著者
松下 大介 藤野 修 川北 真之 高木 寛道
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

穴あき円盤の上の滑らかなアーベル多様体の族, あるいは底空間を高次元化した多重円盤から座標軸にあたる超平面を除いたものの上の滑らかなアーベル多様体の族を底空間の穴あるいは除いた超平面の上まで延長した族を構成することに成功した. この問題は1980年代には考察されていた問題ではあったが, 満足出来る証明がこれまで与えられてこなかったため, 関連する問題に不自然な技術的な仮定を付けざるをえないものが多くあり, この成果を利用することで, 関連するいくつかの結果を改良することが見込まる.
著者
鈴木 和夫 奈良 一秀 山田 利博 宝月 岱造 坂上 大翼 松下 範久
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

マツ材線虫病の病徴発現原因物質と宿主細胞との相互関係を明らかにする目的で、材線虫-宿主細胞間で引き起こされる反応について調べた結果、以下の諸点が明らかにされた。(1)感受性の異なる針葉樹5樹種を用いて、宿主の病徴進展とキャビテーション発生との関連についてみると、マツ材線虫病感受性が高い樹種ほど病徴進展にともなって、表面張力が大きく低下することが明らかにされた。このことは、表面張力に関与する物質が病徴進展と密接な関係にあることを示唆している。(2)感染後に産生される異常代謝産物の樹体に及ぼす影響についてみると、材線虫感染によって表面活性物質および蓚酸が産生され、これらの物質によってキャビネテーションの発生が促進されるものと考えられた。(3)表面張力の低下に関与する物質として蓚酸およびエタノール投与では、顕著な影響が認められずエスレル投与によって表面張力は低下した。このことから、病徴進展とエチレン生成が密生な関係にあることが示唆された。(4)キャビテーションの発生は、70%の壁孔閉塞が木部含水率の著しい低下を引き起こすことから、このことが樹体内のランナウェイエンボリズムの発生と密接な関係にあるものと考えられた。(5)光合成阻害処理によって、当年生葉の黄化・萎凋が他処理に比べて促進されたことから、光合成阻害による低糖類の減少が材線虫病の病徴進展と密接な関係にあるものと考えられた。以上の結果から、いままでブラックボックスとされてきた病徴発現原因物質と宿主細胞の相互関係が、病徴進展やキャビテーション発生の観点から明らかにされた。
著者
川口 真司 ガーグ パンカジ 松下 誠 井上 克郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1217-1225, 2005-08-01
被引用文献数
6

近年, ネットワークの発達と分散ソフトウェア開発の普及に伴い, 大規模なソフトウェアリポジトリが一般的なものとなってきている. ソフトウェアリポジトリとはソースコードやドキュメント, バグレポート等の各プロジェクトの成果物を蓄積するためのデータベースである. 通常, ソフトウェアリポジトリは膨大な数のプロジェクトを保持しているため, 例えば, 開発者が現在開発中のものと似ているプロジェクトを捜したり, 管理者が会社内で走っている全プロジェクトを俯瞰するといったことに活用できる. しかし, 保持内容が膨大なためにプロジェクト同士の関連を判定して整理するには非常な労力を必要とする. そこで, 我々はソフトウェアを自動的に分類するMUDABlueシステムを作成した. MUDABlueの特長は以下の四つである. (1)分類にはソースコードのみを使用, (2)分類先となるカテゴリー集合も自動的に決定する, (3)ソフトウェアを二つ以上のカテゴリーに分類することを許す, (4)Webインタフェースで分類結果を表示する. 本論文では既存の分類手法との比較を通じてMUDABlueシステムの有効性を議論する.
著者
松下 光範
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的はテーブルを囲む少人数参加者の合議に焦点を当て、知識の非対称性を有する参加者間のコミュニケーション様態と議論結果との関連性を明らかにすること、及びその協同を円滑に支援するためのテーブル型システム実現のためのデザイン指針を明らかにすることである。そのために、対面協調作業参加者の間のコミュニケーション行為に着目し、そこで行われるインタラクションの特徴を3つの実験を用いて観察した。実験の結果、(1)反射的応答を必要とする課題では、指を用いた直示行為の利用可否が発話内容と課題達成度に影響する、(2)熟考することが求められる課題では、他の参加者の非言語モダリティの参照可否は課題達成度に大きな影響を及ぼさない、(3)発話長や発話頻度は課題のタイプや非言語モダリティの利用可否に影響を受けない、(4)結合型課題では、グループ全体の効用が参照可能な状況下、かつ全ての参加者の代替案集合に対する評価が静的である場合に、より参加者全体にとって効用の高い案で合意できる可能性がある、ということが観察された。
著者
松下 敬一郎
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.135-148, 2006-09-20

