著者
中原 賢一 松下 哲 山之内 博 大川 真一郎 江崎 行芳 小澤 利男
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.285-291, 1997-04-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
7
被引用文献数
2

剖検例において, 生前には狭心症状を認めなかったにも関わらず, 著しい冠動脈硬化所見を認めることがある. この無症候性の原因として, 高齢者では心病変のみならず, 脳血管障害をはじめ多くの因子の関与が推測される. 本研究では剖検例を用いて高齢者の無症候性に関わる因子, 予後, 診断について検討した.770例の高齢者連続剖検例を母集団とし, 冠狭窄指数 (冠狭窄度は100%もしくは95%を5, 90%を4.5, 75%を4, 50%を3, 25%を2, 狭窄のない石灰化を1, 正常を0. 冠狭窄指数=3枝の合計) を用い, 次の検討を行った. まず心筋虚血をおこすに充分な冠動脈狭窄の条件を決定する目的で, 冠狭窄指数が10以上かつ狭心症のある症例を分析した. 次に心筋虚血をおこすに充分な条件を満たした症例を狭心症の有無で2群に分け, 1) 予後, 2) 心筋病変の差, 3) 脳血管障害の影響, 4) ADL (Activity of daily living) の差, 5) コミュニケーション障害の有無, 6) 糖尿病の有無, 7) 安静時心電図診断を分析した. またコントロール群として冠狭窄指数10未満の例86例を用いた.狭心症を有した31例を検討し, 最大狭窄度は5かつ冠狭窄指数13以上を心筋虚血を起こすに充分な条件と考え, 770例中二つの条件を満たす症例を選出した. その結果狭心症群24例, 無症候群92例が該当し,この2群を比較した. 1) 心筋梗塞が直接死因となったのは狭心症群67%, 無症候群27%で共に死因中最も多かったが, 頻度には差が見られた (p<0.01). 2) 心筋梗塞の発症率および心内膜下梗塞は狭心症群に多く, 下壁梗塞および小梗塞 (2cm未満) は無症候群に多かった. 3) 無症候群には脳血管障害の合併率が高く, 大きさでは中型病変が多かった。4) 無症候群には, ADLの低い症例, コミュニケーション障害例が多かった. 5) 糖尿病の合併率は狭心症群に高かった. 6) 安静時心電図の比較では, 陳旧性心筋梗塞の所見は, 狭心症群に最も多く, 次いで無症候群で, 共にコントロール群に比し多かった. 虚血性ST低下は3群間に差は認められなかった. むしろ無症候群および狭心症群を含めた重症冠動脈疾患群に左室肥大の診断が有意に多かった. 心房細動が無症候群に多い傾向にあった.高齢者においては心病変と共に, 脳血管障害, ADL, コミュニケーション障害が心筋虚血の無症候性に重要な意味を持つことが明らかになった. 高齢者では冠動脈病変はむしろ存在することが普通であり, 特に脳血管障害のある症例では狭心症状の有無に関わらず, 心筋虚血を探知する努力が必要である.

1 0 0 0 OA 信濃名士伝

著者
松下軍次 著
出版者
松下軍次
巻号頁・発行日
vol.初編, 1894
著者
田口 真奈 出口 康夫 赤嶺 宏介 半澤 礼之 松下 佳代
出版者
京都大学
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.91-111, 2010-12-01
被引用文献数
2

The PPF program of the Graduate School of Letters, Kyoto University, is one of pioneering attempts of PPF in Japanese universities. This paper aims to describe the program against its international and national backgrounds, to evaluate it on the basis of, among others, interviews of its participants, and to outline its future prospects. The program started in 2009, and now it is in its second year. It was planned and run by a project team that consisted of staff of the Center for the Promotion of Excellence in Higher Education and the Graduate School of Letters. The authors of this paper are among its members. The program is also authorized and supervised by the committee of Faculty Development of Kyoto University. In 2009, 30 lecturers took part in the program. They were former students of the Graduate School of Letters, and taught as part time lecturers in undergraduate courses of the Faculty of Letters. The program was designed to be an example of mutual FD in which each lecturer was expected to peer review the classroom performances of his or her fellow lecturers. To carry out the task of mutual peer review, lecturers were asked to attend several lectures of their colleagues, discussion meetings that followed immediately after each lecture, and a half-day teaching seminar that was held at the end of the entire lecture series. Our research revealed that most participants positively and highly evaluated this program as a precious opportunity for improving their teaching skills. They also found that the program provided them with mental support and encouragement for their carrier making. Admittedly, follow up studies are needed to assess whether this program really contributed to the development of participants' teaching abilities. It remains a problem how to sustain this program and to incorporate it into a regular graduate school-level curriculum of teaching training.
著者
武岡 英隆 速水 祐一 兼田 淳史 松下 太郎 紀本 岳志 渡辺 浩三 藤川 淳一
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.91-97, 2001-02-23
被引用文献数
1

