著者
大塚 恵子 木村 肇 松本 明博
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.24-30, 2014-01-10 (Released:2014-04-23)
参考文献数
19
被引用文献数
3

ジアリルフタレート樹脂の接着性と靭性向上を目的として,ポリエチレングリコールユニットの異なるアクリル酸エステルをジアリルフタレート樹脂に配合し,ラジカル重合で同時に反応させることで相互侵入高分子網目構造(IPN)を形成させた。破壊靭性値,およびはく離接着強度とせん断接着強度は,アクリル酸エステルのポリエチレングリコールユニットの分子量や配合割合が大きくなるに従って大きく向上した。特にポリエチレングリコールユニットの分子量が大きい場合に,破壊靭性値と接着強度はジアリルフタレート樹脂と比較して2 倍以上の値を示した。これは,ポリエチレングリコールユニットの導入による柔軟性付与,および柔軟性付与により硬化過程で生じる接着剤層の内部応力が緩和されるためであると考えられ,動的粘弾性挙動と一致した。また,ポリエチレングリコールユニットの分子量の小さいアクリル酸エステルを配合した場合やポリエチレングリコールユニットの分子量の大きいアクリル酸エステルの配合割合が小さい場合には,ジアリルフタレート樹脂にアクリル酸エステルが相溶したIPN を形成した。一方,ポリエチレングリコールユニットの分子量の大きいアクリル酸エステルを20 wt% 以上配合した場合には,ジアリルフタレート樹脂架橋構造中にアクリル酸エステルが分子レベルで微分散した相分離型IPN を形成した。
著者
村松 歩 小林 昌平 水野(松本) 由子
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.263-271, 2019 (Released:2019-08-30)
参考文献数
36
被引用文献数
1

