著者
齋藤 佳敬 山田 武宏 小林 正紀 榊原 純 品川 尚文 木下 一郎 秋田 弘俊 井関 健
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.12, pp.1601-1608, 2019-12-01 (Released:2019-12-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

Paclitaxel (PTX)-associated acute pain syndrome (P-APS) is characterized by disabling but transient arthralgia and myalgia in up to 80% of patients administered with PTX. Non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) are widely administered to patients with cancer who have pain or fever, and are mainly used to manage P-APS. In this study, we investigated how P-APS appear in the patients who were administered NSAIDs prior to PTX injection. The incidence or severity and duration of P-APS in patients previously administered NSAIDs were compared to those of patients who were not administered NSAIDs. The relationship between previously administered NSAIDs and rescue administration for the relief of P-APS was also evaluated. It was revealed that the incidence and duration of P-APS were 72% and 4.67±2.30 d, respectively, in the control group and 84% and 6.19±3.30 d, respectively, in the NSAIDs group. There was no significant difference in the incidence and duration and the severity of P-APS between the two groups. Patients who were previously administered NSAIDs tended to obtain less pain relief from NSAIDs administered as rescue medications, and needed other medication. Univariate and multivariate analysis revealed no correlation between previously administered NSAIDs or patient characteristics and the incidence of P-APS. In this study, it was found that clinical condition that needs NSAIDs and previously administered NSAIDs prior to PTX injection do not affect the incidence, severity, and duration of P-APS. These results will help in educating patients about their medications and will contribute to the management of P-APS.
著者
林 正夫 日比野 敏 本島 睦
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, 1982-03-15

原子力発電所の立地拡大策の一つとして, その有効性の評価が行われている。本報告はこれら地下立地における大規模な地下空洞の安定性について, 岩盤力学上の研究成果をとりまとめている。すなわち, (1)空洞の安定性解析手法の適用性と実証性ならびに信頼性(2)空洞形状の最適化による空洞の安定性の向上と今後の設計(3)双設空洞掘削時の周辺岩盤の緩み相互干渉(4)三つの並列した空洞の周辺岩盤の相互干渉(5)岩盤のかぶり深さが空洞の安定性に及ぼす影響(6)軟岩における空洞の安定性(7)三次元解析によるロックストラットの効果の検討(8)想定事故時の内圧による空洞の安定性(9)水平震度による空洞周辺の応力状態である。既往の揚水式地下発電所で得られた岩盤の物性値, 地圧と想定される空洞の大きさを組み合わせて検討した結果, 原子力発電所地下立地における空洞は, 安定に建設が可能であること, およびそのための技術指針となるべき事項がかなり明らかとなったこと, 今後はサイトに応じた詳細検討を行うことになろうことなどを指摘している。
著者
若林 正吉 田村 憲司 小野 信一 六本木 和夫 東 照雄
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.573-583, 2010-12-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
52
被引用文献数
2

大宮台地の西縁部では,荒川の河川敷に存在する沖積土を台地上の火山灰土畑に運びこむ「ドロツケ」という客土作業が続けられていた.本研究は,ドロツケによる人為的土壌生成過程における土壌特性の変化を明らかにすることを目的として,長年のドロツケにより,沖積土が元来の土壌の上に厚く堆積した埼玉県北本市の圃場の土壌,台地上の火山灰土,および河川敷沖積土において,土壌断面調査と土壌理化学性の分析を行い相互に比較した.ドロツケにより,土壌の固相部が増大し,最大容水量および水分含量が減少した.沖積土中のAl_oおよびSi_o含量は,火山灰土の1/10以下であった.この沖積土の客土により,ドロツケ畑では客土層上層ほどリン酸吸収係数が減少し,可溶性無機態リン酸の内のCa型リン酸の割合,有効態リン酸量が増大した.沖積土には多量の交換性Caが含まれることにより,ドロツケ畑にCaが供給され,土壌pHも上昇した.ただし,ドロツケ畑では,Caの溶脱傾向が著しく,とくに,作土層では,土壌pHが低い値を示した.客土層の厚さと乾燥密度ならびにSi_oの分析結果から,この圃場への客土投入量は,1ha当たり5000t程度と試算された.
著者
荻野 孝野 植田 禎子 小林 正博 井佐原 均
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.21-54, 2005-08-26 (Released:2011-03-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

