著者
牧島 一夫 中澤 知洋 平賀 純子 稲田 直久 国分 紀秀 児玉 忠恭 松下 恭子 国分 紀秀 川原田 円 児玉 忠恭 松下 恭子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、「銀河が銀河団プラズマ中を運動するさい、両者は強く相互作用し、銀河のエネルギーがプラズマへ受け渡され、銀河は落下するはず」という仮説を検証することである。X線衛星「すざく」などで観測を行なった結果、銀河団の中心では大規模な磁気構造が存在し、条件によりプラズマ加熱が起きていることを発見した。また可視光データとの比較により、宇宙年齢かけて実際に銀河が中心に落下してきた徴候も得た。
著者
伊藤 真理 松下 鈞
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.87-105, 2014

音楽ライブラリアンの養成は,適切な音楽情報サービスを提供するために不可欠であるが,その現職者教育は専門職団体に委ねられたままである。また,音楽図書館関連団体によって提供されている研修については,いまだ総合的に検証されていない。本研究は,これからの音楽ライブラリアン養成のあり方を検討するために,国内の音楽図書館現職者を対象とした研修の実態を考察することを目的としている。本研究では,音楽図書館協議会と国際音楽資料情報協会日本支部が実施してきた研修とニューズレター記事を対象とした。分析は「情報専門職の養成に向けた図書館情報学教育体制の再構築に関する総合的研究(LIPER)」大学図書館班による研究成果に基づいた。また,音楽の主題専門分野の観点から考察を補完するために,米国音楽図書館協会による音楽ライブラリアンの資質要件の例示を参照した。その結果,研修として実施すべき内容や課題が明らかとなった。
著者
高木 和幸 中村 秀紀 米沢 千尋 岡田 謙一 松下 温
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.209-210, 1991-02-25

近年、ネットワークセキュリティに対する関心が高まっているがその実際的な応用面については、理論的なものにとどまっている傾向がある。暗号化の技法はネットワークセキュリティの中心となるもので、現在最も急速に発展している分野の一つでもある。メッセージを暗号化して複合鍵を持っていない者には解読できないようにするという機能は暗号の基本的機能であるが、そこから鍵の配送、相手の認証などの新たな研究課題が生まれており、特に認証に関する研究は活発に行われているのが現状である。一方、ネットワーク網が発達するにつれて、それにともなう分散的処理に対する研究も現在活発に行われており、遠隔会議システムはその具体的な応用例の一つである。このような会議システムにおいては会議を円滑にすすめるためにはどのような環境を設定すれば良いのかという研究は行われていても、そのセキュリティに関する研究はほとんど行われていない状態である。そこで我々は、会議システムにおけるセキュリティ機能の必要性を議論し、実際の応用例としてUNIX上に構築したシステムを提示する。
著者
攝津 暢浩 高橋 学 松下 正史 岡部 永年
出版者
The Society of Materials Science, Japan
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.530-536, 2012
被引用文献数
6

We investigate the mechanical strength of ceramic/metal composites subjected to cyclic thermal loading. First, test samples of Cu/AlN systems are prepared via brazing. Next, short-term thermal cycle tests (25, 50, and 100cycles) are conducted at temperatures ranging from -40 to 125°C. Four-point bending tests are conducted to evaluate the residual strength. Further, thermal stress analysis is performed using the finite element method in order to examine the thermal stress behaviors during cyclic heating. The results reveal that the residual strength increases during 0∼20cycles because of residual thermal stress relaxation. This relaxation is generated by the cyclic softening of the metals owing to combined hardening. In contrast, relatively long-term thermal cycling (20∼100cycles) reduces the residual strength owing to damage growth to AlN. The AlN plates exhibit variability in residual strength, and the distribution of the residual strength for each cycle number conforms to the two-parameter Weibull curve. The variability in residual strength increases with the cycle number, and it is attributed to variabilities in the pre-existing crack size and damage accumulation. We conclude that the residual strength of the Cu/AlN composites depends on the thermal stress behavior and damage growth to the AlN plates.
著者
松下 冽
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

