting. Application volume, is a volume working an application like games, doesn't generally change in conjunction with silent mode setting. We propose a method automatically sets a volume utilizing various kind of attributes observed on an Android smartphone. In this paper, this method especially focuss on the application volume. This algorithm mainly processes location logs, application names, time information and so on to learn.
著者
岡元 友実子 ハン ソンヨン 木村 順平
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.57-61, 2015-09-30 (Released:2016-01-20)
参考文献数
23
被引用文献数
2

韓国におけるユーラシアカワウソの個体群は近年急激に減少し,国の天然記念物(No. 330) および絶滅危惧種Ⅰ類に指定されている。本種の保全をより効果的にするため,アジア地 域で唯一のカワウソ専門研究機関として,韓国の江原道華川に韓国カワウソ研究センター(KORC)が設立された。本資料では,KORCの歴史と研究活動を通し韓国におけるユーラシアカワウソ保全について紹介する。またKORC は本種の繁殖に関わる貴重な情報を海外へも提供している。その成果が活かされた例として,台北動物園における人工哺育の成功についても述べる。
著者
木村 光 林田 直澄
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P28, 2009 (Released:2009-06-16)

豊橋鉄道東田本線は、半世紀以上の長い歴史を持つため、市内の周辺環境と合わなくなってきており、様々な問題が生じている。現在の都市環境と社会に合わせたLRTのあり方を研究し、今後の都市における公共機関の改善を視野に入れた。今回の研究で、2階建ての車両に2階建てのホームを提案した。これによって、短時間の間でスムーズに乗客の乗り降りができる。また、エレベーター付きの歩道橋と連続して、利用者は使用できる。
著者
木村 俊哉 川崎 聡 島垣 満 内海 政春 後藤 公成
出版者
The Japan Society of Mechanical Engineers
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.78, no.787, pp.576-587, 2012

CFD simulations were performed for the leakage flow in the gap between the casing and the shroud of a centrifugal impeller. The effects of swirl brakes equipped in the casing on the leakage flow were numerically investigated. The leakage flow swirling due to impeller rotation was trapped inside swirl brakes and interacted with the walls of the swirl brake, generating a very complex flow and a vortex structure inside. By the interaction with swirl brakes, the leakage flow rapidly lost its angular momentum mainly in the outer region of the swirl brake. The loss of swirl resulted in a decrease of the pressure difference in the radial direction due to the centrifugal force effect. The radial distribution of pressure in the gap between the casing and the shroud was largely modified, and thus the axial thrust force on the impeller was changed as well. The thrust balance of the impeller can be adjusted by an appropriate design of swirl brakes and the instability of rotating shaft can be reduced by decreasing the swirl of the leakage flow.
著者
濵口 正人 木村 暢夫 天下井 清
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.79-87, 1995-11 (Released:2011-07-07)

わが国のまき網漁業はいわし漁業を主体としたあぐり網を改良したものに、アメリカ式巾着網漁法を取り入れ普及した漁法である。その中でも特に大中型まき網漁業は船団操業形態をとっており、一船団は網船、魚探船、灯船(集魚灯の使用が禁止されている海域もある)、運搬船(2~3隻)からなっている。このことから、他の漁法に比べ操業形態も特殊で、投網時に網船は旋回しながら40トン前後の漁具を海中に投下、揚網時には魚探船による裏漕ぎにより網なりを良くすると同時に、網船に大きな傾斜モーメントを与える鐶締め時の片舷への大傾斜を抑制している。さらに、漁獲物を運搬船に積載する場合は、係留索で網船と運搬船を張り合わせると同時に、両船が接近しないように魚探船と灯船でそれぞれを裏漕ぎする必要がある。このため、操業中には波浪や風だけではなく、さまざまな外力によるモーメントが網船に作用している。そこで本研究では、135GT型まき網漁船(網船)の投網から揚船までの一操業中における動揺特性に関し、実船実験を実施し基礎的な解析を行い、さらに、前報の魚群探索中の動揺特性と比較検討を行ったのでその結果について報告する。
著者
木村 義雄
出版者
大法輪閣
雑誌
大法輪
巻号頁・発行日
vol.83, no.7, pp.226-235, 2016-07
著者
藤原 敦子 木村 泰典 三神 一哉 内田 睦 建部 敦
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.607-610, 2002-10
被引用文献数
2

65歳女.肉眼的血尿で膀胱内腫瘍を指摘された.膀胱はコアグラタンポナーデの状態で,膀胱洗浄により血塊と共に悪臭の強い多量の壊死組織が排出された.膀胱鏡では左側壁から後壁を中心とする非乳頭状広基性腫瘍を認め,膀胱粘膜全体が表面不整であった.骨盤部造影CTで膀胱左側壁を中心とする8×6cmの腫瘍を認め,膀胱壁は全体に肥厚していた.1週間後の膀胱造影では左側壁からの造影剤漏出を認めた.膀胱癌T4N2M1と診断し,発熱が増悪するため膀胱全摘術及び両側尿管皮膚瘻造設術を施行した.摘出組織で表面を壊死組織で覆われた灰白色の腫瘍を認め,膀胱壁外に到達した部分に瘻孔が形成されていた.組織学的には表在性に位置する癌腫の部分と,優勢な肉腫様部分で構成され,両者の境界は明瞭であった.癌腫は扁平上皮に分化している細胞,肉腫様部分は未分化な紡錘形細胞で構成されていた.術後一時的に改善したが発熱が再燃し,2週後に敗血症で死亡したA 65-year-old woman was referred to our clinic with gross hematuria. Cystoscopy revealed a non-papillary and non-pedunculated tumor on the left lateral wall of the bladder. A piece of necrotic tissue obtained from the bladder irrigation was histologically squamous cell carcinoma. A perforation at the left lateral wall of the bladder was found on the cystogram. Bone scintigraphy showed multiple metastases and computed tomography scans showed multiple lymph node metastases in the pelvic cavity. The clinical diagnosis was bladder carcinoma of T4N2M1 stage with an abscess due to a spontaneous perforation. Total cystectomy with bilateral ureterocutaneostomy was performed. She died due to sepsis 13 days after the operation. Histologically, the tumor was composed of carcinomatous and sarcomatous elements. The carcinomatous element was compatible with squamous cell carcinoma and the sarcomatous element was composed of undifferentiated malignant spindle cells. Immunohistochemical examination showed that the carcinomatous component was positive for keratin and human chorionic gonadotropin (HCG) and the spindle cell component positive for vimentin, desmin and HCG. Therefore, we diagnosed the tumor as sarcomatoid carcinoma. We reviewed 56 cases of carcinosarcoma of the bladder in Japan and discussed the clinicopathology of the disease.
著者
木村 大樹
出版者
延喜式研究会
雑誌
延喜式研究 (ISSN:09161392)
巻号頁・発行日
no.30, pp.29-43, 2015-02