This research aimed to investigate the effect that smartphones have on brain networks. The Subjects were 23 healthy adults (25.7 ± 5.64 years old). Five sessions with relax, pleasant, unpleasant, pleasant sentences, and unpleasant sentences, stimuli were conducted using a smartphone. The electroencephalography (EEG) was measured soon after the stimuli. The coherence analysis and the complex network analysis were conducted for EEG in the alpha2 wave band. In the stress-free group, the brain shows low network efficiency under relax or pleasant stimuli, and high network efficiency under unpleasant stimuli. In the stress group, there are no differences in network efficiency among any kinds of stimuli. In either group, the network efficiency under sentence stimuli is close to that under unpleasant stimuli. Our study using complex network analysis for the coherence value from EEG revealed that network efficiency of the brain depends on the category of emotional stimuli during smartphone operation.
著者
後藤 育知 山崎 諒介 大谷 智輝 岩井 孝樹 籾山 日出樹 松本 仁美 金子 純一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101962, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】肩回旋筋腱板の断裂は棘上筋に最も多く生じるとされている.通常保存及び手術療法ともに4 〜6 週間の肩関節自動運動が禁止されることで,その期間の廃用症候群が問題となる.棘上筋は僧帽筋上部線維より深層を走行するため視診や筋電図学的に機能や構造を検討するには困難な解剖学的特徴をもつ筋といえる.そこで本研究では超音波画像診断装置を用いて深層に存在する棘上筋の筋厚を複数箇所測定し自動運動による棘上筋への負荷の程度や構造的特性を解明する事と,棘上筋の構造的特性を踏まえた廃用症候群を予防する方法について検討する事を目的に研究を行った.【方法】1)対象:肩関節障害の既往のない健常成人男性12名(平均年齢21.6±1.61歳,平均身長173.4±5.5cm,平均体重63.4±5.9kg)を対象とし,利き腕において計測を行った.2)方法:(1)測定機器は計測機器超音波画像診断装置(L38/10-5ソノサイト社製)を用いた.(2)棘上筋筋厚の計測方法:棘上筋の測定肢位は椅子座位にて上肢下垂位,耳孔‐肩峰‐大転子が一直線上となる肢位で行った.測定部位は肩峰と棘三角を結ぶ線に上角から下した垂線(以下,上角ポイント),肩峰と棘三角を結ぶ線の中点(以下,中点ポイント)の2 点を棘上筋の走行に対して直角に超音波画像診断装置のプローブ面を全面接触させて測定した.測定する肩関節外転角度は安静下垂位(外転0°),外転10°,30°,90°の角度において無負荷で測定を行った.(3)統計処理:各ポイントにおける角度ごとの比較は一元配置分散分析にて多重比較検定を行い,異なるポイントの角度ごとの比較には,正規性の確認後,対応のあるt検定を用いた.いずれも有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】超音波による棘上筋厚の測定の実施に際し,本研究に関する説明を担当者から行い,研究で得られた結果は目的以外に使用しないことなどを十分に説明し文書にて同意を得た.【結果】上角ポイントでは棘上筋の筋厚は0°で0.9 ± 0.34cm,10°で1.02 ± 0.37cm,30°で1.15 ± 0.33,90°で1.65 ± 0.28cmで,90°において最も筋厚が厚くなり,0°,10°,30°と比較して統計学的に有意に厚くなったことが明らかとなった.また,0°,10°,30°において各々を比較した場合では統計学的に有意差を認められなかった.中点ポイントでの筋厚は0°,10°,30°,90°それぞれの角度間において棘上筋の筋厚に統計学的有意差は認めなかった.【考察】今回の研究において上角ポイントにおける筋厚は,肩関節外転0°〜30°において各々を比較した場合,棘上筋の筋厚に統計学的有意差は認められなかったが,0°,10°,30°での筋厚を90°と比較した場合では統計学的有意差が認められた.坂井らによると,肩関節外転における棘上筋は通常最初の10°までに働いているとされており,肩関節10°付近で筋厚が最大膨隆するという仮説が考えられた.また,棘上筋は30°まで作用するとされる説もあるため30°付近においても筋の膨隆はプラトーに達すると考えられた.しかし,得られた結果より肩関節外転0°〜30°における棘上筋の筋厚に統計学的有意差が見られなかったことから,0°〜30°までは負荷が増大しても筋厚が変化しないことが明らかとなった. 中点ポイントでは角度間において,統計学的に有意な差を認めなかったことから,測定部位が異なれば負荷の影響は同じであっても筋厚の変化は異なることを示している.これら2 ポイントの異なる筋厚の変化は羽状筋である棘上筋とその収縮様式,筋の起始部が関係しており,自動外転90°の最大負荷時に筋腹部が上角ポイントに滑走し,中点ポイントでは同じく90°で平均値が最も低値である事から筋腹部から筋腱移行部になったことで90°での筋厚が薄くなったと考えられる.つまり30°〜90°での筋の滑走が最も大きかったと推察される.【理学療法学研究としての意義】臨床における腱板断裂例では手術療法後の肩関節自動運動禁止による廃用症候群が早期ADL獲得に影響を与える.この問題に対し今回の結果から,0°〜30°の範囲内の肩関節外転自動運動は棘上筋に筋厚に変化がみられないことから,この角度範囲であれば筋厚を高めることなく収縮を促すことができ,肩関節自動運動禁止による棘上筋の廃用性筋萎縮を予防できる可能性があることが示唆された.
著者
松本 悠哉
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部言語学研究室
雑誌
東京大学言語学論集 = Tokyo University linguistic papers (TULIP) (ISSN:13458663)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.123-144, 2017-09-30

形容動詞語幹は格助詞を伴うことがあり、実際には多く使用されているものの、形容動詞という品詞について考察される際には例外的な用法とされてきた。これまで言及されることのなかった格助詞を伴う形容動詞語幹の用法を指摘すると共に、形容動詞語幹と格助詞の共起には容易には一般化できない語ごとの多様性が存在していること、形容動詞語幹と格助詞の共起を促す決まった語によってさらに多くこの用法を用いることができるようになることを示す。論文 Articles
著者
松本 章一 久野 美輝 山本 大介 山本 大貴 岡村 晴之
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.243-260, 2015-05-25 (Released:2015-05-22)
参考文献数
84
被引用文献数
11 9