上記研究課題名のもとに行った研究成果は3つの柱にまとめられる。第1は、研究課題のキー概念である「ローカルな共有型分権化」へのアプローチとして、「ローカルな民主主義と分権化」に関する研究動向の整理と方法あるいは視点について考察したが、この考察は単なる地方分権化のみならず広い意味でナショナルなレベルとローカルなレベルでの「国家一社会」関係の変容・再編を伴う。この認識からの研究成果は、『立命館国際研究』(17巻3号、18巻2号、19巻1号)である。第2の研究成果は、メキシコにおける分権化促進の歴史的・政治的背景の分析、またこの分権化の発展過程と市民社会の登場および社会運動の展開との相互依存についての考察である。この面での成果は、『立命館国際研究』(20巻1号)および『研究成果報告書』の第4章(「メキシコにおける分権化と市民社会の相互発展」)である。なお、社会資本と「権力共有の可能性」という視点から『立命館国際研究』(19巻1号)でも論じた。第3に、ブラジルにおける「ローカルな共有型分権化」研究の成果は、『立命館国際研究』(18巻3号)がある。さらに、本研究を比較政治の視点から深めるために、インドのケーララの民主的ガヴァナンスとブラジルの事例を考察した論文が『長崎平和研究』(21号)である。なお、本研究課題とも共有する問題意識から、近年注目を浴びてきた概念として「パートナーシップ」がある。「国家-開発-市民社会」関係への「パートナーシップ」アプローチを批判的に検討して、この関係を「シナジー型戦略」理論の視点からブラジルの事例を分析した成果には編著書『途上国社会の現在-国家・開発・市民社会-』、とくにその「序論」がある。以上の研究成果は、ローカルな場での地方・州政府と市民社会および多様な市民・社会運動との相互協力がブラジルやメキシコのみならず、多くの発展途上国における発展と民主主義の深化にとって決定的に重要であることを例証している。そこでは、「ローカルな共有型分権化」の現実化の程度と進展、それを保障する多岐にわたる自立的諸運動と制度を分析することが不可欠である。
著者
的場 正美 柴田 好章 近藤 孝弘 松下 晴彦 杉本 憲子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

【研究目的】本研究は、教授・学習活動の諸現象を叙述する記号ないしコードを開発し、それにもとづいた授業諸要因を抽出する分析手順と解釈方法および解釈に伴う諸問題を明らかにすることを目的としている。特に次の4の具体的な課題を解明することによって、上記の目的を達成する。1)記号の開発と可逆性による記号の妥当性の検証、2)要因の抽出と顕在化による記号の機能の検証、3)解釈に伴う諸問題の解明、4)国際比較による記号の標準化。【記号の整理と新しい記号の開発】事例に即して開発してきた40の記号を論理的に整合性があるように整理した。関係性、概念、例示、付帯などの観点から40の記号を8のグループに分類した。それを基礎に、2007年度には、特定の概念に関する個人間のズレを表すために、次の新しい記号を開発した。『A』/(W)[B〕説明:『A』という特定の概念に(/)ついて、(W)という人物が〔B〕という意味ないしイメージを込めている。【可逆性の検証】記号の妥当性については、記号による記述から現象をどの程度再現できるか、その可逆性によって検証した。単純な記号の場合に、可逆性の幅が広いことが示された。【叙述の可能性】他の教育研究の方法と比較すると、中間項(記号)を使用する点で、カテゴリー分析の方法と類似している。叙述の記号の開発は、教育現象を記述する可能性を示している。
著者
上條 俊介 松下 康之 池内 克史 坂内 正夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2597-2609, 2000-12-25
被引用文献数
51

