著者
林 正幸
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012-04-01

昨年度までの研究では、カオマダラクサカゲロウ卵のもつ卵柄がアリに対して有効な防御手段として機能し、卵がアリ随伴アブラムシコロニー付近に産下された場合、随伴アリからの保護という間接的な利益を受けることを示した。また、カオマダラクサカゲロウ幼虫の載せるアブラムシ死骸の体表炭化水素成分がアリの攻撃性を抑制し、アリに対し化学的偽装の役割を担っていることを明らかにした。このアブラムシ死骸の機能により、カオマダラクサカゲロウ幼虫はアリ随伴アブラムシを捕食可能であることが示唆された。これらの研究成果の一部は、Journal of Chemical Ecology誌およびEnvironmental Entomology誌に投稿し、受理・採録された。本年度は、カオマダラクサカゲロウ幼虫の載せるアブラムシ死骸のアリに対する化学的偽装機能がどのようなメカニズムで生じているのか明らかにすることを目的に、アリのアブラムシ認識機構について検証実験を行った。まず、アリのアブラムシ認識が個体の経験に依存しているかどうかを検証したところ、アリのアブラムシ認識に学習が関与することが示唆された。次に、アリのアブラムシに対する学習行動が種特異的かどうか調査した結果、随伴経験のない他の共生型アブラムシ種に対してもアリは寛容に振る舞うようになった。アブラムシ各種の体表炭化水素を塗布したダミーに対しても、アリは同様の行動変化を示した。GC/MSを用い化学分析を行ったところ、共生型アブラムシ種の体表炭化水素成分は質的類似性をもつことが示された。この化学成分の質的類似性が、随伴経験のないアブラムシ種へのアリの攻撃性減少の要因であることが示唆された。
著者
森 美奈子 上村 浩 竹林 正樹
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.146-153, 2022-05-31 (Released:2022-06-10)
参考文献数
25

目的:ナッジが設計された社員食堂での健康メニュー選択促進の実践と利用者の状況等の報告を目的とした.活動内容:特定非営利活動法人TABLE FOR TWO Internationalと契約した社員食堂では,ナッジのEASTフレームワークに則って健康メニュー選択を促進している.Easyナッジとして,手に取りやすい場所に健康メニューを配置し,健康メニューを選ぶと20円が自動的に寄付できる仕組みとした.Attractiveナッジとして,手書きポップで健康メニューを強調し,支援を受けた子どもの笑顔の写真を掲示した.Socialナッジとして,開発途上国の学校給食への寄付数を,Timelyナッジとして,今すぐに援助を要する子どもがいることを掲示した.活動評価:参加群(当該社員食堂利用者)100名に質問紙調査を,未参加群(当該社員食堂を利用したことのない労働者)70名にウェブ調査を実施した.参加群(解析対象者47名)は,未参加群(同70名)より社会貢献活動と健康メニューの両方に興味がある者が多く,ボランティア活動の参加経験率も高かった(いずれもP<0.001).参加群の利用期間は平均29.3か月,今後も継続利用したい者が71.0%だった.これらのナッジは,既存のナッジの弱点である「短期的効果」を克服できる可能性が示唆された.今後の課題:本実践では各群で調査法が異なったこと等の限界があるため,今後は同一企業の社員を対象に条件を揃えて検証する必要がある.
著者
小林 正明 清水 光 藤井 温子 石川 洋
雑誌
情報処理学会研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.47(2005-MBL-033), pp.37-42, 2005-05-25