係り受け関係のついた大量のコーパスを元にして作成されたデータを対象として, 動詞の結合価に関する検討を行った.これは, 係り受け関係まで付与された大量データからなるコーパスが存在してはじめて可能となった分析である.動詞の結合価に関する検討は, 各動詞の基本的な格パターンに着目して結合価を決定することを中心として検討されてきた.しかし, 省略を含め, 結合価が実際の言語データでどういう形で出現しているかについて, 全容を示すようなものは報告されていない.ここでは, 大量のコーパスデータから作成した結合価データを用い, 実際のデータで動詞にかかる格助詞がどういうパターンで出ているのかを調査し, 格助詞パターンの出現状況を把握するとともに, それらの格助詞パターンを用いて同音異表記がどの程度判定できるかを検討した.動詞約12, 400概念 (表記の異なりレベルで約9, 400単語) から作成した動詞の格助詞組み合わせパターンは, 延べパターン数で37, 237パターン, 異なりパターンで188パターンとなった.また, 同音異表記セットについて, これらのパターンを用い, 表記確定を試みたところ, 結合価のうち格助詞組み合わせパターンの異なりによる判定でも格助詞パターンの出現頻度などを判定基準に付加することによって約73%の判定が可能であることがわかった.
著者
前田 晃史 小林 正直 八田 圭司
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.545-554, 2018-08-31 (Released:2018-09-01)
参考文献数
40
被引用文献数
1

目的:胸骨圧迫の質を高める背板の研究は2006年以降さまざまな条件で行われてきたが,システマティックレビューやメタアナリシスはなかった。そのため,臨床現場で心停止患者に対する背板の有効性と今後の具体的な背板の使用方法を明らかにすることを目的に文献検討を行った。方法:主に各国の蘇生ガイドラインで背板使用の推奨の歴史について論述した後,Ovid,PubMed,CINAHL,MEDLINEを用いてキーワード「cardiopulmonary resuscitation」と「backboard」で検索した結果,16件の文献を抽出した。結果:文献を背板が有効,条件により有効,無効に分けて内容を検討した。結論:背板の効果は,背板の大きさや挿入方向,心停止患者の体重,マットレスの硬さにより異なるため,常に有効というわけではない。したがって,ベッド上での胸骨圧迫に背板をルーチンに使用しないとならないというものではなく,マットレスの変形が大きく,やりづらさを感じる場合には使用を考慮してもよい。
著者
林 正美
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.187-194, 1982

富士・箱根・伊豆地域には13種のセミ類が分布し, これら3地域間で種構成の顕著な差異は認められない。各種の分布を, 近隣の丹沢山地, 赤石山地, 秩父山地と比較して, 表1に示す。 富士山地域では, 富士山をはじめとして, 北や西をとり囲む御坂山地や天子山地などのセミ類の分布を調査した。その結果, 山地性のエゾゼミ類 (Tibicen spp.) では, エゾゼミ japonicus とコエゾゼミ bihamatus が生息標高帯の樹林に広くみられるのに対して, アカエゾゼミ flammatus は御坂山地や天子山地などの一部から知られるにすぎないことがわかった。青木ケ原樹海, とくにウラジロモミの優占する所にはセミはほとんど生息していないが, その上部のブナ林, 自動車道路傍のアカマツ林には, エゾゼミ, コエゾゼミ, エゾハルゼミ Terpnosia nigricosta などが生息する。一般に, 富士山でのセミの垂直分布上限は, 温帯性落葉広葉樹林上限とほぼ一致する。 箱根火山は400,000年前に活動を開始した新しい火山であるが, セミ類の分布では他地域とほとんど差異がない。箱根カルデラには, 山地性のコエゾゼミ, エゾゼミ, エゾハルゼミなどが知られる。古期外輪山の一部である金時山∿乙女峠にはアカエゾゼミが知られる。一方, 小田原から早川沿いの地域には, 常緑広葉樹林に生息するクマゼミ Cryptotympana facialis やヒメハルゼミ Euterpnosia chilbensis が分布する。 伊豆半島の南部や海岸地帯は気候が温暖で, シイ・カシなどの常緑広葉樹林が発達する。このような地域にはクマゼミやヒルハルゼミが生息している。とくに後者は, ふつう東日本などではその産地が局所的なのに対して, 伊豆半島では普遍的に産し, 東海岸では熱海から下田にかけて多くの産地が知られている。半島中央部に位置する天城山系は, 第四紀火山から成り, 標高1,000m を超える。この地区には山地性のセミが知られるが, アカエゾゼミは未発見である。その他の山地については未調査である。 富士・箱根・伊豆地域に分布するセミ類の中では, アカエゾゼミがもっとも注目される。富士山地域では, 富士火山には産せず, 北側の御坂山地や天子山地などに局所的に知られ, その産地は大平山(高橋, 1981), 烏帽子山, 竜ケ岳の3ヶ所にすぎない。一般に, 本種の産地は局所的で, 関東地方においても1都県あたり1∿数ケ所である(林, 1981)。関東地方の各産地について, そこの地層と時代をみると, ほとんどが新第三紀あるいはそれより古い地層から成る地域ばかりであり, しかもそのような地層分布域の周辺部にアカエゾゼミの産地が多い(表2)。富士山, 丹沢の産地はいずれも新第三紀(中新世)の御坂層から成る地域である。唯一の例外は箱根・金時山で, 地質的には第四紀の新しい地域である。しかし, 金時山のすぐ北, 矢倉岳付近には御坂層が分布するので, この産地も他の例とまったく異なるものではないように思われる。植生がこのセミの分布形成に大きい影響を与えただろうと思われるが, 地質的な要因も少なからず関係していることは確かであろう。また, 富士山地域でのミンミンゼミ Oncotympana maculaticollis の分布には, 富士火山の新期溶岩流がおそらく大きく関与していることであろう。改めていうまでもないが, セミ類はその幼虫期を土壌中でおくるので, 土のない, たとえば新しい溶岩流の上などでは, 正常に生育することができないと考えられるからである。
著者
小林 正行
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.1-16, 2006-10-01