優れた耐熱性,光学特性,および機械的性質を有する高性能透明ポリマー材料を設計するため,N-置換マレイミドと種々のスチレンおよびオレフィンモノマーの交互ならびに2:1定序配列制御型ラジカル共重合を行った.まず,これらシークエンス制御された共重合系の反応挙動を明らかにするため,末端モデルならびに前末端基モデルを用いて共重合組成曲線を解析し,モノマー反応性比を決定した.定序配列制御の発現には前末端基効果が重要な役割を果たし,前末端基効果の大きさはコモノマーの構造や重合溶媒の種類に依存した.これら交互および2:1定序配列制御型のマレイミド共重合体の熱的性質,光学特性,ならびに機械強度などの物性評価を行い,いずれの共重合体も高い熱分解開始温度や優れた透明性を示すこと,マレイミド共重合体の側鎖置換基を設計することにより広い温度範囲でガラス転移温度や機械的性質を制御できることを見いだした.さらに,共重合体の側鎖に導入したアリル基と多官能チオール化合物ならびに表面チオール修飾したシリカナノ微粒子とのチオール–エン反応によって,高い熱分解開始温度や熱変形温度を有し,かつ透明性に優れた熱・光硬化性樹脂ならびに有機無機ハイブリッド材料が設計できることを示した.
著者
増田 一太 篠田 光俊 松本 祐司 中宿 伸哉 宇於崎 孝 林 典雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb0496, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 座位姿勢における腰痛は、一般的に椎間板障害をはじめとする退行性変性疾患に多く合併する症状であるが、椎間板障害はほとんどない若年期に出現するこの種の腰痛は、若年者特有の病態が予想される。本研究の目的は、当院にて椎間関節障害と診断された若年期の症例に対し、座位時の腰痛の有無による理学所見、X線所見の違い、また、座位姿勢時の重心動揺に特徴があるのか否かについて検討したので報告する。【方法】 2009年4月から2011年4までに当院を受診し椎間関節障害と診断された症例の内、15歳以下の症例52例を対象とした。対象を一般に言う体育座り時に腰痛を訴える32例(以下S群:平均年齢11.4歳)と座位時以外の腰痛が主体の20例(以下F群:平均年齢13.3歳)に分類した。座位姿勢の重心動揺の計測には、無作為にS群より21例(以下S2群:平均年齢12.5歳)、F群より7例(以下F2群:平均年齢12.7歳)を抽出した。また、腰痛を有さない正常例14例(C群:平均年齢11.5歳)も併せて計測した。理学所見の検討として、体幹の伸展及び屈曲時痛、腰椎椎間関節の圧痛、多裂筋の圧痛それぞれの割合を求め比較した。X線所見は立位の腰椎側面像より、腰椎前角(L1とL5の椎体上縁のなす角)、腰仙角(L5椎体後縁と仙骨背面とのなす角)、仙骨傾斜角(仙骨上面と水平線とのなす角)について両群間で比較した。重心動揺の計測は、ユメニック社製平衡機能計UM-BARIIを使用した。重心動揺計のX軸を左右軸としその軸上に左右の坐骨結節を一致させた。次に、Y軸を前後軸としこの軸上に両坐骨結節の中点が一致するように体育座りを行わせた。Y軸とX軸との交点より前方重心は+、後方重心は-で表記した。計測時間は5分間としY方向動揺平均変位(mm)を求め、S群、F群、C群で比較した。理学所見の検討にはX2検定を、X線学的検討には対応のないt検定を、重心動揺の検討には一元配置の分散分析を用い有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究の趣旨,個人情報の保護の意を本人と保護者に説明し同意を得た.【結果】 体幹伸展時痛の陽性率はS群68.8%、F群85.0%であり有意差は無かった。体幹屈曲時痛の陽性率はS群71.9%、F群30.0%と有意差を認めた(p<0.01)。腰椎椎間関節の圧痛所見の陽性率はS群65.6%、F群75.0%と有意差はなかった。多裂筋の圧痛所見の陽性率はS群81.3%、F群40.0%と有意差を認めた(p<0.05)。腰椎前彎角はS群平均29.3±9.8°、F群平均32.1±6.1°と有意差は無かった。腰仙角はS群平均40.1±7.7°、F群平均46.7±5.6°でありS群で有意に仙骨が後傾化していた(p<0.05)。仙骨傾斜角はS群平均33.1±7.1°、F群平均43.6±6.0°でありS群で有意に仙骨は直立化していた(p<0.05)。座位時重心動揺は、S2群平均-73.3±30.3mm、F2群平均-49.4±46.2mm、C群平均-53.8±43.1mmであり3群間で有意差は無かった。【考察】 椎間関節障害に特有の症状は体幹伸展時痛、椎間関節の圧痛であるが、これらに加え、特に体育座り時の腰痛を訴える若年期の症例では、体幹屈曲時痛と多裂筋の圧痛の陽性率が有意に高い事がわかった。また、X線学的にも、腰仙角、仙骨傾斜角で有意に仙骨が後傾している事が明らかとなった。つまり体育座りにおいて腰痛を訴える症例は、普段の生活から仙骨が後傾した後方重心有意の姿勢である事が伺われ、これは同時に腰部多裂筋の活動が高まると共に、筋内圧が持続して高い状態にある事が推察される。一方、実際の重心動揺の計測結果では3群間に有意差は見られなかった。しかしながら立位姿勢における仙骨の後傾は座位としてもその傾向は認められると考えられ、必然的に胸腰椎を屈曲位とすることでバランス調整を行っていることが重心動揺変位量に差が出なかった理由と考えられた。逆に、胸腰椎の過屈曲で代償した座位姿勢は、腰部多裂筋の持続収縮に加え筋膜の伸張を惹起し、筋内圧はさらに高まる結果となる。つまり、座位時の腰痛を訴える症例に有意に認められた体幹屈曲時痛や多裂筋の圧痛は、一種の慢性コンパートメント症状と考えると臨床所見との整合性が得られるところである。【理学療法学研究としての意義】 本研究は若年者にみられる座位姿勢腰痛を臨床所見、X線所見、重心動揺の面からその関連性を検討したものである。若年者腰痛を症状からカテゴライズし、特徴的な臨床所見と姿勢との関連性に言及した点で、今後さらに詳細な臨床観察に繋がることが期待される。
著者
松本 栄寿
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌) (ISSN:03854205)
巻号頁・発行日
vol.117, no.7, pp.740-748, 1997-06-20 (Released:2008-07-15)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