本稿では、交通工学と制御工学を統合させるシステム理論的観点から、交通ネットワークの交通流ダイナミクスを制御する信号制御システムや動的経路誘導システム、ならびにこれら2つのダイナミックシステムをオンラインリアルタイム結合させた交通流制御システムについて提案する。最初に、信号交差点の交通流ダイナミクスの基礎となる交通量収支において、捌け交通量の上限値を決定する交通処理量は、ある交通条件と信号制御条件のもとで道路設計によって決定される。交通流ダイナミクスを車線単位、サイクル長単位で解析するために、信号交差点の動的交通情報について調査する。つぎに、時々刻々と変動する交通流ダイナミックスシステムを記述しオンラインリアルタイムで制御する大規模システムを、3レベルの階層制御を用いて構成する。最後に、交通工学と制御工学の統合例として、信号制御システムと動的経路誘導システムの構成や機能、有効性などについて示し、交通流制御システムの構成や制御アルゴリズムについて提案する。
著者
遠又 靖丈 辻 一郎 杉山 賢明 橋本 修二 川戸 美由紀 山田 宏哉 世古 留美 村上 義孝 早川 岳人 林 正幸 加藤 昌弘 野田 龍也 尾島 俊之
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.679-685, 2014 (Released:2014-12-11)
参考文献数
10

目的 介護保険の統計資料を用いた研究において,健康日本21(第二次)の目標である「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」は,2011年から要介護 2 以上の認定者数が 1 年ごとに 1%ずつ徐々に低下した場合(健康寿命延伸シナリオ)に2020年に達成されうることが報告されている。本研究は,この健康寿命延伸シナリオを達成した場合の介護費・医療費の節減額を推定した。方法 要介護認定区分別の介護費・医療費(人口一人あたりの平均)の基礎資料として,介護給付費実態調査と宮城県大崎市の調査データを用いた。2011~2020年の自然経過(現状シナリオ)の要介護認定者数は,将来の人口構成が「日本の将来推計人口」のとおりで,年齢階級別の要介護認定者(要介護 2 以上で区分別)の出現割合が2010年と同じである場合とし推定した。次に,健康寿命延伸シナリオ達成による要介護認定者の減少人数を算出した上で,介護費・医療費の推定節減額を算出した。結果 各年次の要介護 2 以上の減少分がすべて「認定なし」に移行すると仮定した場合,2011~2020年の累計で 5 兆2,914億円が節減されると推定された。さらに要介護 2 以上の減少分がすべて「要介護 1」に移行すると仮定した場合,同期間の累計で 2 兆4,914億円が節減されると推定された。結論 健康日本21(第二次)の達成によって約 2 兆 5 千億円~5 兆 3 千億円の介護費・医療費の節減という,健康づくり政策の投資効果の目安が明らかとなった。
著者
日野 晶也 角田 恒雄 釜野 徳明 野川 俊彦 小笠原 強 速水 格 松本 政哲 服部 明彦 西川 輝明 竹内 一郎 橋本 惇 三浦 知之 木津 治久 森田 博史 姚 揚貨 易 新生 小宮山 寛機 林 正彦 川村 将弘 張 恵平
出版者
神奈川大学
雑誌
年報 (ISSN:13420917)
巻号頁・発行日
vol.2001, pp.127-129, 2002-03

約100万種といわれる海洋生物は,地上における最も未知の世界である。この海洋生物から,医薬資源となりうる有用な生理活性物質を発見し,構造を明らかにし,生理活性を検討することを目的としている。NIHで臨床試験中のドラスタチン10(ウミウシ成分)とブリオスタチン1(フサコケムシ成分)は,釡野がその研究に携わったものである。平成元年以来,日野,西川等の協力を得て,平塚付近(相模湾)および岩手県大槌町付近(大槌湾)の海洋生物を検討し,特に青森,浅虫湾のフサコケムシからブリオスタチン10という強い抗癌性物質を見いだし,抗エイズ活性もあることが分かった。また,これらの物質には,ホルモン産生活性などの作用の存在も明らかになり,医薬品としての開発の可能性が考えられる。さらに,フロリダ産コケムシから10数種の新規アルカロイドを単離したが,このうちconvolutamydineが,ヒト急性骨髄性白血病細胞HL-60に対し,強力な分化誘導作用を示し,新たな抗癌剤発見の手がかりになる可能性もある。2000年度には,ほぼこれらのアルカロイドの全合成を完成した。これらの結果をふまえ,日本沿岸およびアジア各地の海洋生物について探索が計画されている。さらに,橋本,三浦等が「しんかい6500」,「しんかい2000」により採集した深海生物に対する検討も行い,今までに相模湾産シロウリガイとヘイトウシンカイヒバリガイおよびサツマハオリムシ,さらに巻き貝2種Alyinconcha cf. hesseleriおよびIfremeria nautileiの化学成分の検討を行っている。また,竹内等による南極付近の生物の入手も期待できる現状にある。さらに,新しく速水先生が加わり,洞窟生物の調査・採集が可能となっている。一方,生理活性,薬理作用検討に新たにそれぞれ小宮山博士,林博士,川村教授の協力が得られている。また,一昨年から中国でのフサコケムシの探索が姚新生教授と新たに参加した易楊貨教授によって開始され,かなり大量の生物が採集された。この生物からの活性物質の単離はこれからの大きな仕事であり,その結果が期待される。本年度は今までの生物成分のまとめを行った。特に,日本産ナマコ類成分,沖縄と真鶴で採集した日本産フサコケムシ成分,および深海巻貝2種の成分研究を完成した。
著者
小林 正士
出版者
国士舘大学法学会
雑誌
国士舘大学大学院法学研究科・総合知的財産法学研究科 国士舘法研論集 = Kokushikan Daigaku Daigakuin Hogakukenkyuka Sougouchitekizaisan Hougakukenkyuka Koushikan Hokenronshu = the Graduate School law review
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-24, 2017-03-05

