著者
内田 立身 国分 啓二 酒井 一吉 五十嵐 忠行 鈴木 照夫 樋口 利行 木村 秀夫 松田 信 刈米 重夫
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.146-153, 1984-06-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
24

慢性関節リウマチの鉄代謝異常を,血清鉄,総鉄結合能,血清フェリチン,フェロキネティクス,網内系細胞内鉄代謝の面から検討した.対象42例中57.1%に貧血があり,そのうち63%が正色性, 24%が低色性, 13%が高色性であった.血清鉄は66%が低値をとり総鉄結合能は82%が正常または低値,血清フェリチン値は83%が正常または高値を示し,鉄欠乏性貧血のそれと異なっていた. 15例のフェロキネティクスでは, PID T〓の短縮, PIT, RITの低値があり,これらは血清鉄低値,骨髄赤芽球系細胞の低形成の所見に見合うものであつた.59Fe標識コンドロイチン硫酸鉄を用いた網内系細胞の鉄動態の検索では,投与4, 6時間目に網内系細胞より動員される鉄量が正常に比し少なく,網内系細胞よりの鉄の動員の障害,いわゆるRE iron blockがあることが示唆された.この動員の障害により,血清鉄低値をきたし,骨髄への鉄供給不足,これに伴う無効造血の存在が病態として観察された.他方,骨髄では,造血幹細胞レベル,赤芽球細胞レベルでの低形成があり,これがPIT, RITの低値と関係していると思われ,貧血の主たる成因であることが類推された.
著者
肥沼 佳奈 木村 隼人 月田 真祐子 三島 敬一郎
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.545-550, 2018 (Released:2018-09-28)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

血液透析患者のアレルギーは日常的に経験し, 原因として透析膜や抗凝固薬の報告例が散見される. 酢酸含有重炭酸透析液によるアレルギーが疑われた症例を経験した. 症例は77歳男性. 血液透析導入後から発熱, 全身紅斑, 下痢, 末梢血の好酸球増多 (7,730/μL) が出現. 透析機器関連アレルギーを疑い, 透析膜変更や, 酢酸含有重炭酸透析液から無酢酸透析液への変更を行うも改善せず, 副腎皮質ステロイドを開始したところ, 症状は改善し, 好酸球数も基準値内となった. 酢酸含有重炭酸透析液の薬剤誘発リンパ球刺激試験 (DLST) が陽性であったことや, 同透析液の再使用で症状が再燃したことから, 同透析液のアレルギーと考えられた. 同透析液のアレルギー報告は少ないが重篤化することがある. 血液透析患者のアレルギーでは透析液も原因として考慮すべきである.
著者
木村 容子 佐藤 弘 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.394-398, 2016 (Released:2017-03-24)
参考文献数
20

呼吸器症状の漢方治療では五臓の「肺」だけでなく他の臓腑にも着目する。ストレスが関与した慢性咳嗽に八味地黄丸が有効であった2症例を経験した。症例1は25歳女性。会社のストレスによる胸の苦しさを伴い,腹診で心下痞鞕も認めたため半夏厚朴湯を処方したが効果不十分。腰の重だるさがあり八味丸に転方して咳が軽快した。症例2は42歳女性。数年間の不妊治療が背景となってゆううつ感,のどのイガイガ・つまり感が出現し,半夏厚朴湯や麦門冬湯を使用したが効果不十分。腰痛があり八味丸に転方したところ咳が改善した。両症例で小腹不仁はみられなかった。ストレスによる気うつが慢性化して気虚,特に腎虚に進行して出現する咳は,半夏厚朴湯の効果が乏しく,補腎薬である八味地黄丸が有効であると考えられた。罹患期間が短く,高齢者でない場合は,腹証で小腹不仁が必ずしも認められない。腎による咳では腰部の張りや痛みに着目することも大切である。
著者
桒田 寛子 木村 安美 石井 香代子 山口 享子 渕上 倫子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.30, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】フライパンは主に炒める、焼く調理で用いるが、近年、手間や早さ等の理由から、茹でる、揚げる調理を行う際にもフライパンを使用している家庭が増加傾向にあり、メニューに対しての調理器具の固定概念が変化しつつあると推察される。使用頻度の高いフライパンを用いて、茹でるなどの調理を行い、鍋を用いたときの調理時間、調理性などと比較し、フライパン類を活用した最適メニューの提案を行うことを目的とした。 【方法】直径26cmのフライパンと直径18cmの鍋(上下2段)を用いてカボチャの煮物を同重量調理し、破断応力を測定した。また調味後の官能評価を行った。フライパン調理に最適なメニューの開発を行い、フライパンと鍋を用いて再現し、エネルギー消費量と加熱調理時間を測定した。 【結果】フライパンと鍋を比較すると、鍋の方が軟化が遅かった。また、鍋は上段と下段で煮え方が異なり、上段の方が、またカボチャの中心部の方が軟化が遅かった。調味後の官能評価において、鍋の上下段で有意差が見られた。鍋の場合、2段に分けることで味にムラができるため、フライパンの方が味が均等に染み込んだ。フライパンは、「焼く」メニューでは鍋に対し加熱調理時間が33%早く、ガス消費量は4%削減できた。これは火力を強めに設定し短時間で調理できるためと示唆された。また、「煮る」「揚げる」「茹でる」場合、フライパンでの調理が加熱調理時間で17%早く、ガスの消費量は4%削減できた。「蒸す」「炊く」場合、ガスの消費量では鍋調理が優位であった。フライパン調理の特徴として、加熱時間が短いメニューほどフライパンの優位性は増し、調理時間が長く、かつ弱火となるメニューではフライパンの優位性が低下した。
著者
川上 裕司 関根 嘉香 木村 桂大 戸高 惣史 小田 尚幸
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.19-30, 2018
被引用文献数
3

