著者
奥代 直巳 松本 亮司 生山 巖
出版者
農林水産省果樹試験場
巻号頁・発行日
no.21, pp.51-57, 1991 (Released:2011-03-05)
著者
本村 友一 松本 尚 益子 邦洋 篠田 伸夫 西本 哲也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.513-518, 2018-06-30 (Released:2018-06-30)
参考文献数
10

はじめに:2016年わが国の交通事故死亡者は3,904人であった。重症外傷の転帰には受傷から根治手術までの時間がきわめて大きく影響する。救急自動通報システム:より早期に医師が患者に接触するために,交通事故の工学情報を根拠に医師を現場派遣することが効果的と考えられた。事故情報から乗員の死亡または重症外傷受傷確率(以下,死亡・重症率)を判定するアルゴリズムが開発され,重大事故時には発生場所や乗員の死亡・重症率などをドクターヘリ基地病院と消防へ送信し,医師を現場派遣する救急自動通報システム(D-Call Net)が開発された。すでにトヨタ自動車,本田技研工業の一部車種に搭載され2015年11月より試験運用が開始されており,これによりドクターヘリの起動が17分早まることが見込まれている。考察:D-Call Netは交通事故の工学的情報を根拠に医師派遣システムを起動させる世界初のシステムで,有効活用によりわが国は世界一安全な道路交通社会を実現可能であろう。
著者
佐川 岳人 工藤 由貴 西口 隆夫 川向 孝知 坂倉 幹始 塩田 晃久 星 大海 松本 恵子 渡辺 淳
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.335-340, 2015
被引用文献数
7

Direct analysis in real time mass spectrometry (DART-MS)を利用して,食品から連続的に放出される揮発性成分を,フレーバーリリース現象として測定することを試みた.<BR>分析用試料として,チョコレートに類似した性質を持つ,モデル食品を作成し使用した.モデル食品の構成は,パーム核硬化油,乳糖,グラニュー糖をベースとし,そこに<i>l</i>-carvoneと<i>d</i>-limoneneを添加したものである.連続的な揮発性成分の測定には,DARTイオン源と質量分析計を,揮発性成分分析専用のデバイスを組み込んだシステムを使用することで対応し,モデル食品から加熱溶解する際に放出される<i>l</i>-carvoneと<i>d</i>-limoneneを測定した.<BR>結果として,本システムを用いることで毎秒1ポイントの連続的な揮発性成分の測定が可能となり,秒単位で変化するフレーバーリリース現象を捉えることができた.また,本モデル食品では<i>l</i>-carvoneと<i>d</i>-limoneneではフレーバーリリースの挙動が異なる事も確認された.さらに,質量分析計の分析条件を最適化することにより,ミリ秒単位での測定の可能性も示唆された.
著者
保下 拓也 吉松 彰宏 鈴木 秀和 松本 幸正
雑誌
第80回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, no.1, pp.421-422, 2018-03-13

筆者らは,LPWA(Low Power Wide Area)を利用した低運用コストで実現可能なIoTバスロケーションシステムの実現を目指している.LPWAネットワークを構築するための一通信規格であるLoRaWANでは,通信距離を最大にする場合,一度に送信できるデータサイズが11byteに限定されてしまう.この制約下においてバスの走行位置を伝送するために,本稿では位置情報圧縮手法を提案する.GPSから取得した絶対位置情報を特定地点からの相対位置情報に変換し,かつサーバ側で補完可能な情報を削除することにより, データを圧縮する.LPWAネットワークにおいて提案手法を実装した車載器の動作検証を行った結果,LPWAの制約下においても,バスの位置情報を正常に収集できることを確認した.
著者
佐藤 勇太 小野 武也 石倉 英樹 相原 一貴 松本 智博 田坂 厚志 沖 貞明 梅井 凡子 積山 和加子
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.409-412, 2015 (Released:2015-07-07)
参考文献数
33
被引用文献数
5 4

〔目的〕関節固定により発生する関節拘縮に下肢への非荷重がおよぼす影響を検討した.〔対象〕Wistar系ラットとした.〔方法〕関節固定と後肢懸垂の実施の有無により,対象の後肢を,無処置の対照群,関節固定のみ行う固定群,後肢懸垂のみ行う懸垂群,両方行う固定懸垂群に分けた.実験開始前と1週間後において,足関節背屈角度を測定した.〔結果〕1週間後において,足関節背屈角度の減少は,固定群と固定懸垂群に生じており,固定懸垂群の方が,固定群と比較して著明であった.〔結語〕下肢への非荷重は,関節固定により発生する関節拘縮の進行を著明にさせる.
著者
堂本 真吾 江口 正司 高岡 昌輝 松本 忠生 大下 和徹 武田 信生
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.309-319, 2006-11-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
23
被引用文献数
1