1 問題の所在2 学説状況―総論として3 判例と学説の状況―各論として4 市民法学における国家論の観点からの検討結語
著者
久世 建二 小島 俊彰 北野 博司 小林 正史
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.6, no.8, pp.19-49, 1999-10-09 (Released:2009-02-16)

縄文土器の野焼き方法を復元するためには,黒斑などの焼成痕跡が最も重要な材料となる。縄文土器の黒斑は弥生土器に比べ明瞭なパターンを見い出しにくいので,野焼き実験により黒斑の形成過程を明らかにし,実験結果と縄文土器の黒斑を突き合わせる作業を積み重ねることが重要である。本稿では,一連の開放型野焼き実験に基づいて,形成過程の違いにより黒斑を「大きな炎を出す薪からのスス付着による薪接触黒斑(逆U字形と2個1対が典型)」「棒状の薪接触黒斑」「オキ接触黒斑」「残存黒斑」などに類型化した。東日本の縄文時代前・中期の5資料の黒斑を観察した結果,かなり多くの土器においてこれらの類型が適用できたため,黒斑の形成過程から野焼き方法をある程度推定できた。その結果,以下の点が明らかになった。1.大きな炎からのススを起源とする薪接触黒斑が本稿の分析資料の多くでみられたことから,覆い型ではなく開放型で野焼きされたことが再確認された。薪接触黒斑は土器の地面側の内面,地面側の外面,上向き側の外面などに付くことから,横倒しになった土器の下側や側面に多くの薪が置かれていたことが明らかになった。一方,覆い型野焼きでは内部が窯に近い状態になり,大きな炎から出たススによる黒斑は少ない。2.5資料の大半の土器において内面に薪・オキ接触痕がみられることから,内面に薪を入れたことが明らかである。弥生土器では内面に薪を入れないのに対し,縄文土器では内面に入れるのは,開放型の野焼き実験で示されたように,外面の薪だけでは内面まで十分に燃焼ガスが回りにくいためと考えられる。3.本稿では東日本の縄文前・中期の5資料の黒斑を観察したが,上述の共通性と共に,以下の違いもみられた。三内丸山遺跡Vb層の円筒下層b式土器(特に大型)は,薪の上に横倒しに設置し,側面・上面に薪と草燃料をかぶせている点で,野焼き途中で横倒しした可能性が高い他の4資料と異なる。このような方法をとる理由として,(1)土管のような形の円筒下層b式土器は,直立して設置すると口縁部まで十分な炎が当たりにくい,(2)土器の大量生産に伴う薪燃料の節約のため草燃料を併用した,などが考えられる。4.「器面の色調が橙色か白色か」についての資料間の違いは,内外面の黒斑の特徴や内外底面の黒斑の有無と相関を示すことから,焼成雰囲気と共に,加熱の強度の違いを反映する可能性がある。三内丸山遺跡Vb層では,5リットル未満の小型は大半が橙色なのに対し,大型は白色の方がやや多かったが,これは,薪・草燃料を土器に立てかける大型深鉢の野焼き方法の結果かもしれない。【引用文献 】阿部芳郎 1995「弥生前期土器の器体構造について」『津島岡大遺跡5』pp.89-1001995「土器焼きの火・煮炊きの火」『考古学研究』42(3):75-91青森県教育委員会 1979『板留(2)遺跡』1997『三内丸山遺跡VIII』後藤和民 1980『縄文土器を作る』中公新書。北上市教育委員会 1983『滝ノ沢遺跡』小林正史 1993「民族考古学からみた土器の用途推定」『新視点・日本の歴史1』 132-139頁。1993「カリンガ土器の制作技術」『北陸古代土器研究』3号74-103頁。1994「稲作農耕民とトウモロコシ農耕民の煮沸用土器―民族考古学による通文化比較」『北陸古代土器研究』4号 85-110頁。