自分自身が皮膚から放散する化学物質によって,周囲の他人に対してくしゃみ,鼻水,咳,目の痒みや充血などのアレルギー反応を引き起こさせる体質について,海外ではPATM(People Allergic to Me)と呼ばれ,一般にも少しずつ知られてきている。しかしながら,日本では殆ど一般に認知されておらず,学術論文誌上での報告も見当たらない。著者らはPATMの男性患者(被験者)から相談を受け,聞き取り調査,皮膚ガス測定,着用した肌着からの揮発性化学物質測定,鼻腔内の微生物検査を実施した。その結果,被験者の皮膚ガスからトルエンやキシレンなどの化学物質が対照者と比べて多く検出された。また,被験者の皮膚から比較的高い放散量が認められたヘキサン,プロピオンアルデヒド,トルエンなどが着用後の肌着からも検出された。被験者の鼻腔内から分離された微生物の大半は皮膚の常在菌として知られている表皮ブドウ球菌(<i>Staphylococcus epidermidis</i>)であった。分離培地上でドブ臭い悪臭を放つ放線菌(<i>Arthrobacter phenanthrenivorans</i>)が分離されたことはPATMと何か関連性があるかもしれない。また,浴室や洗面所の赤い水垢の起因真菌として知られている赤色酵母(<i>Rhodotorula mucilaginosa</i>)がヒトの鼻腔内から分離されたことは新たな知見である。この結果から,PATMは被験者の思い込みのような精神的なものではなく,皮膚から放散される化学物質が関与する未解明の疾病の可能性が示唆された。
著者
木村 沙也加 三輪 奈緒子 宇野 真由奈 金森 千香 高崎 摩依子 田中 美子 竹内 実
雑誌
京都産業大学先端科学技術研究所所報 = The bulletin of the Research Institute of Advanced Technology Kyoto Sangyo University (ISSN:13473980)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-11, 2016-07

蜂蜜は、天然に生産される保存性の高い食品として親しまれているが、創傷治癒などの伝統的な薬としても世界各国で利用されている。また、蜂蜜には免疫作用として好中球遊走を促進することが知られている。好中球は抗腫瘍活性を示すことが知られているが、蜂蜜の好中球を介する抗腫瘍作用についての報告は非常に少なく、詳細な解明はされていない。そこで、蜂蜜による好中球の抗腫瘍作用と貪食機能への影響について検討した。抗腫瘍作用の指標のLL/2腫瘍増殖体積は、コントロール群と比較して蜂蜜2mg、20mg投与群で有意な減少を示し、蜂蜜に抗腫瘍作用が認められた。蜂蜜投与によるLL/2腫瘍移植マウスの末梢血白血球のDot Plot は、FSC値200~600、SSC値400~960に正常マウスには認められない細胞集団が出現し、Gr‒1陽性細胞比率の増加から、この細胞集団は好中球であることが認められた。好中球の出現が認められたため、好中球の抗腫瘍活性について検討した。LL/2腫瘍細胞増殖に対してコントロール群、蜂蜜投与群の好中球は有意な増殖抑制を示し、好中球に抗腫瘍活性があることが認められ、また蜂蜜20mg投与群でコントロール群と比較して有意な腫瘍増殖の抑制を示した。これらの結果より、好中球にLL/2腫瘍細胞に対する抗腫瘍活性があることが認められ、その抗腫瘍活性は蜂蜜投与により増強されることが認められた。好中球の貪食機能は、腫瘍移植マウスで有意な増強が認められた。以上より、蜂蜜が好中球を介して抗腫瘍作用を示したことから、蜂蜜の癌治療への応用が期待できる。
著者
乾 美浪 乾 久子 菊地 淳一 木村 全邦
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第55回大会
巻号頁・発行日
pp.71, 2011 (Released:2012-02-23)