Analog Indicating Electrical Instruments were developed in the last half of the nineteenth century. Having searched for the source of precision readings in the measuring such as astrolabes, Tyco's quadrant or surveyng instruments which employed nonious scales, diagonal scales and micrometer driven scales in Europe, the US and Japan from the fourteenth century, the author found that Edward Weston in the US employed diagonal scales for the precision electrical meters.Through the reproduction of old hand-drawing method of Electrical Instruments Scales which have diagonal graduations, he concluded that the diagonal scales were the most appropriate measure for precision analog electrical meters.
著者
大坪 達弥 辻 琢己 梅山 貴生 首藤 みほ 米須 香那 松本 美菜子 吉田 侑矢 坂野 理絵 友金 幹視 藤田 敦夫 河野 武幸 三上 正
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.3, pp.363-369, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
7
被引用文献数
2 5

Local venous pain caused by dacarbazine (DTIC) injection is due to its photodegradation product 5-diazoimidazole-4-carboxamide (Diazo-IC). The production of Diazo-IC can be decreased by protecting the drug from light. Furthermore, the production of Diazo-IC reportedly increases with time; however, there are no studies reporting the association between the injection preparation time and local venous pain caused by the DTIC injection. We evaluated the efficacy of the following: (1) method used to shorten the injection preparation time and (2) method used to change the diluting solution for DTIC. We found that shortening the injection preparation time tended to decrease the local venous pain expression due to DTIC, and Veen F decreased the production of Diazo-IC compared with the normal saline and 5% glucose solution. These results indicate that shortening the injection preparation time may be effective in preventing the local venous pain caused by the DTIC injection; moreover, using Veen F for DTIC may also reduce the pain.
著者
松本 浩志
出版者
九州大学
巻号頁・発行日
2012