1995「縄文から弥生への煮沸用土器の大きさの変化」『北陸古代土器研究』5号 110-130頁。1998「野焼き方法の変化を生み出した要因―民族誌の野焼き方法の分析―」『民族考古学序説』民族考古学研究会編、pp.139-159、同成社久保田正寿 1989『土器の焼成I』クオリ久世建二・北野博司・金昌郁・藤井一範・姜興錫・南部次郎・小林正史 1994「縄文土器から弥生土器への野焼き技術の変化」『日本考古学協会第60回総会研究発表要旨』26-29頁。久世建二・北野博司・小島俊彰・小林正史 1996「縄文土器の野焼き方法」『日本考古学協会第62回総会研究発表要旨』94-97頁。宮川村教育委員会 1996『堂の前遺跡発掘調査報告書』小笠原雅行 1996「三内丸山遺跡出土土器の数量的研究」『シンポジウム考古学とコンピュータ―三内丸山をコンピュータする―』pp.29-44岡安雅彦 1994「黒斑にみる弥生土器焼成方法の可能性」『三河考古』7号 45-65頁。1996「縄文土器焼成方法復元への実験的試み」『古代学研究』133号 21-31頁。1999「野焼きから覆い焼きへ その技術と東日本への波及」『弥生の技術革新 野焼きから覆い焼きへ』pp.48-63 安城市歴史博物館
著者
畑瀬 理惠子 糸井 信人 長谷川 尚哉 林 正敏
出版者
一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
雑誌
日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.33-40, 2020 (Released:2021-06-28)
参考文献数
26

【目的】当院の妊娠 28 週以降の骨盤位矯正を目的とした鍼灸治療を含む施術介入が骨盤位矯正率 に与える要因として初・経産婦別、骨盤位診断妊娠週数、鍼灸治療初診時妊娠週数 ( 以下、初診時 妊娠週数 )、骨盤位診断妊娠週から鍼灸治療開始までの期間 ( 以下、治療開始期間 ) を検討し、さ らに産科の紹介の有無によってその要因に差があるか検討することを目的とした。 【方法】2009 年 2 月から 2010 年 12 月までの 23 ヶ月間において、当院で骨盤位矯正を目的に鍼灸 治療を含む施術介入を行った 188 例(年齢 32.2 ± 3.9 歳;範囲 22 ~ 45 歳 ) を調査対象とし、このデー タを解析・分析した。 【結果】平均治療回数は 1.5 ± 0.9 回 ( 範囲 1 ~ 6 回 )。骨盤位矯正率の年別内訳は 2009 年 80.6%( 施術総数は 72 例、骨盤位矯正数は 58 例 )、2010 年は 97.7%( 施術総数は 133 例、骨盤位矯 正数は 130 例 ) であった。骨盤位矯正率は解析全年において 91.7% となり、経時的に増加する傾 向にあった。また、病鍼連携の有無で比較したところ、病鍼連携あり矯正群では病鍼連携なし矯 正群に比べ、骨盤位診断妊娠週数 (p=0.001)、初診時妊娠週数 (p<0.001)、治療開始期間 (p<0.001) を有意に短縮させた。 【考察】骨盤位の矯正率に影響を与える要因は医師から骨盤位の矯正を目的とした鍼灸院の紹介が あることによって短縮され、骨盤位矯正率を高める可能性があると示唆される。そのためには病 産院と鍼灸院が密接な情報共有を行い、それを持続するための関係を構築することが重要である と考える。 【結語】医師による骨盤位矯正を目的とした鍼灸院への紹介により、骨盤位矯正率は経時的に増加 した。
著者
徳竹 いづみ 小林 正義 杉村 直哉 冨岡 詔子
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.38-46, 2008-02-15