トガサワラ属には、北米西海岸に広く分布し主要林業樹種であるダグラスファー(Pseudotsuga menziesii)、南カリフォルニアに分布するP. macrocarpaと、日本のトガサワラ(P. japonica)、中国南部のP. sinensisとP. wilsonianaの計5種があり、北アメリカと東アジアに隔離分布している。ダグラスファーについては林業上重要な樹種であり、苗木の育成等の目的から共生菌についての研究も多く,2000種を超える菌根菌と共生するという推定もある。しかし,日本や中国南部に分布するトガサワラ属の樹種についての共生菌の研究は少ない。本研究は日本のトガサワラと共生する外生菌根菌相を明らかにすることを目的として行っており、昨年度の菌学会で報告したものの続きである。2009年の10月より2010年12月にかけて奈良県南部の川上村に自生するトガサワラ成木計49本(胸高直径約15~90 cm)より、直径5 mm以下の側根を各木につき50~100 cm程度採取した.採取にあたっては,側根をトガサワラの幹まで辿り、当該のトガサワラの根系であることを確認した。採取した根はビニール袋に入れて持ち帰り4℃で保管し、実体顕微鏡下で菌根のタイプ分けを行った.タイプ分けに当たっては、できる限り多くのタイプに分けるように努めた.1本の木について8~20弱程度のタイプに分けられ、総計約700タイプとなった。菌根からCTAB法によりDNAを抽出し、NSA3, NLC2のプライマーとITS1F, ITS4のプライマーを用いてネストPCRによりITS領域を増幅し、塩基配列を決定後DDBJのBlast検索を用いて該当する菌種名を検索した.約2割のタイプについて解析が終了しており、52種が同定された。ベニタケ科が2割、フウセンタケ属が1割弱と比較的多かった。また複数の木に同じ種が見られた割合は2割以下、1つのサンプルについて別タイプと分けた物が同じ種に属していたものの割合は約3割であることから、かなり多様性は高いと思われる.未決定のサンプルが多いため,今後配列の決定をさらに行いより詳細な菌根菌相を明らかにする予定である.
著者
木村 政樹
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.93-108, 2014-05

本稿は、純文学論争における平野謙の批評を、「アクチュアリティ」という語が文芸雑誌で流通していた歴史的文脈に置き直して考察したものである。純文学論争をきっかけとして、「アクチュアリティ」という語は文芸雑誌において急速に流布してゆく。この言葉は、論争以前から、新日本文学会や記録芸術の会といった文学・芸術運動のなかで、キーワードとして用いられていた。平野はそのことを意識しながら、小説アクチュアリティ説を展開した。こうした平野の一連の批評は、文学・芸術運動の動向に応じた言説戦略として捉えることができる。
著者
木村 琢磨
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.2420-2429, 2018-12-10 (Released:2019-12-10)
参考文献数
8
被引用文献数
2

老年症候群(geriatric syndrome)とは,高齢者にありふれた,非常に多岐に亘る心身の諸症状・兆候の総称である.日常生活の自立を妨げることが多く,医学的介入と同時に介護・ケアが必要となることが多い.高齢者総合的機能評価(comprehensive geriatric assessment:CGA)とは,高齢者,特に虚弱高齢者を身体面,精神・心理面,社会・環境面等から多面的に評価するためのツールである.評価によって高齢者の問題点を整理し,治療・ケア計画や生活機能の改善に活かす.
著者
木村 幹
出版者
時事通信社
雑誌
e-World Premium
巻号頁・発行日
vol.43, pp.36-39, 2017-08

Janet掲載記事
著者
木村 明憲 黒上 晴夫
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.133-150, 2021 (Released:2021-05-08)
参考文献数
21

本研究では,小学校社会科の6年生の歴史学習で,自己調整的な学習を行いながら,歴史に関わる知識の習得を保証し,情報活用能力を身につけられる学習過程モデルを開発した。そして,その効果を検証するために,①単元の最後に実施した単元テストについての調査,②単元の導入時に指導者が示した重要語句(小学校学習指導要領解説社会科編の内容の取り扱いで示されている指導事項及び,第一筆者がその時代の歴史を学習する上で必要であると判断した語句)が,単元の終盤に作成する連続資料(児童が収集した情報を整理,分析し,単元の最後に表現,創造した文書資料を連続資料と示す)で説明された割合についての調査,③児童が作成した連続資料のルーブリック評価による調査,の3つの調査から分析を試みた。その結果,本学習過程モデルで授業実践を行うことで,知識の習得については問題がないこと,情報活用能力の収集力,整理力,分析力,表現力,創造力が身につくことが示唆された。
著者
木村 元
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.79-84, 2013-03-25 (Released:2017-08-01)
参考文献数
44