夏季の瀬戸内海には外洋から栄養塩が流入しているため,外洋の大規模な海洋循環の変動が瀬戸内海の栄養塩環境に影響を与える可能性がある.このような問題意識に基づいた,我々のいくつかのモニタリング計画を紹介した.中でも重要なのは,佐田岬先端部に設置した栄養塩などの自動監視システムによるモニタリングである.このシステムは,2000年3月に設置され,水温,塩分,pH,溶存酸素,クロロフィル蛍光,硝酸態窒素,アンモニア態窒素,リン酸態リン,珪酸態珪素,動物プランクトン数を1時間毎に測定している.
著者
中村 高宏 前田 卓志 松下 雅仁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.674, pp.167-172, 2006-03-10
参考文献数
6

指紋認証装置はコストの性能のバランスのよいバイオメトリクス認証技術として最も普及している.本報告では,指紋特徴点の照合処理において,照合相手指紋の特徴点と一致しない特徴点(不一致特徴点)を従来のように一律に切り捨てるのではなく,不一致特徴点に対しても「真の相手側特徴点と一致しない真の特徴点かどうか」を示す「真の不一致特徴点らしさの信頼度(不一致信頼度)」を評価して照合スコアに反映することにより,他人指紋の判別精度を向上するという照合方式を提案する.実験により,不一致特徴点を真偽評価なしに一律に扱う従来の照合手法とは異なり,本人指紋の拒否エラー率がほとんど変化することなく,他人指紋の受容エラー率のみが改善されることを示す.
著者
高橋 毅 鈴木 一也 伊藤 靖 松下 晃三 数井 暉久
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
巻号頁・発行日
2000

症例は50歳, 男性.1996年9月3日, 悪性胸膜中皮腫に対し左胸膜肺全摘, 心嚢, 横隔膜, 胸壁合併切除術, 及び温熱化学療法を施行した.外来にて経過観察されていたが1999年11月, 胸部CTにて左胸壁に径3cmの腫瘤を指摘され, CTガイド下針生検にて悪性胸膜中皮腫の再発と診断された.全身精査にて転移巣のないことを確認し2000年1月, 再発巣の切除術を施行した.rights: 特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会rights: 本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものであるrelation:isVersionOf: http://ci.nii.ac.jp/naid/110001272251/
著者
小野寺 有子 坂上 大翼 松下 範久 鈴木 和夫
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-11, 2001-03-31
参考文献数
25
被引用文献数
1

高齢大型となった巨樹・老木が都市域でどのような生理的・外観的特性を示すかを明らかにする目的で、東京都区部に生育するイチョウ、ケヤキ、クスノキ、ユリノキおよびスダジイの胸高周囲長3m以上の巨木と1m以下の中径木を供試木として、水分生理状態、葉の養分濃度、クロロフィル量、クロロフィル蛍光、樹幹表面温度、フェノロジーの計測観察を行った。どの樹種でも、巨木の方が中径木より水分生理状態が悪く、カリウム、マグネシウム濃度が低く、クロロフィル量が少なかった。SPAD値は、スダジイを除く4樹種で巨木の方が中径木より低かった。クロロフィル蛍光には、巨木と中径木で差は認められなかった。巨木と中径木の樹幹表面温度の日変動を比べたところ、巨木の樹幹表面温度が高い傾向が認められた。また、どの樹種でも巨木の黄葉、黄葉終了、落葉が早く、黄葉-落葉期間が長いという傾向が認められた。開芽・展葉の傾向は樹種により異なっていた。巨木は中径木とは明らかに異なる生理状態やフェノロジーを示すといえる。
著者
加来 和子 WENZ Sharon GREGORY Barb KENDALL Robb 松下 清子 豊嶋 秋彦 KENDALL-MELTON Robbie 安藤 房治 DONALD F. De ROBBIE M. Ke
出版者
弘前大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1993