要旨:本研究の目的は,長期入院患者と合意される作業療法目標の特徴を明らかにすることである.合意面接に同意した72名の入院患者を対象に「合意内容調査票」を用いて調査した結果,「身体・健康管理」,「楽しみ・趣味」,「気分転換」に関することが対象者と合意されやすい目標であり,面接を2回行った37名の結果からは,合意内容が作業療法経過に沿って発展していくことが確認された.これらの結果は,長期入院患者と理解しやすいことばで目標を合意することの重要性を示しており,対象者と作業療法目標を分かち合う過程は日常生活に意味や価値をもたらし,長期入院による二次的な機能低下を防ぐための基本的な援助過程と思われた.
著者
小林 正佳
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.246-251, 2014-07-25 (Released:2018-02-13)
参考文献数
26
被引用文献数
4 3

嗅覚はにおいを感じる化学感覚で,これに異常が生じた状態を嗅覚障害という.嗅覚障害は量的障害と質的障害に分類され,量的障害には低下と脱失があり,質的障害には異嗅症,嗅盲,嗅覚過敏,その他(悪臭症,自己臭症,幻臭,鉤回発作)がある.嗅覚障害は障害発生部位に基づいて呼吸性,嗅粘膜性,混合性,末梢神経性,中枢性の5つに分類される.嗅覚障害の原因疾患は慢性副鼻腔炎,感冒,頭部外傷の順に多く,これらを嗅覚障害の三大原因という.嗅覚障害の有病率は米国で人口の1〜3%であるが,日本ではまだ調査報告がなく,不明なので今後の疫学調査が望まれる.
著者
大村 智 供田 洋 乙黒 一彦 山田 陽城 宇井 英明 清原 寛章 塩見 和朗 林 正彦
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

我々は天然物由来の新規な構造の抗マラリア剤を発見するために探索研究を行った。4年間の研究期間で、天然物素材等12,832検体を北里研究所のスクリーニングセンターに提供し、in vitroでの抗マラリア活性の評価を行った。その結果、選択毒性の高い抗マラリア活性を有する天然物素材として18種を活性物質取得候補とした。微生物素材からの探索の過程で、放線菌K99-0413株、KP-4050株、K99-5147株、KP-4093株(後に、高生産株OM-0060株を選択)及び糸状菌FKI-0266株の生産する抗マラリア活性物質は各々既知抗生物質のX-206、K-41、polyketomycin、borrelidin及びleucinostatin Aであると同定された。また、抗生物質ライブラリーからは、既に当研究所で発見されたtakaokamycin (hormaomycinと同定)及びoctacyclomycinに抗マラリア活性があることが分かった。さらに、X-206、K-41及びborrelidinはin vivoで既存の抗マラリア剤(artemether, artesunate及びchloroquine)よりも優れた効果を示した。特に、K-41及びborrelidinは新規な骨格の抗マラリア剤としてのリード化合物の可能性があり、今後開発に向けて詳細を検討する必要がある。植物素材からの探索の過程では、ジンチョウゲ科植物根部に含まれる抗マラリア活性物質2種を精製し、既知のbiflavonoid誘導体のsikokianin B及びCあることを同定した。上記の化合物類の抗マラリア活性は新知見である。また、新たにな素材としての海洋生物素材、天然物由来の活性物質誘導体については、現在抗マラリア活性の評価中である。他の選択菌株及び和漢生薬からの抗マラリア活性物質についても現在検討中である。