画像上での車両のトラッキングは, 画像処理をITSにおける事故などの異常事象検出に適用するための基礎技術として重要である.しかし, 車両トラッキングでは, 従来から最も困難な課題の一つとしてオクルージョンの問題があり, 安定したトラッキングを実現することが困難な状況であった.特に, 我々の研究では大きな交差点を対象としているため, 平均20台程度の様々な大きさ, 形状の車両が様々な動きをし, オクルージョンも様々な条件で生じる.こういった状況でのトラッキングには, 従来の直線走行や空いている状況に適用していた.線形軌道予測や車両形状モデルを仮定するものとは異なるパラダイムが必要とされる.この問題を解決するために, 我々はMarkov Random Fieldモデルを時空間画像に拡張適用し, 1枚の画像中のみならず, 時空間画像中の隣接した画像同士でテクスチャの相関や移動物体軌跡の連結の確からしさを評価するアルゴリズムを考案した.更に, この時空間MRFでの表された画像のエネルギー分布を確率緩和過程で最適化した結果, 様々な状況でのオクルージョンに対しロバストなトラッキングが可能となった.この時空間MRFを混雑状況での約25分間の交差点画像に適用し, 3214台の通貨車両をトラックした.その結果, オクルージョンが生じていない車両に関しては99%以上の確率でトラッキングが成功し, オクルージョンを生じている541台に対しては95%程度の確率で複数台の車両を分離したトラッキングに成功した.このアルゴリズムでは, 車両形状モデルなども仮定せず, 濃淡画像から得られる情報のみを用いることで実現できるため汎用性が高く, また安定性も高いことから, 交差点における事故検出などへの応用が期待される.
著者
佐藤 英一 松下 純一 北薗 幸一
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

構造用複合材料における材料設計の目的は、望みの力学的性質すなわち製品の応力方向へ高い強度や靱性を得ることである。近年、形状記憶合金繊維の形状記憶ひずみにより生じる内部応力を利用して複合材料の力学的性質を改善する試みがなされているが、強化方向が繊維の方向で決められてしまうことは、通常の繊維強化複合材料と変わりがない。本研究は、方向や大きさの制御が可能である内部応力の起源として「磁歪」に注目し、等方的な磁歪粒子強化複合材料に磁化熱処理を行うことにより、選択方向を強化した異方性複合材料を創製することを目的とした。モデル材料系には、分散粒子には超磁歪材料Tb_<0.3>Dy_<0.7>Fe_2(Tafenol-D)、マトリクスにはAl, Pb, Snを選んだ。はじめに押し出しによる粉末法により、Al/Tafenol-D, Pb/Tafenol-D複合材料を作製し緩和プロセスを観察したが、磁化熱処理中にひずみの緩和は観察されなかった。押し出しでは粒子を分散させるのに加工度が不十分であると考えられたので、繰り返し圧延接合法(ARB法)によりSn/8vol%Tafenol-D複合材料を作製した。水冷電磁石にオイルバスを設置し、最大0.8T、453Kでの磁化熱処理を施し、緩和プロセス中のひずみ変化を測定した。磁場負荷により複合材料に生じた瞬間ひずみは、予想通り、磁場方向に伸び、垂直方向に縮みの方向であり、その大きさも予測値と一致していた。瞬間ひずみの発生後、磁化熱処理中にひずみは指数関数的に減少するのが観察された。その緩和時間は、粒子径と拡散係数から予測される値とほぼ一致しており、緩和時間のアーレニウスプロットから緩和の活性化エネルギーが求められた。以上より、選択方向強化複合材料創製の要となる磁化熱処理中の緩和プロセスを直接観察することができた。
著者
西山 晴彦 大久保達真 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.997-1007, 1997-05-15
被引用文献数
13