睡眠時ブラキシズムは、睡眠時に行われる、顎口腔系の非機能運動または異常機能と定義されており、睡眠時に行われるため意識的な抑制が難しく、非常に大きな力が発生することも少なくない。睡眠時ブラキシズムは、その過度の力により歯の摩耗・歯周組織の破壊・歯科補綴装置およびインプラントの破損などの歯および歯周組織に関係するトラブルや、咬筋肥大・咀嚼筋の疼痛等を伴う顎関節症などの筋骨格系のトラブルの要因の一つと考えられ、顎口腔系組織に様々な悪影響を与えており、過去にも多くの研究がなされてきた。最近では、睡眠時ブラキシズムは微小覚醒を伴う中枢性の活動によって生じるものとの見解が主流になっている。しかしながら、末梢性の刺激は睡眠時ブラキシズム活動に何らかの影響を与えている可能性が報告されており、睡眠時ブラキシズムの明確な病態メカニズムの解明には至っていない。現在、睡眠時ブラキシズムに対する最も一般的な対処法として、オクルーザルスプリントが使用され、一定の効果は認められたとする報告があるものの、その作用メカニズムは明確にされていない。そこで本研究では、睡眠時ブラキシズムに対するオクルーザルスプリントの効果的な治療プロトコールの検討を目的とした。第1章では、ブラキシズムに関する基本的な事項について言及し、本研究を行うに至った経緯をまとめた。第2章では、スプリントが睡眠時ブラキシズムに与える影響に関する文献レビューを行い、現時点で得られているエビデンスを整理した。その結果、これまでに形状や使用法の異なる様々なタイプのスプリントが開発されてきており、それぞれ一定の効果が示されている。しかし、それらの安全性や臨床研究で得られたデータの信頼性等に疑問点が残り、確実に効果のある治療法はなかった。一方、スプリントの作用メカニズムに関して様々な仮説が示されているが、口腔内環境の変化が睡眠時ブラキシズム活動を減少させるという行動療法的なメカニズムが提唱され、それを支持する研究が複数みられるものの、現在のところ明確な結論は得られていなかった。第3章では、スタビライゼーションスプリントの間歇的な使用が睡眠時ブラキシズムに与える影響を明らかにすることを目的としてランダム化比較試験を行った。当教室の先行研究において、スプリント装着直後に睡眠時ブラキシズムは減少するが、その効果は長期間持続せず一時的であることがわかっている。この結果を踏まえ、スプリントを間歇的に使用することで、睡眠時ブラキシズムをより効果的かつ長期に減少させられるのではないかと考え、以下の手順で本研究を行った。九州大学歯学部学生および九州大学病院職員のうち睡眠時ブラキシズムを有する者20名(男性9名、女性11名、平均年齢28.9歳、24〜37歳)を対象に、スプリントの連続使用群(30日間連続使用)と間歇使用群(7日間ずつ使用・不使用を繰り返す:1-7日目および15-21日目、29-30日目にスプリントを使用)との2群にランダムに振り分け、各群ともにスプリント装着前・装着直後・1週後・2週後・3週後・4週後の計6回の測定ポイントにおいて、携帯型筋電図測定装置を用いて睡眠時咬筋筋活動を測定した。得られた筋活動を解析し、睡眠1時間あたりの睡眠時ブラキシズムの発生回数(EVENT)・総持続時間の割合(DURATION)・総活動量(AREA)を算出し、各測定ポイントにおけるスプリントの効果を検討した。その結果、EVENTおよびDURATIONにおいて、連続使用群で装着直後に睡眠時咬筋筋活動の減少がみられたが(Dunnett’s test, P<0.05)、その後の測定では有意な減少がみられなかった。一方、間歇使用群では装着直後に加え4週後にもEVENTおよびDURATIONにおいて有意な咬筋筋活動の減少がみられた(Dunnett’s test,P<0.05)。連続使用群における結果は当教室の先行研究と一致しており、スプリントは装着直後に効果を発揮し、その効果は1週間以上持続しないことが示唆された。また間歇使用群においては、装着直後のみならず4週後においても有意な減少がみられた。今回の結果から、スプリントを間歇的に使用することで、より長期に咬筋筋活動を減少させられる可能性が示唆され、オクルーザルスプリントを間歇的に使用するという、新たな使用法とその効果について示すことができた。これは、スプリントがSBに与える効果およびメカニズム解明の一助になったと考える。
著者
松本 健 高橋 典明 植松 昭仁 大木 隆史 権 寧博 岩井 和郎 中山 智祥 橋本 修
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.171-178, 2012-09-27 (Released:2013-01-23)
参考文献数
20