(1)早期療育とトランジション制度(進路選択の保障制度)を中心とした日米の比較研究-テネシー大学マーチン校(UTM)の早期療育センター長であるSharon L.Wenzは,日本の早期療育制度について次のような勧告をした。全国的な早期療育システムの確立に既存の公衆衛生制度を充実させて教育と医学の連携をはかること,障害の判定基準を明確にして対象者の選定を妥当なものとすること,子どもの障害発見のための広報活動を活発化し,照会手続きをわかりやすいものにすること,家庭が専門家の助言を受けられるセンターの設置等である。Dr.Barbara A.Gregoryは,UTMでは学習障害のある学生に対する総合的支援プログラム(P.A.C.E.)を作成し,学生,両親、高校及び大学のトランジション専門職員等が協力して実施していること,また自分の障害の理解や学習への影響の理解能力,必要な設備の認識,法律上の市民権の知識,職場や学習の場で自分に必要なものを伝える技能,等の4つの適切な基礎的トランジションの技能は,特に学習障害の学生には重要であることを紹介した。また,これら4つの基礎技能が14歳以前の早い段階で指導されることが高校卒業後の成功にも結び付くと述べた。(2)統合教育と体育指導-松下は障害児の障害の種類や程度の影響をなるべく少なくした一種の「スポーツテスト」として静的動作20種目を選択編成し,弘前市内2つの養護学校の協力を得て,児童生徒に実施した。アメリカでの障害児調査は,様々な理由から困難だったため,UTMと弘前大学の学生を対象にほとんど同じ種目による自己評価方式で静的動作調査を行い,日米比較を行った。(3)統合教育に関する日米の教員の意識・態度調査.及び知識・技能の自己評価調査の結果の検討と提案-平成5年度に日米の大学,及び附属学校の教官を対象に行った統合教育に対する意識及び自己効力調査の結果が次のとおりである。Dr.Kendallの意識調査の比較では,米国の教師の方が日本の教師より,統合教育に好意的であり,事務量や仕事が増えるが,障害児の地域社会や普通の子ども達との交流を援助し,公立学校では通常学級で障害児を教育すべきだと考えている。自己評価調査の結果,日本の多くの教師は障害児に関する知識や技能を身につけたいと考えており,行政職も含めた現職教育の必要性を示している。また自己効力の
著者
松下 貞三
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:3898717)
巻号頁・発行日
no.3, pp.91-117, 1968-03
著者
松下 貞三
出版者
同志社大学国文学会
雑誌
同志社国文学 (ISSN:3898717)
巻号頁・発行日
no.1, pp.94-111, 1966-03
著者
松下 健治 秦野 諭示
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.577, pp.189-192, 2007-03-01
参考文献数
1

情報漏えいは社会的な問題となっている.流出の形はさまざまだが,その大きな原因として情報を記録した媒体の盗難,紛失が大きな原因となっている.しかしながら,現代においてモバイル環境における情報利用は必要不可欠といえる.そこで,ユーザの組織外での情報利用を支援する情報保護システムの検討を行った.このシステムでは,携帯電話を用いてファイルを復号するためのワンタイムパスワードを取得し,情報の漏洩を防止することを特徴としている.本報告では,システムの概要を中心に述べる.
著者
松下 優衣 石田 弓
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.12, pp.179-196, 2012