近年の日本の少子化においては、子供をもたない女子人口割合の増加が顕著にみられ、4人ないし5人に1人の女子が無子を選択している。本論では、子供をもたないことが選択される端点解が最適となるモデルを用いて、子供の養育費用が増加することにより端点を選択する割合が増加することを示している。さらに、実証研究のための含意として、端点においては子供の養育に対する補助の効果が小さいこと、経済的に自立している場合には子供をもたないことが資産所有者の資産分布に与える影響は小さいこと、子供の需要増加に結びつかない結婚の奨励は離婚を奨励することになる可能性があること、資産継承は子供の需要増加に結びついており少子化を減速させることを指摘している。
著者
小嶋 哲人 松下 正 高木 明 山本 晃士
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

先天性プロテインS(PS)欠損症・異常症の遺伝子解析において、未解析の新たな症例検体については従来のPCRダイレクトシーケンス法を用いた遺伝子変異の同定を行った結果、新規変異を含めてその原因と思われるPROS1遺伝子変異を同定した。その中でPROS1遺伝子の蛋白翻訳領域には変異は見つからなかったものの、翻訳開始点より168bp上流のプロモーター領域に同定したC→T (c.-168C>T)の点突然変異のルシフェラーゼ・レポーター解析の結果、変異型では転写活性が20%まで低下し、先天性PS欠損症の原因と思われた。先天性PS欠損症症例で従来の各エクソンのPCRダイレクトシーケンス法にてPROS1遺伝子に変異の見つからなかった症例において、PROS1遺伝子の15個の各エクソン部に偽遺伝子と区別するPCRプライマーを設定し、Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification (MLPA) 法によってPROS1遺伝子欠失の同定解析を行ったところ、PROS1遺伝子の全欠失を示す症例を1例同定した。しかし、他の多くの症例では欠失を同定できず、遺伝子欠失の頻度はまれであると思われた。ヒトPSを産生するHepG2 細胞を用い、エストラディオール(E2)の添加による培養上清中のPS分泌量の変動についてELISA 解析を行ったところ、30%の発現低下を認めた。また、細胞内PS mRNAの変動についてReal Time PCRを用いて定量した結果、同様にE2 の添加によるmRNA発現低下を認めた。現在、PS遺伝子プロモータ領域をクローニングし、ルシフェラーゼ・レポーター解析による、HepG2細胞でのE2 によるPS遺伝子発現の制御動態解析を施行中である。
著者
阿波賀 邦夫 松下 未知雄 吉川 浩史
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

有機伝導体・磁性体研究の成果が応用展開される有機エレクトロニクスを目指す一方、有機エレクトロニクスの駆動技術を利用して有機伝導体・磁性体研究の発展を目指した。その結果、(1)チアジルラジカル薄膜に見出された巨大過渡光電流のメカニズムを解明し、この機構を利用して近赤外光の光電変換を達成した。(2)イオン液体と有機強構造薄膜を用いて電気二重層トランジスタを作製し、キャリア注入機構を分子論的に明らかにした。(3)強い配位能を有機アニオンラジカルを合成し、その金属錯体において高温弱強磁性などの特異な分子磁性を見出した。
著者
恩田 裕一 辻村 真貴 松下 文経
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

北東アジア地域における土地の荒廃について、現地調査およびリモートセンシングによって調査を行った。土地荒廃の理由としては、伐採、リターの採取、プランテーション、過放牧と様々な土地改変が行われており、それによる表面被覆の低下による土壌の浸透能の低下が激しい土壌侵食を引き起こし、土地荒廃の直接的な引き金になっていると考えられる。一方で、中国においては、植林の進展につれて、浸透能の増加、および土壌侵食量の減少も報告されている。本研究においては、現地と協力した詳細な現地調査および、リモートセンシングによって、表面被覆が回復すると浸透能が増加し、土壌侵食量が減少したことがあきらかとなった。また、リモートセンシングによって、NDVIの解析により東アジア全体における荒廃度の変化について、MAPを作成することができた。
著者
松下 道雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