症例は38 歳の男性.胸部異常陰影,ぶどう膜炎を指摘され紹介受診した.胸部X線検査にて両側肺門リンパ節腫脹,両中下肺野の小結節陰影を認め,TBLBにて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を証明した.緩やかな血清ACE値上昇と小結節陰影の増加を認めていたが,症状や呼吸機能障害を認めず,経過観察としていた.初診時より5年後に偶発的と思われる肺結核症を発症した.入院にて抗結核薬(INH,RFP,EB,PZA)治療を開始した.結核治療中,一時的に血清ACE値低下を認めたが,抗結核薬治療終了後より肺野病変の増悪と血清ACE値上昇を認めた.結核性病変の進展あるいはサルコイドーシスの活動性上昇を疑い,再度TBLBを行ったが結核菌を認めず,サルコイドーシスに矛盾しない所見であった.現在まで経過観察中であるが,無治療にてサルコイドーシスは寛解状態に至った.これまでに結核治療を契機に寛解状態に至ったサルコイドーシスの報告はなく,非常に稀な例であり,文献的考察を加え報告する.
著者
内田 智也 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 佃 美智留 土定 寛幸 大久保 吏司 藤田 健司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
2020

<p>【目的】投球動作におけるステップ脚膝関節動作と肘外反トルクとの関連から肘関節負荷を増大させる動作を検討する。【方法】中学生投手20 名のFoot Contact(以下,FC)以降のステップ膝動作を膝関節位置の変位が生じない固定群と投球方向へ変位する前方移動群の二群に群分けした。FC・肩関節最大外旋位(以下,MER)・ボールリリースのステップ膝屈曲角度,投球中の肘外反トルク(身長・体重での補正値)および投球効率(肘外反トルク/ 球速)を群間比較した。【結果】固定群は14 名,前方移動群は6 名であり,前方移動群のステップ膝屈曲角度はFC からMER にかけて増大することが示された。また,肘外反トルクおよび投球効率は固定群が前方移動群より有意に低値を示した。【結論】前方移動群はFC 以降に膝の縦割れが生じていることで,肘関節に過度な負荷が加わっていることから,ステップ膝動作の評価は野球肘の理学療法において重要であることが示唆された。</p>
著者
内田 智也 藤田 健司 大久保 吏司 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 野田 優希 石田 美弥 佃 美智留 土定 寛幸
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.75-81, 2018

<p>【目的】投球中の肩関節ストレスの軽減には,良好な下肢関節動作が重要となる。そこで,本研究はFoot Contact(以下,FC)以降のステップ脚膝・股関節の力学的仕事量と肩関節トルクの関係について検討した。【方法】中学生の投手31 名の投球動作解析で求められた肩関節内旋トルクについて,その平均から1/2SD を超えて低い群(以下,LG)10 名と1/2 を超えて高い群(HG)10 名の2 群に分け,ステップ脚膝・股関節の力学的仕事量(正・負仕事)を群間比較した。【結果】FC から肩関節最大外旋位(MER)におけるLG の膝関節屈曲-伸展の負仕事量が有意に低値を示した。【結論】ステップ脚膝関節伸展筋力は良好な投球動作獲得に寄与し,FC 以降の膝関節の固定および下肢関節からの力学的エネルギーを向上させることは肩関節ストレスを軽減させると考えられた。</p>
著者
松本 昭彦
出版者
愛知教育大学実践総合センター
雑誌
愛知教育大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13442597)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.139-146, 2010-02