アレキシサイミア傾向とは,『体感・感情の認識表現不全』と『空想・内省の不全』という大きく分けて2 つの構成概念からなるパーソナリティ特性を指す。先行研究ではアレキシサイミア傾向が身体に対する志向性,意味づけなど,身体の捉え方,体験のされ方における何らかの逸脱と関連することが示唆されているが,実証研究は少ない。そこで,本研究では身体をどのように捉えているのかという観点からアレキシサイミア傾向者の困難について検討することを目的とした。研究1 では大学生を対象に質問紙調査を行い,身体をどのように捉えているかを身体感覚の測定を通して捉え,アレキシサイミア傾向との関連を見ることを目的とした。研究2 では身体をどのように捉えているかを,バウムテストを用いて無意識的な側面から捉え,その特徴とアレキシサイミア傾向との関連を検討した。その結果,アレキシサイミア傾向と身体の捉え方,体験のされ方にある程度の関連が見られた。そして,アレキシサイミア傾向の下位概念である『体感・感情の認識表現不全』と『空想・内省の不全』で身体の捉え方の質が異なる可能性も示唆された。
著者
岡田 和隆 柏崎 晴彦 古名 丈人 松下 貴惠 山田 弘子 兼平 孝 更田 恵理子 中澤 誠多朗 村田 あゆみ 井上 農夫男
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.61-68, 2012-10-15 (Released:2012-10-19)
参考文献数
31
被引用文献数
2

サルコペニア(筋肉減少症)は 80 歳以上の高齢者の約半数にみられる加齢変化であり,顎口腔領域にも現れるといわれている。本研究ではサルコペニア予防プログラムに参加した自立高齢者を対象とし,介入前調査として栄養状態と口腔内状態および口腔機能との関連を明らかにすることを目的とした。自立高齢者 62 名(69〜92 歳,男性 27 名,女性 35 名)を対象者とした。口腔内状況と口腔機能に関する聞き取り調査は事前に質問票を配布して行い,口腔内診査と口腔機能評価は歯科医師が行った。聞き取り調査質問項目,口腔内診査項目,口腔機能評価項目と血清アルブミン値(Alb)との関連を検討した。Alb は 4.3±0.3 g/dl であり,対象者の栄養状態は良好であった。口腔機能に関する2つの質問項目,主観的口腔健康観,下顎義歯使用の有無において Alb に有意差が認められた。残根を除く現在歯数,現在歯による咬合支持数およびオーラルディアドコキネシス(ODK)の/ka/の音節交互反復運動において,Alb と有意な関連が認められたが弱い相関関係であった。義歯満足度,口腔清掃状態,上顎義歯使用の有無,口唇閉鎖力,RSST,ODK の/pa/および/ta/,口腔粘膜保湿度,唾液湿潤度では関連は認められなかった。自立高齢者では現在歯数,咬合支持,義歯の使用の有無,口腔の健康や機能に対する自己評価が良好な栄養状態と関連する可能性が示唆された。
著者
山邊 信一 小原 繁 松下 叔夫 鷹野 景子 長嶋 雲兵 細矢 治夫
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

3年間にわたりデータチェックプログラムの改良を行い、データの追加における標準化、定式化をすすめた。また、データの誤り検出に活用するQCLDB辞書とそれを作成・充実するプログラムを改良したこの誤り検出プログラムは、収集済みの全文献データを対象として辞書を作成することと、粗データ中の全単語と辞書中の単語を高速に比較し、粗データ近傍に誤り内容を出力する機能を有する。このプログラムを利用して、1996年の収集粗データをある程度精製し、その後の本研究の班員が目の子作業による再精製を行ったところ、年号の間違いなど新しいミスを見つけだし、本検出プログラムの有効性を確認した。平成9年度加えたデータは、4005件で、全データ数36856件に上り、データ増大に対応できる新しい検索システムの構築が急務である。そこで次期データ検索システムのデザイン検討のため、市販のデータベースソフトを試験的に購入し、検索システムとしての評価をおこなった。さらにインターネットに対応したデータベース配布と検索支援システムの構築に関し、現在持っている検索プログラムをcgiとして利用して、分子科学研究所電子計算機センターのWWWで試験公開し、本格的な公開に向け、リレーショナルデータベースとの連係を中心にデータ内容と管理・運用の技術的な問題点の検討をすすめた。また海外のミラーサーバー構築のため、スイス、アメリカの研究グループと交渉をはじめた。この他、粗データの質的向上を目的に収集・査読者を対象とした講習会を分子構造総合討論会期間中に行った。またQCLDBを量子化学者のみならず実験家にもより広く利用してもらうため、ICQC(アトランタ)及び国際会議(福岡カンファレンス)でデモンストレーションを行った。研究成果として、1996年分QCLDBを冊子として学術雑誌THEOCHEMに掲載し、別に磁気デ-プ版を作成、配布した。