生体内で働いているタンパク質には無数の準安定構造があり、絶えずその間を移り変わり、決して同じ姿に留まらない。こうしたタンパク質の構造の揺らぎがタンパク質の機能の制御に深く関わっていることは以前から指摘されていたが、構造揺らぎの詳細を知る手立てがなかった。そこで一分子観察によって個々のタンパク質の分子構造を直接分光測定しようというのが本研究の目的である。一分子の分光測定には最低でもミリ秒程度の時間が必要なために、室温での構造変化を追うことはできない。このため、測定が十分可能になるまで温度を下げて測定を行う。今回の研究で、一個のタンパク質の構造変化のダイナミクスを温度を変えながら測定することに成功した。同一のタンパク質を温度を変えながら分光測定したのは世界ではじめてである。解析の結果、温度に依存しないトンネリングと考えられる構造変化が見つかった[Oikawa, et. al.J.Am.Chem.Soc.130(2008)4850.]。低温での単一分子分光は、主に技術的な困難からもっぱら赤外領域に限られていた。このため、光合成細菌の光捕集複合体について豊富な構造情報をもたらしたが、生化学的に興味深い酵素は、フラビンタンパク質群に象徴されるように可視域に吸収を持つものが多い。単一タンパク質について、可視域での励起と蛍光検出が低温でできるよう、まず低温用反射対物レンズを開発し[Fujiyoshi,et al.Appl.Phys.Lett.91(2007)051125.]、これを使って単一のGFPを二光子励起し、その蛍光スペクトルは低温でのGFPの構造変化を如実に表わしていることを示した[Fujiyoshi,et al.Phys.Rev.Lett.100(2008)168101.]。
著者
布広 永示 マッキン ケネスジェームス 大城 正典 松下 孝太郎
出版者
東京情報大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,プログラミングに対する学習意欲を喚起し,やる気を継続させる学習環境を提供することを目的として,ゲーム感覚的な学習機能を取り入れたプログラミング学習支援システムを開発した.次に,開発した学習支援システムをプログラミング演習や企業の新人教育などで活用し,本システムの学習効果を評価した.確認テスト・期末テストの平均点の推移やアンケートの結果から,本システムを使用することで,プログラミングに興味を持つという観点では有効であったと考える.更に,プログラムの構造や処理の流れを理解するという目的に関しても効果があったと考える.しかし,プログラム作成能力の向上については十分な効果を得られてなく,学習機能やシステム活用方法などの改善を検討していく必要がある.今後の研究課題として,エンタテインメント性を取り入れたプログラミング講義・演習の学習方法や学習支援機能の研究を進めていく予定である.
著者
松下 翔太 東 剛秀 田中 貴章 杉田 裕次郎 白沢 竜馬 亀澤 健太 山之上 卓 下園 幸一 小田 謙太郎
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2011-IOT-12, no.9, pp.1-6, 2011-02-21

ミニブログが注目を集めている.ミニブログは気軽であるがゆえにユーザの意図している以上のレベルで個人情報が流出していることが考えられる.本論文ではミニブログの代表である Twitter の投稿記事から個人情報を推定する方法を挙げ,ユーザーが自身のプライバシーを制御する方法を提案する.個人情報の推定方法としてデータマイニング手法を適用し,Twitter ユーザ向けのアンケートの実施及び試作を行い,推定する属性と投稿時刻には相関があることを明らかにした.これにより投稿文脈を手がかりとしてユーザ属性を推定する一つの基準を立てることができた.
著者
近藤 幸一 千葉 龍矢 小野 裕司 吉田 栄吉 松下 伸広 阿部 正紀
出版者
公益社団法人日本磁気学会
雑誌
日本応用磁気学会誌 (ISSN:18804004)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, 2004-04-01
被引用文献数
2