人間は想像力に富んだ動物であり,提示された情報が不十分であると,想像によりそれを補おうとする.たとえば,ラジオの野球中継を聞いているとその状況を思い浮かべようとし,美しい風景の写真を見るとその音を想像する.このような提示された情報をもとに不足している情報を創出することを「メディアの補完」と呼ぶ.人間はこのメディアの補完を生活の中で自然に行っている.本研究では,言語メディアから画像メディアの補完に焦点を当て,風景描写文から風景画像を創り出すシステムPicnyckを提案する.風景画像は,用いられる構図により我々に異なった印象を与える.たとえば同じ山の風景でも,富士山なら「雄大な」感じがするし,日本アルプスのようにギザギザした山は「荒々しい」感じがする.風景の構図が人間の感性に影響を与えることは,古くから知られており,画家や写真家といった美術専門家により研究され,体系化されている.筆者らは風景画像を作成するに際し,この構図が感性に与える影響を考慮した.評価の結果,Picnyckを用いることにより,風景描写文から人間の感性を考慮した風景画像が作成できることが分かった.Recently,the word "multimedia"is highlighted as an environment that can process image,audio,data and text.Even though it is so difficult to transfer human's subjective impression just through characters in the past,the multimedia environment makes it possible to transfer that in addition to normal communication.To lessen the time and trouble of multimedia authoring,we propose a scheme to complement media environment and apply it to multimedia authoring.It is well known that composition of landscape pictures has influence on human feeling.And the relationship between the compositions of landscape pictures and human feeling has been researched by artists for a long time,and systematized.We implemented "Picnyck"to demonstrate a scheme that complement media environment.The system has database of picture parts which are related landscape pictures such as "mountain","sea","cow"and so on.The system retrieves suitable picture parts from database and synthesises them into one landscape picture.By this technique,it is possible that general user create multimedia information at ease.
著者
河村 祐一郎 金谷 誠一郎 小原 和弘 長久 吉雄 砂川 理三郎 松下 貴和 五味 隆 和田 康雄 大歳 雅洋
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.2620-2627, 2009 (Released:2010-02-05)
参考文献数
12

当科では,低侵襲性と機能温存を期待して,早期胃癌に対し,腹腔鏡下自律神経温存D1+β郭清術を行ってきた.本稿では,特にその迷走神経腹腔枝温存の手技と臨床評価について報告する.2001年5月から2008年6月までに当院で施行した腹腔鏡下幽門側胃切除術(デルタ吻合によるB-I再建)150例のうち追跡調査可能であった129例(温存群:84例,非温存群:45例)の患者アンケートおよび内視鏡検査により評価した.結果,非温存群では,便の性状が軟便傾向となる率が高く(20.5%対44.4%),胃内容こみ上げも有意差を認めた(17.9%対33.3%).内視鏡検査所見では,胆汁逆流が非温存群で有意に高い結果(44.1%対62.2%)となった.今回の検討では,両群間で郭清程度,病期といった背景が異なるものの,迷走神経腹腔枝の温存によって,下痢,逆流症状といった,術後後遺症が軽減される可能性があると考えている.
著者
松隈 洋介 松下 雄一 垣上 英正 井上 元 峯元 雅樹 安武 昭典 岡 伸樹
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.138-145, 2006 (Released:2006-04-20)
参考文献数
12
被引用文献数
7 11

地球温暖化の主要な原因の一つになっている,火力発電所からの排ガスに含有されるCO2をハニカム型ゼオライトを充填した回転式吸着塔を用いた,TSA方式で除去・濃縮するための基礎試験,パイロット試験およびシステム最適化のため吸脱着挙動のシミュレーション計算を行った.この結果,CO2の平衡吸着量は濃度と温度の関数としたLangmuir型で,また気–固間の物質移動と熱移動のJ因子はいずれもRe数の関数として一つの式で表示できることがわかった.次いで,実機を模擬した,内径460 mm,充填層高480 mmのパイロット試験により,CO2の回収率は80%以上可能であることを確認した.さらに,物質移動や熱移動などを考慮した回転式吸脱着装置のシミュレーション計算を実施した.まず,基礎試験結果およびパイロット試験結果とシミュレーション計算結果を比較することにより計算の妥当性を確認した.次いで,吸着,加熱再生,パージおよび冷却の各工程におけるCO2の吸脱着挙動を把握し,システム最適化への指針を得た.
著者
松下 兼次
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学工学部研究報告 (ISSN:0451212X)
巻号頁・発行日
no.14, pp.7-9, 1972-11

It is known that the head of a centrifugal pump slightly increases when the roughnessincreases on the outer surface of the impeller of a centrifugal pump.The authors report the results about a volute pump that by measuring the velocitydistribution in the axial direction in the inlet of the casing. (namely, immediately afterthe water ran out the impeller.)We examined the relation between the velocity distribution and the head rise.
著者
松下 兼次 マツシタ カネツグ MATSUSHITA Kanetsugu
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学工学部研究報告 (ISSN:0451212X)
巻号頁・発行日
no.5, pp.45-49, 1965-09