地球規模での水銀汚染に関して人為的発生源は重要である。未知発生源の1つとして火葬炉から排出される水銀の挙動を調査した。火葬炉のバグフィルタ出口においてOntario Hydro Methodを基にした水銀形態別連続分析計を用い, 34検体の排ガス中水銀濃度を連続測定した。排ガス中の総水銀濃度は4.3μg/m3NでHg0が2.2μg/m3N, Hg2+が2.1μg/m3Nであった。1御遺体あたりの水銀排出量は51.8mg/人と見積もられ, 年間死亡人口との関係から年間水銀排出量は57.0kg/年と推定された。イギリスでの規制値案としては水銀排出量150mg/4人 (37.5mg/人) である。この規制値と今回の結果を比較すると34検体中12検体がこの規制を満たしていないことがわかった。また年齢階級別に平均水銀排出量を算出すると65-69歳の階級で最大の142mg/人の排出量となった。これは過去に歯科治療にアマルガムが多く利用されてきたことと喪失歯が少ないことが原因と考えられた。また過去の歯科治療におけるアマルガム使用推移から水銀排出量の将来予測を行った。その結果歯科治療履歴からの推測では, 2005年現在で1670~2380kg/年と見積もられた。実測値からの推測と治療歴からの推測には大きな隔たりがあった。将来動向としてはこれから約20年後に水銀排出のピークを迎えることが示唆された。
著者
松本 直子 桑原 牧子 工藤 雄一郎 佐藤 悦夫 石村 智 中園 聡 上野 祥史 松本 雄一
出版者
岡山大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-06-28

ヒトが生み出す物質文化には、身体機能の拡張を果たす技術と、感性や価値観にうったえてヒトの心を動かす芸術という二つの側面がある。本計画研究では、「アート」として包括されるその両面が身体を介して統合される様相に焦点を当て、日本列島、メソアメリカ、アンデス、オセアニアにおけるアートの生成と変容の特性を比較検討する。アート(技術・芸術)によるヒトの人工化/環境のヒト化という現象を、考古学的・人類学的・心理学的に分析することにより、社会固有のリアリティ(行動の基準となる主観的事実)が形成される歴史的プロセスを解明し、新たな人間観・文化観を提示することを目的とする。
著者
松本 英之
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.216-221, 2012-08-01 (Released:2014-08-30)
参考文献数
40

経頭蓋磁気刺激法 (transcranial magnetic stimulation: TMS) の最も基本的な刺激法として, 単発刺激法 (single-pulse stimulation) が挙げられる。その単発刺激法で最も普及している評価項目は, 神経根刺激法と組み合わせて測定する中枢運動伝導時間 (central motor conduction time: CMCT) であろう。その応用として, 通常のCMCTの測定に脳幹刺激法や馬尾起始部刺激法を組み合わせる方法が存在し, より詳細に皮質脊髄路の伝導を評価できる。また運動野の同定, 神経可塑性, 大脳皮質の興奮性, 脳梁伝導, 大脳皮質信号連絡の評価などにも応用可能である。更に中枢神経の解析に限らず, 末梢神経近位部病変の検出にも用いられる。このように単発刺激法は, TMSの基本でありながら, 実に様々な有用な解析方法を有している。
著者
内田 智也 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 野田 優希 石田 美弥 佃 美智留 大久保 吏司 藤田 健司
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.791-794, 2016 (Released:2016-12-22)
参考文献数
15

〔目的〕我々が考案したSingle Leg Up Downテスト(以下SLUDテスト)と体重支持指数(以下WBI)の関連について検討すること.〔対象と方法〕中学野球選手202名にSLUDテストおよびWBI(等尺性最大膝伸展筋力を体重で除した値)を測定した.非投球側のSLUDテスト遂行可能な高さで群分けし,各群間のWBIをKruskal-Wallis検定,多重比較法を用いて比較した.〔結果〕SLUDテスト40 cm,30 cm,20 cm,10 cmのWBIの平均はそれぞれ0.79±0.18,0.87±0.20,1.00±0.19,1.04±0.24であり,40 cmと30 cmの各群に対して,20 cm,10 cmの各群が高値を示した.〔結語〕スポーツ選手に必要な筋力はWBI 1.0以上とされていることからも,20 cm台からのSLUDテスト遂行の可否が下肢筋力のスクリーニングテストとして有用であることが示された.
著者
米丸 啓介 松本 幸大
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.20, no.46, pp.997-1000, 2014-10-20 (Released:2014-10-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