本稿は、「強調」や「例示」の意を表すとされる助詞バシについて、狂言台本における使用実態を明らかにし、その用法の変遷を考察するものである。この調査で以下の事実を明らかにした。・上接語は、名詞を直接上接するものが大半を占める。そのうち、目的格相当は全期通じて用いられ、主格相当は近世中期以降の台本で新たに多用される。デ・ニテを上接するものも近世中期以降多用される。・共起する句末表現は、疑問表現が大勢を占める。禁止表現は謡など定型的な用例に限られ、新しいバシはほぼすべて「ゴザルカ/オリャルカ」という丁寧な疑問表現と共起する。これらの事実から、用法の変遷についての考察を行い、以下の結論を得た。・本来上接語を際立たせる「強調」の働きを持っていたバシは、その代表的な用例の性質から、「例えばこのようなもの」と上接語の同類の集合を想定させる「例示」の働きとして解釈され、さらに、新たに上接語の同類の集合を仮想的に表して、「品位」を持って疑問を表す用法が近世中期以降の台本に見られるようになる。
著者
宮原 誠 三井 実 林 正樹
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 38.16 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.205-206, 2014-03-10 (Released:2017-09-21)

『今まで耳でしか聴いたことがなかった音楽を今回,身体全体の細胞で聴くことができました.透き通った音色は生きており皮膚を撫でて行くようです』の状況は、"こころが感じる"で、芸術と科学の融合を掲げる芸術科学会の基礎テーマであり、正面から対応する。この状況をオカルトとして対応しない大多数の日本の自然科学者を標榜する人も納得させうる、哲学的に客観性を証明した、新・電気音響論である。それは、客観評価尺度を定義し、人のこころに感動を喚起する高度感性情報を伝える音の音響理論であり、実際に装置を研究開発した。物理歪量のみの定義のみで音質を言及しない従来ハイファイとは別次元の音響理論である。
著者
小林 正彬
出版者
関東学院大学経済研究所
雑誌
経済系 (ISSN:02870924)
巻号頁・発行日
vol.225, pp.77-94, 2005-10

岩崎彌太郎は,土佐(高知)地下浪人という低い階級の出身で,三菱という現在日本一のグループの創業者となった。しかし,政府後援の共同運輸との海商戦最中に死亡,その後の繁栄を見ていない。その50年の生涯を,戦前の同郷評論家の著書と,2004年に初めて公刊された岩崎家編集の傳記,そして,戦後,同郷入交好脩著と以後の研究を検討する。とくに少壮期の行動を通して,政府そして官僚,母美和との関係をみて,実像を再考したい。
著者
河合 将志 林 正治 尾城 孝一 新妻 聡 西澤 正己 山地 一禎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.298-301, 2018-12-08 (Released:2018-12-21)
参考文献数
10

日本は世界でも有数のIR(Institutional Repository)保有国であるが,学術雑誌論文の登録件数には設置機関の間で大きな差が見られる. 本研究では,この差を生み出している要因を明らかにするため,アンケート調査の結果を主なデータとして計量分析を行った. そして,この差がIRの運用期間やOA(Open Access)広報資料に係る変数によるものであり,これまで重要だと考えられてきた学術雑誌論文提供依頼やOA方針などに係る変数によるものではないことを示した.