The problem to search physical principles of Quantum Mechanics is discussed by focusing on its significance from both points of view of instrumentalism and realism. After a brief review of the general probabilistic theories, we introduce the recent developments of the problem which are derived especially in the field of quantum information theory.
著者
木村 一夫
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.10, pp.60-66, 1997-12-25 (Released:2009-04-22)
被引用文献数
1 1

1957年12月10日、揖斐川源流が電源開発株式会社の調査区域に指定された。調査対象となった岐阜県揖斐郡藤橋村および徳山村の両住民とも相ついで「区集会」、「村議会」などで「ダム反対」の決議をした。これに対し建設省は、水資源開発公団に移管し、発電計画だけでなく、洪水調節など公共の福祉につながる「多目的ダム」とした。1964年「徳山ダム」予定地より16km下流の藤橋村に「横山ダム」が完成した。紆余曲折を辿って1987年3月、徳山村は閉村し、隣村の藤橋村に編入合併された。廃村と前後して徳山村住民の移転が始まった。ダム問題に翻弄された30年間の追跡調査を「多目的ダム開発と"揖斐谷"住民の変転」にまとめ、『水資源・環境研究、第4号』に発表した。新しく、この小論は、廃村前後から12年間、かつて徳山村に住んでいた人々が離村して辿った変転を追跡調査したまとめである。
著者
今西 規 木村 亮介 瀧 靖之 安藤 寿康 中川 草
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

一卵性双生児は非常に類似した顔をしていることから、ヒトの顔形状はほぼ遺伝的に決定されていると考えられる。そこで本研究では、双生児を中心とする約250組の日本人ボランティアからゲノム情報と顔形状データを取得し、計算機による大規模な関連解析を実施することにより、顔形状の個人差を規定する遺伝要因を解明する。これと並行して、東北メディカル・メガバンクが収集した約1000人分の頭部MRIデータとゲノム情報を解析し、顔形状に関わるゲノム多型の特定を試みる。以上の結果を利用して、個人のゲノム情報から顔形状を予測するためのソフトウエア「ゲノム・モンタージュ」を開発し、生命情報学における新分野の開拓をめざす。平成29年度は【課題1】顔形状の遺伝性推定と関連ゲノム多型の探索について、前年度に引き続いてゲノム情報と顔形状データの収集を進め、その解析に着手した。慶應大学、琉球大学、東海大学が参加して、双生児ボランティアに対する測定会を3回にわたり開催した。その結果、前年度の68名に加えて新たに94名の測定を完了し、合計で162名の顔形状データおよび口腔内細胞試料を取得できた。得られた顔形状データについては琉球大学でのデータ解析を開始し、口腔内細胞試料については東海大学でDNA抽出およびSNP解析を開始した。【課題2】MRIデータを用いた頭顔部形状解析と全ゲノム関連解析については、東北大学、琉球大学、東海大学が参加して解析の準備を進めている。このほか、【課題3】「ゲノム・モンタージュ」の開発についても、テストデータを用いた解析ソフトの開発を進めている。
著者
高橋 正幸 木村 和哲 奈路田 拓史 松下 和弘 宮本 忠幸 川西 泰夫 沼田 明 湯浅 誠 田村 雅人 香川 征
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1563-1568, 1995-10-20
被引用文献数
1

(背景と目的) 夜間陰茎勃起現象の記録は勃起機能検査法として早くから行われてきた検査であるが, 現在でもその.重要惟、は変っていない.特に器質性インポテンスと心因性インポテンスの鑑別には必須の検査であり, 陰茎周径を測定するため活性炭や水銀を用いたストレインゲージが使用されてきた. (対象と方法) われわれは今回, 水銀ストレインゲージにかわるインジウムとガリウムの合金製のストレインゲージを使用した新しい装置を開発しこのストレインゲージを用いた新しい夜間陰茎勃起現象記録システムが臨床に使用可能かどうかを正常ボランティアを対象に検討した. (結果) インジウム-ガリウムストレインゲージは, 伸展-抵抗の特性が直線的でしかも再現性が高く夜間陰茎勃起現象の記録に充分な性能を有していた.測定データの保存, グラフ化のためのソフトウェアは簡潔で, しかもすべて日本語表示であるため操作が容易である.またこの新しいストレインゲージはディスポーザブルなのでメインテナンスが不要であり, 清潔である. (結論) 本システムは夜間陰茎勃起現象の記録の目的で臨床使用が可能であると考えられる.