The author performed his experiments, in order to know the special characteristics of centrifugal pumps, with an 1 stage volute pump of 3" diameter, changing the shapes of cross section of suction nozzles and varying the roughness of outer surface of impeller, and he examined the influence of those variables on the efliciency of pumps. The results obtained are as follows:Shapes of cross section of suction nozzles:Those which conformed to the shapes of impeller suction inlets reveald best in efficiency. The outer surface of impeller:As the roughness increased, the pump efficiency was decreased since the increase of disk friction loss was accompanied by the influence of the flow within the space between the impeller and its casing, while the total head was seen somewhat increased.
著者
松下 まりも 田原 秀晃
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

樹状細胞の分泌するサイトカインであり、申請者らがその抗腫瘍効果と機序について報告したinterlukin-23(IL-23)を中心に検討を進めた。IL-23-in vivo electroporation(IL-23-IVE:IL-23 plasmid vectorの全身投与)は、担癌マウスにおいて、有意な抑制効果が認められたものの完全治癒には至らないマウスもいる。そこで、本研究課題では、IL-23-IVEの抗腫瘍効果を増強させ、担癌マウスを完全治癒させる治療法の開発を目的とした。本研究課題では、近年明らかにされてきているがんに対する免疫応答を抑制する経路に着目し、IL-23-IVEの抗腫瘍効果を増強するために、がんに対する免疫応答を抑制する経路に対する活性化抗体あるいは阻害抗体を用いて(CTLA-4、PD-1、TIM-3)、IL-23-IVEのがんに対する免疫療法の抗腫瘍免疫応答が増強されるか否かについて検討した。手法としては、ワイルドタイプのマウスを用いて、皮下腫瘍モデル(腫瘍径:12~14mm(長径))を作製し、IL-23-IVE(コントロール群は、EGFP-IVE、plasmid vector: 100mg)を行い、CTLA-4、PD-1、TIM-3を、それぞれ単独もしくはコンビネーションで併用投与し、その抗腫瘍効果について検討した。本年度は、生存率の検討のみ行った。その結果、IL-23-IVEにPD-1を単独で併用した群、IL-23-IVEにPD-1とTIM-3をコンビネーションで投与した群で、累計生存率が上昇した。
著者
江本 慎 蒲池 浩文 田原 宗徳 神山 俊哉 松下 通明 西田 睦 藤堂 省
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.1589-1595, 2010 (Released:2010-12-25)
参考文献数
18

背景:胆嚢の隆起性病変はしばしば診断に難渋する.今回われわれは胆嚢腺筋症(adenomyomatosis:ADM)に合併した胆嚢隆起性病変の質的診断に造影超音波検査が有効であった症例を経験したので報告する.症例:58歳,男性.2009年2月,職場の健診で腹部超音波にて胆嚢腫瘍を指摘され当科紹介となった.血液検査ではCEAが8.3ng/mlと上昇していた.体外式ultrasonography(US)では乳頭状隆起性病変を指摘でき,肝床部浸潤を疑う所見であったが,CT,MRIでは隆起性病変の良悪性の鑑別は困難であった.Positron emission CT(PET-CT)では隆起性病変に異常集積を認めなかった.腹部造影超音波検査では乳頭状隆起性病変に強くdiffuseな造影効果を認め,ADMに合併した胆嚢癌と考えられた.悪性を否定できず,同年3月に開腹拡大胆嚢切除術を施行した.肉眼所見では分節型ADMと乳頭状の胆嚢癌を認めた.病理診断ではtub1>pap. s(-),ss,pHinf0,pBilf0,pPV0,pA0,pN0,pBM0,pHM0,pEM0,int,INFβ,pn0,ly1,v0,pT2,pN0,fStageIIであった.結語:胆嚢の隆起性病変の診断に造影超音波検査は有用な検査となりうる.治療に際し検査所見から総合的に判断することが重要と考えられる.