The greatest feature of carbon fiber reinforced plastics (CFRP) is an overwhelming high-specific strength. CFRP can change architectural space innovatively. CFRP is a general material as one of the high-performance materials in other fields besides construction. Then, structural use of CFRP already has various track records such as airplane and automobile. Compared with other uses, the use period of construction is long, and higher durability is required especially of structural materials. In this research, experimental verifications are carried out for clarifying durability for the purpose of using CFRP expansively as a structural material of construction.
著者
松本 逸宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.107-108, 2001-10-10 (Released:2012-09-24)
著者
石原 与四郎 髙清水 康博 松本 弾 宮田 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.Supplement, pp.S41-S62, 2014-08-31 (Released:2014-12-26)
参考文献数
40
被引用文献数
2 2

宮崎県の日南海岸沿いには,古第三系~新第三系の深海相がよく露出する.このうち日南市の猪崎には,古第三系日南層群がオリストリスとして見られる.その内部はチャネル・レビーシステムのタービダイトサクセッションから構成されるが,ソールマークや生痕化石が顕著に観察できるとともに,様々な液状化・流動化構造がよく発達していることで知られている.日南層群を不整合で覆う宮崎層群は,前孤海盆充填堆積物であり,粗粒な“宮崎相”と砂岩泥岩互層からなる“青島相”からなる.“宮崎相”は河川~浅海および,狭い陸棚をもつ斜面上に形成されたファンデルタシステムで,相対的海水準の変動と対応した堆積相の分布を示す.これらには石灰岩や波浪を特徴付ける堆積相,さらに重力流堆積物が顕著である.一方,“青島相”は海岸沿いによく露出し,全体的に単調な砂岩・泥岩互層からなる“タービダイト”サクセッションをなす.これらの“タービダイト”は,通常とは異なる堆積構造をもち,その重なりは通常のタービダイトサクセッションとは違う層厚分布を示す.そして一部には津波堆積物と考えられる厚層理砂岩層も挟在する.●本巡検では,主に日南海岸沿いに分布するこれらの深海相・タービダイトサクセッションをめぐり,様々な重力流堆積物やそれらが構成する地層を見学する.
著者
笹田 怜子 松本 絵美 小泉 千嘉 吉岡 美子 長坂 慶子
雑誌
岩手県立大学盛岡短期大学部研究論集 = Bulletin of Morioka Junior College Iwate Prefectural University (ISSN:13489720)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-9, 2012-03-01

Perilla oil is expected to be good to our health because of its α-linolenic acid. Its usage in clinical settings for patients with allergic disease and asthma has also been reported. Perilla oil has long been believed that it is inadequate for cooking because of its susceptibility to high temperature. In this study, we used perilla oil for fry and examined its acid and peroxide values to determine whether the oil was adequate to be used as frying oil. Although no adverse chemical reaction was observed in this study, the smell of perilla oil reflected negatively on taste of fries. In order to solve this problem, we mixed the perilla oil with other kinds of oil. The mixture of 20% perilla oil, 30% white sesame oil and 50% canola oil turned out to be most suitable as frying oil. Furthermore, we found that sweet potatoes matched well with the new compounded oil. We concluded that Perilla oil can be used for cooking especially with other oils and to fry food items which contain sweetness.
著者
松本 祐一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.7-11, 2020-01-01 (Released:2020-01-01)

東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下,東京2020大会)期間中,何も対策を行わなかった場合,道路においては大会関係車両や物流車両の増加などで交通状況は厳しくなる見通しである。首都高の渋滞は現況の2倍近くまで悪化,鉄道については,観客の利用等を要因として10%増,また会場周辺駅や近傍路線を中心に局所的な混雑が発生することが予想されている。東京2020大会の輸送を安全・円滑に行うための基本的な考えとして,円滑な大会輸送の実現と都市活動維持との両立に向け,①交通需要マネジメント(TDM),②道路の交通システムマネジメント(TSM),③公共交通輸送マネジメントについて,入念な準備と柔軟な対応及び,レガシーの提起と継承を掲げて,検討・取組を行っている。本稿では,これらの取組について紹介する。
著者
滝澤 修 松本 勉 中川 裕志 村瀬 一郎 牧野 京子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.1977-1979, 2004-08-15