携帯電子機器の急速な高速度化・小型化とそれに伴う電子回路の高集積化により,半導体部品等から発生する高周波伝導ノイズを,ノイズ発生源である半導体素子内部あるいはその近傍で抑制する技術が望まれています.我々はフェライトめっき法により得られるNiZnフェライト薄膜を用いたGHz伝導ノイズ抑制体(バスタフェリックス_[○!R])を開発しました.Fig.1に示すように,従来の金属粉とポリマーからなる複合磁性シート(厚さ50μm)に比べ約1/15の厚さ(31μm)で同等以上の性能を発揮するので,携帯電話,ノートパソコン、デジタルカメラのようなデジタル電子機器の輻射ノイズ対策、及び内部干渉・誤動作の防止に最適です.
著者
松下 一信 右田 たい子 三芳 秀人 山田 守 外山 博英
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、ピロロキノリンキノン(PQQ)を補酵素とするキノプロテイン脱水素酵素である大腸菌のグルコース脱水素酵素(GDH)および酢酸菌やPseudomonasに存在する異なる2種類のアルコール脱水素酵素(ADH)の構造と機能を、生化学、有機化学、遺伝子工学及びX線構造解析の手法を総合的に駆使して解明することを目的とし、3年間の研究によって以下に示す研究成果を得た。1)大腸菌GDHの構造機能解析:GDHの変異体ランダム変異法と部位特異的変異法を組み合わせて調製し、細胞膜から精製したそれら変異体のキネティクス解析及び酸化還元スペクトル分析を基に、PQQの周辺で酸化反応に関与する部位と分子内電子移動反応に関与する部位について解析した。その結果とGDHモデル構造解析から、His-262、His775、Trp-404、Asp466、Asp730、さらにLys-493の機能を明かにした。2)酢酸菌ADH及び大腸菌GDHのユビキノン反応部位の解析:酢酸菌ADHにはユビキノン還元反応とは別にユビキノールを酸化する活性が存在することを発見し、その2つの部位が異なる領域に存在し、異なる立体構造をもつことを、数多くの合成フェノール系およびカプサイシン系ユビキノン阻害剤の阻害スペクトラムとユビキノン類似体の基質特異性の比較から明にした。GDHのユビキノン結合部位が膜の比較的表面に存在することも明かとなった。3)酢酸菌ADH及びPseudomonas ADHのX線構造解析:Type II ADH(ADH IIB)の結晶化とそれに続くx線結晶構造解析を行い、その構造を1.9Aレベルで解読すること成功した。また、酢酸菌の膜結合型ADHに関しては、その結晶化には成功し、部分的な解像は得られているものの、最終的な構造を得るにいたっていない。
著者
山本 晃士 松下 正 小嶋 哲人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

肥満・糖尿病のモデルとして遺伝的肥満マウス(ob/obマウス)を用い、血栓傾向の分子メカニズムを検討した。肥満マウスでは、対照マウスと比較して血中PAI-1抗原量は数倍に上昇しており、組織におけるPAI-1 mRNAの発現増加も認められた。もっとも顕著だったのは脂肪組織で、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞、脂肪細胞等においてPAI-1 mRNAの発現が著明に増強していた。また肥満マウスでは外因系凝固の起始因子であるTFの発現も亢進していた。このTF mRNA発現増加も脂肪細胞自体によることがわかったが、脂肪組織内の血管を構成する細胞(血管外膜細胞)においても発現の増強が認められた。PAI-1に加えてTFの発現増加が、肥満個体における凝固亢進状態を増幅しているであろうと推測された。さらに、脂肪組織におけるPAI-1およびTFの発現を強力に誘導するTGF-βの発現自体も、肥満マウスの脂肪組織では週齢依存的に増加しており、血栓傾向を増悪させるTGF-βのメディエーターとしての役割は非常に重要であろうと考えられた。一方、肥満マウスに心因性ストレスを負荷し、線溶阻害因子PAI-1の発現と組織内微小血栓形成について解析を行った。肥満マウスおよび対照マウスを50ml用チューブ内に閉じ込めて拘束ストレスを負荷すると、肥満マウスではストレス負荷2時間後に早くも著明な血中PAI-1抗原量の上昇と組織におけるPAI-1 mRNAの発現増加を認めた。特に、脂肪組織や心臓、腎臓におけるPAI-1 mRNA発現は対照マウスに比べて顕著に増加していた。この傾向は20時間という長時間ストレスでも同様であった。また、このPAI-1 mRNA発現は腎糸球体の内皮やメサンギウム細胞、心筋内微小血管内皮細胞、脂肪細胞等に一致して認められた。さらにストレス負荷後の肥満マウスでは腎糸球体微小血管内にフィブリン沈着を認めたが、対照マウスでは認めなかった。以上より、肥満およびインスリン抵抗性を有する個体ではストレス負荷によってPAI-1遺伝子発現が著明に亢進し、これが組織内微小血栓形成を促進するひとつの原因と考えられた。これらの研究成果は、肥満・糖尿病患者における血栓症発症の病因・病態を考える上で重要な知見と言える。