図画工作科研究の受講学生たちにキミ子方式の基礎的題材を体験させた後,人物や動物,樹などを組み合わせて描く実践を行ったところ,シュルレアリスムの画家たちが多用した「配置転換」を活かすことにより,創造画制作への可能性が見えてきた。「絵は自由に,個性的に,創造的に描くもの」という考え方が世間や学校現場にまで拡がり,絵画制作の領域から「見て描く」行為を遠ざけている。キミ子方式の描き方の基本は写実であるが,同じ題材で描かせても出来上がってくる絵には自由や個性が溢れている。
著者
井上 克己 島田 誠 斎藤 克幸 小川 雄一郎 松原 英司 林 圭一郎 松本 祐樹
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 = Acta urologica Japonica (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.441-443, 2015-11-30

A 49-year-old female presented complaining of gross hematuria. Cystoscopy and magnetic resonance imaging revealed a papillary tumor on the bladder dome. At biopsy pathology the tumor was diagnosed as adenocarcinoma. We diagnosed the tumor as urachal adenocarcinoma and performed partial cystectomy of bladder dome with en-bloc resection of the urachal ligament up to the umbilicus. In surgical pathology, the tumor had invaded to the fat tissue around the urachal ligament with metastasis to the lymph node. Therefore the tumor was diagnosed as a stage IVA (Sheldon’scategory) urachal adenocarcinoma. After surgery, 6cycles of chemotherapy with TS-1 and cisplatin (CDDP) were performed. There has been no relapse 5years after surgery. This is the first report of successful adjuvant chemotherapy with TS-1/CDDP for advanced urachal adenocarcinoma.
著者
新藤 恵美 吉田 明 松本 誠臣
出版者
The Surface Finishing Society of Japan
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.633-639, 2000-06-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
8

Chemical polishing solutions for aluminum based on mixtures of phosphoric and nitric acid cause air pollution with hazardous gaseous emissions, such as NOx, during the chemical polishing process, and cause water pollution due to the effluent of wastewater that contains phosphates and nitrates. Hence, the authors attempted to polish aluminum in an alkaline solution containing sodium hydroxide as an alkaline agent and sodium persulfate as an oxidizing agent. In this process, exceptionally bright surfaces of aluminum were obtained; that is, the brightness of the surface polished in the alkaline solution was comparable with that of the surface polished in an acid chemical polishing solution. The composition of the alkaline solution that had the least polishing effect had a concentration of sodium hydroxide in a range of 0.5 to 1.5% by weight for pure aluminum and a range of 1.0 to 2.0% by weight for commercially pure aluminum, while the concentration of sodium persulfate was 35% by weight. At with a high magnification on a scanning electron microscope (SEM), network patterns were observed over the entire polished surface of the aluminum polished in the alkaline solution and that in the acid chemical polishing solution. On the surface of the commercially pure aluminum polished in the alkaline solution, very small projections were observed by SEM, that were identified by electron probe microanalysis (EPMA) as insoluble phases that included foreign elements such as Fe and Si in the aluminum. On the other hand, on the surface of the aluminum polished in the acid chemical polishing solution, very small pits were observed, formed by dissolution of the phases in the acid solution. Also, use of x-ray photoelectron spectroscopy (XPS) and fourier transform infrared spectroscopy (FT-IR) indicated that the oxide films formed on the surface of the aluminum polished in the alkaline solution were thicker and contained a larger amount of hydroxyl radicals than those on the surface polished in the acid chemical solution.