プライバシ保護などに利用できるステガノグラフィ(秘匿通信)は,情報の埋め込み媒体が持つ情報の冗長性を利用するため,画像や音響信号など冗長度の高い媒体について多く提案されてきた.本論文では,ディジタルドキュメントを埋め込み媒体とし,文書内に挿入された改行コードの位置を秘匿情報とするテキストステガノグラフィを提案する.提案手法はドキュメントのレイアウト情報を利用しないため,電子メールのようなプレーンテキストに対しても秘匿情報の埋め込みが可能で,文字通信においてプライバシを保つ手段として利用できる.
著者
赤澤 正人 松本 俊彦 勝又 陽太郎 木谷 雅彦 廣川 聖子 高橋 祥友 川上 憲人 渡邉 直樹 平山 正実 亀山 晶子 横山 由香里 竹島 正
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.550-560, 2010 (Released:2014-06-12)
参考文献数
37
被引用文献数
1

目的 わが国の自殺者数は,平成10年に 3 万人を超えて以降,11年に渡りその水準で推移しており,自殺予防は医療や精神保健福祉の分野に留まらず,大きな社会的課題となっている。本研究では心理学的剖検の手法で情報収集がなされた自殺既遂事例について,死亡時の就労状況から有職者と無職者に分類し,その心理社会的特徴や精神医学的特徴の比較•検討を通じて,自殺既遂者の臨床類型を明らかにし,自殺予防の観点から有職者ならびに無職者に対する介入のポイントを検討することを目的とした。方法 心理学的剖検の手法を用いた「自殺予防と遺族支援のための基礎調査」から得られたデータをもとに分析を行った。調査は,自殺者の家族に対して独自に作成された面接票に準拠し,事前にトレーニングを受講した精神科医師と保健師等の 2 人 1 組の調査員によって半構造化面接にて実施された。本研究で用いた面接票は,家族構成,死亡状況,生活歴,仕事上の問題,経済的問題等に関する質問から構成されていた。なお,各自殺事例の精神医学的診断については,調査員を務めた精神科医師が遺族からの聞き取りによって得られたすべての情報を用いて,DSM-IVに準拠した臨床診断を行った。本研究では,2009年7 月中旬時点で23箇所の都道府県•政令指定都市から収集された自殺事例46事例を対象とした。結果 有職者の自殺者は,40~50代の既婚男性を中心として,アルコールに関連する問題や返済困難な借金といった社会的問題を抱えていた事例が多かった。無職者では,有職者に比べて女性の比率が高く,20~30代の未婚者が多く認められ,有職者にみられたような社会的問題は確認されなかった。また,有職者では死亡時点に罹患していたと推測される精神障害としてアルコール使用障害が多く認められたのに対して,無職者では統合失調症及びその他の精神病性障害が多く認められた。結論 自殺予防の観点から,有職者に対しては,職場におけるメンタルヘルス支援の充実,アルコール使用障害と自殺に関する積極的な啓発と支援の充実,そして債務処理に関わる司法分野と精神保健福祉分野の連携の必要性が示唆された。一方で,無職者に対しては,若い世代の自殺予防に関する啓発と支援の充実,統合失調症と自殺に関する研究の蓄積の必要性が示唆された。
著者
大東 雄一郎 大槻 憲一 薮内 裕也 松本 宗明 中本 貴透 北東 大督
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.1171-1176, 2016 (Released:2016-11-30)
参考文献数
15
被引用文献数
3

グリセリン浣腸による直腸損傷から溶血性の急性腎不全を発症した症例を経験したので報告する.患者は58歳,女性.胆石症に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を予定していた.手術前の前処置としてグリセリン浣腸を行ったところ肛門痛と少量の血便を認めたが,予定通り入室し手術を行った.術中より血尿を認め,尿量は少なかった.術後も血尿は続き,血液検査で溶血を認め,ほぼ無尿となった.手術翌日の血液検査,CTで急性腎不全と直腸穿孔を認めた.術前浣腸後の経過から,浣腸による直腸損傷およびグリセリン血中移行による溶血性の急性腎不全と診断した.このため,手術翌日より血液透析を開始し,ハプトグロビンを投与した.直腸穿孔に対しては保存的治療を行った.腎不全・直腸穿孔とも改善し,術後第28病日に退院した.